小説 - 集英社文庫作品一覧

  • 焚火の終わり 上
    3.9
    1~2巻495~550円 (税込)
    島根県の岬の町に住む美花は、茂樹の異母妹である。幼い頃、岬の家に行くのが茂樹は好きだった。いつも二人は焚火を楽しんだ。父が死に、母も他界した後、茂樹は母のノートから〈許すという刑罰〉との謎のメモを発見する。一方、美花の家には異様な写真が一枚残されていた。「美花は本当に自分の妹だろうか」出生の秘密を探るうち、さらに強まる二人の絆。それは恐ろしいほどの疼きとなった。
  • 宅飲み探偵のかごんま交友録
    3.0
    1~2巻605~682円 (税込)
    大学三年生の僕こと小金井晴太は、ある春の日、憧れの先輩である清田小春に一世一代の告白をかます。玉砕覚悟の大博打は、拒否もされなければ承認もされないというなんとも中ぶらりんの結果に終わった。そして、これがあの偏屈マッチョと僕を巡りあわせるターニングポイントになってしまうわけだが……。面白さ“桜島”級の青春ミステリ。
  • 猛き箱舟 上
    4.1
    1~2巻880円 (税込)
    あの「灰色熊(グリズリー)」のような男になりたい。香坂正次は胸に野心を秘め、海外進出日本企業の非合法活動を担うその男に近づいて行った。彼に認められた正次の前には、血と暴力の支配するアフリカの大地が開けた。その仕事は、砂漠の小さな鉱山を、敵の攻撃から守ることだった――人の世の地獄、野望と絶望を謳いあげた大ロマン。
  • TAS 特別師弟捜査員
    3.7
    関節を有り得ない方向に曲げ、赤黒い血溜まりの中で死んでいたのは、学校一の美少女だった──。飛び降り自殺と噂する生徒。転落事故と主張する校長。騒ぎ立てるマスコミ。校内外が騒然とする中、クラスメイトの慎也は、ある引っ掛かりを覚えて事件性を疑う。そこに従兄で刑事の公彦も加わり、二人は潜入捜査を開始する。猛スピードの展開、予想だにしない結末。ノンストップ学園ミステリー。
  • ただいま、お酒は出せません!
    3.6
    新宿の駅ビルに入っているイタリアン・マルコ新宿店で、店長の皆見から通達があった。「明日から店は休業です。しばらくの間、自宅で待機していてください」。コロナ禍による第一回目の緊急事態宣言。パートで働く鈴木六花は独り暮らしの中、孤独を深めていく。そして、休業が明けても客足は戻らず、課題は山積みだった。それでも六花は店の立て直しに奮闘する。「世の中が変わっても、失くしてはいけないものがある。それは、人と人との交流である。」――2020年からコロナ禍で分断された社会の中、もがきながらも光を探す希望の物語。30代でシングル、パートの女性が奮闘する新・お仕事小説。
  • たてがみを捨てたライオンたち
    3.9
    「家事や育児が問題なくできたとしても、仕事が人並み以下だったら男としては二流のような気がしちゃうんです。そういうのってわかりますか?」専業主夫になるべきか悩む30歳出版社社員、直樹。離婚して孤独をもてあます35歳広告マン、慎一。モテないアイドルオタクの25歳公務員、幸太郎。いつのまにか「大人の男」になってしまった3人、弱音も吐けない日々に、モヤモヤは大きくなるばかり。幸せに生きるために、はたして男の「たてがみ」は必要か?
  • たとえ君の手をはなしても
    3.5
    青山透、高校二年生。地味で陰気な彼には、匿名で犯罪捜査に協力する別の顔があった。2年前に起きた凄惨な立てこもり事件で、透の姉・光は命を奪われた。事件の裏側に、犯人をそそのかした黒幕の存在があると知った透は、黒幕の正体を探るため、危険な捜査協力をしているのだが――。小説投稿サイト「エブリスタ」の人気作品が、大幅改稿で書籍化。スリリングなサスペンスアクション!
  • 田中慎弥の掌劇場
    4.5
    自殺と断定された妻を、自分が殺害したと主張する男。夫の浮気相手たちを殺す計画を立てる貞淑な妻。育児疲れの女に若い頃の自分を重ねる老婆。会社帰りに立ち寄ったバーで悪魔と隣合わせになった男。愚かで愛らしいその人々は、あなたのすぐ近くに存在するかもしれない――。何気ない日常生活が些細なことで歪みはじめる瞬間を、ブラックユーモアたっぷりに切り取った38編の掌編小説集。
  • 谷川俊太郎詩選集 1
    4.2
    1~4巻495~671円 (税込)
    「……私はひとを呼ぶ/すると世界がふり向く/そして私がいなくなる」(『六十二のソネット』所収「62」より)。時代を超えて愛される谷川俊太郎の詩作のすべてから新たに編んだ21世紀初のアンソロジー。第1巻は処女詩集『二十億光年の孤独』『愛について』『日本語のおけいこ』『旅』『ことばあそびうた』など17冊の著作と未刊詩篇より、1950~70年代の代表詩を厳選。
  • 谷崎潤一郎犯罪小説集
    3.9
    仏陀の死せる夜、デイアナの死する時、ネプチューンの北に一片の鱗あり……。偶然手にした不思議な暗号文を解読した園村。殺人事件が必ず起こると、彼は友人・高橋に断言する。そして、その現場に立ち会おうと誘うのだが……。懐かしき大正の東京を舞台に、禍々しき精神の歪みを描き出した「白昼鬼語」など、日本における犯罪小説の原点となる、知る人ぞ知る秀作4編を収録。
  • 谷崎潤一郎フェティシズム小説集
    4.0
    女郎蜘蛛の入れ墨を背に彫り込まれた娘が、自らの裡にひそませる欲望を解き放ち、あざやかな変貌をとげる「刺青」、恐怖に取り憑かれた男の禁断の快楽を描いた「悪魔」、女の足を崇拝する初老の男と青年が、恍惚の遊戯に耽り、溺れていく「富美子の足」など、情痴の世界を物語へと昇華させた、谷崎文学に通底するフェティシズムが匂い立つ名作6篇。この世界の奥深くに、本当の自分がうごめいている。
  • 谷崎潤一郎マゾヒズム小説集
    3.6
    エスカレートする遊びの中で、少年と少女が禁じられた快楽に目覚めていく「少年」、女に馬鹿にされ、はずかしめられることに愉悦を感じる男を描く「幇間」、関東大震災時の横浜を舞台に、三人の男が一人のロシア人女に群がり、弄ばれ堕ちていく「一と房の髪」など、時代を超えてなお色鮮やかな、谷崎文学の真髄であるマゾヒズム小説の名作6篇。この世界を知ってしまったら、元の自分には戻れない。
  • 「タ」は夜明けの空を飛んだ
    -
    1900年代初頭。日清、日露の二戦争の間に、通信技術は手旗から無線へと飛躍的に進化。日本海軍は戦況を左右する無線機の独自開発を決定。科学者・木村駿吉は、原理すら解明されていない無線機の改良を手探りで進めていく。マイペースな科学者が無茶振りに応えた結果、彼らの血と汗の結晶、三六式無線機を搭載し、日本海軍は当時最強と謳われたバルチック艦隊を迎え撃つ――。授業では教わらない歴史の行間に潜むドラマを掘り起こし、迫力の筆致で活写した傑作描き下ろし。新たな歴史小説の誕生!
  • たぶらかし
    3.3
    ドラマ化小説! 元舞台女優のマキ、39歳。あやしげな事務所に所属し、市井の人々の中で誰かの代役を務める「役者」を仕事にしている。多忙なセレブ母の代理として子供の学校に赴いたり、夫の親戚との付き合いを厭う新妻の身代わりや、さらにはワケありな葬儀での死体役まで、様々な役柄をこなしている。そんな中、あやしい青年・モンゾウが、マキに無理やり弟子入りしてきて……。第23回小説すばる新人賞受賞作。
  • 魂の岸辺
    4.0
    東京は下町、向島の料亭に生まれた川田周一。十四歳。母はすでになく、父も別居していた。義兄が家を出て、二人の異母姉と周一だけになった。刑事や物騒な連中が来るようになり、店を嵐の気配が包む。そんな中、周一は煙草や酒を覚え、喧嘩を女を知っていく。しっかり眼を開けていろ、との板前・久我の言葉を胸に、男という向こう岸へ、泳ぎ渡りはじめた少年の成長を描いたハードボイルド青春小説。
  • ため息の時間
    4.0
    洋画家の僕は、「センセイ」と呼んで敬愛する十歳年上のイラストレーター辻井秋一とその妻洋子のふたりを、同時に愛してしまった。愛し合うこと、騙し合うことを繰り返し、からみ合う人間関係の終着駅はどこなのか? 現代の恋愛の先端を、スリリングな展開と抒情味豊かな筆で描く。
  • 淡雪記
    3.5
    北海道の自然豊かなリゾート地、大沼。義父の別荘で暮らし、写真を勉強している敦史は、森を抜けたところで妖精が倒れているのを見つけた。黒髪に白い肌の美少女、有紀。知的障害のある彼女は、著名な画家の伯父とともに洋館に住んでいた。純粋な美しさに魅かれた敦史は、彼女をモデルとして写真を撮りはじめる。出逢うべくして出逢い、惹かれ合う二人を待ち受けるのは苛酷な運命だった。力作長編。
  • 短編アンソロジー 学校の怪談
    3.0
    毎日通っている学校には、なぜだか恐ろしい噂話や言い伝えがいっぱい。もう使われていない旧校舎にいる「誰か」の噂、学校の七不思議の最後の一つ、いつもと違う通学路に蠢く黒いドロドロ、演劇部に代々伝わる「軍服」のお芝居の謎、校庭の隅の祠にまつわる古い記憶……恐ろしい噂話や言い伝えにあふれる学校を舞台に、織守きょうや、櫛木理宇、清水朔、瀬川貴次、松澤くれは、渡辺優という気鋭の作家6人が書き下ろした背筋も凍る珠玉の怪談アンソロジー。恐怖の物語の幕が上がると、ほら、あなたの後ろにも――。
  • 短篇セレクション 幻想篇 命日
    4.0
    仙台の家に引っ越してから、姉の繊細な神経はますますその度合いを増していくようだった。見えないものを見、聞こえない音を聞く。それは死者の気配。(表題作「命日」より)生きているものたちの後ろにひっそりとある異界のものたちの存在。かれらは何を伝えようとしているのか。恐怖より哀しみ、不思議より美、幻想に満ちたあやしの交流を、流麗な筆致で描く恐怖短篇集。
  • 短篇セレクション サイコ・サスペンス篇1 会いたかった人
    3.8
    25年ぶりの親友との再会。TV出演した小夜子を見て連絡をとってきた女は、まるで別人のように変貌していた。うずまく疑念、そして……。表題作「会いたかった人」。他に男と女の妖しく美しい愛の行き着く果てを描く「倒錯の庭」、犬を飼い始めてからはじまる不運にみずからとりつかれていく男の物語「災厄の犬」を収録。静かな狂気を描くサイコ・サスペンス短編集。
  • 短篇セレクション ノスタルジー篇 夢のかたみ
    5.0
    一枚のモノクローム写真に秘められた懐かしくいとおしい日々の記憶。人生の晩年を迎えようとしている女性随筆家は、愛した男への思いを胸に生きてきた。だが、小さな出来事が平穏な生活にさざ波をたてる……。表題作「夢のかたみ」ほか、再会の一夜のドラマを綴る「チルチルの丘」など、遠い日のエロスを溢れるノスタルジーで描く。失われた時間への哀惜と感傷に満ちた5編。
  • 蛇行する川のほとり
    3.7
    演劇祭の舞台装置を描くため、高校美術部の先輩、香澄の家での夏合宿に誘われた毬子。憧れの香澄と芳野からの申し出に有頂天になるが、それもつかの間だった。その家ではかつて不幸な事件があった。何か秘密を共有しているようなふたりに、毬子はだんだんと疑心暗鬼になっていく。そして忘れたはずの、あの夏の記憶がよみがえる。少女時代の残酷なほどのはかなさ、美しさを克明に描き出す。
  • 奪還(鶴見京介弁護士シリーズ)
    3.5
    有原和樹の妻が自宅で殺害された。妻の流産以降、夫婦仲は冷え切っており、まして妻の不倫を疑っていた有原をクロとする状況証拠は揃っていた。逮捕された有原の担当弁護士となった鶴見京介は、有原が殺害時刻に居酒屋で、アイヌが使う「ムックリ」という口琴を持った男と会ったという言葉を信じる。だが、探し出した男は、有原を覚えていないと答えた後、アリバイを証明することなく姿を晦ます……。手掛かりを求め北海道へ飛んだ鶴見は、暗い秘密を抱える人々の心を解きほぐし、嘘を暴きながら驚愕の真相に迫っていく! 長編ミステリー。
  • 弾丸スタントヒーローズ
    3.0
    千鶴は冴えない大学二年生。ある日、父から「双子の嗣美が怪我をした」という突然の連絡が。駆けつけた先は、なんと映画の撮影現場だった。そこで美作という女性スタントマンに出会った千鶴は、成り行きでスタント・チームに所属することになる――。幼い頃の火事の記憶、母親との葛藤、姉妹の確執を乗りこえて成長していく、一人の女性の物語。共感と感動と癒しの青春×家族×お仕事小説!
  • ダ・ヴィンチの愛人
    3.4
    15世紀、ルネサンスの街フィレンツェを支配するメディチ家とそれを狙うローマ教皇庁。工房に入った若き天才ダ・ヴィンチは、豪華王と呼ばれるロレンツォの弟、美貌のジュリアーノに魅せられた。兄弟子ボッティチェルリと争いながら、恋と芸術に没頭する日日に忍び寄る陰謀の影。ダ・ヴィンチの才能を花開かせた殺戮とは。モナ・リザを持って逃れたダ・ヴィンチが語る恋と復讐の物語。
  • ダー・天使
    4.0
    妻と幼い娘とともに、慎ましくも幸せに暮らしていた二郎。だが、ある日、通り魔から家族を守ろうとして命を落としてしまう。天国で神と交渉し、「天使」として地上へと戻るが、誰からも姿は見えず、手助けも出来ないまま、ただひたすらに妻子を見守り続ける二郎。小さかった娘は、中学生になり、高校生になり、そして――。すべての人への慈しみがあふれる、心温まる現代のファンタジー。
  • ダービーパラドックス
    3.0
    実業家・堂林の所有馬が次々と故障。競馬記者の小林が疑惑を追う中、堂林の馬ジェメロがデビューを迎える。小林が魅了されるほどの素質馬だが、惨敗した上に故障も判明。そんな折、先輩記者の沢村が謎の死を遂げ、小林自身も危険を感じるようになる。競馬界で何が起こっているのか。誰を信じればよいのか。北の大地で小林が見た真実とは!? 現実を超えるリアリズム、これが21世紀の競馬ミステリー。
  • チア男子!!
    4.3
    大学1年生の晴希は、道場の長男として幼い頃から柔道を続けてきた。だが、負けなしの姉と比べて自分の限界を悟っていた晴希は、怪我をきっかけに柔道部を退部する。同時期に部をやめた幼なじみの一馬に誘われ、大学チア初の男子チームを結成することになるが、集まってきたのは個性的すぎるメンバーで……。チアリーディングに青春をかける男子たちの、笑いと汗と涙の感動ストーリー!
  • ちいろば先生物語(上)
    3.5
    1~2巻605円 (税込)
    雨天の日には、履く靴も、さす傘もなく、弟妹たちは学校を休まねばならぬ状態であることを、榎本保郎は百も承知だった。が、何としても同志社の神学部に進みたかった。結局は家族を真の意味で幸せにできると、固く信じた。イエスを乗せ、命ずるがままに行く小さなロバのようになりたいと決意した――。熱血牧師の生涯を描く。
  • 地下芸人
    3.0
    中学校からの友人であるオダと広瀬がお笑いコンビ・お騒がせグラビティーを結成して早十年。未だ一向に売れる気配がなく、周囲の芸人も次々と引退していく中、何が面白いのかもわからなくなったオダは、広瀬からコンビ解散を告げられてしまう。解散まであと一か月。オダが最後にすることは……? 元芸人の著者がひたすらに笑いを追求する者たちを描いたデビュー作。ジャンプ小説新人賞受賞。尊敬するお笑い芸人・カズレーザー氏との対談も収録。
  • 地図のない旅 おいしいコーヒーのいれ方 Second Season VIII
    4.1
    誰一人として、勝利くんを罰しようとしなかった。その結果、彼はあそこまで追い詰められたんです――中沢の言葉を反芻しながら、風見鶏のマスターは、自分がかれんの兄であることを花村家に告げに行く。由里子さん、若菜ちゃんもそれぞれのつらい経験を乗り越えようと、一歩ずつ足を前に進める。あのとき以来、時間がとまったままの勝利だったが、急遽オーストラリアから帰国することになり……。
  • 血ぞめの試走車
    -
    新型モデルは欠陥車か? テスト走行中、東名高速で事故を起こしたテスト・ドライバーの結城は、新車の売れ行きが落ちることを懸念した社のトップの命令で、孤独な旅に出た。悄然と愛車を西へ向けた彼のクルマをつける謎のスポーツカー。旅先で殺人事件に巻き込まれ、容疑者に仕立てられてしまった結城は…。自動車業界の熾烈な暗闘を描く傑作企業サスペンス。
  • 父親 上
    3.0
    1~2巻440円 (税込)
    石井菊次は56歳。化粧品会社の宣伝と商品開発の担当部長。妻と二人の子供がいる。だが、平穏無事な生活とはこんなに脆いものなのか。スタイリストの仕事に生きがいを持つ娘の純子が、妻子と別居中の青年実業家・宗と道ならぬ恋におちた。娘の平凡な結婚を願う菊次は、宗の妻が初恋の人の娘であることを知り、複雑な思いに悩む。話題作の上巻。
  • 乳房のない死体
    4.5
    乳房を鋭利な刃物でえぐられた死体が、宇治川で発見された。被害者の人妻は情事でも、なぜか乳房に触れられるのを拒んでいたという……。肉体上の秘密を巧みに犯罪にからませた表題作ほか、輪姦された女子大生の復讐譚など斬新なトリックを駆使し、官能描写を豊富に加えた異色ミステリー傑作集。
  • 虫樹音楽集
    3.7
    ジャズ全盛の1970年代。サックスプレイヤー通称「イモナベ」は、『孵化』というライブを全裸で演奏して以降、精神に変調をきたしたとの噂と共にジャズシーンから姿を消した。ところが1990年、小説家になりたての私は『変態』と題されたライブチラシを見つける。イモナベの行方を尋ねた「私」が見たのは絶対にありえない戦慄の風景だった。カフカ『変身』とジャズを見事に融合させた傑作連作短編。
  • 中退サークル
    -
    私立金田大学は、留年も中退もお咎めなしのおおらかな大学だ。そんな大学に通う社本勇の所属サークルは、メンバーがやめてしまうことで有名だった。そして、中退したクセの強いOBたちが部室を訪れ、お酒片手に語りまくる。そこに寝泊まりする勇は常に睡眠不足。勇がサークルで出会った後輩との初恋に浮かれる裏で、中退者たちはある画策をするのだが──。ラストまで目が離せないブラック“サークル”コメディ!
  • 注文の多い料理店
    4.1
    ざわざわ鳴るススキの中に、「西洋料理店・山猫軒」がありました。都会から猟に来た二人の紳士が、入ってみると…表題作「注文の多い料理店」ほか13編収録。これを読んだあなたは、世界を構成している基準が揺らぎ、自分と他者の間がきしんだ時の痛み、恐れを感じながら、魅力的な賢治ワールドを発見するでしょう。「どなたもどうか、お入りください」
  • 弔鐘はるかなり
    3.3
    高崎隆之介が横浜(ハマ)に戻ってきた。4年前の不可解な事件で刑事の職を追われた梶礼二郎。その事件の鍵を握るのが高崎だ。高崎を追う梶……。警察と覚醒剤をめぐっての暴力団同士の抗争が複雑に絡みあう。限りない硝煙と血の匂いの中、梶の復讐が始まった。ハードボイルド小説の担い手、北方謙三のデビュー作。
  • 鳥獣の寺
    3.0
    トリックの女王・山村美紗の代表作! 終戦直後、韓国で殺された父、引揚船の中で不可解な死を遂げた母――二人の過去と行方の知れぬ兄を追求する新進作家・湯川彩子の周辺で、つぎつぎと謎の殺人事件が発生する。被害者はいずれも亡き父と関係があり、鳥獣と縁のある寺で殺されてゆく……。巧みなトリックを駆使し、寺にまつわる伝説を織込み京都とソウルの二つの古都を重ね合わせ展開する長編ミステリー。
  • 危険な夏 挑戦シリーズ1
    4.5
    「金に尻尾を振って集まってくる連中じゃ、勤まりそうもない仕事なんだよ」バイト学生の水野竜一に深江は言った。自室の壁にペルーの地図を貼り、いつかその地にはばたきたいと夢みている竜一は、そのひとことで心を決めた。20億円もの金に目もくれない男たちが、自らの肉体と知恵を武器に巨大企業を追いつめていく。竜一21歳、暑くて危険な夏が始まった。
  • 蝶のゆくえ
    3.9
    【第18回柴田錬三郎賞受賞作】10代で出産離婚し23歳で再婚した美加だが、新しい夫は息子にまったく無関心だった。彼女もそんな夫に同調し、いつしか虐待が始まる……。突然、夫の両親と同居することになった37歳主婦のいらだち。定年退職した直後の夫をオヤジ狩りでなぶり殺された58歳主婦の孤独。現代に生きる様々な年齢の普通の女たちを鋭く描いた傑作短編集。
  • 鎮魂(鶴見京介弁護士シリーズ)
    3.7
    森塚翔太は、包丁で隣人を刺殺し、現行犯逮捕された。だが、凶器は被害者が持ってきたと主張し、殺意を否認。担当弁護士の鶴見は、接見のたびに供述を二転三転する森塚に不審を抱く。さらに森塚のDVから逃げている女性の存在が明らかになり……。阪神淡路大震災から20年の時を経て明らかになる驚愕の真実! 償いとは何かを、犠牲者たちへの祈りを込めて描く、号泣ミステリー。
  • 沈黙の叫び
    -
    私立探偵・甲斐浩二にとび込んできた幼児誘拐事件――。甲斐は依頼人の工藤清・芳子夫妻から、身代金の運搬役を引き受ける。だが、途中で3人組に襲撃され金を奪われてしまう。調査を進めるうちに工藤の家族たちの奇妙な行動にある疑惑が……。そして、甲斐のまわりに起きる不可解な連続殺人事件。影なき犯人の魔の手は、甲斐の妻と娘たちにも襲いかかる。卑劣な犯人に男の怒りが炸裂。長編バイオレンス・ミステリー。
  • ツアー1989
    3.5
    1989年の香港ツアーで一人の青年が消えた。彼が想いを寄せていた女性、同じツアーに参加した会社員、添乗員……青年を取り巻く人々の記憶は、肝心なところが欠落していた。15年後、彼の行方を追う駆け出しライターは、当時ひそかに流行していた「迷子つきツアー」という奇妙な旅に行き着くが――。記憶のいたずらが、一人の人間の運命を変える。現実と虚構の境が揺らぐ、ミステリアスな物語。
  • 終の盟約
    4.3
    1巻1,067円 (税込)
    ある晩、内科医の輝彦は、妻・慶子の絶叫で跳ね起きた。元医者の父・久が慶子の入浴を覗いていたというのだ。久の部屋へ行くと、妻に似た裸婦と男女の性交が描かれたカンバスで埋め尽くされていた。認知症を確信した輝彦は、久が残した事前指示書「認知症になったら専門の病院に入院させる。延命治療の類も一切拒否する」に従い、父の旧友が経営する病院に入院させ、弁護士の弟・真也にも、事前指示書の存在を伝えた。長い介護生活を覚悟した輝彦だったが、ほどなくして久は突然死する。そこには医師同士によるある密約が隠されていた。――医師の兄と、弁護士の弟は、真相にたどり着けるのか? 命の尊厳と向き合う傑作長編。
  • 月は怒らない
    3.5
    チンピラの梶原、大学生の弘樹、警察官の和田。何の接点もないように見える三人には共通点があった。それはある女の家に通っていること――。市役所の戸籍係で働く恭子は金にも物にも執着せず、相手に何も期待しない。そんな無機質で達観した女に、男たちはなぜ心惹かれるのか。女には、この世界の何が見えているのか。交差する思惑の中から浮かび上がるロクデナシたちの生き様を描いた長編小説。
  • 土に贖う
    4.0
    明治時代の札幌で蚕が桑を食べる音を子守唄に育った少女が見つめる父の姿。「未来なんて全て鉈で刻んでしまえればいいのに」(「蛹の家」)。昭和26年、最年少の頭目である吉正が担当している組員のひとり、渡が急死した。「人の旦那、殺してといてこれか」(「土に贖う」)。ミンク養殖、ハッカ栽培、羽毛採取、蹄鉄屋など、可能性だけに賭けて消えていった男たち。道内に興り衰退した産業を悼みながら、生きる意味を冷徹に問う全7編。圧巻の第39回新田次郎文学賞受賞作。
  • 綴られる愛人
    3.6
    人生に何の展望も見出せないでいる、富山に住む21歳の大学生、森航大(もりこうた)。編集者である夫に束縛される、東京住まいの35歳の作家、天谷柚(あまがいゆう)。二人は文通コミュニティ「綴り人の会」を通じて手紙を交わし始める。航大は充実した生活を送る35歳のエリートサラリーマン、クモオとして。柚は夫からの暴力に怯える28歳の専業主婦、凜子として。次第に熱を帯びる手紙は、二人を危険すぎる関係へいざない――。
  • 翼はいつまでも
    4.4
    【第17回坪田譲治文学賞受賞作】青森県の中学三年生、神山は補欠の野球部員、平凡な生徒だ。ある日、米軍放送で聴いたビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」が彼を変えた。聞き覚えてクラスで歌い、彼はクラスで認められた。多恵からも声をかけられ初恋の思いを抱く。夏休み、さまざまなトラブルが彼を襲う。でも彼には仲間がいるし、ビートルズがくれた勇気もある。「本の雑誌が選ぶ2001年度ベスト1」「第17回坪田譲治文学賞」受賞。
  • 燕は戻ってこない
    5/9入荷
    -
    北海道での介護職を辞し憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳・独身女性のリキ。「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニックの日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられる。バレエ界の「サラブレッド」としてキャリアを積み、自らの遺伝子を受け継ぐ子の誕生を熱望する43歳男性・基。その妻で、不育症と卵子の老化により妊娠を諦めざるを得ず、「代理母出産」という選択をやむなく受け入れる44歳女性・悠子。それぞれのままならぬ現実と欲望が錯綜する、ノンストップ・ディストピア小説!

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  • 罪深き海辺 上
    4.0
    東京からほど遠くない場所に位置する山岬市、母が捨てた故郷にアメリカ育ちの干場功一(ほしば・こういち)は帰ってきた。お殿さまと呼ばれた大地主の伯父、干場伝衛門は全財産を市に寄付して六年前に亡くなっており、お陰で財政破綻寸前の港町は立ち直ったという。そこへ突如、遺産相続人が現れたことで、かつて利権に群がった政治家や企業は色めき立ち――。閉塞感漂う田舎町で疑心暗鬼の人間ドラマが幕を開ける。
  • 吊橋のある駅
    -
    毎週一回、海峡を渡ってくるセールスの男が、一晩を女の部屋で過ごすようになって、三年の歳月が過ぎた。愛を誓うことも、過去を明かしあうこともなく続いた情事に不意に訪れる終わり。いつしかはかなくなってゆく男女を、こまやかに描いた表題作ほか、さまざまに揺れうごく愛のかたちを浮彫りにする香り高い作品集。
  • つるかめ助産院
    3.7
    夫が姿を消して傷心のまりあは、一人訪れた南の島で助産院長の鶴田亀子と出会い、予想外の妊娠を告げられる。家族の愛を知らずに育った彼女は新しい命を身ごもったことに戸惑うが、助産院で働くベトナム人のパクチー嬢や産婆のエミリー、旅人のサミーや妊婦の艶子さんなど、島の個性豊かな仲間と美しい海に囲まれ、少しずつ孤独だった過去と向き合うようになり――。命の誕生と再生の物語。
  • 連舞
    4.1
    昭和初期の東京・上根岸。日本舞踊の名門梶川流の師匠を母とする異父姉妹。家元の血を享け、踊りに天賦の才を見せる妹の千春の陰で、姉の秋子は身を慎んで生きてきた。しかし戦後の混乱期、梶川流の存亡を賭け、秋子が進駐軍の前で挑んだ驚くべき舞台が彼女の人生を予想もつかぬ方向へ導いていく――。伝統と因襲の世界で生きる女たちの苦悩と希望を描く、波瀾万丈の人間ドラマ。傑作大河長編。
  • 帝都妖怪ロマンチカ ~猫又にマタタビ~
    3.0
    1~3巻616~649円 (税込)
    昭和初期の東京。浅草の片隅の見世物小屋でひっそりと暮らす猫又の弐矢は、むかし愛した女に瓜二つの美貌の持ち主を見つける。その青年・嘉寿哉の家に居候することに成功した弐矢だが、心理学を研究しオカルトを糾弾しようとする嘉寿哉の周りには何故か妖怪たちが引き寄せられてくる。愛しい彼を守るべく、弐矢は奮闘するが……。欲望渦巻く帝都で暗躍する、妖しくも美しい妖怪たちの物語。
  • 手がかりは一皿の中に
    3.4
    1~3巻671~704円 (税込)
    あの一皿にヒントが隠されていたのか――。ある夜、グルメライターの北大路亀助は先輩の河口に誘われて食通のメンバーと絶品の熟成鮨を堪能していた。だが、メンバーの一人がその直後に死亡し、店が食中毒を疑われる事態に。閉店を迫られる店主を救うため、亀助は持ち前の味覚を駆使して、犯人探しをはじめる。事件解決のために食べまくる亀助に、食欲を刺激される美食満載のグルメミステリー。
  • 手のひらの砂漠
    4.2
    この不幸は、いつまで続くのだろうか――。平凡な結婚生活の先に待っていたのは、思いもよらぬ夫からの暴力だった。シェルターからステップハウス、DVの被害女性だけで運営される自然農園……。離婚を経て、居場所を変えながら少しずつ自立を果たそうとあがく可穂子に、元夫・雄二の執拗な追跡の手が迫ってくる……。現代の闇に恋愛小説の女王が切り込む、衝撃のノンストップサスペンス!
  • テロリスト伝説
    -
    アラビア語、ヘブライ語に堪能な外交官が行先を隠して海外へ出た。謎を感じて追うルポ・ライターにいつしか死の匂いが……。(赤い星の伝説) リビアのカダフィ大佐会見記を目論むフリー・ライターが、ホテルにひそむ赤軍派テロリストと見られる男に日本語で話しかけたことから、アッラー神の怒りが……。(暗殺者の伝説) 激動する政治の背後で策動する男たちを描く迫真の国際ゲリラ・サスペンス。
  • テロリストの処方
    4.0
    医療費の高騰で病院に行けなくなる人が急増した日本。医療勝ち組と負け組に患者が二分され、同じく医師も高額な医療で破格の収入を得る勝ち組と、経営難に陥る負け組とに二極化。そんな中、勝ち組医師を狙ったテロが連続して発生する。現場には「豚ニ死ヲ」の言葉が残されていた。若くして全日本医師機構の総裁となった狩野のもとにも脅迫状が届く。医事評論家の浜川は、狩野に依頼され、テロへの関与が疑われる医師・塙の行方を探すことに。三人は医大時代の同級生だったのだが――。迫りくる日本の医療危機を予見する、戦慄の医療ミステリー。
  • 天気晴朗なれど
    3.0
    夫はバカバカしい発明に熱中し、手塩にかけた息子は、なんとホスト・クラブ勤め。娘は娘で妻子ある男と不倫の恋。ああ、今まで守り続けてきた我が家はいったい…!? 戦前から戦後にかけ、“家”への奉仕にあけくれた主婦の造反物語を、ユーモアとペーソスを折りまぜて描く!
  • 天切り松 闇がたり 第一巻 闇の花道
    4.2
    夜更けの留置場に現れた、その不思議な老人は六尺四方にしか聞こえないという夜盗の声音(こわね)「闇がたり」で、遥かな昔を物語り始めた――。時は大正ロマン華やかなりし頃、帝都に名を馳せた義賊「目細の安吉」一家。盗られて困らぬ天下のお宝だけを狙い、貧しい人々には救いの手をさしのべる。義理と人情に命を賭けた、粋でいなせな怪盗たちの胸のすく大活躍を描く傑作悪漢小説(ピカレスク・ロマン)シリーズ第一弾。
  • 天才ハッカー安部響子と五分間の相棒
    4.1
    ネット上でのなりすましとカードの不正利用の被害に遭った肇。犯人探しの末に辿り着いたのは隣人の美女・安部響子だった。彼女に誘われ、ハッカー集団ラスクの一員として活動を始める肇。トラブルを放置する悪質企業を攻撃して謝罪と賠償を行わせる、世直しともいえる活動は世間の支持を集めるが、警察の捜査の手も迫り……。引きこもり美女と変わり者の青年が大金を狙う、スリリングな快作!
  • 天才ハッカー安部響子と2,048人の犯罪者たち
    4.0
    都内の高校に通う希美は、ロボットのような受け答えをする風変わりな同級生・佐野良子が気になって仕方ない。美人だが変人の彼女にちょっかいを出すうち、親しくなってゆく。良子は希美が持つパソコンに興味を抱き、部屋に入り浸るようになり──。インターネット黎明期、のちの天才ハッカーがいかに誕生したか、そして現代、彼女と次世代の天才の邂逅と活躍を描く、青春サイバーサスペンス。
  • 汚れた天使
    -
    1~6巻550円 (税込)
    <私>は大新聞社の横浜支局詰め記者。三十半ばを過ぎて独身。仕事はできるがちょっとニヒルな一匹狼。事件の取材で出会った女たちには、さまざまな<天使>の素顔がある……。表題作ほか6編収録。
  • 天使の卵 エンジェルス・エッグ
    4.0
    そのひとの横顔はあまりにも清冽で、凛としたたたずまいに満ちていた。19歳の予備校生の“僕”は、8歳年上の精神科医にひと目惚れ。高校時代のガールフレンド夏姫に後ろめたい気持ちはあったが、“僕”の心はもう誰にも止められない。第6回「小説すばる」新人賞受賞作品。みずみずしい感性で描かれた純愛小説として選考委員も絶賛したデビュー作。
  • 天使の柩
    4.1
    家にも学校にも居場所を見出せず、自分を愛せずにいる14歳の少女・茉莉。かつて最愛の人を亡くし、心に癒えない傷を抱き続けてきた画家・歩太。20歳年上の歩太と出会い、茉莉は生まれて初めて心安らぐ居場所を手にする。二人はともに「再生」への道を歩むが、幸福な時間はある事件によって大きく歪められ――。いま贈る、終わりにして始まりの物語。『天使の卵』から20年、ついに感動の最終章。
  • 天使の梯子
    4.0
    バイト先のカフェで耳にした懐かしい音。それはフルチンこと古幡慎一が高校時代に思いを寄せた先生、斎藤夏姫のものだった。8歳年上、29歳の夏姫に、どうしようもなく惹かれていくフルチン。だが、彼女は、体はひらいても心を見せてはくれない。10年前の「あの時」から夏姫の心には特別な男が棲んでいるのだから――。傷ついた心は再生するのか。愛は蘇るのか。それぞれの思いが交錯する物語。
  • 天使の骨
    3.8
    ぼろぼろの守護天使たちがわたしにつきまとう……。人生のすべてをかけた劇団を失い、世捨て人のように暮らす劇作家ミチル。絶望の果てに、彼女は天使の幻覚を見るようになる。この天使たちを葬るために――。イスタンブールからリスボンへ、そしてパリへ。ヨーロッパを彷徨うミチル。再生の光は果たして見つかるのか? 魂の巡礼を鮮烈に描く青春小説の傑作。第6回朝日新人文学賞受賞作品。
  • 天神
    3.6
    1~5巻555~715円 (税込)
    絶対にファイター・パイロットになるんだ――。親子三代での戦闘機乗りを目指す航空学生出身の坂上陸(りく)と、防衛大学卒業後、国を守りたいという強い思いから航空自衛隊に入ったエリートの高岡速(はやり)。立場も考え方もまるで違う二人の青年の人生が交差するとき、心揺さぶられる熱いドラマが生まれる! 戦闘機に乗ることに憧れを抱き、夢に向かって突き進む若者たちを描いた壮大な“空”の物語。
  • 天帝妖狐
    4.1
    とある町で行き倒れそうになっていた謎の青年・夜木。彼は顔中に包帯を巻き、素顔を決して見せなかったが、助けてくれた純朴な少女・杏子とだけは心を通わせるようになる。しかし、そんな夜木を凶暴な事件が襲い、ついにその呪われた素顔を暴かれる時が…。表題作ほか、学校のトイレの落書きが引き起こす恐怖を描く「A MASKED BALL」を収録。
  • 天に堕ちる
    3.5
    騙されていると知りながらも、出張ホストに貢ぐ「りつ子」。男の都合に合わせ、ソープ嬢へと身を落としていく「茉莉」。中学生の男子生徒に密かな欲情を抱く養護教諭の「和美」。ありきたりの生活の中にある、小さな小さなくぼみ。わかっていて足を踏み入れるのか、気づかないうちに、穴が広がってすべり堕ちてしまうのか。一途に愛することの幸せ、そしてその代償。十人十色の愛のカタチを描く、傑作短編集。
  • 天皇の料理番 上
    4.0
    1~2巻660~726円 (税込)
    小さいときから強情でいたずらっこだった篤蔵は、福井の大庄屋の次男坊。高等小学校の時、ひょんなことから鯖江連隊の田辺軍曹からご馳走になった〈カツレツ〉の味に仰天。彼の運命が大きく変わることに――。その後、家出同然に東京へ行き、西洋料理の世界に裸一貫で飛び込んでいく。明治生まれの若者が、日露戦争以降の東京で、激動の時代と共に、力強く成長していく立身出世の物語。
  • 天龍院亜希子の日記
    3.8
    【第30回小説すばる新人賞受賞作】人材派遣会社に勤める田町譲・27歳。ブラックな職場での長時間勤務に疲れ果て、プライベートでは彼女との仲がうまくいかない。なんとなく惰性で流れていく日常。そんな平凡な男の日々を勇気づけるのは、幼い頃に憧れていた野球選手と、長らく会っていない元同級生が書く穏やかな日常のブログだった――。
  • でいごの花の下に
    3.8
    プロのカメラマンだった恋人が、死をほのめかすメモと使いきりカメラを残して姿を消した。フリーライターの燿子は、彼の故郷・沖縄へと飛ぶ。青い空と海、太陽と風に包まれ愛した男を追いつづける。出会った人々それぞれの過去や今に触れながら、行方知れずの恋人の秘められた驚愕の真実を知っていく。燿子は失った愛を見つけられるのか。南の島で奏でられた生命の讃歌、濃密で一途な純愛小説。
  • できない男
    3.6
    芳野荘介28歳。彼女いない歴も28年。田圃と山しかない地元・夜越町で冴えない広告デザイナーをしている非リア充日本代表。一方、河合裕紀32歳。超一流クリエイター・南波仁志の右腕でありながら、独立や彼女との結婚には二の足を踏み続けていた。そんな真逆の二人が《夜越町農業王国》プロジェクトでチームを組むことに。迎えた人生の転換期、「できない男」たちが出した結論とは? 共感必至! 自分のダメさと向き合い成長する、頑張るアラサーのための青春小説!!
  • 破壊屋 プロレス仕舞伝
    4.0
    造花が依頼の合図。リングで規律を乱す問題児を制裁する「掃除屋」という裏稼業を担うベテランプロレスラー藤戸。自身との試合で重傷を負った友の治療費のためという美談が周知のものとなり、今ではタレント扱い。満身創痍の彼がいつ誰と引退試合をするのかの憶測が飛び交う中、彼を騙る者が一般人を襲撃する事件が。そして意外な人物から裏の依頼も……。迫真の描写と圧巻の仕掛け。業界でも話題となった三部作待望の最終章。衝撃のラストに、あなたは震えを抑えられるか! 圧巻のプロレス小説を体感せよ!!
  • デッド・リミット
    -
    宅配便で届いたのは、誘拐された息子の指だった。母親は身代金の受け渡しに奔走するが、卑猥な写真を盗撮された女性教師、両親を監禁されたサラリーマン、小悪党の刑事らを巻き込み、事件は錯綜を極めていく。誘拐犯に踊らされる者たちの暴走は止まらない――。子供の命は、そして、全てを裏で操るコンダクターとは何者なのか。疾走感あふれる展開で衝撃の結末まで駆け抜ける、社会派サスペンス。
  • DEVIL'S DOOR
    3.0
    「マニピュレイテッド」と呼ばれる人型AIが自由に往来する近未来。自由都市サン・ハドクには、人とマニピュレイテッドと、そして悪魔が生きている。近年、悪魔が仕業の事件が多発し、一方で、人間によるマニピュレイテッド狩りが横行していた。マニピュレイテッドの射撃手・ユマは、聖書型の悪魔アグリとともに、悪魔祓いを生業としている。ある日、二人のもとにシオリという女性シンガーの護衛依頼が舞い込み……。人の心を理解し始めるAIと、人の魂を堕落せさようとする悪魔…二人の冒険が始まる!
  • でも女
    3.5
    「でも…」「でも―」と、何でも欠点を見つけ否定する一流好みのオザワさん。そんな彼女がフツーの店での飲み会に行ったから大変!(「でも女」)小学校で、中学校で、高校で、大学で、大人になって……幾つになってもついてまわる女同士のしがらみを、明るく描く女の友情物語10編。
  • 田園発 港行き自転車 上
    3.9
    1~2巻759円 (税込)
    滑川駅で父が突然亡くなった。駅前には一台の自転車が取り残されていた。父は、宮崎へ出張に行ったはずなのに、なぜ――。十五年後、絵本作家になった娘・真帆は父の足跡を辿り富山へと向かった。一方、東京で働いていた千春は、都会での生活に疲れ故郷へと戻る。そこで年下の従弟・佑樹と入善の町に広がる田園風景に癒されていく。富山・京都・東京、三都市の家族の運命が静かに交差する物語。
  • 【電子特別版】少女か小説か
    4.0
    卒業式の日、誰もいなくなった教室で、制服を脱ぐときが訪れた少女と男性教師が「恋」について交わす会話のゆくえは……。(「セーラー服を脱がないで」)ほか、“トラウマテクノポップ”バンド・アーバンギャルドのリーダー松永天馬が描きだす「少女」たちの物語。病的にポップ。痛いほどガーリー。アーバンギャルドの代表曲をモチーフにした短編小説12編を収録した短編集。電子版には宮崎夏次系イラスト集を収録。
  • 闘鬼 斎藤一
    3.5
    なぜ彼はそこまで“闘い”に心酔し、鬼と化したのか。十代の終わり、些細な喧嘩から人を殺めた斎藤一は、斬る悦びに目覚め、誰もが恐れる新選組最強の剣士となった──。命懸けで仕掛けた芹沢鴨暗殺や池田屋襲撃など、血なまぐさい事件を重ねてきながら激動の幕末を駆け続けた男の生き様。息を呑む展開、手に汗握る剣戟場面、胸を震わせる結末。注目の正統派時代作家による、渾身の長編。
  • 東京―旭川殺人ルート(十津川警部シリーズ)
    3.0
    十津川警部の部下の西本刑事が、突然若い女に声をかけられた。怪しい男につけられているので、自宅まで送って欲しいというのだ。半月前、同じマンションの女が殺され、その頃痴漢騒ぎもあったという。十津川はセキュリティシステムの万全なマンションの構造とその女の行動に不審を抱く。やがて女も事件に巻き込まれ……。謎解明の為、警部北海道へ! 大好評十津川警部シリーズ3篇を収録。
  • 東京観光
    3.8
    アパートの水漏れがきっかけで、下の階に住む男と親しくなったあかり。男はある日、奇妙な相談を持ちかける。「俺と、部屋を交換しない?」(「天井の刺青」)。街のあちこちに灰色の公衆電話が存在していた、あの時代。初めて東京を訪れた私が泊まったホテルの部屋には、なぜか外国人女性が住んでいて……(「東京観光」)。不思議で、ユーモラスで、じんわり染みる。直木賞作家が贈る、味わい深い七つの物語。
  • 東京自叙伝
    3.8
    【第50回谷崎潤一郎賞受賞作】舞台は東京。地中に潜む「地霊」が、歴史の暗黒面を生きたネズミや人間に憑依して、自らの来歴を軽妙洒脱に語り出す。唯一無二の原理は「なるようにしかならぬ」。明治維新、第二次世界大戦、バブル崩壊から福島第一原発事故まで……首都・東京に暗躍した、「地霊」の無責任一代記! 史実の裏側で、滅亡へ向かう東京を予言する。果てしないスケールで描かれた第50回谷崎潤一郎賞受賞作。
  • 東京上空500メートルの罠(十津川警部シリーズ)
    -
    埼玉の飛行場から、有名人の招待客7名を乗せて東京遊覧に飛び立った世界最大の飛行船ツェッペリンNTワン号が、ハイジャックされた。ゴンドラ下に爆弾を仕掛けたという犯人は、一人3000万円の身代金を要求。十津川警部は、犯人のたび重なる要求に翻弄されながらも、人質を守ろうと飛行船を追跡するが……。大都会東京の上空500メートルの攻防! 意想外の難事件に挑む十津川警部の活躍。
  • 東京大学で世界文学を学ぶ
    3.7
    小説はいつの時代も、いたるところで書かれてきた。古くは神話から始まり聖書へ、日本では漢語の輸入から文学の成熟へ。『ドン・キホーテ』、『ボヴァリー夫人』、『白痴』など、世界の名作を細部まで読み解き、物語の歴史を考察することで、小説の誕生からその構造や手法、作品同士の繋がりまでを面白く丁寧に解説する。現役東大生が熱中した特別講義を完全収録した究極の“世界文学”読本。
  • 東京デザート物語
    3.3
    地方から上京し女子大生になった朱子は、料理研究家の叔母の家に寄宿する。朱子の毎日は刺激の連続で、ひょんなことから女性誌の読者モデルに選ばれ、彼女の生活は一変する。そして秘密の恋も始まる。叔母さんのデザートレシピとアドバイスで、朱子は素敵な恋愛レッスンを積んでゆく。恋愛長編小説。デザートのレシピも一部ついています(文庫版から一部割愛)。
  • 東京物語
    3.6
    1978年4月。18歳の久雄は、エリック・クラプトンもトム・ウェイツも素通りする退屈な町を飛び出し、上京する。キャンディーズ解散、ジョン・レノン殺害、幻の名古屋オリンピック、ベルリンの壁崩壊……。バブル景気に向かう時代の波にもまれ、戸惑いながらも少しずつ大人になっていく久雄。。80年代の東京を舞台に、誰もが通り過ぎてきた「あの頃」を鮮やかに描きだす、まぶしくて切ない青春グラフィティ。
  • 凍結捜査
    3.8
    北海道大沼で雪の中から、平田という男の射殺体が発見された。函館中央署の保井凜は、平田に暴行されたと被害届が出ていたことを思い出す。早速、被害者の珠希を訪ねると、姿を晦ましていた。進展なく迎えた初夏、東京で女の射殺体が発見される。凜は、警視庁の神谷と捜査を進めていくが……。連続殺人の狙いは金か怨恨か? 巧妙に計画された重大犯罪に熱き刑事魂の捜査チームが挑む。待望の「検証捜査」兄弟編。
  • 桃源
    4.0
    六百万円を持ち逃げした比嘉の行方を追うこととなった大阪府警泉尾署の刑事、新垣と上坂。二人が辿り着いたのは、沖縄近海に沈む中国船から美術品を引き上げるという大掛かりなトレジャーハントへの出資詐欺だった。遺骨収集、景徳鎮、クルーザーチャーター。様々な情報と思惑が錯綜するなか、真実はどこに向かうのか。過去作に登場した上坂が組んだ相方は沖縄出身の色男・新垣。新結成の警察コンビが事件の謎に迫る。新たな正統派警察捜査小説シリーズ、ここに誕生!
  • 倒錯の庭
    3.3
    電灯を消した仄暗い部屋の中で、私は今、竹彦と一緒にキノコを食べている。ヌメリイグチという名の、黄色い湿ったキノコだ。(「倒錯の庭」) 恋という病に憑かれた男と、溺れゆく女の、頽廃と官能に満ちた恐怖世界を描く表題作の他、人の心に巣くう危うく妖しい欲望に取材した3つの中編を収録。精密な筆致で描きだす人間心理の襞。サイコ・サスペンス集。
  • 闘神伝説 1
    4.3
    1~4巻495円 (税込)
    パキスタンとアフガニスタンの国境付近で、映像プロデューサーの笹目京介は、銃創を負った少年を助ける。日本語を話し、タケルと名乗る少年は、名前以外のすべての記憶を失っていた。好奇心に駆られた笹目はタケルを伴って帰国し、駒引神社の宮司である八神家に預ける。だが、笹目は自分たちを尾行してきた三人の男の存在に気づいてなかった――壮大なスケールで展開するアクション・ロマン。
  • 灯台からの響き
    3.9
    板橋の商店街で、父の代から続く中華そば屋を営む康平は、一緒に店を切り盛りしてきた妻を急病で失って、長い間休業していた。ある日、分厚い本の間から、妻宛ての古いはがきを見つける。30年前の日付が記されたはがきには、海辺の地図らしい線画と数行の文章が添えられていた。差出人は大学生の小坂真砂雄。記憶をたどるうちに、当時30歳だった妻が「見知らぬ人からはがきが届いた」と言っていたことを思い出す。なぜ妻はこれを大事にとっていたのか、そしてなぜ康平の蔵書に挟んでおいたのか。妻の知られざる過去を探して、康平は旅に出る――。市井の人々の姿を通じて、人生の尊さを伝える傑作長編。
  • 凍土の狩人
    2.5
    漆原院長夫妻は、浪人中の息子の性欲処理のため、女性を誘拐する。だが、誘拐した松葉尚子を誤って殺害。スキャンダルを恐れて隠蔽をはかるが、なぜか死体が消えてしまう。一方、尚子の兄・潤一の妻が、多摩川で殺害される。刑事たちは、小さな糸口から二つの事件の繋がりを見つけ真相に迫っていくが……。性、金銭、名誉で心を満たすエリート。大都会の人間たちの激しい欲望と滑稽さを描くミステリー。
  • 蝶舞う館(東南アジア5部作)
    3.0
    ベトナム解放三十周年記念番組の収録中、日本の女性タレントが行方不明になった。番組関係者のもとに届いたのは、不当な弾圧を受ける少数民族モンタニャールの名を冠した組織からの犯行声明だった。不可解な要求にとまどいつつも救出に向かう男たち。だが、武装蜂起の予兆と見た公安部が組織壊滅に動き出し、凄絶な民族紛争に巻き込まれていく――。東南アジア5部作の掉尾を飾る傑作長編。
  • 透明人間は204号室の夢を見る
    3.4
    コミュニケーション能力皆無の実緒は、高校3年生の時、ある出版社の小説の新人賞を受賞する。ペンネームは「佐原澪」。デビュー当時は話題になったが、6年経った今、佐原澪の名前を覚えている人間は少ない。実緒はデビュー以降、スランプに陥り一作も小説を書けなくなっていた。自分のデビュー作が未だに置かれている書店へ行っては、誰か手に取らないかと監視する日々。するとある日、実緒の本を手に取る大学生風の男の姿を確認する。思わずあとをつけ、彼の家を特定する。部屋の番号を確認し、ポストに手を突っこみ郵便物を抜き取ると、そこには大学からの封筒と彼の名前・春臣の文字が。それからというもの、今まで一行も書けなかったことが嘘のように、実緒は春臣のことを連想した小説を書くようになる。その小説を春臣のポストに投函することで実緒は満足感を得ていた。ひょんなことから実緒は春臣の恋人と仲良くなるが――。第三十七回すばる文学賞受賞第一作。
  • 凍夜
    3.5
    高校卒業以来、20年ぶりの帰郷だった。鶴巻秀人、39歳、バツイチ。同窓会の懐かしい顔ぶれは、彼の中で風化していた記憶を呼び起こす。たまり場での仲間との会話、憧れの美人教師、初めて抱いた女の子のぬくもり、そして、夢。「俺、小説家になりたいんだ」。氷点下の夜、骨まで凍みる冷気に震えながらも希望に燃えていた1977年、冬、18歳の思い出――。二度と帰らぬ日々を鮮烈に描く青春小説の傑作。
  • 遠い背中 おいしいコーヒーのいれ方 VI
    3.6
    大人気の「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズ第6弾。花村の叔母夫婦がついにロンドンから戻ってくる。勝利はかれんとふたりだけになれる場所を確保するために、周囲を説得して、ひとり暮らしを決意する。男としての強さ、優しさに、磨きをかけるためにも。なのに、かれんは近いようで遠くて。ふたりの甘く切ない恋の行方がますます気になる…。
  • 遠き落日 上
    4.2
    1~2巻605円 (税込)
    【吉川英治文学賞受賞作】1876年猪苗代湖の貧農の家に生まれた野口英世は、母シカから受けついだ天性の忍耐力で肉体的なハンデを乗り越え、医学への道をめざす。周囲の援助で21歳で上京。北里研究所を経て、横浜海港検疫所、ペスト防疫のための清国行き、同郷の山内ヨネ子への恋の破綻。やがてアメリカに渡っての研究生活。若き無名時代の苦闘の日々――。人間野口英世の生命力あふれる半生を赤裸に描く伝記小説。

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