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ある外国語大学で流れた教授と女学生にまつわる黒い噂。乙女達が騒然とするなか、みか子はスピーチコンテストの課題『アンネの日記』のドイツ語のテキストの暗記に懸命になる。そこには、少女時代に読んだときは気づかなかったアンネの心の叫びが記されていた。やがて噂の真相も明らかとなり……。悲劇の少女アンネ・フランクと現代女性の奇跡の邂逅を描く、感動の芥川賞受賞作。
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Posted by ブクログ
外大生のスピーチコンテストまでの日々と、アンネの日記に綴られた日々。 忘れてはならないことが何か、真実の追求。
⚫︎受け取ったメッセージ 「真実とは乙女にとって禁断の果実だった。」 ⚫︎あらすじ(本概要より転載) ある外国語大学で流れた教授と女学生にまつわる黒い噂。乙女達が騒然とするなか、みか子はスピーチコンテストの課題『アンネの日記』のドイツ語のテキストの暗記に懸命になる。そこには、少女時代に読んだときは...続きを読む気づかなかったアンネの心の叫びが記されていた。やがて噂の真相も明らかとなり……。悲劇の少女アンネ・フランクと現代女性の奇跡の邂逅を描く、感動の芥川賞受賞作。 ⚫︎感想 すごい短編小説だった。ユーモアとシリアスをこのように巧みにブレンドし、密告する側とされる側という葛藤と統合を描く。深刻なホロコーストというテーマを自分たちの生活に引きつけて考えることは、普段の生活ではなかなかできない。それを「乙女」な女子大生という「清純」を密告者側とと置きかえ描かれた作品。いつ誰が「乙女」と見なされなくなるか、わからない。 真実は多くの人が夢見ていたい中で隠されなくてはならないものである。 人は同じ美しいと思える幻想をみんなで信じて安心したがる生き物だということを改めて思った。 面白く読ませてくれる漫画風なところがありながら、実はメタファーを盛り込み深いテーマを描いている。ぜひ再読したい。
短めの文章のリズムと登場人物たち(特に教授)の強い言葉が強く印象に残った。 主題となっている『アンネの日記』とともに、読み継がれて欲しい本。 『アンネの日記』は未読の状態だと「悲劇的な少女」のイメージを持ち、実際に読むとあまりに等身大な小女性に驚くもの(と勝手に思っているけれど)。 本書はその後も...続きを読むう一度、余計なイメージを捨ててアンネを読み、アンネと向き合う時に最適ではないかと思う。
ナチス政権下で異分子として個の名前を奪われた人々。毎日の日記の最後に記したアンネ・フランクという名前は、悲劇に抹消された人々にも名前があったんだと語ってくれる。 乙女は日々に翻弄されながら、自分の名前を探し続ける。 真面目な文体にユーモラスが顔を出してくる雰囲気が大好きだった。乙女とは乙女らしからぬ...続きを読むものを好む生き物なんだなぁ。
ナチスの政権下で奪われてしまった名前たち、そんな中でアンネ・フランクは決して彼女の名前を失わなかった。 異なるものとして排除されてしまうという歴史は繰り返されていると思う。そんな世界でどのように生きていくのかを再度考えるような作品だった。
とても読みやすい。私小説風であり、歴史小説風であり、哲学書風であり、人情噺風でもあり、ライトノベルロマンス風でありながら軽快な語り口にあっという間に飲み込まれてしまう。そして最後に残る重いテーマの余韻。なるほど芥川賞に相応しい傑作小説だと思う。
私が初めて、受賞時から読みたいと思った芥川賞作品です。 外大の女子学生達が繰り広げるお話、 とのことで、気持ちの上で、 近年の受賞作より何となく敷居が低いというか。 そうして「読みたい」「読みたい」とは常々言っていたものの、 結局、本屋さんで遭遇したのは、文庫本になってから。 買う予定だった本を戻...続きを読むしてしまって(ごめんなさい~!) 即刻購入ののち、帰宅後一気読みしました。 まず、執拗に繰り返される、 「乙女」という言葉が印象的で癖になる。 そういえば、最近では最早死語のような気もする程、 歪に聞こえる言葉だけど、私達は乙女なのだー。 少し前に、アンネの日記を読んだところだったので、 彼女のユダヤ人としての誇りや葛藤、 「オランダ人になりたい」という本音、 アツい叫び声を読む中で圧倒される、 その気持ちはよく分かりました。 そして、彼女の周りで起きる「事件」や「密告」と、 アンネの周りで起きたことやミープの存在等を、 熱に浮かされたように重ねて、 突き動かされていく様子は、あまりにリアル。 読書家って、こういうところがあると思うのです。 実際起きていることは大した話じゃない。 だけど脳内では勝手に壮大なドラマになっている。 誰か、強烈な人物と重ね合わせてみたりして。 個人的に衝撃を受けた部分として、 主人公のお友達(貴子さんだっけ、、、)で、 ドイツからの帰国子女の方のエピソードがあります。 彼女は、ほぼ母国語と同じようにして、 ドイツ語を学んだ経緯がありながら、 長い間触れる機会がなかったために、 発音なんかは完璧だけど半端に忘れてしまっている。 その「忘れている」という事実を強烈に恐れている。 「○○ってドイツ語でなんていうんだっけ」 に答えられないとき、 「答えられなかった」「単語を忘れてしまった」 という事実に驚愕し、おびえる。 みんなとは異なる結び付き方をしているからこそ、 日本人目線でのドイツ語の授業には違和感がある。 これをフランス語に置き換えたら、 完全に私になりそうなんですもの。 最も、まだ、私は大学生ではないけれど、 フランス語を完全に取り戻すために、 専攻語にするつもりでいます。 だけど、これを読まなかったら、 彼女と同じになっていたかもしれない。 変に、やさぐれていたかもしれません。 どれだけ意気込んでいても、 自分の記憶と正面から向き合ったときに、 失ってしまったものに愕然として、 背を向けてしまっていたかもしれません。 今だってふと冷静に、 自分がどれだけフランス語を覚えているか考えてみて、 単語が抜け落ちすぎていることを思うと、 胸が苦しくて、自分の一部がどこかに行ってしまったような、 喪失感に襲われるものです。 だけど、今はその事実と、 わざわざ向き合う必要は無いからいいのです。 もしも、大学で勉強するとなれば、逃げられなくなるのです。 その「来る日」を前にこれを読めて良かった。 勿論、失ったものと対峙するのは、 どれだけの覚悟があっても足りない位、怖いことです。 だけど、一度、やさぐれてしまった人を見て、 それを反面教師にして、自分なりに戦ってみるのと、 何も無くしてぶつかるのとでは大きな違いです。 赤染さんがこの作品の中に、そんな人物を生んでくれたこと、 本当に感謝しています。 「なり得たなりたくない自分」を見せてくれたこと、 本当に感謝しています。 (赤染さん自身外大出身とのことで、ひょっとしたら、 赤染さんの周りにそんな方がいらしたのでしょうか。) ありったけの★を差し上げたいです。
まずは本が薄くてびっくり。それはどうでもいいか。 芥川賞受賞のときはけっこう話題になっていておもしろそうと思った記憶があったので即買い。 うーん、さすが芥川賞っぽい純文っぽい不思議な感じ。わかるようなわからないような。おもしろいようなおもしろくないような。エンタメじゃあないからな。 たぶん、ささっと...続きを読む読んでおしまいにするのではなく、じっくり何度も読むとよく意味がわかって発見もあるような気がするけれど。 京都弁が印象的。ユーモアがあって文章は好きかも。
微妙に張り巡らせられた緊迫感と、平の文でたまに登場するおふざけのギャップがとても良かった。読みながら笑ってしまった。 物事を自分の見みたい一側面だけで判断するのは良くないな
ちょっと特殊の日本語と思います。ドイツ語の特性がミックスされそうです。あらすじより、文字の流れが好きです。
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