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明治時代の札幌で蚕が桑を食べる音を子守唄に育った少女が見つめる父の姿。「未来なんて全て鉈で刻んでしまえればいいのに」(「蛹の家」)。昭和26年、最年少の頭目である吉正が担当している組員のひとり、渡が急死した。「人の旦那、殺してといてこれか」(「土に贖う」)。ミンク養殖、ハッカ栽培、羽毛採取、蹄鉄屋など、可能性だけに賭けて消えていった男たち。道内に興り衰退した産業を悼みながら、生きる意味を冷徹に問う全7編。圧巻の第39回新田次郎文学賞受賞作。
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Posted by ブクログ
最初は暗くて救われない話が多かったけど、だんだんと時代と共に良くなった。好きな話が多かった。特に馬蹄屋さんの話が好き。 第1話 ヒトエは札幌の蚕種所で父が働いているので手伝っている。養蚕が広がるにつれ、桑畑に夜中に忍び込んで葉を取っていくなどされることが増え、桑の葉が足りない。兄が女工と出奔し、そ...続きを読むの女工の借金まで背負わねばねらなくなった。父が新種の苗をたくさん買ってきた。期待を込めて植えたが、北海道の寒さに耐えかねてあっという間に枯れた。養蚕は歴史の隅に追いやられる。 第2話 道東のバラサンでミンクを養殖している。毛皮を取るために繁殖させているのだ。日本は日清日露と大陸で戦ったが、寒さ対策がどうしても必要になった。戦後軍隊は消滅したが、ミンク養殖は続けられていた。父に先立たれた孝文はその事業を継いだ。 第3話 北見でハッカの収穫が行われた。ハッカは干してから、蒸留小屋で何日もかけて油にする。リツ子は光男に夜食を持って行けと母に言われてその通りにすると、押し倒された。翌年リツ子は光男に嫁いだ。光男は戦争に行った。貿易が中止されて、ハッカが輸出されなくなり、食べ物が少なくなってハッカは作られなくなる。 第4話 アホウドリの羽毛を輸出している。弥平は東北で生まれ、東京で募集を目にして鳥島に送られた。つぎは違う島に来た。本土に拾ってもらうはずの船が来ない。食糧も危ない感じになってくる。弥平だけが生き延びて助けられたが、この雇用者に見切りをつけて北海道は渡島にやってくる。今回はアホウドリではなくオオナギミスドリであった。 第5話 江別では馬が大活躍していた。小学校の畑にも馬が耕しに来てくれる。そこで馬が倒れた。足が折れて殺処分になった。父はみんなが納得できるような死に方など滅多にないという。馬頭観音の前でお葬式をやり、埋める。穴を掘るのも馬を穴に入れるのも大変だった。 第6話 江別にある太田煉瓦工場。粘土を成形して干し、焼く。吉正は最年少の頭目だった。 第7話 煉瓦工場で働く父はある日倒れて死んだ。口酸っぱく勉強しろと言われて育った光義は大学に進み、いまは陶芸家になっている。
作者の河﨑秋子さんというと、北海道出身の直木賞作家で羊を飼っていたということを知っている。この本が、初めて読む作品でとなる。北海道を舞台にした短編集である。いづれの短編も、養蚕、ハッカ栽培、羽毛採取、ミンク養殖、レンガ製造など明治以降に栄え、やがて廃れていく産業に携わり、夢を追った人々を描いている...続きを読む。 歴史的な経緯から、いづれも 結末はハッピーエンドとは言えない。しかし、いづれも短編ながら、中身が濃いと思う。作中の登場人物が必死で生きているというか、生活をしているからだろう。
北海道でむかし栄え、廃れてしまった産業の短編集。 養蚕、ミンク、薄荷、農耕馬、羽毛、レンガ作り、陶芸の、体力がないと厳しい産業に関わったひとびとの歴史を垣間見られる物語だった。 桑園はよく通る場所、北見や江別、野幌は郷土資料館なども行ったことを思い出した。かつてこんなドラマが繰り広げられていたのかな...続きを読むと思いながら読んだ。
前から気になっていた作家さん。読んでみたら近年稀に見るほど衝撃的に好きなやつでした。現代と地続きになっている暴力的に厳しい大地の記憶。いつの世も人間なんてビックリするほど小さいです。
蚕、ミンク、ハッカ、アホウドリ、ウマ、レンガ―― 時代の要求に呼応して変化する産業の姿を、 変わらずある北海道の大地から眺める短編集。 “定住”によって蓄えることを覚えた人類が、 社会の構造化によってより蓄える側と奪われる側に分かれていく。 今では大っぴらに使用される資源は石油くらいになったけ...続きを読むれど、 産業の黎明期、人類がどれだけの動植物を喰い荒らしたか。 命に思いを馳せられる作品。
描写力がすごくて、本当に馬糞風の匂いがしてる中で読んでる気になってました。でも実際嗅いだことはないので、馬糞じゃなくて牛糞のイメージだと思うけど。 漫画を読むより映像がリアルだし、鳥も殴り殺したことなどないのに、触感まで想像できてしまいました。恐ろしい作家さんです。
河﨑秋子さんの作品は今回初めて読みましたが、 一文一文が重厚で肉厚、かなり好みの文体。 7篇からなる短編小説ですが、【生】に対する本能、執着、残酷さ、愚かさをまざまざと感じさせる内容です。 動物好きの自分には心を抉るような描写もありました。 読んだ中で『南北海鳥異聞』が1番印象的、というか衝撃でし...続きを読むた。語弊を招く言い方かもしれないですが、ラストの動物の使い方がまた上手い。 そして本のタイトルにもなっている『土に贖う』が1番人間臭い内容でした。 他の作品も気になるので是非読んでみようと思います。
娘からシェアしてもらった。これはすごい。道民として知っておくべき現実なんだろうけど悲しい話ばかり、読み進むのがつらくなる。でもこんなふうに表現出来る河﨑秋子さんのクールな視点とすぐ目の前に起こっていることのように錯覚させる表現力や書き写したくなるようななんども噛みしめたくなるような文章に、何というか...続きを読む人が生きていくことの意味を考えさせられる。とにかくとても良い!もう一度読む。北見のハッカもますます好きな香りとなった。
河﨑秋子『土に贖う』集英社文庫。 第39回新田次郎文学賞受賞作。北海道を舞台にした7編の短編を収録。 いずれも自然を相手に北の大地で必死に働きながらも、時代の波には逆らえずに敗者となった人びとの物語だ。いつも陽が当たる勝者に対して、敗者はいつも日陰の存在というのが世の常である。この短編集の中で、...続きを読むそんな敗者にも陽の光を当てようとする著者の思惑は見事に昇華されている。 やはり、河﨑秋子はただ者ではない。 『蛹の家』。明治時代の札幌で養蚕を営む一家が夢破れる過程を描いた物語。養蚕に精を出す父親の姿を見詰めながら育つ少女が少しずつ知る厳しい社会の現実。一つの産業が根付きながら、廃れ去る過程というのは極めて残酷なものだ。★★★★★ 『頸、冷える』。戦後、北海道で毛皮を目的にミンクを育てていた男が挫折した理由は一体何だったのか。冒頭で郷里に戻る男が描かれるが、その正体が判明する終盤に全てが明らかになり、愕然とせざるを得ない。★★★★★ 『翠に蔓延る』。昭和初期の北見で盛んだったハッカ栽培は後進国の台頭により次第に衰退していく。ハッカ栽培を手掛けていたリツ子の夫は出征し、帰らぬ人となる。それでもリツ子は息子とハッカ栽培を守ろうとするが、時代の波には逆らえない。★★★★ 『南北海鳥異聞』。殺生の果てに地獄を見た男が堕ちていく果ては……羽毛を目当てにアホウドリを捕る男。アホウドリを撲殺するうちにそれが愉悦に変わる。流れ、流れて、北海道に渡った男は白鳥を捕ろうとするが。これまでの短編とは毛色が異なる。★★★★★ 『うまねむる』。古く遠い記憶に思いを馳せる。昭和35年、江別市で蹄鉄屋を営む父を持つ雄一は、小学校の畑を馬によって耕される様子を見ていると、馬が足の骨を折り、倒れる様を目の当たりにする。時代は変わり、車社会の現代。★★★★ 『土に贖う』。昭和26年、最年少のレンガ工場の頭目である佐川が担当している組員の一人が急死した。需要が増え、人手に頼らざるを得なかった工場の仕事に無理があったのか。★★★★★ 『温む骨』。『土に贖う』の続編。時代は現代となり、レンガ工場で働く父親を持つ息子の話。息子は趣味の陶芸を仕事にするが、父親の焼くレンガから自分の未熟さを知る。★★★★★ 本体価格680円 ★★★★★
とても丁寧な筆致で、どれも非常に完成度の高い短編であった。1篇1篇が栄枯盛衰の物語となっているため、読み手である自分は何か大きな流れの中にいるような、そんな諦念を感じながら、かつ余韻に浸ることができた。あと、タイトルセンスが秀逸すぎる。
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