あらすじ
生きることは、まだ許されている。
明治18年初夏、瀬戸内巽は国事犯として徒刑13年の判決を受け、北海道の樺戸集治監に収監された。同房の山本大二郎は、女の話や食い物の話など囚人の欲望を膨らませる、夢のような法螺ばかり吹く男だった。明治19年春、巽は硫黄採掘に従事するため相棒の大二郎とともに道東・標茶の釧路集治監へ移送されることになった。その道中で一行は四月の吹雪に遭遇する。生き延びたのは看守の中田、大二郎、巽の三人だけだった。無数の同胞を葬りながら続いた硫黄山での苦役は二年におよんだ。目を悪くしたこともあり、樺戸に戻ってきてから精彩を欠いていた大二郎は、明治22年1月末、収監されていた屏禁室の火事とともに、姿を消す。明治30年に仮放免となった巽は、大二郎の行方を、再会した看守の中田と探すことになる。山本大二郎は、かつて幼子二人を殺めていた。
「なあ兄さん。
石炭の山で泣いたら
黒い涙が出るのなら、
ここの硫黄の山で涙流したら、
黄色い涙が出るのかねえ」
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
明治時代、北海道にある樺戸収治監(監獄)を舞台にしたお話。
学生運動に軽い気持ちで参加しただけなのに、13年もの実刑判決を受け 収監された巽(たつみ)。
そして同じ頃に同房に収監され大二郎とペアとなり、次第に友情めいた気持ちを持つ様になる。
その大二郎は 中に水の入った小さな水晶を大切に隠し持っていた。
その石を 彼はいったいなんのために持っていたのか?
✎︎_________
今の時代の刑務所の事も知ってるわけではないけど
明治時代の監獄所生活は 人権なんてあったもんじゃない様な酷さで なんだかズーンとなった。
特に硫黄鉱山での描写は常に死と隣り合わせで過酷だったな〜
そんな中 看守である中田の存在が とても良かった。
いつも表情ひとつ変えない冷淡な感じの中田が 不意に見せたあたたかさと実直さが沁みた〜。
後半は大二郎どうして?で頭の中がいっぱい。
胸が詰まるような切なさだったけど、最後は清々しい気持ちで読み終えた。
あ〜とても良かった〜。
河崎さん 他の作品も読みたくなりました ︎︎♪′
Posted by ブクログ
プロローグ
カラン、コロン♪
誰かが、入店したようだ
2杯目の珈琲を飲み終えるのと同時に最後の頁をゆっくりと閉じた
読後感は、とても複雑だ
2杯目の珈琲の後味のように、何とも言えない苦味だけが、心を浸していく
“混沌”か‥
そんな二文字がふと浮かび、居心地の悪い席で、暫し呆然としていた‥
本章
ブク友の皆様も高評価の声が多かった本書
『愚か者の石』★激5
ん〜、何と表現したらよいのか
物凄くそれは複雑だ
看守の中田、囚人の巽と大二郎
主人公、巽にとって、看守である中田は兎も角として、少なくとも大二郎だけは、茶化す性格を差し引いても、お互いに友として成り立っていると確信していた
それが崩れ去った時、物語は一気に核心へと加速する
問題は、大二郎の心情や隠された想いが本人から語られることなく、あくまでも第三者の視点からの憶測のみで、語られているところだ
ここが、自身の思考を“混沌”へと誘ってしまっているのである
でも、、、、、
だが、しかし、、、、
エピローグ
カラン、コロン♪
行きつけの、喫茶店に入店し、いつもの指定席に向かおうとした時だった
そこには、既に先客がおり、顔見知りのスタッフが、苦笑いで、空いている席を指差した
この喫茶店は、お気に入りの喫茶店の1つだ、出入り口の入店音⁉︎が示す通り昭和の香り漂う喫茶だ
大通りから、小道を抜け、路地裏にひっそりと佇むそれは、道端に咲く、名も無き小花のようで、それがまた何とも愛おしい
ただ、読後感の悪さは、この慣れない席にも多少起因しているのかもしれない
出来れば、いつもの席で読み終えたかったからだ
カラン、コロン♪
混沌と息苦しさで、逃げるように店を出ると、外は思いの外、汗ばむような陽気だ
ただ、今はそれがありがたい
新鮮な外気を吸い込むと、先程までの陰気な気分が嘘のように晴れやかになった
やっぱり“アレ”はとてつもない名作だ!
そう感じた
路地裏を抜け、大通りに出ると、颯爽と手を上げて車に乗り込んだ!
完
あとがき
本書の表紙を捲ると、1枚の挿絵が飛び込んでくる
牢屋の鉄格子から差し込む光にあの“石”を翳しているそれだ
大二郎
その“石”に何を見ているのか?
そこに“意思”はあったのか?
そして何を想っているのか?
切なくも美しいあの挿絵が、この物語の全てなのかもしれない‥
Posted by ブクログ
明治時代に樺戸集治監にて囚人となり収監されていた巽と、そこで知り合った大二郎。
大二郎が大切に隠し持つ水晶。
そして、看守の中田。
月形刑務所はR275をよく通っていた身としては、通り道にある場所としてくらいの認識。
自分が北海道に住んでいるから、河崎秋子さんを興味深く読めている部分が大きいと思う。
この本を読んで、硫黄山での兵役についても調べてみた。
Posted by ブクログ
『愚か者の石』
はじめまして♪ 河崎秋子さん。
重厚な作品でした。
明治十八年、二十一歳の「瀬戸内巽」は実兄の密告という裏切りで、北海道にある樺戸集治監に送られてしまいます。
同じ時期に入った「山本大二郎」、看守の「中田末吉」と監獄生活を送るんだけど…
劣悪な環境だったり、過酷な労働だったり…でも、
仕方ないのかなぁ…とも正直思ってしまう。読んでいても…とにかく暗〜い気持ちになってしまいました。時代背景もあるんだろうけど…
終盤に近づくにつれて…
いろいろな事がわかっていきます (´༎ຶོρ༎ຶོ`)
だからって…何もできないんだけど…
切ないなぁ…切なすぎるなぁ。
作者の 河崎秋子さん 北海道出身
なんか…嬉しい♡
直木賞受賞後 最初の作品
『愚か者の石』
とても いい作品でした♪
Posted by ブクログ
「ともぐい」で直木賞を受賞した河﨑秋子さんの作品です。
過酷な環境で変わらざるを得ない人々の姿、人が生き抜こうとする強さを生々しく描いています。
悲壮で、本能を剥き出しにしていく中で、徐々に恨みや憎しみを捨て、ただ生き抜こうとする登場人物たちに格好よさすら感じました。
Posted by ブクログ
物語は明治時代の北海道、樺戸集治監。
今でいう政治犯として収監された瀬戸内巽は、そこで口の軽い男、山本大次郎と出会う。彼は一つの石を大切に身につけていた。
明治時代の監獄、といえば網走監獄が有名だが、それ以外にも5か所の監獄があった。樺戸集治監は月形町に造られた、道内最初の監獄であった。
開拓に突き進む明治政府の北海道。原野を切り開き、幹線道路を作り、開拓の基礎づくりに囚人が駆り出された。その有り様が想像を絶する描写で描かれ、思わず怯む。
過酷な環境の中で囚人は命を落としていくが、国事犯の巽、大二郎の2人はともに生き延びる道を見つけていく。看守の中田は冷徹で役人気質だが常軌を逸することはなく、彼らを冷静に見ている。登場人物たちは、ちょっと『ゴールデンカムイ』っぽい雰囲気もあって、面白い。そんな中田を動かしたのが、大次郎が樺戸集治監から姿を消した出来事だった。
調べ上げた当時の監獄の事細かな日常と、明治政府の方針、歴史、それらが物語のバックボーンにあるのでリアリティが迫ってくる。その迫力は直木賞受賞第1作の本作でも、少しの油断もない。
石に関するエピソードや仕掛けも(ちょっとわかっちゃったところもあるけど)なるほど!と思わせる。最後は謎解きなので、一気に説明になるところを、もう一つエピソードを絡めてくるところも上手いと思った。
北海道にはまだ知られざる歴史に埋もれた事実がたくさんあるはず。題材には事欠かないと思うので、これからも期待してしまう。
歴史の人々を描いたものでは、デビュー作の「東陬遺事」も短いながら出色の作品なのでお勧め。(『鯨の岬』収録)
Posted by ブクログ
ともぐいより面白かった。
あらすじで最後の最後までしっかり展開をネタバレするのをやめてもらってたら今年1番だったかも!そこまで書かないと読もうって思わないと思ってんのかな〜。
そこまでネタバレされても中身はしっかり面白いので途中からは忘れてたぐらい。
巽と大二郎コンビと看守の中田の3人からみる監獄生活。
時代も相まって囚人の扱いはおとぎ話みたいな酷さ、作業中も相方と縛られたまま、足には鉄球。
何をしてる時も2人一緒だから、だんだん運命の人みたいになって、片方が居なくなっても囚われたまま強い因果により探さずにはいられない。
そして看守の中田がまたいいです。
悪役ではないのがこの小説の面白いところ。
巽たちへの扱いから公平な人だとわかる。
俳優さんだとクリーピーの時の東出昌大をイメージして読んだ。
ラスト近く巽と2人で探す展開があるのが嬉しい。
表紙から面白そうだと思ってたけどやっぱり面白かった。
次の新作も楽しみ!
Posted by ブクログ
何に1番驚くかと言うと、男性の描写の違和感の無さ。男性作家だと錯覚する。『ともぐい』は野生の男だったが、今回は囚人2人と看守。看守の中田は某有名北海道漫画のOさんで脳内再生していた。
主人公の囚人、瀬戸内巽は赤狩りかなんかで捕まり、山本大二郎は隠されていたが人殺し。鉄仮面の中田看守は愛情不足の潔癖ワーカーホリック。
樺戸集治監から硫黄採掘の外役への移送の際に移送隊が遭難し、この3人だけが一緒に難を逃れ、馴れ合うわけではないのだが奇妙な絆が生まれる。労役で死にかけるもなんとか命拾いしたところへ大二郎が突然脱獄。いつもひょうけてた大二郎って一体なんなんだ?と探査が始まる。
人によっては長冗と感じるかも知れない。大二郎の罪状が細部まで暴かれなくても人となりの印象は変わらないと思うし、むしろ深まった気がする。ちょっと書きすぎてる感じがするけど、この3人の雰囲気が、ベタついてなくて、私には好もしかった。
罪とか罰とか善とか悪とか、あるにはあるけど、明確な形を持ってない。愚か者の意志探し。
表紙の絵もとても良く合ってる。
最近、昭和の小説家達に心惹かれてる私に、河崎秋子さんは別格の光を放っている。作家になる前にこれを読むと良いと、勧められたのが、木内昇さんの『ある男』だという文を読んで、なるほど納得。
エッセイも買ったのでこれから読むのが楽しみだ。
Posted by ブクログ
言葉もない。「ともぐい」のように女性作家がほんとに書いたのかとまた驚かされるのだろうなと思っていたが、3人の男たちの生きざまを見事に描いたと感動した。
それにしても
北海道は広い。
Posted by ブクログ
ここはJAPAN版アウシュビッツなのかい…?!
主人公巽とキーパーソン大二郎が途中で移送された硫黄採掘場での過酷な労働。ついそう思ってしまった程に劣悪な労働環境。
ホロコーストと一緒にしてはいけないのですが、当時の杜撰な捜査で罪人となってしまった冤罪の人間もいる訳で…。
ひ弱な現代人の私は3日で倒れるなと震えていた本作。
しかしその実はtomoyukiさんがレビューに書かれていた通り、人間讃歌でした。
時は明治18年。
巽は学生生活を謳歌しつつ、政治活動にも参加。ところが中央官察の制圧を計画した所属団体の策略により運悪く逮捕され、国事犯として13年の実刑が下されてしまいます。編笠を被り柿色の囚人服を着せられ船に乗り汽車に乗り辿り着いたのは北海道の樺戸集治監。周りは様々な犯罪者のごった煮。単なる学生だった巽は初心なままで彼らの中に放り込まれる事に。婚約者にも裏切られ落ち込んだのも束の間、ここを出たら復讐してやる、と怒りを生きるパワーに変えてしまう。凄すぎる。
私なら生きる屍と化してしまう。この彼とその後10年以上も相棒となる男が大二郎です。
口から産まれたような彼は飄々とホラを吹き、適当な話をしては過酷な労役で精も根も尽き果てた囚人達を笑わせていました。
ですが自身の事は一切話さず煙に巻いてどこか掴み所の無い男だと巽は評していましたが、やがて彼に救われている自分に気付く事になります。
割と序盤で大二郎が大切にしている石が出てきます。
光に翳すと中の水が揺らめいて綺麗だけれど何の価値もない石。驚きの方法で看守に見つからぬようにずっと隠し持っているので、よほど曰く付きの物なんだろうと予想していたら、予想以上に大切な物だった…。
大二郎…!!涙
あーもう天を仰ぐしかないわ。天を仰ぎすぎて首がもげるわ…
こんな事があって良いのか!!最後は救われたのかい?!そう信じてるよ?!大二郎…!!
でも推しは中田看守です(ゆーきさんに予想され見事に的中)
1人だけいつも制服の手入れを欠かさず、能面のように表情も変えず粛々と与えられた仕事を全うする。他の看守のように憂さ晴らしで囚人を虐める訳でもなく、かと言って囚人に気安くする訳でもなく、ただただ中立。
中立なので威張り散らしもしない。
巽と大二郎たちの移送中のトラブルで遭難しかけた時には、懐に忍ばせておいた饅頭を2人に分けてあげる優しさも。
この時の饅頭が巽にとってどれ程美味しい物だったのかが伝わって来て、思わずスーパーで食べれもしない黒糖饅頭を買いそうになりました。(すぐに影響される)
本書は9割が獄中での話です。なのに印象に残っているのは巽が外で労役をしていた際に眺めている田舎の景色です。馬に乗って「囚人さんありがとう」と屈託なく手を振る子供や、囚人たちにとっては命に関わる雪、広大な大地に沈んで行く太陽。
河崎さんは初めましてなのですが、細かい所まで丁寧に物語を紡いで下さるのでどっぷり浸れました。
極寒だがのんびりした景色が臨める大地から、2人は1日に2度は囚人が倒れる過酷な釧路集治監へ移されます。
大二郎ですら、硫黄のガスで身体を弱らせお得意の口八丁が鳴りを潜めてしまう。
しかし、ここでの経験が巽の心境に大きな変化をもたらします。
大二郎の犯した罪とは何なのか?
この石は大二郎にとってどういう物なのか?
何故、巽を裏切るような行為をしたのか?
まるで2人と共に獄中生活を送ったかのような重厚感の後に待っている終盤。
中田と巽と共に、我々読者も一緒にこの謎を解く旅に出る事に。
ここでも丁寧な風景描写に心惹かれますが、どんどん真相に近付くに連れて緊張感も増してきます。
集治監を信用出来ないと言う、以前に説法をしに来ていたお坊さんに会いに行った所なんかは辛い真実が次々に訪れて第1次天仰ぎの儀式に突入。(2度目は先程書いた大二郎の真実にです)
盛大に心が折れたままで迎えたラストシーンなのですが、なんとこのラストシーンで何故か私まで救われた気持ちに。
これは是非とも体感して頂きたいのですが、好きなラストシーンベスト10の中にランクインしました。
とにかく…良い…。人間賛歌だぁー!!
生きねば!と、某ジブリのような事を強く思った読後感でした。
ゆーきさん、めちゃくちゃ大好きなお話でした!ありがとうございます♪
さて本書を拝読してフランクリンの名著『夜と霧』を思い出した訳です。そこにも人は希望があれば生きていけるとフランクリンの実体験を元に書かれていました。
彼は同じく収容所に連行され生きているか分からない妻の姿を思い出して乗り越えました。
大二郎にとっての石がそれに当たり、巽にとっては大二郎が無意識のうちに希望となっていた訳ですね。
ちくしょー…泣けるわい!!
Posted by ブクログ
明治時代、士族の家系で苦労知らずに育った主人公巽は、国事犯(政治思想犯)として懲役13年を申し渡され、北海道の樺戸集治監(監獄)に収監される。
そこでともに鎖につながれた大二郎という男、そして冷徹な刑務官中田と過酷な環境と労働を過ごす。
前半から中盤にかけ、激烈過酷な収監生活の描写が続く、特に釧路の硫黄採掘現場の、囚人ばかりでなく刑務官すら健康を損なう人権などという言葉がクソの役にも立たない現場の壮絶さは記憶に刻み付けられる。
後半大二郎が脱獄し、恩赦で囚人生活を終えた巽と中田が大二郎の足跡を追う部分、いわば回収パートを読み進めていくうちに、生きることの虚しさ、それでも生きていくことの素晴らしさを感じた時、この本の良さが身に沁みてくる。
犯罪者の更生には、監視付きの厳格な生活、無駄のない規則正しい生活と、世間に役立つ労働、華美さのない質素な食事と、最低限の衛生環境、自分の罪を見つめなおし贖罪を考える時間と空間を与えることが大切なんだと思えた。
犯罪者でなくても、そのストイック生活習慣は参考になる部分も多いと思えた。服役中の巽が白米のおにぎりや饅頭を食うシーン、出所後はじめての食事やセックスシーンを読むと、過度の贅沢を知るのは実は不幸なんじゃないかと思えたり。
とはいえ、最早取返し(更生)のできないレベルの罪人、最近でいうと闇バイトで暴行や殺人を犯したクズどもなんかは、硫黄掘ったり、原子炉掃除したり、その死刑のかかる費用すら勿体ないクソ命を少しでも使い切ったたらエエと思った俺は、やっぱり俗物の偽善者やなぁ
Posted by ブクログ
なんとも言えない読後感だが、後半1/3 がとても良かったので星5つに。
初めの方は飽きてしまい、どうしてそんなに評価高いのか不思議ではあったが、淡々と読み進めると、樺戸集治監の看守中田と、大二郎と、瀬戸内巽たつみ。この3人の三者三様の生き様がよかった。
東京大学で学徒の運動員に関わり、国事犯として徒刑13年の巽。たまたま隣にいた山本大二郎と部屋も同じ、鎖で繋がれる仲になり、いい加減な軽口で嘘つきの大二郎に心を許していく。硫黄の採掘で過酷な釧路集治監へ移送される途中の吹雪では生死を分ける体験を共にして、小さな絆のようなものが生まれる。
釧路は過酷で日に何人も亡くなっていく状態…あまりの酷さに声を上げた典獄のおかげで途中で作業が中止になり元の樺戸へ戻ることに。最後大二郎が大切にしていた石からの発火で火災が起き脱走となり、巽は裏切られた気になるが、勤め上げ晴れて自由の身に。そこからが面白かった。自由になったものの長期の習慣からか質素に日雇いで暮らし、突如監獄への差し入れを思い出し行動すると中田にであう。
その後は共に行動し脱走した大二郎の行方を一緒に探す。
農家が大変なのは分かるが折角脱走しても一般のイジメで亡くなった大二郎はやるせない。それを告白した青年のおかげで出土も捕まった経過も分かったのだった。
辛い。でもどこまでフィクションなんだろう、と思ってしまうほど後半はリアルだった。
罪人の気持ちなんて知らんわ、と思い読み始めたが途中からは夢中になっていた。不思議な魅力のある話だった。
Posted by ブクログ
暗い、臭い、理不尽、他にも負の形容詞がたっぷりの作品、めちゃ重かったぶん、読み応えも十分で一気に読んだ。明治時代、主人公は政治犯として無実ながら実の兄の密告で逮捕された巽。収監された樺戸監獄で同室の大二郎と心を通わせる。そして看守の鑑のような中田。この3人が物語を動かしていく。ヒール役の中田が変わっていく所が見もの。
Posted by ブクログ
明治14年、国立の監獄「樺戸集治監」が建設された。
政治犯や重罪犯が収監され、開拓のための厳しい労役を強いられた。
囚人と言っても罪の重さもそれぞれ違う。
明治18年、学生だった巽は国事犯として収監。
労役では2人1組で鎖に繋がれる。
巽の相手は大二郎という男。
ふたりを殺めた罪で収監されているというが
掴みどころがなくどのような人物なのかはっきりしない。
看守の中田もストーリーの軸となる。
過酷というひと言では言い表せないほどの労役。
河﨑秋子さんの作品は「生きる」ことへの執着が描かれる。
本作も、汗臭く泥にまみれ、労役で硫黄に侵されながらも
懸命に生きる人たちが描かれている。
本作で樺戸集治監のことを知った。
吉村昭さんの『赤い人』も読んでみたい。
Posted by ブクログ
明治の北海道の監獄で出会った二人の男。
過酷な環境で人はどのように尊厳を保つのか。
相棒のようになった男の秘密。
水を閉じ込めた透明な石。
深い人間洞察が胸に刺さる。傑作。
Posted by ブクログ
明治18年…樺戸集治監
瀬戸内巽の牢獄での地獄が始まった
物語の大半は監獄生活の描写なのだが、外役と言う厳しい労働、僅かで粗末な食事…キツい(꒪⌓︎꒪)
そんな過酷な中で出会い共に生き抜いてそれなりに心を許し合ったと思っていた大二郎が脱獄!
何故?何も気づかなかった…
大二郎にとって自分は何だったのか?
そして後半で大二郎の行方を探すことになってからが俄然面白くなる‹‹\(´ω` )/››
看守の中田が二人の担当として登場するのだけど
すごく良い!
巽、大二郎、中田のキャラが良いから、キツくて暗い話もサラッと入り込む。
ラーゲリのニノを思い出してウルウルしたり
大二郎の軽さがゴールデンカムイの白石を思い出したりして笑
ラストで大二郎〜っと叫びましたよ!
頑張ったね大二郎。゚(゚´Д`゚)゚。
ゆーきさんオススメしてくれてありがとね!!
Posted by ブクログ
本の雑誌2024年エンターテイメントベスト10で2位にランクインした作品。
「ショーシャンクの空」を彷彿する様な監獄物ではあるものの、映画の様なキレがあるストーリーでは無く、あくまで気の遠くなる時間の経過を淡々に描いている。
囚人2人と看守1人の心の変化を「語らない」「描かない」手法で読み手に想像させるギリギリ紙一重の表現が厳粛なものとして物語を昇華させてます。
しかしながら北が舞台なので極寒や過酷な状況下でのイメージがつきまとい、外へ対して閉塞的な物語として私にとっては「エンターテイメント」にはなり得ませんでした。
Posted by ブクログ
明治時代の牢獄が舞台で、最後まで読めるか心配だったが、面白かった。「ともぐい」よりも共感しやすい
人権意識が乏しかった時代、筆舌に尽くしがたい理不尽な人生を送るはめになっても、人としての矜持を忘れずに真面目に生きた大二郎、すごいなぁ。でも彼の人生は一体何だったのだろうか。
Posted by ブクログ
半分読むの辛かった。北海道の監獄で、とてつもなくしんどい労役が課されといたことは、2つの博物館で聞いていたが、
苦しい囚人ライフ、いつまで続くのか、もしかして起承転結の転はないのでは…と辛かった。が、転機はきた。
釈放されても、また監獄に戻るような不運があるのではないか、と心配し続けた。
看守の中田、監獄仲間の大二郎、2人が信頼できるのかできないのか、とても魅力的で、最後は予想に反して…
Posted by ブクログ
たまたま「めざせ!ムショラン三ツ星」の次に読んだので刑務所界隈繋がりになってしまいました。
「愚か者の石」とは?大二郎はどうなったの⁇最後の方はドキドキしながら読みました。看守の中田は「虎に翼」の松山ケンイチを勝手にイメージしていました笑
Posted by ブクログ
この作品を読み始め、すぐに頭に浮かんだのが、吉村昭著「赤い人」
舞台は一緒なのだろう
吉村作品とはスタンスが違う様な感じがした
川﨑秋子さんが、何を描きたかったのはわからない
昨今冤罪に無罪判決が確定した
世の中、間違いはあると思う
それをどう修正していくか、我々の責任かと思う
Posted by ブクログ
明治18年、北海道月形町の「樺戸集治監」に収監された巽と大二郎。凄絶な服役生活の中にあって、大二郎の明るさだけが巽の救いだった。そんな大二郎が火事に乗じて脱獄する。残された巽は割り切れない思いと怒りを抱きながらも模範囚となって服役し、12年後恩赦により仮放免される。札幌でその日暮らしをする巽の元を訪れたのは、彼らの担当看守だった中田だった。
北の開拓地での囚人たちの地獄のような苦役。死と隣り合わせの房生活。非人道的な扱いがこれでもかと描かれる前半。そんな中にあって、大二郎の憎めなさに救われる。
巽と大二郎と看守の中田、この3人の間にある立場を超えた思いが物語に深みを増す。
大二郎が隠し持っていた石英の玉の秘密、犯した罪の真相、そして脱獄後の行く末。謎解きのように真実が明らかになっていく物語の終盤は、切なさと哀しさで苦しくなる。
貧農の出で、周りの仲間に馬鹿にされながらも、職務を淡々とこなし、常に正道を歩もうとする看守の中田が特に魅力的。
辛い読書ではあったが、読後は存外に清々しい。中田はこの後看守を辞めていたりして、なんていらない想像をしてしまいました。
Posted by ブクログ
元士族の巽は運悪く運動員で捕まり、過酷な北海道の監獄へ送られる。そこで大二郎と鎖で繋がれながら作業をする事になる。大二郎は不思議な石を夜な夜な眺めそれを看守の中田に見咎められるが、何故か中田は巽に抜けた歯と一緒に持っていろという。過酷な労働で死んで行く囚人達。それでも巽は生きていこうとする。
Posted by ブクログ
明治の北海道の監獄、想像しただけで
背中から寒さが這うようだ。
東京から来た坊々の青年と何処か
捉え所のない男。
普通なら出会う筈の無い二人が出会った
のは極寒の監獄だった。
不思議な石を後生大事にし過去を語らない
大二郎をただ明るいホラ吹きだと
若い巽は思っていたが、その石と大二郎の
過去には深い因縁と愛情があった。
大二郎と真逆の看守の田中は観察眼も
鋭くそして見えない正義と情もある。
この三人の関係が人としての正義とは
極限で生きるすべてとは何か
罪はどう赦されるべきなのか
大二郎の最後の生き様で、考えさせられる。
Posted by ブクログ
北海道の監獄ものというと、どうしても吉村昭の破獄と比べてしまう。
別ものだから比べちゃいかんとは思うが、もうちょい重厚感というか緻密さを欲してしまう。
Posted by ブクログ
明治時代中期の北海道石狩川沿いの刑務所での、出自も物事の基準も違う二人の囚人と看守の三人を中心にした話。殺人の罪で服役する同房の大二郎のことを、鎖で繋がれて一緒に外役をする思想犯の巽はなぜか気にして過ごします。同じく普段から冷徹な看守の中田もさりげなく大二郎を監視している様子。脱獄した大二郎の行方を休みをとった中田は、恩赦で放免となった巽を誘い探します。大二郎の最後と殺人の経緯はあまりにも愚かで、そして尊いものでした。
河﨑さんの作品から北海道の歴史や自然を教えてもらっています。樺戸集治監の建物は、今は博物館となっているようなので覗いてみたいものです。
Posted by ブクログ
網走監獄博物館と弟子屈の硫黄山に行ったことがあるので物語の解像度がかなり高く脳内再生できた。集治監の過酷さは特にリアル。
物語冒頭から大二郎のキャラクタ的にやむにやまれぬ事情で罪を犯したのだろうなぁと思っていたので、ラストはあまりの救済のなさに切なくなった。1人の子どもが救われたと思えば良いのだけど…
根底にはとりあえず生きろ!と強いメッセージのある骨太なお話でした。
一つ不満を挙げるなら本の帯で200ページ分くらいがっつりネタバレしてるのはどうなの?って思ったことくらい。火事で脱走するシーンめちゃくちゃ後半じゃん…
Posted by ブクログ
毎日帰宅が22時近くのいわゆる社畜である私が、程度は違えど囚人と同じような生活してんだな…と内容とは一切関係ない感想を抱いた序盤。
そこから想像よりも過酷で地獄そのもののような環境におかれても、生きる事を諦めなかった登場人物達はすごいなあと感嘆した
やっぱ生きようとする力、生命力って大事だな〜
私なんかすぐ辞めたくなるしな〜と…。
だからこそ最後の結末は非常にあっけなく、どうにも悲しい気持ちになってしまった。
ずーっと暗く重たい雰囲気の本だったけど不思議と読み応えがあったので作者さんの他の本も読んでみたいと思う。
Posted by ブクログ
本の雑誌・上半期ベストから。心打たれる優れた作品ってことに異論はなし。ただ、”絞め殺し~”のときにも思ったんだけど、ちょっと疲れるんだな。年のせいで重厚な作品が読めなくなってきているとしたら由々しき事態なんだけど、今のところ、長編や時の細かさ額になる訳でもないので、本作についてはちょっと当たらなそう。ここでもやっぱり、作者との相性なのかな…。あと他に、せめて直木賞受賞作くらいは、と思うんだけど…。