まだ早い春の日、思い出の山を登るひと組の男女。だが、女は途中で足を挫き、つかの間別行動をとった男は突然の吹雪に襲われる。そして、山小屋で彼を待つ女に忍び寄る黒い影――山岳を舞台にした驚愕のサスペンス「冷たいホットライン」、両親に置き去りにされた孤島で生き抜こうと奮闘する幼い姉弟の運命を描く「アイランド」、海に臨む児童養護施設で噂される、謎の声が聞こえる空き家の秘密が明かされる表題作ほか、トリックと物語の融合で読者を魅了し続ける気鋭が贈る、一編一編に異なる技巧を凝らした9編を収める本格ミステリ短編集。/【目次】冷たいホットライン/アイランド/It's only love/悲しみの子/さよならシンデレラ/桜前線/晴れたらいいな、あるいは九時だと遅すぎる(かもしれない)/発音されない文字/空耳の森/解説=末國善己
吹雪の山小屋で迫り来るサスペンスから衝撃の結末までを綴った『冷たいホットライン』や男女の恋愛模様が思いがけない形へと収束していく『It's only love』など九編の短編が収録されたミステリーで、それぞれの謎解きと登場人物の精緻な心理描写が一つ一つの物語に深みを出していて面白かった。また前作、前々作の舞台の七海学園が出てきたのも良いファンサービスだった。