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戦争末期の恐るべき出来事――九州の大学付属病院における米軍捕虜の生体解剖事件を小説化し、著者の念頭から絶えて離れることのない問い「日本人とはいかなる人間か」を追究する。解剖に参加した者は単なる異常者だったのか? いかなる精神的倫理的な真空がこのような残虐行為に駆りたてたのか? 神なき日本人の“罪の意識”の不在の無気味さを描く新潮社文学賞受賞の問題作。
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Posted by ブクログ
遠藤周作を読むたびに、こんなに巧みで良いんですかと驚いてしまう。こんなに効いてる導入ってあるんですか。構造もキーワードも考えられた上で作られていると分かるから、分析してみたくなる。分析した後に辿り着くのは主題なんだと思う。 生体解剖という恐ろしい事件を、絶対的なものではなく相対的な日常の中に潜むもの...続きを読むとして特殊性を取り除きながら書くっていうのが面白いと思った。
『海と毒薬』遠藤周作 あなたは、周りからどう思われるかを基準に選択をしているでしょうか? 仮に場や時代の流れで倫理的に誤ったことをしても何も追及されなかったら、そのことに良心の呵責を感じるでしょうか。 「いいこと」をするのは、大人や社会から褒められる、認められる、そういう目を意識してのことでそれが...続きを読む全てなのでしょうか。 良心とはつまり、社会性や他者からの評価が内面化された産物なのでしょうか? 私の場合、もちろん悪いことや人を傷つけたことがバレて明るみにだされ裁かれることは非常に恐ろしいことですが、 それらしいな理由や仕方のない理由でやった「悪いこと」「人を傷つけたこと」で、誰からも咎めを受けずにもう時効だろうと思うようなものでも「罪」の意識をもってそれがグルグルと自分の中でリフレインしてしまったり、 もしくは、その罪をまるで覚醒剤のように好んでしまうという傾向性があるようです。 それが世間から「悪」とみなされた、「あっち側」に属するものでかつ自分の気に入らないものを、 「正義」の名の下に、利害関係が一致する人々と非難する行為、 もしくは、「正義」の名のもとに自分の傲慢さを押し付けている人々を皮肉って、その正義を信じている人々の出鼻をくじくというそういうことだったりします。 これは、多くの日本人がいうように「考えすぎ」なのでしょうか? 「罪意識」を「持たない」「許す」ことと「感じない」ことは、似て非なるもののように思います。 戦争末期に、大学附属病院で米軍捕虜を生きたまま生体解剖をした事件があったことを初めて知りました。 本作は、そこに関わった医師や看護師たちの内面の告白とも言えるべきものですが、みんな、 それを拒絶する機会はあったはずなのに、 「大きな流れ」に逆らえずに、唯々諾々とそれに従い、 淡々と普通に捕虜を解剖していくだけ。 いじめに加担して、自分は全てを忘れて有耶無耶にする人々。 袴田さんの冤罪に際して逃げる、死刑判決を出した判事たち。 前時代には、仕方がないと空気のように認められていた、セクハラに体罰にタバコにあれやこれやが、 時代が変われば、逆の全体主義のように、何事もなかったかのように、あれもこれも悪になっていく現象。 それに「時代だから」「流れだから」という接頭辞すらつけず、 あたかも「世間」イコールそれが普遍の真理であるかのように、 そこに同化することのみしか考えていないような「いい」人々は、 そうじゃない人たちをごくごく普通に排除していく。 現象と評価だけが自然に変わっていく。 そこに「責任」も「振り返り」もない。 なんなんでしょう、なんなんでしょうか、と思います。 そんな私も、そう考えることがしんどくて、 というか、そもそも、そんなこねくり回さなくても、 この「海」こそが正直な正解なんだと思いそうになる。 気がついたらその「海」に引き込まれたら楽かなあ、と思うことが多々あります。
終始鳥肌が出るほど衝撃的な内容でした。 時代背景もあるかもしれませんが、人間ってどうなんだろ? 日本人って周りに流されて酷いことしてしまう人種多いと考えてしまいました。 勝呂だけが普通っぽく、、続編が気になります。
衝撃的な内容だった。人間にがっかりする話だった。 今までの経験に重ね合わせて、たしかにって納得する部分があった。 続編があるらしいから、そちらに救いがあることを期待する。
これは凄かった。正統派の倫理観を「人間の尊厳とは何か」を突き詰められたような小説だ。 私は意外とサイコパスな戸田という人間の方が人としての黒さが無いように感じる部分もあるなと思った。 勝呂があの手術の後から、最初の主人公に出会うまでのところも読んでみたかった。
「どうせ死刑にきまっていた連中だもの。医学の進歩にも役だつわけだよ」 太平洋戦争末期の1945年5月、九州帝国大学(現・九州大学病院)医学部の医師らが、米軍爆撃機B29の乗員で捕虜となった米兵8人を人体実験に利用した事件が基となっている作品。 作中では罪悪感に苛まれる者、未来の医学のためだと信じ...続きを読むる者、現実から目を背ける者、様々な人物の思考が入り乱れて実験が進んでいく。この実験によって大勢の命を救ったとも言えるし、そのために一人の命を軽視したとも考えることができる。個人的には例え相手が米軍だったとしても、人間である以上命の重さは平等だという気持ちが強かったし、その場にいる以上誰もが悪人であることには変わりないと思った。 それに実験の内容が内容なだけに擁護はしづらい。血管の中に食塩水や空気を注入したり、肺の片方だけを切り取って何秒生き延びられるのかを計測したり等々。いくら医学のための実験だとしても結構惨いことをしているし、半ば実験を楽しんでいたのだろうとも感じる。手術の描写も映像が鮮明に浮かぶから、尚更ページをめくる手が重かった。 ただ、戦時中という極限状態の中で、日々多くの命が失われ、死が間近にある環境で過ごしていると判断が鈍ってしまうのも理解はできる。そこに至るまでの描写も丁寧で巧かったし、決して登場人物たちを完全な悪人にしなかったのも良かった。宗教的な要素も強くて、無宗教が多い日本ならではの話でもあるなと感じた。安易な言い方になってしまうけれど、「善とは、悪とは」について考えさせられたし、倫理観にずしんと響いてきた。 要所要所で挟まれる立原道造の『雲の祭日』から引用された一節「羊の雲の過ぎるとき 蒸気の雲が飛ぶ毎に 空よ おまえの散らすのは 白い しいろい 綿の列」という詩がとても良い味を出していた。本編のどんよりとした暗さに相反して、その詩の美しさが際立っていた。戦時中という極限状態の中で、この詩を思い返せばそりゃ涙も溢れてくるはずである。自分の中でもとても好きな詩になった。 あとこれは余談なのだが、九州大学病院のすぐ近くには海があり、著者の遠藤周作はそこの屋上で手すりにもたれて雨にけぶる町と海を見つめて『海と毒薬』という題名を思い付いたという。この美しいエピソードが、さらに本書の魅力を引き立てていた。
仮に自分がこの医師や看護師たちと同じ立場だったら、自分も同じ罪を犯しかねない、自分にも彼らと同じ弱さがあるなと思った。 出世に目が眩んで自分の正義に背くことは自分はない、、、気がする。でも、無意識に出世を考慮して自分の中で正義の定義が変わってしまうことはあるかもしれない。保身のために自分の正義を曲げ...続きを読むてしまうことも抗える、、、気がする。でも、自分だけの保身ならまだしも、仮に妻や子どもも含めた保身となると、どう判断するか自信はない。個人としてそのような程度である上に、戦争など世の中の混乱の中で所属するコミュニティに共通の「敵」が形成されている場合に、その「敵」の尊厳にも気を配れる強さが自分にあるか、自信はない。 そのような自分の弱さを常に自覚して生きていかないと、と思った。 読み終わってから、事件のこととか、著者のことなどをWikipediaで読んでみたりしたけど、この小説をどう受け止めれば良いのかなかなか定まらない。 著者はキリスト教の教えと日本人の特性の矛盾に苦しんだようだけど、さすがにWikipediaを読んでみた程度では全然理解できていない。このような罪を犯してしまう人間の弱さは別に日本人だからというものでもなくキリスト教を信仰している人にもありうるのではないかなと思えてしまう。他の著者も読んで遠藤周作さんの感じた矛盾への理解を深めてみたいと思った。
みなさんには、自分の生き方を変えた1冊はありますか? ぼくは、子供のころから本を読むのが好きでした 高校生くらいまでは、推理もの、いわるるミステリ、というジャンルのものを手に取ることが多かったです 大学生になり、友達がこの本を勧めてくれました 今まで手にすることがなかった種類の本 読むうちに物語...続きを読むの中にどんどん引きずり込まれていきます 読み終わった時、自分の中の倫理観というものが根底から覆されていました 若かったのもあるのでしょう、自分の今までの考え方が全て変わってしまうほどの衝撃でした 今も時々読み返す本作はぼくにとって特別な存在です テーマは、神なき日本人の罪の意識 遠藤周作さんは、カトリックでもあり、「日本人でありながらキリスト教徒である矛盾」をテーマに創作活動をされた作家だとぼくは思っています 晩年の作品「深い河」は、宇多田ヒカルさんもインスパイアされ、「Deep River」という楽曲を製作されています、本作もお好きだそうですね 太平洋戦争末期、九州の大学付属病院で米軍捕虜の生体解剖実験が行われた 参加者たちはなぜ解剖に参加したのか? 実際の事件をモチーフにしたフィクションです 悪いことをしてはいけません、いいことをたくさんしましょう 悪いことって何だろう、いいことって何ですか? それは誰が決めることですか? 日本は法治国家なので、法の下に善悪は判断されるのだと思います では、個人の倫理観というものは、どうやって形作られるのでしょうか 法ですら解釈により判断が変わるのに、倫理観とは何とあいまいなものなのか 疑うことなくそのあいまいな倫理観を全ての善悪の判断基準としていた大学生のぼくは、慄然としたのです 解剖に参加した主人公の勝呂医師を責めることができませんでした もし自分が勝呂医師だったらそれに参加しなかったのだろうか ぼくが勝呂医師になることなんてないのだから、そんなことを考えても無意味なのだろうか なら、人の気持ちを想像したり慮ったりすることも無意味なのか ぼくはこの本を読んだ後、本当にずっと考えています 読んだ後数年間は本当に苦しみました、罪を犯した人の気持ちを過度に慮る行為をやめることができずに 最近のSNSなどを見ていても、個人的には思います 切り取られた情報から、判事でもないのに自分のものさしで善悪を判断し、匿名で、不特定多数が自由に閲覧できる場で、人を批評することが恐ろしくないのかな 必ず傷つけることになるのに、知らない誰かを 本というのは、誰かの人生を変えてしまうくらいの力を持つ それを知ってから様々な本と出会い、様々な考えに触れ、あれから数十年生きた先に自分の心が豊かになった気がしています そんな、ぼくにとって新たな読書人生のスタートとなった大切な1冊です 実質上の続編となる「悲しみの歌」は、年を重ねて読むとまた味わいが全く異なる本です、こちらもよかったら あの日ぼくの中に生まれた「海」と「毒薬」は、生きていくなかで少しずつ変容しています
おばはん、息子に会いたかったろうに。この人と米国人捕虜の死はちょっと辛かった。犬のマスもどうなったのか…
和風「少年の日の思い出」ハードモード 心のなかに罪の意識を抱えながら、変わらぬ日常を送る人々の不気味さが際立つ内容でした。 冒頭の十数ページでそんな罪を抱えながらも変わらぬ日々を送る人々の恐ろしさを感じられるのも本書の魅力でした。また、印象的なのはp144の戸田の独白。 『ぼくはあなた達にもきき...続きを読むたい。あなた達もやはり、ぼくと同じように一皮むけば、他人の死、他人の苦しみに無感動なのだろうか。多少の悪ならば社会から罰せられない以上はそれほどの後ろめたさ、恥ずかしさもなく今日まで通してきたのだろうか。そしてある日、そんな自分がふしぎだと感じたことがあるだろうか。』 罪に対して罰や赦しを与える神を持たないから、罪悪感を持ってもそれをどうすることもできない。もっと言えば社会や世間から罰せられなければ悪にすらならない。だから日常を過ごすこともできてしまう。匿名の名のもとに口撃を行いながら平素では善良な人など、今でもこうした姿は感じられるのでこの独白は印象的でした。 こうした罪悪感に対して良心の呵責が働くのか。そもそも良心の罰とは存在するのか。そんな問いがあるという解説を読んで、たしかにな…どうなんだろ…ととても考え込んでしまう読後感でした。
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