無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
【本の内容】
かつてチャイルド・ポルノ疑惑を招いて消えた映画企画があった。
それから30年、小説家の私は、その仲間と美しき国際派女優に再会。
そして、ポオの詩篇に息づく永遠の少女アナベル・リイへの憧れを、再度の映画制作に託そうと決意するのだが。
破天荒な目論見へ突き進む「おかしな老人」たちを描く、不敵なる大江版「ロリータ」。
[ 目次 ]
[ POP ]
長く小説を書いてきた作家である「私」、少女の頃「アナベル・リイ」という8ミリ映画に撮られ、今は国際派女優のサクラさん、新しい映画のプロデュースをする大学時代の同級生……幾重にも時間が重なり、四国の森で起きた一揆の記憶が読み返される。
単行本からは改題された。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
クライストの小説「ミヒャエル・コールハースの運命」を映画化するという
国際的なプロジェクトの一端に
シナリオライターとして参加することになった語り手は
「万延元年のフットボール」に書ききれなかった民衆蜂起のエネルギーを
その映画で再現しようともくろむ
しかし、企画は思わぬところで頓挫した
集められた子役のフィルムと、それを撮影したカメラマンに
児童ポルノ制作の疑いがかけられたのである
主演女優のサクラ・オギ・マガーシャックなる人物は
幼い頃、戦争で焼け出されてひとりぼっちだったところを
アメリカ人将校に引き取られ
後にはその将校との結婚に至ったという過去を持っている
彼女自身は、そんな人生を幸福なものだったと考えているけれど
しかし映画の中では、女性の自立を叫ばずにいられない
そしてなぜか夜毎の悪夢にうなされている
高校時代の語り手は
かつて松山市の堀端にあったとされるアメリカ文化センターにおいて
後に映画監督となり、義兄となる年長の友人とともに
幼いサクラさんの出演するフィルムを見ていた
ポーの「アナベル・リイ」を題材とした美しい映像であったが
それにはおぞましい秘密が隠されていたのだった
Posted by ブクログ
これまでおよそ時系列で大江健三郎の著作を読んできましたが、ピンチランナー調書辺りから主題と言うか、小説を書く目的みたいなものが少しずつ変わってきている気がします。
前期は人間の虚飾や欺瞞や、ありとあらゆる醜い部分を徹底的にほじくっていますが、後期は虚飾や欺瞞をバイパスに、その先にあるものを書こうとしている様です。
私は作家としての大江健三郎自身に強い思い入れはなく、単純に作品のみを好んでいます。従って好みの問題で言えば、前期の方が圧倒的に好きです。だいたい作者が30代以前の作品が特に。
ただし若いころの作品は、若かったから書けたんじゃないかとも思います。
大江氏の場合、負の部分をほじくるなんて自分をずたずたにするようなものでしょう。そんなことを続けていたら、とっくに人間壊れてしまいますよ。
そこをうまくシフトして、ずっと日本の文学に関わり続けてきたのは日本のノーベル文学賞作家として誇るべきことだと思います。
もともと脆かったサリンジャーはすぐにトンズラしたくらいですから。
現在76歳の大江氏ですが、あとどれだけ書けるんでしょう。長生きして欲しいな。
なんかつらつら書いてますけど、本作に関しては健三郎もサクラさんも木守もなんだかバラバラでした。
三者三様の、沈殿した薄暗い気持ちをちゃんと描いていないように思います。だから微妙な濁度の上澄み部分だけ見せられたような、中途半端な気持ちになってしまいました。
11.05.26
Posted by ブクログ
まず、表紙裏の解説には「老人たちの奮闘記」てなことが書いてあったけど、私は全くそうは感じなかった。
虐待にあった女性が傷へ向き合い、再生へ。
それが「ミヒャエル・コールハース計画」を通して語られている。
主人公は大江自身を思わせる作家であり(私は大江作品を初めて読んだのでいつもこうなのか定かではないが)どこまでが現実なのかどこからがフィクションなのかわからなくなる。その境界から、読み手はいつの間にかフィクションの世界に誘われていくのか。
でも私は全くフィクションのほうが入り込みやすいな。
こういう設定だと書き手は人物設定が簡単で済みそうな気がする。
きっと、木守は映画の完成を待たずに亡くなったのではないかな。
でも主人公の書いたシナリオですべてを見届けた心持ちで満足して逝ったのだろう。
色々と頓挫した計画だったが、最後はハッピーエンドだったに違いない、と私は思っている。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。