【感想・ネタバレ】海と毒薬(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

戦争末期の恐るべき出来事――九州の大学付属病院における米軍捕虜の生体解剖事件を小説化し、著者の念頭から絶えて離れることのない問い「日本人とはいかなる人間か」を追究する。解剖に参加した者は単なる異常者だったのか? いかなる精神的倫理的な真空がこのような残虐行為に駆りたてたのか? 神なき日本人の“罪の意識”の不在の無気味さを描く新潮社文学賞受賞の問題作。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

戦中実際に起きた事件をベースに書かれたもの。
当時の空気感、病院という閉鎖空間の空気感の中で、運命に流されるがままに実験に参加することになった主人公たちの罪の意識・倫理観を通して、日本人の罪や罰の捉え方とはいかなるものかを作者は問いかけてきてるのではないかと考えさせられる一冊。
登場人物のバックボーンと関係付けながら、登場人物各々の実験への感情のアプローチがあり、今後登場人物たちはどのように生活をしていくのか、非常に気になる作品でもある。

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2026年05月03日

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ネタバレ

再読。神を持たない日本人の良心のあり方が描かれている。神なきがゆえに、罪を罪として拒絶することもなく、罰を受けることもないかわりに救いもないような。アメリカ人の捕虜を生体解剖して殺した、そのことへの呵責に苛まれる勝呂はまだ良心があって、罪の呵責を背負って生きている。彼にはまだ救いがある気がするけれど(その救いは描かれてはいないけれど)、全てに無感動で己の出世のことしか考えないような医師たちには何があるんだろうか。呵責の念の起きない戸田は戸田で、何も感じない自分を不気味に感じ、勝呂がうらやましいのだと思う。寂寞とした海鳴り。
作品冒頭では、腕は良いが機械的で人間味を感じさせない変わり者として登場する後年の勝呂が、本当は一番人間味がある。

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2026年04月21日

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ネタバレ

この本のモデルになった、当時研修医として実験に参加していた先生が昔近所にいらっしゃって、時々講演会をしていた
それをきっかけに親から勧められて読んだ本。講演会も行ってみるかと聞かれたけど当時高校生だったのでなんとなく怖くて断ってしまって。大人になってから行ってみたいなと思ったけれど先生は最近亡くなってしまったようで、今になってそれをすごく後悔している
こうやって戦争の体験を直接経験者の方から聞ける機会って、これからどんどん失われていくんだろう
そしておそらく、私たちはその最後の世代なんだろうな。

この本に登場する人物は誰も極悪人ではないのに、一人一人が手に取るナイフや、時には一本のペンが誰かの命を奪うことになる。健康診断だと聞かされていた捕虜たちが、実験前に「Thank you」とお礼を言ったという話を聞いて胸が痛くなった。

なんの本だったのかは忘れてしまったのだけど、「なぜナチスは大量虐殺ができたのか」を解説した本に「一つ一つの行為をできるだけ細分化したから」という見解があった。それによると、「私は収容者たちを運んだだけだから」「ガス室のボタンを押しただけだから」といったように罪悪感までも分解する効果があるそうで。本作で題材にされている事件も要因はそこにあるのかなと考えた

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2026年03月28日

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人体実験ってショッキングな事件やけど、それを行ってた人達の心理が、僕とそう変わらんのが辛かった。最近小説書いてみたいなって思ってちょっと書き出してたから、文体にも目が行った。目的語がないとか、文法が緩い感じなのに頭にスルッと入ってくるのが面白かった。この独特の文章が、心情パートと描写パートを溶かしてるんだと思った。

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2026年03月17日

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いい本だった。


持病持ちのサラリーマンが引っ越してきた町で、
主治医と出会うとこから始まる。
医師には人に知られたくない過去があった。
場面は医師の若かりし頃に変わる。


読みやすくて、情景もよく浮かんだ。
いろんな人の気持ちになれた。
豊かな時間、過ごせた。
今まで読んでなかったの申し訳なく思った。






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2026年02月22日

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難しそうで敬遠してたけど読みやすかった!勝呂は立ち止まって考えれば実験参加を断れた筈なのに、戦争と患者の死によって無力感が募り、自暴自棄になり、思考停止してしまったから断れなかった。考えることをやめないようにしようと思った。おかしい、という違和感を無視しないようにしよう。 戸田の、大人へ媚を売るところは確かになと思ったけれど、非情さには流石に共感できなかった。ずるいことをした後、後ろめたさがしんどいからやらなきゃいいのに。こんな大事件に加担しておいて良心が周りからの罰にしか向かないのが凄い。[やがて罰せられる日が来ても、彼らの恐怖は世間や社会の罰に対してだけだ。自分の良心にたいしてではないのだ]がすごく印象的だった。このように考える戸田達は、捕虜や患者を見下して自分とは別次元の生き物だと考えているからこそ非道な価値観になるのでは?このような仕打ちをされても仕方がない下等な可哀想な生き物、とでも思ってるのかな? 患者さんと対等に話し人生と背景を想像していこうと強く感じた。生体解剖でも手術でも系統解剖でも、見える構造は一緒だと気づき、線引きの難しさと医療の責任の重さにゾワっとした。

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2026年02月11日

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ネタバレ

この本を知るまで、実際の事件を全く知らなかった。病院で人が死ななければ、外では空襲で人が死ぬ時代。時代による影響が大きいのかもしれないが、「生」と「死」に対して、感覚が麻痺していたのだろう。戦争医学や結核患者を救うという名目の解剖だったのかもしれないが、軍医は捕虜の肝臓を欲しがったり、解剖に参加した看護師は、教授やその奥さんの事しか考えてなさそうだった。断りきれなかったものの、手術を目の前にして「やっぱりできない」と怯えてしまう勝呂は人間的で、解剖による良心の呵責を考える戸田も人間的に思えた。

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2026年02月06日

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とても強烈な事件。

だけど、人物それぞれの内情をのぞくと自分との親近感を覚える。

「日本人とは如何なる人間か」という問いに対する要素を沸々と感じる。

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2026年01月11日

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ネタバレ


冒頭は戦後が舞台なので
はて..?となるが
医師が登場して戦時中になって
読み進めていくうちに
どんどん闇が深くなっていく物語だ。

登場人物の過去も描いてるが
その表現がすごく良い
特に戸田の過去を読んでいると
実際に同じような境遇をしてる人がいるのではと思う

個人的にページをどんどん進めた部分がある。
それは、解剖直前の場面だ。
''生きた人間に麻酔をかけ殺す''という状況が
文章だけでも伝わってきた。
反戦とか歴史の出来事から学んでという作品ではない。



絶対オススメしないが
時間もあってする事もなくて
ネットサーフィンしてるくらいなら
200ページ未満だから
読んでみてもいいかも。

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2025年11月26日

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ネタバレ

まさか実際に存在した事件だったとは、思っても居らず。解剖のシーンは、文字だけで映像も何も無いのに、想像されてなかなか読むのがきついものがあったが、故に現実を知らされる。
日本もなかなかの戦争犯罪を犯してきたと初めて知れた本。

日本人の思考は、きっとそのような罪を犯してしまった彼らを庇護してしまうところにあるのでは無いか。ヒルダの「神様がこわいとは思わないのか」という一言は核心をついている。彼らは神という絶対存在が自分の上にある。自分の一挙一動を監視し、裁判を下す神という存在が。なので悪には容赦なく敵意を向けるし、善にはとことん慕う。しかし日本人には基本服従の対象がない。故に悪意を見せられても、ある程度時が経ってしまえば「時代だったから仕方ない」「彼らにだって本気でそうしてやろうと言う気持ちはなかったかもしれない」と庇護し、片付けてしまう傾向にさえある。
これは、私たちが結局日本人で、自分にとっての絶対的存在がないからでは無いだろうか。私の神が許さない、神はそれを認めないから、私も認めない、という思考が、私たちにはないことをこの小説は皮肉にも物語っている…ように、私は思うが。

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2025年12月27日

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ノンフィクション小説を期待して読むのであれば拍子抜けすると思います。
九州大学生体解剖事件を扱っていますが、話の中心は人間の意識の奥底にある善悪とはについてのもの。
戦時下において、人の死が日常であったとき。自分もいつ空襲で死ぬか分からないそんなとき。常に精神の極限で善悪の判断を正常にできるのか。
例えば、仕事で失敗をしたときに後で振り返ればあそこでこうしておけばよかった、何でこんなことに気づかなかったのか等、俯瞰して冷静に見ればなんとでもないようなことも気づかないことは多々ある。
その究極がこの事件であったと思う。

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2026年06月06日

Posted by ブクログ

毎年8月になると終戦○年という特集が組まれる。今回はその流れでこちらの本を手に取った。

太平洋戦争中に実際にあった米軍捕虜解剖事件をもとに執筆された本作は、戦争という非常事態が人間の倫理観に与える影響を教えてくれる。

医療の発展という一見正しそうな理由をつけて米軍捕虜の解剖を正当化する登場人物たちの描写はとても生々しい。

敵と味方、彼らと我々の関係で支配された戦時中の感覚では、米国人などもはや人間ではなかったのかもしれない。戦争が人々の視野をどれだけ狭めるか、心の貧しさにつながるかを改めて考えることができた。

とはいえ、人間の残酷さというのは戦争中でなくても常に社会に露出している。極端な排外主義や新自由主義などによって社会的弱者は追い詰められている。
戦争中だからではなく、そもそも人間という存在に大層な倫理観など存在しないのかもしれない。

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2026年04月23日

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モデルとなった事件は数年前にWikipediaで読んでおり、その際は流し読みする感覚で「こんな事があったんだ〜」くらいの軽い気持ちでした。
本書を読み終わり、改めて事件の概要を読んでやるせない気持ちで胸がぐっと締め付けられました。
クリスチャンである遠藤周作さんが書かれたためか、登場人物のヒルダの言動や彼女に対する周りの感情がひどく印象的でした。

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2026年04月13日

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ネタバレ

葛藤や自分自身に対して噛み砕いて自分という人間を言語化してる事がかっこいいなと思った。
罪悪感の感じ方は人それぞれ。
戸田はサイコパスではないと思う。真人間だと思う。

僕はあなた達にも聞きたい。あなた達もやはり、僕と同じように一皮剥けば、他人の死、他人の苦しみに無感動なのだろうか。

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2026年02月12日

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ネタバレ

勝呂や戸田のその後の人生に関してもう少し深掘りされるかと思いきやされなかったが、それは戸田も勝呂も看護婦もどこにでもいる誰かであり、本を読んでいる私たち自身であり得るからだろうか。

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2026年02月04日

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ネタバレ

罪の意識、自責を期待したが何も感じられない戸田と、所々で迷いや後悔の念が見える勝呂の対比が良かった。

上田の回想にも戸田の回想にも「面倒くさい」という表現が出てきたので、彼らは思考を途中で放棄してしまったが故に生体解剖の場に立ち会うことになってしまったのではないかと思った。

海の描写がしばしば出てきたが、その描写が登場人物の感情を繋げてる?

解説にあった、「罰は恐れながら罪を恐れない日本人の習性がどこに由来しているか、を問いただすために生体解剖という異常な事件を、ひとつの枠組みに利用した形跡がある。」とはどういうこと?▶︎行為の善悪よりも損得で動くから、罪の意識が育たず、倫理観の空白として現れる。

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2026年01月23日

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今年から感想残そうと思う!

年明け早々、読むものではなかった...
プロローグがあったのは、戦争では人を殺すことだということが強調したかったのかしら。
全員の解剖に至るまでの背景に迫っていて、誰にも共感は出来なかったけど、日本人特有の「みんなしているから」、「今更断れないから」などの同調圧力がずっと隠れてる感じがした。

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2026年01月02日

Posted by ブクログ

遠藤周作 2冊目。
信仰をもつもの、もたざるもの。
戦争が次々に人間の命を奪い、倫理観は麻痺していく。
医学の発展を免罪符にした人ならぬ行為。
「やがて罰せられる日が来ても、彼等の恐怖は世間や社会の罰にたいしてだけだ。自分の良心にたいしてではないのだ」
思想・信条をもつことで良心の呵責から逃れる、という生き方を選んだ私にとって、この作品が投げかけてくる問いは重く深い。
はっきりとした感想が書けないけれど、人生を通して考え続けるテーマをもらった気がする。
続編とよばれる「悲しみの歌」もぜひ読んでみたい。

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2025年12月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

圧巻。素晴らしすぎる。
戦争下という特殊な環境において、善良な市民がごく一般的に倫理観を壊していく様を見事に描ききっている。
文章は平易だが情景描写に重みがあり澱んだ空気が広がっている。特に流される海音を聞き、人間として流動的に流されていく、というメタファーは怖しい。
勝呂に主眼は置かれているものの、序盤の「私」の平凡な日常の描写、上田の女性的な嫉妬の描写、戸田の人間失格に通ずるような描写、その全てが人間の愚かさを表現していて没頭した。
アーレントの「凡庸な悪」を想起しながら読んだ。
しかしこのような倫理観の欠落という問題を、単に日本人の無宗教的価値観のみと結びつけて論ずることは短絡的だと思う。つまり、人間一般として議論するに値する問題だと思う。

23 何もないこと、何も起こらないこと、平凡であることが人間にとって一番、幸福なのだと私は彼等をみながら、ぼんやりと考えた。

88 あれでもそれでも、どうでもいいことだ、考えぬこと。眠ること。考えても仕方のないこと。俺一人ではどうにもならぬ世の中なのだ。
夢の中で彼は黒い海に破片のように押し流される自分の姿を見た。

92 「神というものはあるのかなあ」「神?」「なんや、まあヘンな話やけど、こう、人間は自分を押しながすものからー運命というんやろうが、どうしても逃れられんやろ。そういうものから自由にしてくれるものを神とよぶならばや」

194 人間の良心なんて、考えよう一つで、どうにも変わるんや

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

桜庭一樹の読書日記に載ってたし『ラビリンス・サーガ』で日本軍の話が出てきていたので読んでみました。淡々と進む物語。ガソリンスタンドの主人など戦争中に人を殺していた人々が平凡に暮らすという話、戦争中の病院、読んでいて怖かった。戦争中だからあり得た話という気がしない、もしかしたらちょっとしたキッカケで今の世の中でも起きるかも知れない。遠藤周作が凄い、『沈黙』といい『海と毒薬』といい凄い。なんか色んな事を感じたけど上手く感想が書けない。

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

再読、借りた本。

生体解剖に目が行きがちだが、今回は登場人物それぞれの向き合い方に引き込まれる
冒頭のマネキンを眺める勝呂、何もない生活の幸せへの言及。
海への考察は解説で深まった
作家に断罪する権利はなく、関わった人達からの抗議に苦しんだとのことだが、私にも断罪する意図は見えなかった
捉え方は立場が変われば無限にある
終わった後の教授の佇まいがそれを物語っていると思った

留学、沈黙で三部作と捉えられるようで、こちらも改めて再読しようと思った
一緒に読んだ中3娘はやはり生体解剖に焦点をあてていた

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2025年11月09日

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神が運命をさだめるのではなく、運命から自由にしてくれるのが神だという考え、神は無力であれ、可能性さえ示してくれればそれで良いのだと感じた。

人間は善悪の外には立てない。
人によって罰と感じるものは違う。
ならば正義もみな形が違うのも当然で、
その混沌のなか、正しい倫理観を求められる。
私達はかなり難しいところにいるのではないか。
戦時中の命の重さ、同じでなくてはならない。
私はその中で今の価値観を貫けるのだろうか。

多く自分に問いかけながら読み進めた。
海が癒しから大きな不安にかわるその瞬間
恐ろしくて黒い黒い海が脳を絶えず侵食した。
見た事のない手術室の血を流すための
小さな川の流れを連想して苦しくなった。
そういう伏線も散りばめられているのだろう。
素晴らしい作品だった。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ


宗教のない日本の罪の意識はどこからくるか興味を持った。
この話はただ戦時中で倫理観が崩壊したから起こったのか関係なく起こってしまうようなことなのか感慨深い
実際、宗教があろうが無かろうが、罪の意識の有無は個々人によるものだと感じた。ヒトラーのホロコーストも人体実験を行っていたけろ、無宗教ではなくキリスト教を信仰していたわけだし、、、

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2026年04月04日

Posted by ブクログ

第二次世界大戦下現実に行われた、捕虜の生態解剖。その事件を元にしたフィクション。 事実だけでも大変ショッキングな内容ではあるが、人間が何に罪と罰を感じるのか、仄暗い心情を通じて描く。重く痛々しく非人間的。しかし彼らと同じような非情さ、残酷さが自分には全く無いのか、と問われれば… 遠藤周作はこのような、事実を基にした話がとても上手くて大好き。近々(2017年)「沈黙」が映画化されるので、そちらも楽しみ。

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2025年12月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

悲しみの歌→海と毒薬
の順番で読んでしまって完全にミスった。
遠藤周作の作品は、「白い人・黄色い人」しかまだ読んでいなかったけど、今回読んだこのふたつの中でも一貫した「罪悪感」について描かれていておもしろかった
キリスト教的に損得勘定なく純粋な人、純粋な人にあてられて罪悪感に苦しむ人、何も感じられない人
この三種類の人間で構成しながら、無宗教の罪の意識とはどのようなものか深堀している

戦中に九州の医大で行われたアメリカ人捕虜の生体解剖実験の実話を元にして、1作目では関わった医師や看護師を用いて戦中の生命の無価値さと感情の鈍麻を、2作目ではその中の勝呂という医師を用いて戦中と戦後の比較をしながら罪悪感を描いていた
1作目も2作目も、海のように大きな潮流に流される人を正義感を持って糾弾する程の権利はあるのかを問うてたとおもう

芦田のキュゲスの指輪的に動かない自分の良心に共感してしまって、それが一番好きだった
社会からの糾弾や法的罰則がなかったとき、良心にしたがえる人は一体どれほどいるんだろう
勝呂は一見その人間に見えるが、良心はあるが時代という大きな流れに逆らえず、逆らう意味もみいだせず、流されていく1番日本人的なひとだとおもう
流産した看護婦の、寂しさと無力感で投げやりになって同性の汚いところを自分の中で次々と暴いていき、同性の想い人を自分の方が知っていることに対してマウントを取っている汚さもすきだ
相対的に自分が醜く見えるのも、自分が持ってない異性という幸せを享受してるのも、許せなかったんだろうな

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2026年05月04日

Posted by ブクログ

人は聡明で他者を思いやれる生き物であるのと同時に、残忍で自分勝手に振る舞い、流される脆い本質も持っているのかもしれないと感じた。

戦争という異常事態が"日常"になり、人の「死」が背景になった時、誰でも"そちら側"に堕ちていく可能性はあるのだろうなと。

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2026年04月02日

Posted by ブクログ

苦々しい思いで読んだ。事件のあらましを知っているだけに、どんな人がやったのかという思いで読み進めたが、結局どこか身に覚えがある考え方をしている人が「普通に」やっただけだ。そう、我々日本人の倫理観がいかに脆く、いかに集団心理の中にあるかを暴いている。
これは事件のショッキングさを被りつつ、冷静に日本人に問いかける遠藤周作の思考本だと思う。

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2026年01月23日

Posted by ブクログ

来年のラッキーカラー(エメラルドグリーン)の背表紙で買おうと思って選んだのが遠藤周作で、その中からチョイス。
小さい頃から父親の本棚から拝借して読書をしていたけど、その中に海と毒薬が並んでいて、やけに目について気になっていたから父親にどんな話?と聞いてみたら「それは読まんくてもいいんじゃない、何か感動があるとかないと思う」とふわ〜っと遠ざけられてて、余計気になってたから、大人の今、購入。
暗い…えぐい…。遠ざけられた意味がわかった…。
けど、信仰を持たない日本人の良心と、罪と罰とは、苦しく考える物語の雰囲気に、若い頃の父親の気持ちを想像しながら自分も同じ経験をできたので、読めてよかった。
次は沈黙を読もうかな。

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2025年12月28日

Posted by ブクログ

わからないことが多い
解説を読んで、少し理解が深まった
ゆりちゃんやナツミートが薦めたこの本をわかりたかった

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2026年01月01日

Posted by ブクログ

2025.6.4
一瞬だけ出てくるヒルダという登場人物が重要であり、この人だけが唯一罪という感情を持ち合わせる。それは絶対的な神の前での罪、それによる裁き、つまり絶対的な罰を備えるのに対し、日本人は社会的罰を感じ、それは絶対的ではないことが描かれている。

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2025年12月13日

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