愚か者の石

愚か者の石

1,782円 (税込)

8pt

生きることは、まだ許されている。

明治18年初夏、瀬戸内巽は国事犯として徒刑13年の判決を受け、北海道の樺戸集治監に収監された。同房の山本大二郎は、女の話や食い物の話など囚人の欲望を膨らませる、夢のような法螺ばかり吹く男だった。明治19年春、巽は硫黄採掘に従事するため相棒の大二郎とともに道東・標茶の釧路集治監へ移送されることになった。その道中で一行は四月の吹雪に遭遇する。生き延びたのは看守の中田、大二郎、巽の三人だけだった。無数の同胞を葬りながら続いた硫黄山での苦役は二年におよんだ。目を悪くしたこともあり、樺戸に戻ってきてから精彩を欠いていた大二郎は、明治22年1月末、収監されていた屏禁室の火事とともに、姿を消す。明治30年に仮放免となった巽は、大二郎の行方を、再会した看守の中田と探すことになる。山本大二郎は、かつて幼子二人を殺めていた。

「なあ兄さん。
石炭の山で泣いたら
黒い涙が出るのなら、
ここの硫黄の山で涙流したら、
黄色い涙が出るのかねえ」

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  • カテゴリ
    小説・文芸
  • ジャンル
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    小学館
  • ページ数
    352ページ
  • 電子版発売日
    2024年05月29日
  • コンテンツ形式
    EPUB
  • サイズ(目安)
    1MB

閲覧環境

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愚か者の石 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    引き込まれて夢中になって読んだ。明治時代の北海道の劣悪な環境の集治監に送られた巽と鎖に繋がれたほら吹きの大二郎。冷徹で何を考えているかわからない看守の中田。謎が多いがそれぞれ不思議な魅力があり過去が気になる。次々と周囲が亡くなっていく中でどう生き残っていくか肉体的精神的なサバイバルであり、ふとした拍

    0
    2025年12月21日

    Posted by ブクログ

    明治時代、北海道にある樺戸収治監(監獄)を舞台にしたお話。

    学生運動に軽い気持ちで参加しただけなのに、13年もの実刑判決を受け 収監された巽(たつみ)。
    そして同じ頃に同房に収監され大二郎とペアとなり、次第に友情めいた気持ちを持つ様になる。

    その大二郎は 中に水の入った小さな水晶を大切に隠し

    0
    2025年12月06日

    Posted by ブクログ

    プロローグ

    カラン、コロン♪

    誰かが、入店したようだ

    2杯目の珈琲を飲み終えるのと同時に最後の頁をゆっくりと閉じた
    読後感は、とても複雑だ
    2杯目の珈琲の後味のように、何とも言えない苦味だけが、心を浸していく
    “混沌”か‥
    そんな二文字がふと浮かび、居心地の悪い席で、暫し呆然としていた‥

    0
    2025年05月05日

    Posted by ブクログ

    明治時代に樺戸集治監にて囚人となり収監されていた巽と、そこで知り合った大二郎。
    大二郎が大切に隠し持つ水晶。
    そして、看守の中田。

    月形刑務所はR275をよく通っていた身としては、通り道にある場所としてくらいの認識。
    自分が北海道に住んでいるから、河崎秋子さんを興味深く読めている部分が大きいと思う

    0
    2025年02月09日

    Posted by ブクログ

    『愚か者の石』

    はじめまして♪ 河崎秋子さん。

    重厚な作品でした。 

    明治十八年、二十一歳の「瀬戸内巽」は実兄の密告という裏切りで、北海道にある樺戸集治監に送られてしまいます。
    同じ時期に入った「山本大二郎」、看守の「中田末吉」と監獄生活を送るんだけど…

    劣悪

    0
    2025年01月31日

    Posted by ブクログ

    「ともぐい」で直木賞を受賞した河﨑秋子さんの作品です。
    過酷な環境で変わらざるを得ない人々の姿、人が生き抜こうとする強さを生々しく描いています。
    悲壮で、本能を剥き出しにしていく中で、徐々に恨みや憎しみを捨て、ただ生き抜こうとする登場人物たちに格好よさすら感じました。

    0
    2025年01月19日

    Posted by ブクログ

    物語は明治時代の北海道、樺戸集治監。
    今でいう政治犯として収監された瀬戸内巽は、そこで口の軽い男、山本大次郎と出会う。彼は一つの石を大切に身につけていた。

    明治時代の監獄、といえば網走監獄が有名だが、それ以外にも5か所の監獄があった。樺戸集治監は月形町に造られた、道内最初の監獄であった。
    開拓に突

    0
    2025年01月10日

    Posted by ブクログ

    言葉もない。「ともぐい」のように女性作家がほんとに書いたのかとまた驚かされるのだろうなと思っていたが、3人の男たちの生きざまを見事に描いたと感動した。
    それにしても
    北海道は広い。

    0
    2024年12月04日

    Posted by ブクログ

    ここはJAPAN版アウシュビッツなのかい…?!

    主人公巽とキーパーソン大二郎が途中で移送された硫黄採掘場での過酷な労働。ついそう思ってしまった程に劣悪な労働環境。
    ホロコーストと一緒にしてはいけないのですが、当時の杜撰な捜査で罪人となってしまった冤罪の人間もいる訳で…。
    ひ弱な現代人の私は3日で倒

    0
    2024年10月28日

    Posted by ブクログ

    明治の北海道の監獄で出会った二人の男。
    過酷な環境で人はどのように尊厳を保つのか。
    相棒のようになった男の秘密。
    水を閉じ込めた透明な石。
    深い人間洞察が胸に刺さる。傑作。

    0
    2025年09月13日

愚か者の石 の詳細情報

  • カテゴリ
    小説・文芸
  • ジャンル
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    小学館
  • ページ数
    352ページ
  • 電子版発売日
    2024年05月29日
  • コンテンツ形式
    EPUB
  • サイズ(目安)
    1MB

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