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明治時代の札幌で蚕が桑を食べる音を子守唄に育った少女が見つめる父の姿。「未来なんて全て鉈で刻んでしまえればいいのに」(「蛹の家」)。昭和26年、最年少の頭目である吉正が担当している組員のひとり、渡が急死した。「人の旦那、殺してといてこれか」(「土に贖う」)。ミンク養殖、ハッカ栽培、羽毛採取、蹄鉄屋など、可能性だけに賭けて消えていった男たち。道内に興り衰退した産業を悼みながら、生きる意味を冷徹に問う全7編。圧巻の第39回新田次郎文学賞受賞作。
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Posted by ブクログ
北海道でむかし栄え、廃れてしまった産業の短編集。 養蚕、ミンク、薄荷、農耕馬、羽毛、レンガ作り、陶芸の、体力がないと厳しい産業に関わったひとびとの歴史を垣間見られる物語だった。 桑園はよく通る場所、北見や江別、野幌は郷土資料館なども行ったことを思い出した。かつてこんなドラマが繰り広げられていたのかな...続きを読むと思いながら読んだ。
前から気になっていた作家さん。読んでみたら近年稀に見るほど衝撃的に好きなやつでした。現代と地続きになっている暴力的に厳しい大地の記憶。いつの世も人間なんてビックリするほど小さいです。
蚕、ミンク、ハッカ、アホウドリ、ウマ、レンガ―― 時代の要求に呼応して変化する産業の姿を、 変わらずある北海道の大地から眺める短編集。 “定住”によって蓄えることを覚えた人類が、 社会の構造化によってより蓄える側と奪われる側に分かれていく。 今では大っぴらに使用される資源は石油くらいになったけ...続きを読むれど、 産業の黎明期、人類がどれだけの動植物を喰い荒らしたか。 命に思いを馳せられる作品。
描写力がすごくて、本当に馬糞風の匂いがしてる中で読んでる気になってました。でも実際嗅いだことはないので、馬糞じゃなくて牛糞のイメージだと思うけど。 漫画を読むより映像がリアルだし、鳥も殴り殺したことなどないのに、触感まで想像できてしまいました。恐ろしい作家さんです。
河﨑秋子さんの作品は今回初めて読みましたが、 一文一文が重厚で肉厚、かなり好みの文体。 7篇からなる短編小説ですが、【生】に対する本能、執着、残酷さ、愚かさをまざまざと感じさせる内容です。 動物好きの自分には心を抉るような描写もありました。 読んだ中で『南北海鳥異聞』が1番印象的、というか衝撃でし...続きを読むた。語弊を招く言い方かもしれないですが、ラストの動物の使い方がまた上手い。 そして本のタイトルにもなっている『土に贖う』が1番人間臭い内容でした。 他の作品も気になるので是非読んでみようと思います。
娘からシェアしてもらった。これはすごい。道民として知っておくべき現実なんだろうけど悲しい話ばかり、読み進むのがつらくなる。でもこんなふうに表現出来る河﨑秋子さんのクールな視点とすぐ目の前に起こっていることのように錯覚させる表現力や書き写したくなるようななんども噛みしめたくなるような文章に、何というか...続きを読む人が生きていくことの意味を考えさせられる。とにかくとても良い!もう一度読む。北見のハッカもますます好きな香りとなった。
河﨑秋子『土に贖う』集英社文庫。 第39回新田次郎文学賞受賞作。北海道を舞台にした7編の短編を収録。 いずれも自然を相手に北の大地で必死に働きながらも、時代の波には逆らえずに敗者となった人びとの物語だ。いつも陽が当たる勝者に対して、敗者はいつも日陰の存在というのが世の常である。この短編集の中で、...続きを読むそんな敗者にも陽の光を当てようとする著者の思惑は見事に昇華されている。 やはり、河﨑秋子はただ者ではない。 『蛹の家』。明治時代の札幌で養蚕を営む一家が夢破れる過程を描いた物語。養蚕に精を出す父親の姿を見詰めながら育つ少女が少しずつ知る厳しい社会の現実。一つの産業が根付きながら、廃れ去る過程というのは極めて残酷なものだ。★★★★★ 『頸、冷える』。戦後、北海道で毛皮を目的にミンクを育てていた男が挫折した理由は一体何だったのか。冒頭で郷里に戻る男が描かれるが、その正体が判明する終盤に全てが明らかになり、愕然とせざるを得ない。★★★★★ 『翠に蔓延る』。昭和初期の北見で盛んだったハッカ栽培は後進国の台頭により次第に衰退していく。ハッカ栽培を手掛けていたリツ子の夫は出征し、帰らぬ人となる。それでもリツ子は息子とハッカ栽培を守ろうとするが、時代の波には逆らえない。★★★★ 『南北海鳥異聞』。殺生の果てに地獄を見た男が堕ちていく果ては……羽毛を目当てにアホウドリを捕る男。アホウドリを撲殺するうちにそれが愉悦に変わる。流れ、流れて、北海道に渡った男は白鳥を捕ろうとするが。これまでの短編とは毛色が異なる。★★★★★ 『うまねむる』。古く遠い記憶に思いを馳せる。昭和35年、江別市で蹄鉄屋を営む父を持つ雄一は、小学校の畑を馬によって耕される様子を見ていると、馬が足の骨を折り、倒れる様を目の当たりにする。時代は変わり、車社会の現代。★★★★ 『土に贖う』。昭和26年、最年少のレンガ工場の頭目である佐川が担当している組員の一人が急死した。需要が増え、人手に頼らざるを得なかった工場の仕事に無理があったのか。★★★★★ 『温む骨』。『土に贖う』の続編。時代は現代となり、レンガ工場で働く父親を持つ息子の話。息子は趣味の陶芸を仕事にするが、父親の焼くレンガから自分の未熟さを知る。★★★★★ 本体価格680円 ★★★★★
主に北海道で、厳しい環境を生き抜くために生き物たちの生命を奪い利用していく人々の功罪ある生き様と、時代の流れに抗えず消えていく生業の姿を描く短編集。蚕、ミンク、ハッカ、農耕馬と、人間たちによって北の大地に移入された生命は共生のような形で繁栄してやがて衰退していく。 未開の原野だからこそ、無尽蔵とも...続きを読む思える自然資源から換金性の高い生産物を栽培する開拓民たち。貧しさからやがて泡のような豊かさを得て、それが滅びへの萌芽となる。人間の業とも呼べる様は儚くも悲しい。他の生命を貪って生きる人間たちは、現代社会に生きる我々も例外ではなく、罪悪感を漂白する仕組みが整っているだけだ。 土から離れ、死からも遠くなり、手に入れた快適な都市生活にとって、あまり見たくない現実かもしれない。だからこそ、この本に描かれた世界観は貴重なのだろう。
明治あたりから現代に至るまでの北海道の産業の栄枯盛衰。それに携わった人々の喜びや悲哀が書かれてる短編集。 中でも、羽毛や毛皮を採るために動物を殺す職業の、動物は生きてるだけではなんの価値も無い、こうやって羽をむしって売ることで価値を付けてやってるんだという考え方。人間はどこまで傲慢なんだと思う一方...続きを読むで、現代だって羽毛布団を使い、革の靴を履き、蚕を殺した絹を纏っているじゃないか。なんの変わりもない。 産業の廃れによって、人知れず堕ちて行った人々。その怒りや感情や諦めた希望が、最後の「温む骨」の頭骨に宿る。 ここに集結させるという河崎秋子の筆力に感服。
北海道を舞台とした6編からなる短編集 屯田兵から過酷な台地に住みその時代に合った商売をしている主人公たち いつの時代もどの仕事も上手くいかない時がやってくる 心に残ったのは『頸、冷える』 最後の章だけが現代だったけれど、結局今の時代も明治時代も仕事の根本的な部分は変わらないけれど、大きく変わったなと...続きを読む感じる 川﨑さんの作品には馬がよく登場するけれど、作者自身北海道で牧場を経営する兄夫婦と生活する傍執筆活動を行っていたらしい 腑に落ちる
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土に贖う
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河崎秋子
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