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慶応三年、新政府と旧幕府の対立に揺れる幕末の京都で、若き尾張藩士・鹿野師光は一人の男と邂逅する。名は江藤新平――後に初代司法卿となり、近代日本の司法制度の礎を築く人物である。二人の前には、時代の転換点ゆえに起きる事件が次々に待ち受ける。維新志士の怪死、密室状況で発見される刺殺体、処刑直前に毒殺された囚人――動乱の陰で生まれた不可解な謎から、論理の糸は名もなき人々の悲哀を手繰り寄せる。破格の評価をもって迎えられた第12回ミステリーズ!新人賞受賞作を含む、連作時代本格推理。第19回本格ミステリ大賞受賞。/【目次】佐賀から来た男/弾正台切腹事件/監獄舎の殺人/桜/そして、佐賀の乱/解説=末國善己
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Posted by ブクログ
まさに堂々たる歴史本格ミステリ! という連作短編集でした。
舞台となる時代は、幕末から明治という日本の激動期。維新の志士の密室殺人から始まり、明治の日本の雰囲気を湛えた、風格あふれる短編がその後も続いていきます。
史実やこの時代ならではの設定、そして人間感情を巧みに織り込みつつも、一方で本格ミステリとしての論理もおろそかにしない。本格ミステリの楽しみどころ王道は、だれが犯人か?のフーダニットと、どうやって犯行におよんだかのハウダニットだと思うけど、
この小説ではそれに加え、この時代ならではの人の感情の機微や史実を織り込んだホワイダニットが、ミステリとしても、そして小説としても、話を深化させていきます。
そして犯人当てだけでなく、倒叙ものであったり、探偵が陥れられるパターンであったりと、パターンの多さも、作者である伊吹亜門さんの実力の確かさを裏付けしていると思います。どのパターンもいずれもスキがないと感じました。
ミステリとしての完成度はもちろんのことだけど、幕末、明治と日本の激動期の雰囲気を感じさせる筆力も素晴らしかった。時代の雰囲気の描き方や文体が相まって、新人賞受賞作を含むデビュー作と思えない雰囲気や、オーラをまとった作品だと思います。
そして探偵役となる江藤新平と、ワトソン役となる鹿野師光の関係性の変化も見ものだったと思います。抜群の名コンビとして物語全編で活躍するのかと思いきや、お互いの正義の価値観のズレから、徐々にすれ違いが生じ袂を分かつにいたり、そして…
特殊設定ならではのミステリというのは、他にもいろいろ作品はあると思いますが、幕末、明治という実際にあった時代を特殊設定として活用することで、本格ミステリのパズラー的部分に深みが増し、独自の輝きを放つ作品だと思いました。
今後もミステリー系の作品はもちろんだけど、個人的にはミステリーの枠にとどまらない、近代が舞台の超骨太な小説も書いていただきたいと思ったりします。とにかく今後の伊吹さんのご活躍が楽しみになる作品でした!
Posted by ブクログ
歴史小説×連作ミステリー。
幕末〜明治にかけての動乱期の京都が舞台。
架空の尾張藩士・鹿野師光と、実在の人物で近代日本の司法制度確立に尽力した江藤新平のふたりがバディを組む形で、5つの難事件に挑む。
序盤のうちはオーソドックスな連作ミステリーという感じで、ふたりの関係性が作られていく。
3話あたりからラストに向けて怒涛の展開に。
実在の人物、それも悲劇的な最期を迎えることがわかっている人物を登場させる以上、どうしても結末の方向性は予想できてしまうのだが、序盤からの江藤の尖ったキャラクターから、一体どういう風に展開していくのだろう?とワクワクしながら読み進められた。
最後まで読むと、「刀と傘」というタイトルに「なるほど」となる。
(ラストはちょっと切ないけど)
続編(といっても、話は本作より前の設定らしい)もあるらしいので、手に取ってみようと思う。
Posted by ブクログ
時は明治。
維新後の日本は様々な矛盾を孕みながら近代化へと進む。
新しい世界を目指し若者たちは京の外れに集い 熱く語り合う。そんな中同志が一人死んだ。隠れ住んでいた町家でたくさんの刀傷を受けて。
「雨と短銃」を先に読んだのですが、どうもこちらの方が先だったらしく、短編ですがなるほど中心になる狩野師光さんが とても好ましい人物であるとよくわかる。
今回はワトソン役でしょうかホームズ役に江藤新平なる佐賀脱藩浪人の頭キレッキレの男と共に謎に挑みます。
この人を人とも思ってないような江藤さんが師光さんをめっちゃくちゃ気に入ってしまうんですね。
でも片想いで いくら頭良くて舌鋒鋭くても 人の心は自由にできないところが、凡人たるわたしには ちょっと痛快。最終そんなこと言ってられないんですけど、時代物なのに密室ミステリだったりします。
これは面白かったのでオススメです。
Posted by ブクログ
――
ますらおの 涙を袖にしぼりつつ 迷う心はただ君がため
「監獄舎の殺人」に惹かれてエンタメ推理小説のつもりで読み始めたので、本格時代小説でもあったことに驚いた。連作短編として読んでくると、「監獄舎」が終わったあたりで腰の据え方が変わってくる。江藤新平と鹿野師光というふたりの探偵役が、どうしてここに至り、どこへ行くのか。
しかし史実上の人物とオリジナルの探偵、という対比が非常に巧みで、師光を通して見る江藤新平の姿は傲岸不遜でありながら所々に感情的な綻びを見せ、当に「迷い」を体現するかのよう。司法制度の成立に生涯を掛けた人物だからこそ、その迷いが魅力的に響く。
にしても重かった…本格時代小説としても、新本格推理小説としても。密室あり、倒叙ミステリあり、推理合戦ありに政争あり。未だ幕末の動乱残る明治初期を舞台にしていることが、これでもかと活きている。
大満足でした。
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小説・文芸
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