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「私は渡辺一夫のユマニスムの弟子として,小説家である自分の仕事が,言葉によって表現する者と,その受容者とを,個人の,また時代の痛苦からともに恢復させ,それぞれの魂の傷を癒すものとなることをねがっています.」――一九九四年ノーベル文学賞受賞記念講演ほか,全九篇の講演に語られた,深く暖かい思索の原点と現在.
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Posted by ブクログ
大江健三郎がノーベル文学賞の受賞演説で述べたことを纏めたもの。川端康成の受賞演説「美しい日本の私」に対するアイロニカルな視点で捉えているところが面白い
おじいちゃんの書斎からくすねてきた。私がずっと聴いてきた國光の音楽と、おじいちゃんが色んな本を読んで考えてきたことが繋がるような気持ちになった。 私が初めて天皇陛下を見た時に思ったのは、空虚だ、ということだった。日本というのは曖昧な抽象物であり、実は天皇にも象徴されるように中心が空っぽなのだろう。そ...続きを読むしてそこから生じる曖昧さとうちに閉じてしまう感じ。 また、周縁たる田舎。そこで心的感覚麻痺に落ち込み、乗り越え、再生する。これはそのまま再生の風景ではないか。 あいまいと言うことが何かはっきりと語られない(かろうじて両義性?)ものの大きな示唆のある一冊だった。
今期,大学の非常勤でテッサ・モーリス=スズキの『日本を再発明する』を教科書として使っている。今回はとてもいい選択だったと思う。とても授業がやりやすいし,学生の反応もまずまず。もちろん,理解が浅い部分もあるが,そのくらいの難しさを兼ね備えているところも理想的。 ということで,レポートのテーマとして「日...続きを読む本論・日本人論・日本文化論を読む」という課題を設定した。この件については,西川長夫『地球時代の民族=文化理論』を読んだ時にも,主要な日本論については読んでおかなくてはと思ったが,今回そのいくつかをレポートの課題図書として設定することで自らも読むことにした。 まず,読み始めたのがこちら。ノーベル文学賞を受賞したときの公演が書名となっているように,1994年の受賞前後の公演の内容を収録したもの。岩波新書の一冊です。 あいまいな日本の私(1994年12月,ストックホルム・ノーベル賞授賞式) 癒される者(1994年10月,東京・国際医療フォーラム) 新しい光の音楽と深まりについて(1994年10月,東京・サントリーホール) 「家族のきずな」の両義性(1994年11月,東京・上智大学) 井伏さんの祈りとリアリズム(1994年11月,広島) 日米の新しい文化関係のために(1992年5月,シカゴ大学) 北欧で日本文化を語る(1992年10月,北欧諸国) 回路を閉じた日本人ではなく(1993年5月,ニューヨーク) 世界文学は日本文学たりうるか?(1994年10月,京都・国際日本文化研究センター) こうして目次を見ると,公演がかなり多いことに驚きます。ノーベル賞を受賞するくらいの作家になると公演も主な収入源になるんですかね。大江健三郎の作品はきちんと読んだことがない。以前,母の家に泊まった時に,暇を持て余して書棚にあった日本文学全集の大江の巻をちょっと読んだが,非常に驚いて,今度改めて読もうと思った以来,岩波現代選書の『小説の方法』は読んだが,小説作品には手を出せていない。しかも,『小説の方法』を読んで,彼がミラン・クンデラやバフチンを読んでいることを知って,やはりノーベル賞を受賞するくらいだから,日本の小説家としては珍しく批評もしっかりしている人だという認識は持っていた。 目次からも分かるが,講演先でその場にあったテーマを選んで素晴らしい話をしている。しかし,ノーベル賞受賞が決まってからはあまりにも頻繁に公演があったので,やはり内容が重複しているのは仕方がない。また,彼には障害を持つ息子さんがいて,そのこと自体を作品に書いているということは知っていたが,その息子さんが音楽家としてCDも出しているという話は初めて知って,しかもその話をいろんなところでしているということだ。 まあともかく,大江健三郎という作家は国内外にさまざまな目を向けている世界的視野に立った人であるということが再認識できる一冊です。一度きちんと彼の作品を読まなくてはと思いました。
大きく括り、文学、語学、戦争、政治、家族、日本の事などがまとめられている。 彼のようにすべての日本人とすべての人間が、時代の流れと事柄(教訓、精神などを含め)を文学やその他の媒体を使い理解しようとするならば、良いことだしこの本を理解できるのだろうが、多くの人間が生まれ、死ぬまでに見るものはやはりその...続きを読む人間の時代だけで手一杯なだろうなと思う。 私は冷めた人間なので、今の時代の者が誤ちを繰り返すのならそれはそれで良い。日本の、各々の国の美しさや精神、魂というものを理解せず共有しないのならばそれで良い。自業自得なのだから。
1990年代に日本人とは何かについて考え、それを絞り出すように言葉を選び、発信していった講演がまとめられた良書。2014年の今でも著者の主張は錆びていないと思う。まだ私には経験が浅く、著者の主張を受け止めきれていない部分があるが、年を取り経験を積み読み返すことでまた新たな発見が得られると思う。
たいへん良かったです。 文学に対して、このくらい真剣に考えていないと、素晴らしい話は書けないですよね。 「あいまいな日本の私」って、川端康成のスピーチを受けてのことだったんですね。 これを読みながら、ノーベル文学賞の発表を待っていたのですが・・・今年も残念でした。 12.10.14
断定的すぎて意味のわからない所はあるものの、芸術に対する言及は興味深かった。「芸術家は私達が今まで知らなかった新しい世界を見せてくれる仕事」。芸術の意味がやっとわかった気がした。
講演内容をまとめたものであり読みやすかったが、前提知識ゼロで挑んだので難しい部分もあった。 日本に生きる私としてもっと日本を知るべきかと思う。
四国の山奥に生まれた大江健三郎 彼は少年時代、海外の児童文学にふれて広い世界に憧れ やがて小説家になるのだが 初期の作風は、実存主義的なものであった それは一口に言えば、外に目を向けようとする自分に対して 抑圧をかけてくる社会への反発であり そういう社会を象徴する存在として、天皇を仮想敵とするものだ...続きを読むった しかし1964年の「個人的な体験」以降、作風は大きく変化する きっかけは、脳に障害を持って生まれてきた息子だった 息子の存在は、世界に跳ぼうとする大江にとって 言ってしまえば足枷だったが そんな息子との向き合いを書いた「個人的な体験」は 国際的な評価を得て 結果的に、大江を飛躍させた そういったことから、大江は自らの息子を 天皇に対置される存在…トリックスターと定義するようになった だから、ノーベル賞を受賞した際のスピーチでも 息子・大江光のことは大きく取り上げている 天皇を嫌う自分が、ある意味では天皇主義者と同じく 息子に依存している様は 確かに「あいまいな日本の私」と称するにふさわしいだろう 父親から自立する道のない息子は ひょっとすると悲しい存在かもしれないが
大江健三郎の本は好きだけど、、難しかった。断片的にしかついていけなかった。 そもそも大江健三郎の代表作を読んでいるだけじゃなくて、歴史や文学の基本的な教養がないといかんなと思った。 ただ、彼が考えていることの喫緊さ、例えば日本を発信していくこと、などはすごく伝わってくるので、もう一度知識を蓄えて...続きを読むからまた読もうと思う。 安部公房 「壁」 川端康成 宮沢賢治 ハックルベリー・フィン 渡辺一夫 ラブレー クンデラ「小説の精神」 スピノザ 井伏鱒二 三島由紀夫
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大江健三郎
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