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Posted by ブクログ
これは、若い女性に向かって言った言葉ではなく、老いに向かっていく自分に対しての言葉。
体は確実に老いていくのに、そして体は何度もその信号を送っているのに、脳がそれを認めない。
人間というのは幼いころから成長曲線が右肩上がりで、いざ下り始めると、新しい出来事を記憶しにくくなってしまう。
だから、若かったころの、できたときの自分の感覚で考えるから、齟齬を生じるらしい。
子どもの運動会に参加して転ぶのは、若いころにスポーツをしていたお父さんが多いのもそのせいだと聞いたことがある。
頭は若い時の感覚で指令を出すけれど、体は全然追いつかないのだそうだ。
“「自分」とは、アクのようなものだ。
アクが溜まって大人になる。大人になるということは、そのように「自分」が蓄積していくことで、「自分」が溜まってしまうと、そう簡単に身動きが出来なくなる。体が重くなるし、思考もまた重くなる。”
“年寄りは意図的にならなければならない。一々脳の指示を仰がなければヘマを仕出かしがちになる。だから動きがノタノタと遅くなる。”
若いころは反射神経でいけたことが、年を取ると脳の判断を仰ぎながらじゃないとできない。
あれ?それって、なんかちょっとかっこよくない?
だって、脳が働いているってことだよ。
記憶力が衰えるっていうのは、付箋紙の接着力が劣化するのと同じことだと橋本治は言う。
劣化していることを意識して、きちんと貼ればいいのだと。
それを、今までどおりにテキトーにペタッと貼っつけるから、付箋紙はひら~っとはがれてどこかに落ちてしまうのだと。
「栄耀(えよう)に餅の皮を剥く」という言葉をこの本で知りました。
金持ちは表面が固くなった餅の皮を剥いて、中の柔らかいところだけを食べる。
だけど古くからの金持ちなら、餅の皮なんか剥かずに「新しく餅を搗け」と命令すればいい。
急に豊かになって働く必要がなくなり、暇を持て余した結果、「することもないから餅の皮でも剥いとくか」となったのでは?と橋本治は考察します。
そして、「古くなったお肌の角質を剥いて若返らせる」美容整形のピーリングは、まさに「栄耀に餅の皮を剥く」行為だと、毒を吐く。
格好いいなあ。
潤沢な知識をもって毒を吐く年寄り。うっとり。
橋本治の語る老いについて、思い当るところは多々あって。
だけど老いへの道は片道切符。
泣いても笑っても、誰もが老いていくのだから、できればまあ、笑いながら老いていければいいなあと思います。
Posted by ブクログ
●科学博士の書評指数:
楽しみ度:★☆☆☆☆
共感度 :★★☆☆☆
学び度 :★★★★☆
話題度 :★★★☆☆
お薦め度:★★★☆☆
●概要:
老いと病をテーマにした自伝的エッセイです.著者は自身の老眼や難病の経験を通じて,「老いは誰にとっても初体験であり、経験値が通用しない」と主張します.若さへの執着を手放し,老いを受け入れる過程や,死に対しても「無駄と割り切る」哲学的な考えも紹介されております.老いと向き合う覚悟と知恵を読者に伝えようとしている本であります.
●感想:
(1)最も印象に残った記述が,葛飾北斎が「富嶽36景」を描いたのが70を過ぎた時で,90歳まで現役の絵師だった,という事実.90歳まで創作活動を続けるという事に憧れを感じます.
(2)年をとることを「アクが溜まっていく」という表現をしている点になんとなく納得感を得る.植物の場合は,新芽の時はアクがなく,成長する毎にアクが溜まっていく,そして最後は枯れるという流れに例えている.しかし,筆者は「アク」を悪いものとは考えていない,「アク」こそが「自分」であると肯定的に見ている.では,この「アク」をどうよりよく社会に生かしていくのかという方法論を考えてみたいと思った.
(3)著者の体験から,年をとることでの悪い点として,若者への対応方法,見栄,自己の老いへの理解不足(いつまでも頭だけが若い)といった事は気をつけなければと思うのでありました.しかし,自己が老いに対してどれだけ冷静に対応できるのかについて自身がありません.
Posted by ブクログ
老いについて、著者の経験を交えながらいろいろ考えた本。どこか他人事というか、楽観的な部分も大いにあったように思う。
若い→まだ若い→もうそんなに若くない→若くない→老人、という五段階変化は納得。物忘れが多くなるのは、脳がいっぱいになってきて、覚える気もなくなってくるからというのもなんとなく納得。そして、皆んな、自分の老いに対してはアマチュアだということも。きっと、いろいろ思い悩みながら、徐々に受け入れ、老いに慣れていくしかないのだと。人生ってそんなもの。でも年を取るのは皆んな同じで、老いを経験した諸先輩方はたくさんいると思えば、老いるのはそんなに恐いこともありませんね。とりあえず、いまは健康でいることに感謝して、日々一生懸命生きたいと思います。
Posted by ブクログ
なんだかとりとめのない語りだなあと思って気乗りせずに読んでいたら、第六章「老いの貧苦」が驚きの内容。「余は如何にして貧となりしか」と題して億単位の借金を抱えることになった経緯が記されている。これだけでもすごいのだが、さらに、第七章「病気になる」では、免疫系の難病を発症し、それでもなお借金返済のために入退院を繰り返しながら働いていることが綴られていて、なんともまあ壮絶である。あるのだが、しかし、そこが橋本治であって、あっけらかんと、というか、飄々と、というか、形容に困るのだけれど独特の語り口なので、あらまあそうなの?という感じで読まされてしまう。
自分より十歳ほど年上の、いわゆる団塊の世代の方たちが、「高齢者」の仲間入りをしつつある。従来の「年寄り」という概念が崩れている今、どう年をとっていくか、参考にしたくて注目している方たちがいるのだが、著者もその一人だ。「老・病・貧・孤」という状況を抱えつつこの境地。とてもじゃないが自分には無理だけれど、どこか気持ちを楽にしてくれるのは確かだ。
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