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「四国って土地だから行政からほっといてもらえるのかもしれない」二年に一度、村の全員で住む場所を移す「村うつり」。私は“足”を澄ませ、移った故郷を探す(「ふるさと」)。三崎の若い漁師達は遭難し、マグロになった。海に飛び込もうとする彼らを叱咤したのは船頭の大マグロ。励まされ、必死に漁を続けると――(「野島沖」)。生も死もほんとうも嘘も。物語の海が思考を飲みこむ、至高の九篇。(解説・彩瀬まる)
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Posted by ブクログ
自分と他、あるいは人と人以外のもの、現実と幻想、生と死、さまざまな境がしゅるんと溶けて、それがどうしたの?という顔で成り立つ世界。 解説が彩瀬まるということにも納得。 一読しただけではよくわからず、各篇を2度読みした。(短編集で助かった…。) 『四とそれ以上の国』より、はるかに受け入れやすい。 ...続きを読むこれは…震災後文学? 大事故、大災害を経験した人々、地域が多く登場する。 境が揺らぐ世界であることは、単純な癒しにはつながらないのだろうけれど、世界とつながることをやめないでいることが大切なのかな。
隅から隅までいしいしんじで満たされている。そんな短篇集です。 生と死、光と影、静と動、清と濁、それらが対を為すのではなく混じり合い、しかしひとつにはならないような。そんな混濁とした感じなのに清らかに透き通っている。それがいしいしんじの作品に接した時に感じるものなのです。 二年に一度行なわれる「村う...続きを読むつり」、子どもの上に現れる透明な女の人とエアー犬、海からやって来た少女とピアノ、あたらしい熊を求める僕。突拍子もない設定に放り込まれて巻き込まれて流されて、行き着く先はどこなのか。想いも感想も思考も全てを飲み込む、そんな物語たちが詰まったいしいしんじの短篇集。
ルルや船長、オヤジさんやちなさ。そして、キキさんやアヤメさんは、きっとこの星の、このくにのどこかにいるのです。そして、わたしのこころの中にも。
不思議な短編集。 生と死、善意と悪意、色んなものが同居する世界が とても独特な雰囲気を醸し出しています。 暖かいのだけれど怖い、そんな世界観が大好きです。
水といのちのお話。陸は海、海は陸、生も死も一続きになって「うた」にのせてぐるぐる回る、そういう強いテーマが短編たちの間に貫かれていてとても統一感ある短編集だった。 「ルル」はちょっと反則だろう、と思いながらボロボロ泣いたけど、一番好きなのは「野島岬」だ。 「わかんねえからってびびっちまって、ちっちゃ...続きを読むけえ理屈ぶっかぶせようってもよ、金魚すくいの網でメカジキ追っかけようってなもんなんだ。わかんねえもんはしゃんねえべ、オイラもオメエらも脳みそこんなだしよ。けどよ、パッと見意味なくって、わかんなくってもよ、どんぴしゃのアタリって、案外目の前にぶらさがってんみてえなもんじゃねえか、なあよ、オイ」 そう、私も脳みそこんなで、金魚すくいの網だから、いろんなことわかんないけどしゃんないよね、と思ってなんかすがすがしく、すっきりした。 漁師たちの台詞がまた面白くて、微妙に言葉が足りない感じ、繰り返される感じ、荒々しいリズムが、ああ海で生きている言葉なんだと思ってすっと入ってくる。これも「うた」かな。 解説も良かった。いしいさんの本の暗闇の話。私は「プラネタリウムのふたご」が大好きなんだけど、あれもどうにもやりきれない闇、かなしさが広がっていて、でもそれと共にある人間とおはなしの強さが暗闇にきらきら光っていた。言わんとすることすごくわかる。 「しかし本作では、それがけっしてただの悲しみとしては描かれない。……それら無数の境界を越えていく。」 確かに、どの話もすごく優しかった。大丈夫、暗闇の中でつながっている、続いている、ずっとずっと続いている、たまに入れ替わりながらも続いている。全部が当たり前だと思える、お話の力強さ。いしいさんだなあと思う。
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