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Posted by ブクログ
老若の女性を主人公にした6作の短編小説集。収録最初の短編「ふらんだーすの犬」があまりに衝撃的で言葉を失う。
巷で繰り返される母親による子への虐待事件。報道を見るたびに思うのは、自分が生み育てた子をどんなきっかけで、なぜ虐待できるのかということ。それが本作品で少し理解できた。虐待までのプロセスが論理的で筋が通っている。加害者を許すことはできないけれど。
このリード作品のインパクトが強すぎて、残りの5作品も、何かとんでもなく不穏なことが起きることを期待して読んでしまう。が、描かれるのは日常の中のちょっとした非日常に戸惑いながら、再び日常を続ける女性たちだ。この展開こそが純文学作家の橋本治作品らしい。
Posted by ブクログ
短編6作品を収録しています。
「自作解説」には、本書に収められた作品のテーマは「女にとって、母とはいかなるものか。家とはいかなるものか」という問いであることが明かされていますが、いずれも女性たちの心のうちを冷徹に腑分けした小説になっています。とくに冒頭に置かれている「ふらんだーすの犬」は、児童虐待にいたった美加の心が鋭くえぐりだされていて、強い印象を受けました。
本書に登場する主人公たちは、もっとも若い「ふらんだーすの犬」の美加が23歳で、もっとも年上の「白菜」の孝子が57歳という設定になっています。「家」というテーマは近代日本文学の中心でしたが、著者はこのことを踏まえたうえで、本書では現代におけるそれぞれの世代の女性たちにとって「家」についての意識がどのような変遷をたどってきたのかということを、順番にえがいたのではないかという考えがふと心に浮かんできました。それがあたっているのかどうかはわかりませんが、主人公たちの意識のありかたをていねいに分析していく本書のスタイルは、著者のエッセイ作品のそれに近く、小説としてはやや生硬に感じられます。とりわけ「金魚」は、フランス文学の教授である父と、広告業界に身を置く息子、そしてこの二人の男性の妻の関係を、あらかじめそれぞれの人物が生きた時代のなかでの意識の形成過程を想定したうえで、著者が技巧的に配置しているような印象もあって、こうした話をしたいのだったら評論やエッセイでぞんぶんに展開してほしかったと、個人的には考えてしまいました。
Posted by ブクログ
著者自身が自作解説で触れているように、「女にとって家とはどういうものなのか、女にとって母親とはどういうものなのか」がこの本のテーマであり、全ての主人公は女性である。(ただし、「ふらんだーすの犬」はちょっぴり例外ぽい)
「『蝶のゆくえ』と題される「女を主人公にした短篇集」を書くに際して、橋本は迷っていた。自分は女ではないので、「女のあり方」をそのまま肯定することが出来ない。−そして、その立場を容認してしまうと、女を断罪してしまうことにもなりかねない。」と留保しながらも、描かれた世界はリアリティに溢れている。私は橋本さんがこういう小説を書いてくれたことが、なんだか嬉しい。
Posted by ブクログ
橋本治は、ああでもなくこうでもなくの、力の抜けて、かつ的確な時事評論で知ることになったのだが、これまで小説は読むことがあまりなかった。この2-3年、巡礼、リア家の人々、橋などの
オリジナルを書き下ろしているが、そのさきがけとなっているのが
この短編集である。
どの話も、短編の中に細部までの描写が張り巡らされており、この人のもつ、人に対する確かな洞察力に感服させられる。
児童虐待を扱った「ふらんだーすの犬」は、身勝手な親に捨てられ、虐げられるまでがリアルに描かれる。報道で見る児童虐待や、日常診療で犯人捜しに終始する野次馬的第三者目線ではなく、このような加害者・被害者目線での鋭い視線がこの作家の生命線である。
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