小説 - 新潮文庫作品一覧

  • 羽越本線 北の追跡者
    3.0
    「いなほ五号」で話がしたい。殺人事件の鍵を握る男は、そう言った。だが、鶴岡駅ホームから車両に乗り込んだ直後、彼は絶命してしまう。そもそも、東京で発見された他殺体の胃からエチゼンクラゲの破片が発見されたところから、この事件は始まっていた──。捜査員の前に立ちはだかる謎の組織。彼らが、東北の地にかつて封印した犯罪とは。十津川警部が、庄内、山形で真実を追う!
  • 飢えて狼
    3.7
    ささやかだが平穏な暮らしが、その日、失われた。怪しい男たちが訪れた時刻から。三浦半島で小さなボート屋を経営していた渋谷は、海上で不審な船に襲われたうえ、店と従業員を炎の中に失う。かつて日本有数の登山家として知られた渋谷は、自らの能力のすべてを投じ、真実を掴むための孤独な闘いを開始する。牙を剥き出し襲いかかる「国家」に、個人はどう抗うことが出来るのか。
  • 魚河岸ものがたり
    3.8
    だれもが「かし」と呼ぶ隅田河口のまちに、ひとつの秘密を抱いた青年が住みついた。そこに住む人にとって、「どこの誰か」よりも「どんな誰か」が大切なまち。そんなまちの心優しい人々とともに彼は暮らし、〈秘密〉から解放される日の来るのを待っていた。心ならずも魚河岸の町に身をひそめた青年と、まちの人々との人間模様を情感こまやかに描き出した長編小説。直木賞受賞作。
  • うかれ女島(新潮文庫)
    4.0
    お前の母親は淫売や――大和が小学生の時、母親は飛田新地から売春島に渡った。以来絶縁し二十年。島で娼婦、女衒として生きた母は、溺死体となって発見された。遺されたのは、四人の女の名前が書かれたメモ。保育所経営者、主婦、一流企業の会社員、女優……皆、島で体を売った過去があった。そのうちの一人に誘われ、大和は島へ向かう。母の死と女たちの秘密とは。衝撃の売春島サスペンス。(解説・酒井順子)
  • うさぎとトランペット
    3.6
    宇佐子は、転校生のミキちゃんを仲間はずれにするクラスの雰囲気に傷ついて、学校へ行けなくなった。微熱が続く夜明け、宇佐子は公園から響いてくるトランペットの音色に心惹かれる。ミキちゃんに誘われて町のウィンド・オーケストラでトランペットを習うことになった宇佐子は、きらめく音、ブラスの楽しさ、演奏する喜びを知る。音楽に解き放たれて、伸びやかな心が育っていく……。
  • 渦

    3.7
    テレビの視聴率によって、局は一喜一憂し、番組制作者は才能を問われ、人事まで左右される。だが、存在さえもはっきりしない調査メーターの集計は信用に価するものなのか? 一通の投書に端を発し、その実体を掴むため、視聴率調査会社の執拗な監視を開始した二人の男と一人の女。やがて、明らかにされる意外な事実とは……。テレビ界を操る視聴率の怪に、独特の洞察力で挑む長編。

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  • 嘘 Love Lies(新潮文庫)
    4.3
    1巻1,045円 (税込)
    幼い頃に養父を亡くし、母親の愛人から日常的に暴力を受けていた刀根秀俊に、十四歳のとき初めて気の置けない存在ができた。同じクラスの美月、陽菜乃、亮介だ。四人で過ごすかけがえのない時間は、しかし、ある事件で一変する。それから二十年。秀俊は暴力の連鎖から抜け出せず、彼を思う美月、そして陽菜乃と亮介もまた、秘密と後悔にもがいていた。絶望の果てに辿り着く、究極の愛の物語!(解説・馳星周)
  • 歌行燈・高野聖
    4.1
    1巻473円 (税込)
    飛騨天生(あもう)峠、高野の旅僧は道に迷った薬売りを救おうとあとを追う。蛇や山蛭の棲む山路をやっと切りぬけて辿りついた峠の孤家(ひとつや)で、僧は匂うばかりの妖艶な美女にもてなされるが……彼女は淫心を抱いて近づく男を畜生に変えてしまう妖怪であった。幽谷に非現実境を展開する『高野聖』ほか、豊かな語彙、独特の旋律で綴る浪漫の名作『歌行燈』『女客』『国貞えがく』『売色鴨南蛮』を収める。

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  • 打出小槌町一番地
    -
    東京近郊の閑静な高級住宅地、〈正妻とベンツの町〉と呼ばれる打出小槌町には、社会的地位と財産を手中にした現代の〈上層階級〉が堂々たる邸宅を構えている。銀行頭取の椅子が約束された御曹子、〈海軍式経営〉で成長を続けるオートバイ・メーカーの社長。彼らの成功物語の裏側に秘められた夫婦、親子のすさまじい葛藤の劇を通じ、人間の生き甲斐と幸福の意味を静かに問いかける。昭和五十一年に「週刊新潮」に連載され、翌年のベストセラーとなった。

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  • うちのレシピ(新潮文庫)
    3.9
    チョコレートケーキ、すきやき、ミートソース。その味は、きっと生涯忘れない。小さなレストランを営む両親のもとに生まれた真衣。会社を辞めて店に入った啓太。ふたりの結婚は、頑固一徹の料理人と仕事命の敏腕ビジネスウーマンを結びつけた。当然そこには摩擦も起こって。私たちは、恋や仕事や子育てに日々悩みながらも、あたたかな食事に癒される。美味しさという魔法に満ちた6つの物語。(解説・瀧井朝世)
  • 宇宙のあいさつ
    3.8
    1巻660円 (税込)
    植民地獲得のために地球から派遣されてきた宇宙船はすてきな惑星を占領することができた。温和な気候、豊富な食料、従順な住民たち、200歳の平均寿命――疲れた地球人のための保養地として申し分なかった。しかし、喜びもつかの間、おそるべき事実が……無気味なイロニーのあふれる表題作など、奔放なアイデアと洒脱なエスプリでスマートに描くショート・ショートの傑作35編。
  • 美っつい庵主さん
    -
    五人の尼がひっそりと暮す尼寺に、突然舞いこんだ女子学生とそのボーイフレンドが巻きおこす珍騒動の中に、新旧世代の自由のありかたを対照させた表題作。丸ノ内の近代的なオフィスに勤務する国際電話オペレーターの日常に潜む鬱屈感を探った『線と空間』など六短編を収録する。厳しい現実に揉まれ男女や親子の確執に悩みながらもささやかな幸せを求めて生きる人々を描く初期作品集。
  • 美しいアナベル・リイ
    3.5
    かつてチャイルド・ポルノ疑惑を招いて消えた映画企画があった。それから30年、小説家の私は、その仲間と美しき国際派女優に再会。そして、ポオの詩篇に息づく永遠の少女アナベル・リイへの憧れを、再度の映画制作に託そうと決意するのだが。破天荒な目論見へ突き進む「おかしな老人」たちを描く、不敵なる大江版「ロリータ」。『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』改題。
  • 美しい心臓
    4.0
    DVに憑かれた冷酷な夫から逃げ出したわたしが、職場で偶然知り合った既婚者の彼。その導きで始まった密会のたわむれは、わたしを絶望の淵から救った。甘い官能に溺れるふたつの魂は、秘密の部屋を抜け、やがて緑滴る中米の地を目指す。生命が躍動する新世界で、わたしが望んだのは、しかし、欲して止まない彼の死だった。悪魔的に美しく、愛と見まごうほどに純粋な感情の行方。
  • うつむく女
    -
    肉体的に男性失格者である春画家の妻小夜子、良人に背かれて愛情のさめてゆく平凡な勤人の妻珠子――肉体的心理的に良人に不満な二女性の、男を求めて燃えあがる感情の爆発! 結婚生活への不信と疑惑を前提として、奇怪な夫婦関係、悽惨な愛欲のエゴ、無軌道な性の悲劇を、すさまじい迫力で大胆に描破した大作。
  • 撃てない警官
    3.6
    総監へのレクチャー中、部下の拳銃自殺を知った。柴崎令司は三十代ながら警部であり、警視庁総務部で係長を務めつつ、さらなる出世を望んでいた。だが不祥事の責任を負い、綾瀬署に左遷される。捜査経験のない彼の眼前に現れる様々な事件。泥にまみれながらも柴崎は本庁への復帰を虎視眈々と狙っていた。日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録、あなたの胸を揺さぶる警察小説集。
  • 姥うかれ
    3.0
    花の盛りは五、六十/六十七十は恋愛ざかり/七十八十は嫁入りざかり/くよくよしゃんすな/お身の毒……。女には年齢(とし)の数だけ花が咲く。花の数だけ夢が咲く――78本の花束を抱いて香り高く華やいで生きる、愛しのシルバーレディ歌子サン、清く正しく美しくをモットーに、口八丁手八丁、歌って踊って大活躍! 『姥ざかり』『姥ときめき』に続くお馴染みのシリーズ、待望の第3部。
  • 姥勝手
    3.0
    私も、齢八十になって悟ったのだ。生かしたろ、と神サンがいいはる限り、生きてやろう。やりたいことをし、会いたい人にも会う。老いては子に従わない。若い人には合わせない。今日はお習字、英会話、明日は社交ダンスにスイミング。老いてこそ勝手に生きよう、今こそヒト様に気がねなく――。息子たちの心配をよそに、いよいよ元気いっぱいに生きる歌子サンの人気シリーズ最終巻。
  • 姥ざかり
    4.3
    娘ざかり、女ざかりを過ぎてもオンナには、輝く季節が待っている――何故シルバーシートは片隅にしかないのか、年寄りらしく生きよ、気がねをせよとは何ごとぞ、わび、さび、枯淡の境地などマッピラゴメン、若いもんに煙たがられようとも言いたい放題、やりたい放題、姥よ、今こそ遠慮なく生きよう! 胸をはり、誰はばかることなく己が道を行く76歳歌子サンの姥ざかり。
  • 姥ときめき
    4.0
    ときめく心を持ち続ければ、年とることなど怖くない! 若き日に苦労した分思いきり楽しまなけりゃ、いったい何の人生か。年寄りは年寄りらしくの声にもめげず、思う存分老後をエンジョイする77歳歌子サン。一人マンションで優雅に暮す歌子サンの周りには、今日も様々な出来事が持ち上る……。いつまでもときめきを忘れずに生きる歌子サンの大活躍を描いた連作短編シリーズ第2弾!
  • 海暗
    -
    若者は次々と島を捨て、社会の動きからも隔絶された伊豆七島の御蔵島に、ある日「米軍射爆場に内定した」というニュースが伝わる。戦争中でさえ爆弾が落ちたことはなかったのに、なぜ? あまりのことに呆然とする島民たち――別名を海暗とよばれる黒潮に、断崖絶壁を洗われる平和でのどかな御蔵島を舞台に、射爆場設置に反対し、離島問題に取組む島民の苦悩と哀歓を描く問題作。
  • 海と毒薬(新潮文庫)
    4.2
    戦争末期の恐るべき出来事――九州の大学付属病院における米軍捕虜の生体解剖事件を小説化し、著者の念頭から絶えて離れることのない問い「日本人とはいかなる人間か」を追究する。解剖に参加した者は単なる異常者だったのか? いかなる精神的倫理的な真空がこのような残虐行為に駆りたてたのか? 神なき日本人の“罪の意識”の不在の無気味さを描く新潮社文学賞受賞の問題作。
  • 海と山のピアノ(新潮文庫)
    3.6
    「四国って土地だから行政からほっといてもらえるのかもしれない」二年に一度、村の全員で住む場所を移す「村うつり」。私は“足”を澄ませ、移った故郷を探す(「ふるさと」)。三崎の若い漁師達は遭難し、マグロになった。海に飛び込もうとする彼らを叱咤したのは船頭の大マグロ。励まされ、必死に漁を続けると――(「野島沖」)。生も死もほんとうも嘘も。物語の海が思考を飲みこむ、至高の九篇。(解説・彩瀬まる)
  • 海猫(上)
    3.9
    1~2巻572~616円 (税込)
    女は、冬の峠を越えて嫁いできた。華やかな函館から、昆布漁を営む南茅部へ。白雪のような美しさゆえ、周囲から孤立して生きてきた、薫。夫の邦一に身も心も包まれ、彼女は漁村に馴染んでゆく。だが、移ろう時の中で、荒ぶる夫とは対照的な義弟広次の、まっすぐな気持に惹かれてゆくのだった――。風雪に逆らうかのように、人びとは恋の炎にその身を焦がす。島清恋愛文学賞受賞作。

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  • 海の仙人
    4.2
    宝くじに当った河野は会社を辞めて、碧い海が美しい敦賀に引越した。何もしないひっそりした生活。そこへ居候を志願する、役立たずの神様・ファンタジーが訪れて、奇妙な同居が始まる。孤独の殻にこもる河野には、二人の女性が想いを寄せていた。かりんはセックスレスの関係を受け容れ、元同僚の片桐は片想いを続けている。芥川賞作家が絶妙な語り口で描く、哀しく美しい孤独の三重奏。

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  • 海辺のカフカ(上下)合本版(新潮文庫)
    4.8
    1巻1,815円 (税込)
    「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」――15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。 ※当電子版は新潮文庫版『海辺のカフカ』上下巻をまとめた合本版です。
  • 裏切りの特急サンダーバード
    3.0
    北陸本線を走る特急サンダーバードが、乗っ取られた。四百人以上の乗員乗客を人質にした犯人たちは、十一億円を要求する。それに応じなければ列車を爆破する、と。事件の絵図を引くのは、謎の富豪・大明寺一郎。彼はゲームのように犯行を楽しみ、警察を翻弄する。途中駅を通過し、ノンストップで走り続ける特急。十津川警部は、大明寺と犯人グループを追いつめることができるのか?!
  • 占(新潮文庫)
    4.2
    1巻781円 (税込)
    翻訳家の桐子(とうこ)は大工の伊助と深い仲。ただ彼は、生き別れた義妹が一番大事という。ならば私は何だと桐子は憤り、偶然行き着いた卜い家(うらないや)で彼の本心を探る(「時追町の卜い家」)。お宅は平穏ねと羨まれる政子。果たしてそうか、近所の家庭を勝手に格付けし、比べ始める。それが噂になってしまい……(「深山町の双六堂」)。“占い”に照らされた己の可能性を信じ、逞(たくま)しく生きる女性たちを描く短編集。(対談・鏡リュウジ)
  • ウララ町のうららかな日
    -
    北海道ウララ町に住む徳太郎は、母の遺骨を探しに行ったまま戻ってこない。キツネに憑かれたヨシは、やっとの思いでキツネを落としてもらったものの、これから1人でどうやって生きていったらいいかわからない。77歳の義太郎はコルク栓のように耳垢がとれて、耳が聞こえるようになった…。霧深いウララ町に展開するウララ人間たちの愛しく哀しいドラマ。
  • 噂の女
    3.6
    「侮(あなど)ったら、それが恐ろしい女で」。高校までは、ごく地味。短大時代に潜在能力を開花させる。手練手管と肉体を使い、事務員を振り出しに玉の輿婚をなしとげ、高級クラブのママにまでのし上がった、糸井美幸。彼女の道行きにはいつも黒い噂がつきまとい――。その街では毎夜、男女の愛と欲望が渦巻いていた。ダークネスと悲哀、笑いが弾ける、ノンストップ・エンタテインメント!
  • 運命の逆流―ソナンと空人3―(新潮文庫)
    4.1
    1巻737円 (税込)
    交易の使節団に加わり、相手国トコシュヌコを訪ねることになった空人(そらんと)。そこはかつて十九年間、自堕落に暮らした祖国だった。自分が、シュヌア家のひとり息子・ソナンであることは決して気取られてはならない。速やかに任務を終え、一刻も早く〈我が地〉輪笏(わしゃく)へと戻るのみ――。細心の注意を払いながら、王都の大臣邸で開かれた晩餐会に臨む空人だったが。異世界ファンタジー、波瀾の第3巻。
  • 永遠とは違う一日(新潮文庫)
    4.0
    「誰かに認められたいなら、もっと全力でやって」東山路代はマネジメントを担当するモデルの咲子に不満を抱いていた。今日こそは言う。そう決意した矢先、収録現場に遅刻し、咲子を怒らせてしまう。憧れのバンド7BOYSの傍で働くために上京して早四年、夢見ていた場所は遠すぎる――。スタイリスト、女子アナ、アイドル。華美な世界に生きながら決して特別ではない女性たちを描く作品集。(解説・山本文緒)
  • 永遠の都1―夏の海辺―
    -
    1~7巻748~902円 (税込)
    元海軍軍医の時田利平は、大正2年、三田綱町に開業。外科医の名声と妻菊江の実務で、時田病院は驚異的に拡張している。昭和10年、利平の長女で3人の男児の母親の初江は一高生の甥と密通し、次女夏江は陸軍中尉・脇敬助との結婚を諦めた…。
  • 栄光の岩壁(上)
    4.0
    1~2巻792円 (税込)
    戦前に幼少時を過した竹井岳彦は18歳のとき八ヶ岳で遭難し、凍傷によって両足先の大半を失う。戦後の荒廃した雰囲気の中で、青春を賭けるものは山しかないと考えた岳彦は、鴨居からロープを吊して、まず歩行訓練をはじめる。やがて“ない足”を甦らせて、未登攀の岩壁をつぎつぎと征服し、強烈な意志の力と不屈の闘魂によって日本一のクライマーにまで成長していく……。

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  • 英雄の条件(新潮文庫)
    3.7
    失踪したスポーツ医師が残した一冊のノート。そこには、日米野球界の英雄・津久見浩生(つくみひろお)の薬物使用が示されていた。高潔な元スター選手のスキャンダルに日米メディアの執拗な追及が始まる。疑惑を否定せず、最愛の妻にも沈黙を貫く彼の真意とは――。真相を追うフリースポーツ記者、裏工作を企む巨大代理人(エージェント)企業。人間の強さと弱さの極限を描いた熱くスリリングなエンターテインメント長編。(解説・池上冬樹)
  • 駅前旅館
    3.5
    昭和30年代初頭、東京は上野駅前の団体旅館。子供のころから女中部屋で寝起きし、長じて番頭に納まった主人公が語る宿屋稼業の舞台裏。業界の符牒に始まり、お国による客の性質の違い、呼込みの手練手管……。美人おかみの飲み屋に集まる番頭仲間の奇妙な生態や、修学旅行の学生らが巻き起こす珍騒動を交えつつ、時代の波に飲み込まれていく老舗旅館の番頭たちの哀歓を描いた傑作ユーモア小説。
  • 越後つついし親不知・はなれ瞽女おりん
    4.0
    1巻715円 (税込)
    越後の雪深い村。夫が京都・伏見の酒蔵へ杜氏に出ている冬の間に、妻は卑劣な村人に襲われ、子を身ごもった……。「越後つついし親不知」 幼い頃に瞽女屋敷にもらわれ、盲目の旅芸人となったおりん。だが、掟を破って男と契り、一座を追放され放浪の身に……。「はなれ瞽女おりん」 水上文学を代表する表題作2編に、男女の哀切、寒村の生死を描いた初期傑作3編を加えた珠玉短編集。
  • Xへの手紙・私小説論
    4.3
    文芸批評家として最初の、揺るぎない立場を確立し、後の文学活動のあらゆる萌芽を含む『様々なる意匠』。人生観、ことに女性観、芸術論、社会批評などが、鋭く、渾然一体となって述べられた『Xへの手紙』。わが国に特有な私小説を見事に解剖した『私小説論』。その他、『一ツの脳髄』『女とポンキン』等の初期創作から始まって、中期以降戦後に至るまでの主要な論文、感想を収録する。

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  • エディプスの恋人(新潮文庫)
    4.0
    ある日、少年の頭上でボールが割れた。音もなく、粉ごなになって。――それが異常の始まりだった。強い“意志”の力に守られた少年の周囲に次々と不思議が起こる。その謎を解明しようとした美しきテレパス七瀬は、いつしか少年と愛しあっていた。初めての恋に我を忘れた七瀬は、やがて自分も、“意志”の力に導かれていることに気づく。全宇宙を支配する母なる“意志”とは何か? 『家族八景』『七瀬ふたたび』につづく美貌のテレパス・火田七瀬シリーズ三部作の完結編。

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  • エデン
    4.1
    あれから三年──。白石誓は唯一の日本人選手として世界最高峰の舞台、ツール・ド・フランスに挑む。しかし、スポンサー獲得をめぐる駆け引きで監督と対立。競合チームの若きエースにまつわる黒い噂には動揺を隠せない。そして、友情が新たな惨劇を招く……。目指すゴールは「楽園」なのか? 前作『サクリファイス』を上回る興奮と感動、熱い想いが疾走する3000kmの人間ドラマ!
  • エトロフ発緊急電
    4.0
    1巻1,023円 (税込)
    1941年12月8日、日本海軍機動部隊は真珠湾を奇襲。この攻撃の情報をルーズベルトは事前に入手していたか!? 海軍機動部隊が極秘裡に集結する択捉島に潜入したアメリカ合衆国の日系人スパイ、ケニー・サイトウ。義勇兵として戦ったスペイン戦争で革命に幻滅し、殺し屋となっていた彼が、激烈な諜報戦が繰り広げられる北海の小島に見たものは何だったのか。山本賞受賞の冒険巨篇。
  • 江戸川乱歩傑作選
    3.9
    日本における本格探偵小説を確立したばかりではなく、恐怖小説とでも呼ぶべき芸術小説をも創り出した乱歩の初期を代表する傑作9編を収める。特異な暗号コードによる巧妙なトリックを用いた処女作『二銭銅貨』、苦痛と快楽と惨劇を描いて著者の怪奇趣味の極限を代表する『芋虫』、他に『二癈人』『D坂の殺人事件』『心理試験』『赤い部屋』『屋根裏の散歩者』『人間椅子』『鏡地獄』。

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  • 江戸の空、水面の風―みとや・お瑛仕入帖―(新潮文庫)
    3.5
    大好きだった兄の長太郎を亡くしたお瑛も、今は成次郎と夫婦になり幸せに暮らしていた。そんな時、圭太という男が現れる。料理茶屋『柚木』の新しい奉公人だ。何くれとなくお瑛を助けてくれた女将のお加津は、優しくて手際のよい圭太を褒めちぎる。でも、何かおかしい……お瑛の胸はざわついた。お加津さんは何を考えているの? お瑛は猪牙舟を大川に漕ぎだしていく。好評「みとや」シリーズ!(解説・細谷正充)
  • エヌ氏の遊園地
    3.7
    1巻539円 (税込)
    エヌ博士の研究室を襲った強盗。金のもうかる薬を盗んだのはよかったけれど……。女性アレルギーの名探偵のもとに届いた大きな箱。その箱の中に入っていたものは……。別荘で休暇を過すエヌ氏のもとに、突然かかってきた電話。なんとその電話は江戸時代の霊魂からだった……。卓抜なアイデアと奇想天外なユーモアで、不思議な世界にあなたを招待するショートショート31編。
  • エミリーの求めるもの
    3.8
    平和で旧時代的なニュー・ムーンの世界から、ボーイフレンドのテディも、親友のイルゼも、都会へと旅立っていった。孤独に耐えながら、ひたすら創作に没頭するエミリー。野心に燃える彼女にも、時として眠れぬ「夜中の三時」が訪れる。いわゆる適齢期を迎えた女性の、微妙な乙女心が求めるものは何か――エミリー・シリーズ完結編。

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  • エミリーはのぼる
    3.7
    威厳正しいエリザベス伯母、優しいローラ伯母、批評家カーペンター先生、イルゼ、テディ……。美しい自然と人びとの愛情に恵まれたニュー・ムーンで、エミリーは「ひらめき」に従って創作に励み、雑誌社に送り続ける。「アルプスの道の頂上」にのぼっていこうと努力する彼女の姿には、著者の恐ろしいまでの文学への敬愛とたゆみない勉強がうかがわれる。エミリー・シリーズ第二作。

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  • エリザベスの友達(新潮文庫)
    4.0
    戦後、命からがら娘と日本に引き揚げた初音さんは今年九七歳になる。もう今では長女の顔もわからない。病が魂を次々と剥いでゆくとき、現れたのは天津租界でのまばゆい記憶だ。ドレスに宝石、ミンクを纏い、ある日はイギリス租界の競馬場へ、またある日はフランス租界のパーマネントに出かけ、女性たちは自由だった――時空を行き来しながら人生の終焉を迎える人々を、あたたかく照らす物語。(解説・岸本佐知子)
  • エロ事師たち
    3.8
    お上の目をかいくぐり、世の男どもにあらゆる享楽の手管を提供する、これすなわち「エロ事師」の生業なり――享楽と猥雑の真っ只中で、したたかに棲息する主人公・スブやん。他人を勃たせるのはお手のものだが、彼を取り巻く男たちの性は、どこかいびつで滑稽で苛烈で、そして切ない……正常なる男女の美しきまぐわいやオーガズムなんぞどこ吹く風、ニッポン文学に永遠に屹立する傑作。
  • 縁を結うひと
    3.8
    1巻737円 (税込)
    30年で200組。福は在日の縁談を仕切る日本一の“お見合いおばさん”だ。斡旋料で稼ぐのに、なぜか生活は質素。日々必死に縁を繋ぐ理由とは(「金江のおばさん」)。在日韓国人の彼に恋をした。結婚への障害は妊娠で突破したはずが、大量のごま油と厳しい義母が待っていて……(「日本人」)。婚活から介護まで、切なく可笑しく温かく家族を描く連作集。『ハンサラン 愛する人びと』改題。
  • オイアウエ漂流記
    3.7
    1巻924円 (税込)
    南太平洋の上空で小型旅客機が遭難、流されたのは……無人島!? 生存者は出張中のサラリーマンと取引先の御曹司、成田離婚直前の新婚夫婦、ボケかけたお祖父ちゃんと孫の少年、そして身元不明な外国人。てんでバラバラな10人に共通しているのはただひとつ、「生きたい」という気持ちだけ。絶体絶命の中にこそ湧き上がる、人間のガッツとユーモアが漲った、サバイバル小説の大傑作!
  • お家さん(上)
    3.9
    1~2巻693~737円 (税込)
    大正から昭和の初め、日本一の年商でその名を世界に知らしめた鈴木商店。神戸の小さな洋糖輸入商から始まり、樟脳や繊維などの日用品、そして国の命である米や鉄鋼にいたるまで、何もかもを扱う巨大商社へ急成長した鈴木──そのトップには、「お家さん」と呼ばれる一人の女が君臨した。日本近代の黎明期に、企業戦士として生きた男たちと、彼らを支えた伝説の女の感動大河小説。
  • 鴎外の婢
    -
    在野の文学史考証家・浜村幸平は、鴎外の「小倉日記」に簡潔だが印象深く描かれ、日記の中でほのかな透き絵となっている婢(女中)モトに興味を惹かれ、小倉に調査に向う。モトの戸籍に見た意外な事実、その娘の不審な死。いよいよ探索心を刺激された彼は孫ハツの行方を追うが、彼女の消息は突然断たれていた……。文学史上の事実と虚構を巧みに結んだ異色推理中編。併録『書道教授』。

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  • 王都の落伍者―ソナンと空人1―(新潮文庫)
    3.6
    1巻649円 (税込)
    名将軍のひとり息子として生を享けながら、退廃した生活に甘んじる青年・ソナン。自らの悪事が発端で死に瀕するが、朱く長い髪をもつ神・空鬼(そらんき)のたった一度の気まぐれで、名も知らぬ異国へと落とされる。しかし、その地・弓貴(ゆんたか)では古来からの統治者が反逆者に追いつめられ、全員で討ち死にしようとしていた――。終わったはずの人生から物語が動き出す。執筆4年、1800枚の傑作ファンタジー。
  • 王妃マリー・アントワネット(上)
    3.9
    1~2巻781円 (税込)
    美しいブロンドの髪とあどけない瞳を持つ14歳の少女が、オーストリアからフランス皇太子妃として迎えられた。少女はやがて、ヴェルサイユに咲いた華麗な花と呼ばれ、フランス最後の王妃として断頭台に消える運命にある……。フランス革命を背景に、悲劇の王妃の数奇な生涯を、貧しい少女マルグリット、サド侯爵、フェルセン、ミラボーなど多彩な人物を配して綴る、壮大な歴史ロマン。
  • 王妃マリー・アントワネット(上下)合本版(新潮文庫)
    -
    1巻1,562円 (税込)
    美しいブロンドの髪とあどけない瞳を持つ14歳の少女が、オーストリアからフランス皇太子妃として迎えられた。少女はやがて、ヴェルサイユに咲いた華麗な花と呼ばれ、フランス最後の王妃として断頭台に消える運命にある……。フランス革命を背景に、悲劇の王妃の数奇な生涯を、貧しい少女マルグリット、サド侯爵、フェルセン、ミラボーなど多彩な人物を配して綴る、壮大な歴史ロマン。 ※当電子版は新潮文庫版『王妃マリー・アントワネット』上下巻をまとめた合本版です。
  • 逢魔(新潮文庫)
    4.3
    1巻605円 (税込)
    抱かれたい。触れられたい。早くあなたに私を満たして欲しい――。身分の違いで仲を裂かれ、命を落としたはずの女との、蕩(とろ)けるほどに甘く激しい交わり。殿様の側室と女中が密かにたがいを慰め合う、快楽と恍惚の果て。淫らな欲望と嫉妬に惑い、魔性の者と化した高貴な女の告白。牡丹燈籠、雨月物語、四谷怪談、源氏物語……古(いにしえ)の物語に濃厚なエロティシズムを注ぎ描き出した、八つの愛欲の地獄。
  • 大炊介始末
    4.2
    自分の出生の秘密を知った大炊介が、狂態を装って藩の衆望を故意にうらぎらねばならなかった悲劇を描く表題作。自分たちはおたふくであるときめこんでしまっている底抜けに明るく情味豊かな姉妹の物語「おたふく」。奇抜な視点と卓抜な文体で「剣聖」宮本武蔵を描き、著者の後半期の出発点となった意義深い作品「よじょう」など。さまざまな傾向の短編から代表作10編を選りすぐった。

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  • 大垣行345M列車の殺意
    値引きあり
    3.0
    東京駅23時25分発の大垣行345M列車に乗っていた女性デザイナーの絞殺死体が小田原駅近くの線路で発見された。彼女の手帳から、十津川警部と大学で同窓の芸能プロ社長外崎が容疑者として浮かぶ。彼のアリバイは一緒に飲んだ友人が証言したが、数日後外崎は姿を消した。そして、横浜駅のホームで第二の殺人が……。表題作をはじめ、十津川警部が活躍する傑作トラベル・ミステリー4編。
  • 丘の家のジェーン(新潮文庫)
    4.3
    うららか街の古い大邸宅で、12歳のジェーンは重苦しい生活を送っていた。彼女には父がなかった。頑なな祖母と美しい母は、なぜかそのことに触れたがらない。しかし突然、父からの手紙が届いた。プリンス・エドワード島で一緒に夏を過そうという。こわごわ出かけた彼女は、美しい自然と素朴な人情、そして何より父の深い愛情に包まれ、丘の上の小さな家で目ざましく成長してゆく。
  • 荻窪風土記
    3.7
    関東大震災前には、品川の岸壁を離れる汽船の汽笛がはっきり聞えたと言われ、近年までクヌギ林や麦畑が残っていた、武蔵野は荻窪の地に移り住んで五十有余年。満州事変、二・二六事件、太平洋戦争……時世の大きなうねりの中に、荻窪の風土と市井の変遷を捉え、親交を結んだ土地っ子や隣人、文学青年窶(やつ)れした知友たちの人生を軽妙な筆で描き出す。名匠が半生の思いをこめた自伝的長編。
  • 贈る言葉
    4.0
    1巻440円 (税込)
    さまざまな夢と未来への志向をいだきながら学窓を飛び立ったはずなのに、ただ倦怠と惰性をしか見いだせなくなっている十年後の今日の、限りない挫折感を吐露した「十年の後」、“愛の観念”に固執するあまり、ついに結ばれることなく訣別してしまった、過去の恋人に語りかける抒情的作品「贈る言葉」。戦後世代の青春の苦悩を真摯に浮彫りにした、芥川賞受賞作家の中編二編。
  • おごそかな渇き
    4.3
    長年対面しつづけた宗教的課題を取り上げ、“現代の聖書”として世に問うべく構想を練りながらも絶筆となった現代小説「おごそかな渇き」。ほかに“下町もの”の傑作「かあちゃん」「将監さまの細みち」「鶴は帰りぬ」、“武家もの”の名品「紅梅月毛」「野分」「蕭々十三年」、“こっけいもの”の「雨あがる」、“メルヘン調の「あだこ」「もののけ」と、周五郎文学のさまざまな魅力を一冊に収めた。

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  • 押入れのちよ
    3.5
    1巻693円 (税込)
    失業中サラリーマンの恵太が引っ越した先は、家賃3万3千円の超お得な格安アパート。しかし一日目の夜玄関脇の押入れから「出て」きたのは、自称明治39年生れの14歳、推定身長130cm後半の、かわいらしい女の子だった(表題作「押入れのちよ」)。ままならない世の中で、必死に生きざるをえない人間(と幽霊)の可笑しみや哀しみを見事に描いた、全9夜からなる傑作短編集。
  • オスプレイ殺人事件(新潮文庫)
    値引きあり
    4.0
    1巻485円 (税込)
    飛行中の米海兵隊所属のオスプレイ機内で、事件は発生した。ベルトを締め全員着座中にもかかわらず、同乗していた自衛隊員が胸を刺され殺されたのだ。米海軍内の犯罪を調査するヌーナンは捜査を開始。鉄壁の空中密室で、犯行はいかに行われたのか。なぜ自衛隊員が標的になったのか。消えた凶器の謎、直前に流れた奇妙な歌声とは。そして第二の事件が……。瞠目のミステリ。『黒翼鳥』改題。(解説・村上貴史)
  • 怖ろしい場所
    5.0
    厄年の小説家・羽山圭一郎はこわい夢をよくみる。のっぺらぼうの女、眉の女、声の女、額の女、唇の女たちの様々な反応を想起する。現実世界では友人の女性秘書秋岡カオルと逢瀬をかさねるが、やがて別れてパリへ旅立つ。現実と回想と夢が微妙なリアリティーを醸し出す雰囲気の中に、中年男性の心理の襞を浮彫りにする。散らかしながら纏めていく技巧冴えわたる長編小説。
  • 男たちのかいた絵(新潮文庫)
    3.5
    おくびょうで意気地なしでも、拳銃片手に怖いものなし――チンピラやくざの、カッコいい兄貴分へのあこがれが、屈折した心情に映し出される時、オナニズム、同性愛、エディプス・コンプレックス、多重人格などの持主を主人公にした、筒井康隆の強烈な世界が展開される。『夜も昼も』『星屑』『二人でお茶を』など、ジャズのスタンダード・ナンバーにのせておくる奇妙な味の連作小説集。
  • 男たちの好日
    -
    外国製品に蹂躙されている昭和初年の日本に、電気化学工業を興すことで「国の柱」になろうと邁進する牧。しかし、苦心惨憺して開発した硫安やアルミ製造技術は、統制経済をとりはじめた国家によって公開を迫られ、牧は国策会社の社長に祭りあげられてしまう。国家を幸せにすることはあっても、国家によって幸せにされることのなかった男の生涯を通し、「男の好日」とは何かを問う。

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  • 男は旗
    4.0
    大海原を制覇し、その優雅な姿は“七つの海の白い女王”と嘔われたシリウス号も今は海に浮かぶホテルとして第二の人生を送っていた。ところが折からの経営難で悪辣なギャングに買収されてしまう羽目に。しかし! シリウス号に集う心優しきアウトローどもが唯々諾々と従う筈はない。買収の当日、朝まだきの海を密かに船は出航した。謎の古地図に記された黄金の在り処を求めて……。
  • 乙女の家(新潮文庫)
    4.7
    愛する人との内縁関係を貫いた曾祖母、族のヘッドの子どもを16歳で産んだ祖母、理想の家庭像に邁進しすぎる母という、強烈な女系家族に育つ女子高生の若菜は、自分のキャラのなさに悩んでいた。文学少女キャラの友人・高橋さんと家出をしてみたり、彼女の初恋や家族の恋への助太刀を決め、名脇役を目指してみたり。はたして若菜は自分のキャラと、皆の幸せを掴めるか。かしまし迷走青春劇。
  • 乙女の密告
    4.0
    ある外国語大学で流れた教授と女学生にまつわる黒い噂。乙女達が騒然とするなか、みか子はスピーチコンテストの課題『アンネの日記』のドイツ語のテキストの暗記に懸命になる。そこには、少女時代に読んだときは気づかなかったアンネの心の叫びが記されていた。やがて噂の真相も明らかとなり……。悲劇の少女アンネ・フランクと現代女性の奇跡の邂逅を描く、感動の芥川賞受賞作。
  • お鳥見女房(新潮文庫)
    3.7
    将軍の鷹狩りの下準備をするお鳥見役には、幕府の密偵という裏の役割があった。江戸郊外、雑司ケ谷の組屋敷に暮らす矢島家は、当主が任務のため旅立ち、留守宅を女房・珠世が切り盛りしている。そんな屋敷に、ある日、子だくさんの浪人者が押しかけて来て……さまざまな難題を持ち前の明るさと機転で解決していく珠世。その笑顔と大家族の情愛に心安らぐ、人気シリーズ第一作。(解説・向田和子)
  • お鳥見女房シリーズ(全8巻)合本版(新潮文庫)
    4.0
    1巻4,972円 (税込)
    将軍の鷹狩りの下準備をするお鳥見役には、幕府の密偵という裏の役割があった。江戸郊外、雑司ケ谷の組屋敷に暮らす矢島家は、当主が任務のため旅立ち、留守宅を女房・珠世が切り盛りしている。そんな屋敷に、ある日、子だくさんの浪人者が押しかけて来て……さまざまな難題を持ち前の明るさと機転で解決していく珠世。その笑顔と大家族の情愛に心安らぐ、人気シリーズ。 ※当電子版は新潮文庫版『お鳥見女房』シリーズ全8巻をまとめた合本版です。
  • 鬼絹の姫―ソナンと空人2―(新潮文庫)
    3.6
    1巻781円 (税込)
    弓貴滅亡の危機を救ったソナンは、新たな名「空人」と領地・輪笏を与えられ、妻ナナや家臣らと旅立つ。赤く輝く花に彩られた美しい大地、だがそこは財政難にあえぐ貧しい場所でもあった。輪笏を立て直すため、空人は生き急ぐかのように奔走し、領民の心を動かしてゆく。数々の策が実を結び始めたころ、都に呼ばれた空人。そこで、予想外の事実を告げられ――。流転のファンタジー大作、第2巻。
  • 鬼憑き十兵衛(新潮文庫)
    3.9
    寛永十二年、熊本藩主・細川忠利の剣術指南役を務める松山主水大吉が暗殺された。主水の隠し子・十兵衛は父を襲った十五人の刺客を続けざまに斬り裂く。二階堂平法秘伝の技〈心の一方〉によって。僧形の鬼・大悲を連れ、父の暗殺を企てた者への復讐を誓う十兵衛。だが、金色の髪に深い海のような瞳をもつ少女と出会い……。時代伝奇小説の新たな傑作! 日本ファンタジーノベル大賞2018受賞作。(解説・前島賢)
  • おのぞみの結末
    3.8
    1巻440円 (税込)
    家事万能のロボットを手に入れたら……。世界平和をめざす秘密組織が実権を握ったら……。安逸と平穏をのぞみながら、退屈な日々にあきたらず、精神と肉体の新たな冒険を求める人間。超現代のなかでも、あいかわらず滑稽で愛すべき、人間らしい心の動きをスマートに描く11編。新鮮な発想、奇想天外なストーリーの展開、そして意外な結末は、あたかもアイディアを凝集した玉手箱。
  • 姨捨
    3.0
    1巻473円 (税込)
    著者にむけられた絶大な賞賛の、何にも勝る証左であり、短編作家・井上靖の力倆を余すところなく発揮してみせた十二編を収録する作品集。一族のなかに世襲の血として流れている“出世遁世の志”とでもいうしかないような現実離脱の心を探った表題作のほかに、「胡桃林」「グウドル氏の手套」「湖の中の川」「大洗の月」「孤猿」「蘆」「川の話」「湖上の兎」「俘囚」「花粉」「四つの面」。
  • オペレーションZ(新潮文庫)
    3.9
    1巻1,045円 (税込)
    大手生保会社が資金繰りのため国債を投げ売りする事態が発生、国債価格が暴落した。国債頼みの政治は、誰かが終わりにせねばならない……。国家予算を半減すべく、江島隆盛総理のもと若手財務官僚が集い、極秘作戦(オペレーション)が始動する。しかし他省庁や与党守旧派が抵抗し、世論も猛反発、メディアの攻撃が渦巻くなか、総理はついに国会を解散する大博打を打つ――。息もつかせぬ緊迫のメガ政治ドラマ!
  • 溺れ谷
    -
    広告料という名目で企業から金をせびる「トリ屋」と呼ばれる記者大屋圭造は、亜細亜製糖社長古川に往年のスター竜田香具子を斡旋し、精糖業界にくいこもうと考える。しかし、古川のもとに贈った筈の香具子は現職農相是枝の手に渡っていた。製糖会社社長と現職農相の奇怪な取り引き……。自由化をめぐって不気味に揺れ動く砂糖業界を背景に、政財界の黒い関係に鋭いメスをいれた力作。

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  • おみそれ社会
    3.5
    1巻539円 (税込)
    二号は一見本妻風、模範警官がギャング……。ひと皮むくと、なにがでてくるかわからない複雑な現代社会を鋭く描く表題作など全11編。
  • おめでとう(新潮文庫)
    3.7
    小田原の小さな飲み屋で、あいしてる、と言うあたしを尻目に生蛸をむつむつと噛むタマヨさん。「このたびは、あんまり愛してて、困っちゃったわよ」とこちらが困るような率直さで言うショウコさん。百五十年生きることにした、そのくらい生きてればさ、あなたといつも一緒にいられる機会もくるだろうし、と突然言うトキタさん……ぽっかり明るく深々しみる、よるべない恋の十二景。
  • 重い歳月
    -
    夫婦で同人雑誌に参加して文学に打ちこむ速水桂策と章子。書くために勤めを辞め、食べるためにまた働く夫。少女小説を書いて家計を支えながら住居問題、出産、育児に時間をとられ苛立つ妻。互いに相手への後ろめたさを感じながらも、自分は書きたいと思う業の深さ。生活の重みにあえぎつつ、文学に執念を燃やし、遂には一人の女流作家が誕生するまでを哀歓をこめて綴る自伝的長編。
  • 思い出コロッケ
    3.6
    美人でもなく、賢そうでも若くもない女に惹かれ、家を出た夫。あの人となら温かい家庭を築けると思ったのに、なぜ──。知人の電話から、夫婦関係の冷たさを思い知る(「コロッケ」)。不倫に疲れ、帰省した先で出会った事件から、まっとうな家族の温かさと女の独り身の侘びしさに気づかされる(「黒豆」)。昭和を舞台に大人の恋、男女の情愛、そして家族の真実を描いた静謐な七篇。
  • 思い出トランプ
    4.0
    浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など――日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。

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  • 母影(新潮文庫)
    3.8
    小学校で独りぼっちの「私」の居場所は、母が勤めるマッサージ店だった。「ここ、あるんでしょ?」「ありますよ」電気を消し、隣のベッドで客の探し物を手伝う母。カーテン越しに揺れる影は、いつも苦し気だ。母は、ご飯を作る手で、帰り道につなぐ手で、私の体を洗う手で、何か変なことをしている――。少女の純然たる目で母の秘密と世界の歪(いびつ)を鋭く見つめる、鮮烈な中編。芥川賞候補作品。(解説・又吉直樹)
  • 表裏源内蛙合戦
    -
    迸る才知と野心を、時代の制約の中で徒らに空転させる江戸の一大奇人平賀源内の夢と挫折の生涯を、色と欲の渦巻く風俗の中に浮び上らせる表題作。ストリッパーの半生記に仕立てた吃音治療劇に仮託して、現代日本の社会と精神を徹頭徹尾、洒落のめした『日本人のへそ』。洒落に地口に語呂合せ、言葉遊びの爆撃で、笑いのうちに時代と人間の核心を衝く井上戯曲の原点を示す二大喜劇集。
  • おやすみ、こわい夢を見ないように(新潮文庫)
    3.4
    「あたしこれから殺人計画をたてる」。我慢をかさね、やっと受かった高校で待っていたのは、元カレ剛太の「抹殺」宣言と執拗な嫌がらせ。すべての友に去られた沙織は、不登校の弟をコーチに復讐の肉体改造を決意するが……。理不尽に壊された心のゆくえを鮮烈に描く表題作をはじめ、ひそかに芽ばえ、打ち消すほどに深く根を張る薄暗い感情のなかに、私たちの「いま」を刻む7つの風景。
  • 泳ぐ者(新潮文庫)
    3.5
    離縁して三年半もたつのに、なぜ元妻は元夫を刺したのか。事件の「なぜ」を追う徒目付、片岡直人は真相を確信するが、最悪の事態が起きる。そんな折、奇妙な噂が耳に入る。毎日決まった時刻に大川を泳ぐ男がいるというのだ……。違和感の向こうに見えてくる狂おしい人生と、封印された秘密。心に「鬼」を抱えて生きてきた男と女が、最期に見せた真実とは。江戸の人々の翳(かげ)を鮮やかに描く傑作。(解説・木内昇)
  • オリヴァー・ツイスト(新潮文庫)
    3.7
    孤児オリヴァー・ツイストは薄粥のお代わりを求めたために救貧院を追い出され、ユダヤ人フェイギンを頭領とする少年たちの窃盗団に引きずり込まれた。裕福で心優しい紳士ブラウンローに保護され、その純粋な心を励まされたが、ふたたびフェイギンやその仲間のサイクスの元に戻されてしまう。どんな運命がオリヴァーを待ち受けるのか、そして彼の出生の秘密とは――。ディケンズ初期の代表作。
  • オルタネート(新潮文庫)
    4.3
    高校生限定のSNSアプリ「オルタネート」が必須の現代。料理コンテストでの失敗に悩む調理部部長の蓉(いるる)は、再びの挑戦を決断。高校を辞め居場所を探す尚志(なおし)は、音楽家らのシェアハウスに潜り込む。オルタネートを信奉する凪津(なづ)は、アプリが導く運命の相手を探す。そして文化祭の初日、三人それぞれに起こる奇跡――。10代の過酷さと煌めきを鮮やかに切り取る、青春小説の新たなマスターピース。(解説・重松清)
  • 俺俺
    3.5
    なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった俺は、気付いたら別の俺になっていた。上司も俺だし母親も俺、俺ではない俺、俺たち俺俺。俺でありすぎて、もう何が何だかわからない。増殖していく俺に耐えきれず右往左往する俺同士はやがて――。他人との違いが消えた100%の単一世界から、同調圧力が充満するストレスフルな現代社会を笑う、戦慄の「俺」小説! 大江健三郎賞受賞作。

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  • 俺たちは神じゃない―麻布中央病院外科―(新潮文庫)
    3.9
    剣崎啓介は腕利きとして知られる中堅外科医。そんな彼が頼りにするのが松島直武だ。生真面目な剣崎と陽気な関西人の松島。ふたりはオペで絶妙な呼吸をみせる。院長から国会議員の癌切除を依頼された剣崎は、松島を助手に得意なロボット手術を進める。だが、その行く手にはある危機が待ち受けていた――。現役外科医が総合病院で日夜起こるドラマをリアルに描く、医学エンターテインメント。
  • オレの愛するアタシ(新潮文庫)
    3.0
    32歳の売れっ子作曲家(♂)と、24歳の美貌の作詞家(♀)――二人の身体が、ある日突然、なぜか入れ換わってしまった。お化粧の仕方は? 下着のつけ方は? トイレの使い方は? そして、周囲に悟られずに生活を続ける方法は? ハチャメチャなやりとりに始まり、めでたき結婚、感動的な出産にいたるまでの、コミカルで、ちょっぴりポルノチックな、センチメンタル純愛ストーリー。
  • 女学者・気で病む男
    -
    「女学者」は十七世紀フランス古典劇の代表的作家モリエール後期の傑作。上流サロンで教養を鼻にかける、とりすました女たちの姿を槍玉にあげ、縦横に諷刺したこの作品が上演されると、社交界の男女は色を失ったという。「気で病む男」は巨匠最後の作品。憂鬱症にとらわれた男の独り合点が引起す喜劇のうちに、医学と医者を諷刺しており、巨匠一流の壮健な笑いの総決算ともいえる。
  • 女刑事音道貴子 風の墓碑銘(上)
    3.8
    1~2巻605~649円 (税込)
    貸家だった木造民家の解体現場から、白骨死体が発見された。音道貴子は、家主の今川篤行から店子の話を聞こうとするが、認知症で要領を得ず、収穫のない日々が過ぎていく。そんな矢先、その今川が殺害される……。唯一の鍵が消えた。捜査本部が置かれ、刑事たちが召集される。音道の相棒は……、滝沢保だった。『凍える牙』の名コンビが再び、謎が謎を呼ぶ難事件に挑む傑作長篇ミステリー。
  • 女刑事音道貴子 鎖(上)
    3.9
    1~2巻693~781円 (税込)
    東京都下、武蔵村山市で占い師夫婦と信者が惨殺された。音道貴子は警視庁の星野とコンビを組み、捜査にあたる。ところが、この星野はエリート意識の強い、鼻持ちならぬ刑事で、貴子と常に衝突。とうとう二人は別々で捜査する険悪な事態に。占い師には架空名義で多額の預金をしていた疑いが浮上、貴子は銀行関係者を調べ始めた。が、ある退職者の家で意識を失い、何者かに連れ去られる!
  • 女刑事音道貴子 花散る頃の殺人
    3.3
    『凍える牙』で、読者に熱い共感を与えた女性刑事・音道貴子。彼女を主人公にした初の短編集。貴子自身がゴミ漁りストーカーに狙われて、気味悪い日々を過ごす「あなたの匂い」。ビジネスホテルで無理心中した老夫婦の、つらい過去を辿る表題作など6編。家族や自分の将来に不安を抱きつつも、捜査に追われる貴子の日常が細やかに描かれる。特別付録に「滝沢刑事と著者の架空対談」!
  • 女刑事音道貴子 未練
    3.6
    ふと入ったカレー屋で音道は、男が店主に「こいつは俺の女房を殺した」と怒鳴る場面に遭遇する――男同士の絆が無惨に引き裂かれてゆく様子を描いた表題作。公園の砂場で保育園児が殺害され、その容疑者の素性に慄然とする音道……「聖夜」。監禁・猟奇殺人・幼児虐待など、人々の底知れぬ憎悪が音道を苛立たせる。はたして彼女は立ち直れるのか? 好評の音道シリーズ短編集第二弾!
  • 女刑事音道貴子 嗤う闇
    3.7
    レイプ未遂事件発生。被害女性は通報者の男が犯人だと主張。被疑者は羽場昂一──。レイプ事件の捜査に動いていた音道貴子に無線が飛び込んだ。貴子の恋人、昂一が連続レイプ犯? 被害者は大手新聞社の女性記者。無実の通報者に罪を着せる彼女の目的とは? 都市生活者の心の闇を暴く表題作など、隅田川東署へと異動となった貴子の活躍を描くシリーズ第三弾。傑作短篇四編収録。
  • 女社長に乾杯!(上)
    5.0
    経営不振の会社〈尾島産業〉を偽装倒産させた後、すべては何人かの重役たちの思惑通りになるはずだった。ところがその日メインバンクの実力者が指名した新社長は、なんと解雇リストのトップに名前をあげられていた地味で無口なOLの伸子だった。意外な成行きにあわてふためく男たち。こうして、即製キャリア・ウーマン伸子の華麗な毎日が始まったが……。一読笑殺のラブ・ミステリー。

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  • 女たち三百人の裏切りの書(新潮文庫)
    -
    後世の人々よ、本ものの宇治十帖を語ろう、語りましょう――。源氏物語が世に広まって百年あまり。改竄され流布した物語を正すため、紫式部が怨霊となって蘇り、宇治十帖のその真の姿を語り出す。やがて発表された物語は、人々の思惑とともに時代を動かし始め、壮大な女たちの裏切り合いに発展していく――。読売文学賞、野間文芸新人賞の二冠に輝いた、嘘と欲望渦巻く、全く新しい源氏物語。(対談・保坂和志)

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