小説・文芸 - 新潮文庫作品一覧

  • 謎のアジア納豆―そして帰ってきた〈日本納豆〉―(新潮文庫)
    4.5
    ミャンマー奥地で遭遇した、納豆卵かけご飯。日本以外にも納豆を食べる民族が存在することをそのとき知った。そして著者は探求の旅に出る。ネパールでは美少女に導かれ、湖南省で味噌との関係に苦悩。東北秋田で起源について考える。“手前納豆”を誇る人びと。夢中で食べた絶品料理。愛する食材を追いかけるうちに、アジア史までもが見えてきた。美味しくて壮大な、納豆をめぐる冒険の記。(解説・小倉ヒラク)
  • 謎の毒親(新潮文庫)
    4.3
    命の危険はなかった。けれどいちばん恐ろしい場所は〈我が家〉でした――。母の一周忌があった週末、光世は数十年ぶりに文容堂書店を訪れた。大学時代に通ったその書店には、当時と同じ店番の男性が。帰宅後、光世は店にいつも貼られていた「城北新報」宛に手紙を書く。幼い頃から繰り返された、両親の理解不能な罵倒、無視、接触について――。親という難題を抱える全ての人へ贈る相談小説。
  • なつかしい芸人たち
    4.0
    学校をサボって浅草六区に通い詰めた幼少の頃から、映画・テレビの普及した今日まで、著者が心ひかれ、熱い視線を注ぎ続けた、忘れがたい芸人たち。かれらは、独特の芸と異才で人気を博したが、どこか危ういはみ出し者でもあった。エノケン、ターキー、金語楼など名だたるスターはもとより、青バットの大下、ヒゲの伊之助から、トニー谷、左卜全、渥美清まで、奇人・変人が総登場。
  • 夏草冬濤(上)
    4.1
    1~2巻616~660円 (税込)
    伊豆湯ヶ島の小学校を終えた洪作は、ひとり三島の伯母の家に下宿して沼津の中学に通うことになった。やがて上級の不良がかった文学グループと交わるようになり、彼らの知恵や才気、放埓な行動に惹かれていく――。

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  • 夏の祈りは(新潮文庫)
    4.1
    文武両道の県立北園高校にとって、甲子園への道は遠かった。格下の相手に負けた主将香山が立ち尽くした昭和最後の夏。その十年後は、エース葛巻と豪腕宝迫を擁して戦った。女子マネの仕事ぶりが光った年もあった。そして今年、期待されていないハズレ世代がグラウンドに立つ。果たして長年の悲願は叶うのか。先輩から後輩へ託されてきた夢と、それぞれの夏を鮮やかに切り取る青春小説の傑作。
  • 夏の終り(新潮文庫)
    3.7
    妻子ある不遇な作家との八年に及ぶ愛の生活に疲れ果て、年下の男との激しい愛欲にも満たされぬ女、知子……彼女は泥沼のような生活にあえぎ、女の業に苦悩しながら、一途に独自の愛を生きてゆく。新鮮な感覚と大胆な手法を駆使した、女流文学賞受賞作の「夏の終り」をはじめとする「あふれるもの」「みれん」「花冷え」「雉子」の連作5篇を収録。著者の原点となった私小説集である。
  • 夏をなくした少年たち(新潮文庫)
    3.0
    その男の死体が発見されたのは8月21日だった。「そうか、結局死んだのか」梨木刑事の記憶は少年時代に戻る。深い後悔が僕らのすべてを引き裂いた、あの夏の花火大会の夜に。僕らは置き去りにしたのだ――幼い少女を暗闇の山中に。刑事は故郷に戻り、かつての仲間と22年ぶりに再会し、事件の真相を解き明かす。胸を締め付ける瑞々しい情景描写が選考会で絶賛された新潮ミステリー大賞受賞作。(解説・大森望)
  • 7番街の殺人(新潮文庫)
    3.0
    駆け出しの舞台役者・三枝彩乃は公演の稽古に励む毎日だったが、ある晩、母が急病で倒れてしまう。手術は成功したものの、今度は父が不倫相手と出奔。入院費と生活費を稼ぐべく女優・中原真知子の付人として働き始めた彩乃は連続ドラマの撮影に同行する。予定のロケ地が工事で使えず、新たに撮影場所に決まったのは、21年前に祖母が殺害された団地だった――。一気読み必至の青春ミステリー!(解説・大矢博子)
  • 何様(新潮文庫)
    3.7
    生きるとは、何者かになったつもりの自分に裏切られ続けることだ。直木賞受賞作『何者』に潜む謎がいま明かされる―。光太郎の初恋の相手とは誰なのか。理香と隆良の出会いは。社会人になったサワ先輩。烏丸ギンジの現在。瑞月の父親に起こった出来事。拓人とともにネット通販会社の面接を受けた学生のその後。就活の先にある人生の発見と考察を描く6編!(解説・若林正恭(オードリー))
  • ナニワ・モンスター(新潮文庫)【電子特典付き】
    3.5
    1巻1,100円 (税込)
    浪速府で発生した新型インフルエンザ「キャメル」。致死率の低いウイルスにもかかわらず、報道は過熱の一途を辿り、政府はナニワの経済封鎖を決定する。壊滅的な打撃を受ける関西圏。その裏には霞が関が仕掛けた巨大な陰謀が蠢いていた――。風雲児・村雨弘毅(ドラゴン)府知事、特捜部のエース・鎌形雅史(カマイタチ)、大法螺吹き(スカラムーシュ)・彦根新吾。怪物達は、この事態にどう動く……。海堂サーガ、新章開幕。※【電子版あとがき】をはじめ、ストーリー上の出来事が一目でわかる【桜宮年表】や【作品相関図】、小説・ノンフィクション作品の【海堂尊・全著作リスト】、小説作品の【「桜宮サーガ」年代順リスト】など数々の電子版特典を巻末に収録!
  • 名札のない荷物
    -
    《荷物 一個 内容 死体》トルストイの遺体にひっそりと付けられた荷札をめぐる随想。信長暗殺に臨んで御神籤を三回引いた明智光秀の心中劇とマクベスの葛藤の姿。そしてエイズについての率直な発言。創作の為に書き留められた日記とメモと紀行文からは、記録を超えた玄妙な香りさえ立ち昇る。イメージの飛躍としたたかな小説構造を両立させた清張文学を読み解く最後の記録作品。

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  • なまみこ物語
    3.8
    たぐいなきみやびの陰に、摂関政治の忌わしい相剋を露呈した平安朝。一条帝のもとに中宮として入内し、帝の狂おしいばかりの愛を得ながら、なお悲運の生涯を辿らねばならなかった定子。その、はかない宿命を物語りつつ、関白・道長の野望実現のため、策動させられる生神子姉妹の、あやなす悲劇を鮮明に描き上げた「なまみこ物語」。ほかに「歌のふるさと」「ますらお」を併録する。
  • 生麦事件(上)
    4.0
    文久2(1862)年9月14日、横浜郊外の生麦村でその事件は起こった。薩摩藩主島津久光の大名行列に騎馬のイギリス人四人が遭遇し、このうち一名を薩摩藩士が斬殺したのである。イギリス、幕府、薩摩藩三者の思惑が複雑に絡む賠償交渉は難航を窮めた──。幕末に起きた前代未聞の事件を軸に、明治維新に至る激動の六年を、追随を許さぬ圧倒的なダイナミズムで描いた歴史小説の最高峰。
  • 生麦事件(上下)合本版(新潮文庫)
    値引きあり
    -
    1巻800円 (税込)
    文久2(1862)年9月14日、横浜郊外の生麦村でその事件は起こった。薩摩藩主島津久光の大名行列に騎馬のイギリス人四人が遭遇し、このうち一名を薩摩藩士が斬殺したのである。イギリス、幕府、薩摩藩三者の思惑が複雑に絡む賠償交渉は難航を窮めた――。幕末に起きた前代未聞の事件を軸に、明治維新に至る激動の六年を、追随を許さぬ圧倒的なダイナミズムで描いた歴史小説の最高峰。 ※当電子版は新潮文庫版『生麦事件』上下巻をまとめた合本版です。
  • 涙(上)

    3.8
    1~2巻693~781円 (税込)
    「ごめん。もう、会えない」。東京オリンピック開会式の前日、婚約者で刑事の奥田勝から、電話でそう告げられた萄子は愕然とする。まもなく、奥田の先輩刑事の娘が惨殺され、奥田が失踪していたことも判明。挙式直前の萄子はどん底に突き落とされた。いったい婚約者の失踪と事件がどう関わっているのか。間違いであって欲しい……。真実を知るため、萄子はひとりで彼の行方を追った。
  • なみだ蟹のムーンライト・チアーズ
    -
    心をしばる薬指のかわりに、すべてを断ち切る真っ赤なはさみがほしい。たとえみずから傷つこうとも……。大学卒業後、アナウンサーを目指して東京へ向かうセンリ。神戸を離れられないうしお。発車のベルが鳴り、シンデレラ・エクスプレスがいま、静かに走りはじめた―。デビュー作「夢食い魚のブルー・グッドバイ」に続く待望の第二作。書下ろし「鏡の森で 月夜の晩に」を併録。
  • 波の音が消えるまで―第1部 風浪編―(新潮文庫)
    4.0
    1~3巻649~737円 (税込)
    サーフィンの夢を諦め、バリ島から香港を経由し、流木のようにマカオに流れ着いた伊津航平。そこで青年を待ち受けていたのはカジノの王「バカラ」だった。失った何かを手繰り寄せるようにバカラにのめり込んでいく航平。偶然の勝ちは必要ない、絶対の勝ちを手に入れるんだ――。同じくバカラの魔力に魅入られた老人・劉の言葉に導かれ、青年の運命は静かに、しかし激しく動き出すのだった。
  • 波の音が消えるまで(第1部~第3部)合本版(新潮文庫)
    値引きあり
    -
    サーフィンの夢を諦め、バリ島から香港を経由し、流木のようにマカオに流れ着いた伊津航平。そこで青年を待ち受けていたのはカジノの王「バカラ」だった。失った何かを手繰り寄せるようにバカラにのめり込んでいく航平。偶然の勝ちは必要ない、絶対の勝ちを手に入れるんだ――。同じくバカラの魔力に魅入られた老人・劉の言葉に導かれ、青年の運命は静かに、しかし激しく動き出すのだった。 ※当電子版は新潮文庫版『波の音が消えるまで』第1部~第3部をまとめた合本版です。
  • なめらかで熱くて甘苦しくて(新潮文庫)
    3.4
    少女の想像の中の奇妙なセックス、女の自由をいまも奪う幻の手首の紐、母の乳房から情欲を吸いだす貪欲な嬰児と、はるか千年を越えて女を口説く男たち。やがて洪水は現実から非現実へとあふれだし、「それ」を宿す人々を呑み込んでいく……。水/土/空気/火の四つの元素、そして世界の名をもつ魅惑的な物語がときはなつ生命の迸りと、愛し、産み、老いていく女たちの愛おしい人生。
  • 名もなき星の哀歌(新潮文庫)
    3.3
    新卒銀行員の良平と漫画家志望の健太には裏稼業がある。人の記憶を小瓶に入れて売買する「店」だ。ノルマに追われ奔走する二人は、ある日、路上ライブで流浪の歌姫・星名と出会う。彼女の過去と歌詞に秘められた謎、一家焼死事件の生き残り、迫りくる脅迫者の影、そして、スワンプマンとは誰だ!? 絡まりあう幾多の謎が解けるとき、美しくも残酷な真実が浮かび上がる。新潮ミステリー大賞受賞作。(解説・新川帆立)
  • ならぬ堪忍
    3.6
    城代家老の“御意討ち”を命じられた新八郎は、直(じか)に不正を糺すが、逆に率直な説明を受け、初めて真実を知る。世間の風聞などは信を置くに足らぬと説いた著者の人間観が現れる『宗近新八郎』。藩の“家宝”が象徴する武家の権威を否定して“人間第一主義”を強調する『浪人走馬灯』。生命を賭けるに値する真の“堪忍”とは何かを問う『ならぬ堪忍』など戦前の短編全13作を収める。

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  • なりそこない王子
    4.0
    1巻539円 (税込)
    乞食王子、白雪姫と七人の小人、はだかの王さま、赤頭巾ちゃん、シンデレラ、そしてピーターパン……。おとぎ話の主人公たち総出演の愉快なパロディ「なりそこない王子」をはじめ、深夜の道路を走る霊柩車が拾った死体をめぐるてんやわんやの騒動を描く「死体ばんざい」など、時間と空間を超えて、現実と非現実のはざまでくりひろげられる12編の不思議なショートショートを収録。
  • 南紀新宮・徐福伝説の殺人
    4.0
    二千年以上も昔、秦の始皇帝の命を受け、不老不死の薬を求めて旅立った徐福。在野の徐福研究家である観光会社の社長が、東京のホテルの一室で殺害された。十津川警部は、現場から姿を消した、徐福研究の第一人者で大学准教授の木村修を追って、「特急ワイドビュー南紀」で、徐福上陸伝説の残る南紀新宮へ向かう。古代の伝説に隠された秘密に十津川警部が挑む、長編トラベルミステリー。
  • なんとなくな日々(新潮文庫)
    3.8
    春の宵には、誰もいない台所で冷蔵庫の小さな鳴き声に耳を澄まし、あたたかな冬の日には、暮れに買い置いた蜜柑の「ゆるみ」に気づく。読書、おしゃべり、たまの遠出。日々流れゆく出来事の断片に、思わぬふくよかさを探りあてるやわらかいことばの連なりに、読む歓びが満ちあふれます。ゆるやかにめぐる四季のなか、じんわりしみるおかしみとゆたかに広がる思いを綴る傑作エッセイ集。
  • にぎやかな部屋
    3.5
    1巻440円 (税込)
    マンションの一室。住んでいるのは高利貸しの亭主と占い師の夫人、そして一人娘。そこに金目当ての妙な男たちがやって来て、大騒動が持ち上がる。さらに、死後に人間にとりついてその出来事を皮肉に見守る霊魂たちもからんで……。詐欺師、強盗、霊魂たち――人間界と別次元が交錯する、軽妙なコメディー。会話主体でテンポよく展開、現代の世相と、人間の内面を映し出した異色作。
  • 肉体の悪魔
    4.0
    第一次大戦のさなか、戦争のため放縦と無力におちいった少年と人妻との恋愛悲劇を、ダイヤモンドのように硬質で陰翳深い文体によって描く。ほかに、ラディゲ独特のエスプリが遺憾なく発揮された戯曲『ペリカン家の人々』、コント『ドニーズ』を収める。
  • 肉体の門・肉体の悪魔
    -
    敗戦直後の上野の焼けビルの地下で互いを見張るように共同生活を営む娼婦たち。彼女らは、金を取らずに男と寝た仲間には私刑を加えるというという鉄の掟を守っていた。ある日、警察に追われた男が彼女たちの地下室に逃げ込んできて、生活をともにすることになり、娼婦たちの間には緊張感が走った……。表題2作ほか「女盗記」「霧」「『街の天使』系譜」「男禁制」「鳩の街草話」を収録。
  • ニコライ遭難
    3.9
    明治24年5月、国賓のロシア皇太子を警護の巡査が襲った。この非常事態に、近代国家への道を歩み始めた日本が震撼する。極東進出を目論むロシアに対し、当時日本は余りにも脆弱であった――。皇太子ニコライへの官民を挙げての歓待ぶり、犯人津田三蔵の処分を巡る政府有力者と司法の軋轢、津田の死の実態など、新資料を得て未曾有の国難・大津事件に揺れる世相を活写する歴史長編。

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  • にごりえ・たけくらべ
    4.1
    落ちぶれた愛人の源七とも自由に逢えず、自暴自棄の日を送る銘酒屋のお力を通して、社会の底辺で悶える女を描いた『にごりえ』。今を盛りの遊女を姉に持つ14歳の美登利と、ゆくゆくは僧侶になる定めの信如との思春期の淡く密かな恋を描いた『たけくらべ』。他に『十三夜』『大つごもり』等、明治文壇を彩る天才女流作家一葉の、人生への哀歓と美しい夢を織り込んだ短編全8編を収録する。

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  • 西陣の女
    4.5
    1巻660円 (税込)
    露ぶかい山繭の村、奥信濃の有明から、京都の西陣に奉公に上り、美しい風光の中で、雅やかな西陣の女へと磨かれてゆく刈田紋。つづれ職人・松吉と密かに愛し合い、心惹かれながらも、日本画壇の長老・今畑冬葉の後妻となった紋は、夫の死後、何処へともなく失踪する……。愛憎に絡まれた哀しい女人の物語を、伝統美あふれる西陣つづれ織の世界を背景に、情感豊かに描く長編小説。
  • ニシノユキヒコの恋と冒険
    3.9
    ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ……。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、傑作連作集。
  • 虹いくたび
    -
    建築家水原のそれぞれ母の違う三人の娘、自殺した母の悲劇と戦争に恋人を奪われた心の傷みのために次々と年下の美少年を愛する姉百子、京都の芸者の子である妹若子、全く性格の違う姉や妹をはらはらと見守る優しい麻子。大徳寺、都踊り、四条から桂離宮――雅やかな京風俗を背景に、琵琶の湖面に浮んだ虹のはかなさ美しさにも似た三姉妹の愛と生命の哀しみを描く名作。

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  • 虹と修羅
    -
    敗戦直後、宗像滋子は子宮癌の手術を受け、女の機能を喪失する。再発を恐れる彼女に、打算で結婚した夫と、学業も投げやりにして歌舞伎役者になろうとする娘との、神経を磨り減らす生活が重くのしかかる。そんな日々の中、彼女は昔の恋人との交際に慰められ、小説を書くことに情熱を燃やすが……。一人の女性の理性と情念の相剋。『朱を奪うもの』『傷ある翼』に続く三部作の終局。
  • 二十四の瞳
    4.1
    1巻396円 (税込)
    海辺の寒村に、女子師範学校出の大石先生が赴任してきた。担当する分教場の小学一年生は十二人。新米先生は、様々な家庭の事情を抱えた生徒たちを慈愛に満ちた眼差しで導き、時と場所を越えた師弟関係を築いていく。やがて戦争、そして敗戦。自らも苦渋の季節を経て、四十になった先生は、再び分教場の教壇に立ち、昔の教え子の子どもたちと出会う。真の師弟愛を描いた不朽の名作。

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  • 二十四時間
    3.1
    幼なじみの“よっちゃん”は、会う度に違った。私立の詰め襟中学生、暴走族の高校生、恋する浪人生。でもその内面はいつも温かで……(「二十二時」)。子供の頃、雪の積もった帰り道を歩いた。方向感覚を失って、“遠く”という“悲しく寂しい場所”に迷い込んでしまった(「十七時」)。人生のそれぞれの風景を鮮やかに切り取った、私小説の味わいを残す、切なく懐かしい二十四の記憶。
  • 二十歳の原点
    3.8
    独りであること、未熟であることを認識の基点に、青春を駆けぬけていった一女子大生の愛と死のノート。学園紛争の嵐の中で、自己を確立しようと格闘しながらも、理想を砕かれ、愛に破れ、予期せぬうちにキャンパスの孤独者となり、自ら生命を絶っていった痛切な魂の証言。明るさとニヒリズムが交錯した混沌状態の中にあふれる清冽な詩精神が、読む者の胸を打たずにはおかない。

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  • 二十歳の原点序章
    4.0
    高校三年生の秋から、受験、親もとを離れての京都での学生生活を通し、美しい山野への憧れ、歴史に対する興味、社会の矛盾への怒りなど、二十歳の凄烈な死にいたる青春の夢と激情を、絶えず何かを求め、戸惑い悩む未熟な孤独の心で記したノート。
  • 二十歳の原点ノート
    4.0
    自己、家族、友だちについて語る断面からは、明るく多感で利発な少女の素顔がうかがえる。高校へ進学し、バスケットクラブと受験勉強の両立に苦悩しながら、精一杯に努力し真剣に生きた姿は、同じ悩みを知る多くの人々の心に深く刻まれるであろう。
  • 偽原始人
    4.5
    塾も家庭教師もクソ喰らえ。教育ママの横暴には、もう我慢できない! 大好きな容子先生が、鬼婆どもに追いつめられて自殺をはかったと知るや、小学生三人組は遂に反乱を起した。暗殺計画、家出、誘拐、トム・ソーヤーも顔まけの奇想天外な造反あの手この手。だが、その行末や如何に……? 現代社会の虚飾を剥ぎとり、鈍感な大人たちを慄えあがらせるスリリングな長編冒険小説。
  • 贋食物誌
    -
    鮨屋でトロをたくさん食べるのはなぜその店に気の毒であるのか、別府温泉の城下がれいがいかに美味であるか、落花生と南京豆とピーナッツは同じものか異なるものか、等々。たべものを話の枕に、男女の問題、少年期の回想、交友、お酒、セックス、ギャンブルその他、豊富な人生経験を自在に語る洒脱なエッセイ。
  • ニセモノの妻(新潮文庫)
    3.6
    「もしかして、私、ニセモノなんじゃない?」妻と思ってきた女の衝撃的な一言で始まったホンモノの妻捜し。けれど僕はいったい誰を愛してきたのだろう(「ニセモノの妻」)。ある日、仲睦まじい夫婦の妻だけが時間のひずみに囚われてしまった。共に明日を迎えられない彼女のために夫がとった行動は――(「断層」)。その他、非日常に巻き込まれた4組の夫婦の、不思議で時に切なく温かな短編集。(解説・中江有里)
  • 日常生活の冒険
    4.0
    たぐい稀なモラリストにして性の修験者斎木犀吉――彼は十八歳でナセル義勇軍に志願したのを手始めに、このおよそ冒険の可能性なき現代をあくまで冒険的に生き、最後は火星の共和国かと思われるほど遠い見知らぬ場所で、不意の自殺を遂げた。二十世紀後半を生きる青年にとって冒険的であるとは、どういうことなのであろうか? 友人の若い小説家が物語る、パセティックな青春小説。
  • 日曜日の万年筆
    4.0
    池波正太郎のエッセイには――男の本音がある、人生がある、生きる楽しみを享受する男のリズムがある。作家への道を拓いた幼き日の観劇の一日、手と躰で物を造る感覚を養った旋盤工時代、行きづまった小説の結末を見いだしてくれた飼い猫ネネの話、映画のこと、衣食住について、現代人の見失ったもの、仕事の裏ばなしなど……。手練の切れ味を見せる“とっておきの51話”。

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  • 日蓮(新潮文庫)
    3.0
    地震が起こる。疫病が蔓延する。命が無惨に失われる。何故だ。日本が悪法に染まってしまったからだ――。日蓮は法華経への帰依を説き、他宗派に敢然と挑む。それは権力者たる北条氏を敵とすることに等しかった。斬首の危機、佐渡への配流。苦難の中で、信じる法をひたすら世に広め続ける日蓮は、その信仰と情熱で人びとを救うことができるのか。歴史を動かした僧の半生を描く、感動巨編。(解説・末國善己)
  • 日蝕・一月物語
    3.7
    錬金術の秘蹟、金色に輝く両性具有者(アンドロギュノス)、崩れゆく中世キリスト教世界を貫く異界の光……。華麗な筆致と壮大な文学的探求で、芥川賞を当時最年少受賞した衝撃のデビュー作「日蝕」。明治三十年の奈良十津川村。蛇毒を逃れ、運命の女に魅入られた青年詩人の胡蝶の夢の如き一瞬を、典雅な文体で描く「一月物語」。閉塞する現代文学を揺るがした二作品を収録し、平成の文学的事件を刻む。
  • 新田義貞(上)
    -
    ともに源氏の嫡流でありながら、かたや足利氏の女(むすめ)を室(しつ)としてむかえる園田庄と、無位無冠の新田庄とは、上野国で代々、水争いを続けていた。元弘2年(1322年)新田家8代の小太郎義貞は、京都大番役の役目をはたして帰郷の折、鎌倉に立ち寄り足利氏の面々を訪れる。足利尊氏や楠正成の陰に隠れながら、源氏再興の夢を賭けた悲運の武将の生涯を活写する。山岳小説の名手が書き上げた傑作時代小説(全2冊)。

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  • ニッチを探して
    3.1
    背任の疑いをかけられた大手銀行員・藤原道長は、妻と娘を置いて失踪した。人目を避けた所持金ゼロの逃亡は、ネットカフェから段ボールハウス、路上を巡り、道長は空腹と孤独を抱え、格差の底へと堕ちてゆく。一方、横領の真の首謀者たる銀行幹部たちは、事件の露見を怖れ、冷酷な刺客を放つ――。逆転の時は訪れるのか。東京の裏地図を舞台に巨額資金を巡る攻防戦の幕が開く!
  • ニッポン居酒屋放浪記 立志篇
    4.3
    1~3巻638~671円 (税込)
    日本中の居酒屋を飲み歩くという志を、ひとたび立てたからには後には引けぬ―。大阪で焼いたタコの湯気にのぼせつつ杯を重ね、新潟で枝豆を肴に地酒を飲み比べ、小倉でフグや鯖を熱燗とともに味わい…地元に息づく市井の酒場、失われゆく古きよき居酒屋を求めて、今日も流浪の旅は続く。各地で出会った酒と肴と人の醍醐味を語り尽くす極上の居酒屋探訪記の第一弾、ついに登場。
  • 日本亭主図鑑
    -
    亭主図鑑といいながら、女性のことしか書いてないのは、詐術か奇略か謎々か……? 機知縦横の井上ひさしが、男が一生連れ添わねばならぬ女という不気味な同志へ贈る痛快痛恨のメッセージ。女性の生態について怒り心頭に発し、ありとあらゆる口舌筆法を使って、亭主の置かれている悲劇的状況を明らかにする。大笑いして読むか、神妙に自己反省するかは、読み手のあなた次第!
  • 二都物語
    4.2
    フランスの暴政を嫌って渡英した亡命貴族のチャールズ・ダーネイ、人生に絶望した放蕩無頼の弁護士シドニー・カートン。二人の青年はともに、無実の罪で長年バスティーユに投獄されていたマネット医師の娘ルーシーに思いを寄せる。折りしも、パリでは革命の炎が燃え上がろうとしていた。時代の荒波に翻弄される三人の運命やいかに? 壮大な歴史ロマン、永遠の名作を新訳で贈る。
  • 日本語 根ほり葉ほり
    -
    語源も分からない「けじめ」をつけろと言われても……?「そこをなんとか」のそことはどこ? なんとかとは何?「厳粛に受けとめて」「前向きに善処する」と言えばそれで一件落着? 物事を認識するために最も重要であるはずの言葉を軽視し、深く定義もせずに流通させ、言葉のバブル化を招いている現代日本人への警告の書。毎日使っている日本語を通して、日本人が見えてくる――。
  • 日本語八ツ当り
    5.0
    賢人会議、オバさんしてる、だってェ――。言葉遣いは好みの問題、目くじら立てるのは野暮だと知ってはいるけれど、野暮を承知で言わせてほしい。こんな日本語、勘弁してよ。新聞記事や広告コピー、役人の文章や若者の言葉……。意味不明な言語、大人になりきれない幼児化した物言い、思い上がった低劣卑俗な造語を次々に槍玉にあげ、乱れきった日本語を一刀両断する痛快エッセイ。
  • 日本の敵(新潮文庫)
    4.5
    日本は今、歴史戦を挑まれている。闘いの主戦場を国連に広げ、不条理な非難を浴びせ続ける相手の主軸は中国である。だが、忘れてはならない。慰安婦問題をはじめ、わが国の名誉を汚す歴史非難の原因を作ったのは日本人だったということを。敵は内にも外にもいるのだ。私たちは、果敢に、粘り強く、真実を示し続けなければならない。主張する勇気と知性を身につけ、勁(つよ)き国家を創る術を説く。
  • 「日本の伝統」の正体(新潮文庫)
    3.9
    その伝統、本当に昔からあった? お正月の定番「初詣」も「重箱おせち」も、実は私鉄や百貨店のキャンペーンから生まれた新しい文化。喪服は黒、土下座が謝罪のポーズになったのも実はごく最近。行事・風習・食生活……日常のいたるところに潜む、一見それらしい“昔からのしきたり”や“和の心”の裏側には、面白エピソードが盛りだくさん。楽しく学べるベストセラーに大幅増補して文庫化。
  • 日本むかしばなし集(一)
    4.0
    1~3巻495~605円 (税込)
    ぼたん雪のふりしきる冬の日、わなにかかっていた一羽の鶴が、貧しいまき売りの老人に助けられ、美しい布を織って恩がえしをする『ツルの恩がえし』ほか、心温まる日本の昔話の精粋39編を収録。遠いむかしから語りつがれてきた数々の伝承は、作者の清冽な心に洗われてほのぼのとした輝きを加え、大人と子供の世界の交流の場ともいうべき美しい夢想の境を構築している。
  • 女系家族(上)
    4.0
    1~2巻693円 (税込)
    大阪・船場の老舗矢島家は代々跡継ぎ娘に養子婿をとる女系の家筋。その四代目嘉蔵が亡くなって、出もどりの長女藤代、養子婿をむかえた次女千寿、料理教室にかよう三女雛子をはじめ親戚一同の前で、番頭の宇市が遺言書を読み上げる。そこには莫大な遺産の配分方法ばかりでなく、嘉蔵の隠し女の事まで認められていた。……遺産相続争いを通し人間のエゴと欲望を赤裸々に抉る長編小説。

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  • 女系家族(上下)合本版(新潮文庫)
    値引きあり
    -
    大阪・船場の老舗矢島家は代々跡継ぎ娘に養子婿をとる女系の家筋。その四代目嘉蔵が亡くなって、出もどりの長女藤代、養子婿をむかえた次女千寿、料理教室にかよう三女雛子をはじめ親戚一同の前で、番頭の宇市が遺言書を読み上げる。そこには莫大な遺産の配分方法ばかりでなく、嘉蔵の隠し女の事まで認められていた。……遺産相続争いを通し人間のエゴと欲望を赤裸々に抉る長編小説。 ※当電子版は新潮文庫版『女系家族』上下巻をまとめた合本版です。
  • 女体幻想
    -
    生来の快楽主義者であり、病気のなかにさえ愉しみを見いだすと、友人たちから冷やかされていた作家もいまは70歳。そして、老作家の過去は少しずつ年と共に死んで行き、女体への追憶による彼の魂は、壮年のそれから青年に、少年に、幼児にと時間を遡る。乳房・背中・髪・脣・瞳・茂み・臍・掌・腰・顔……それらは彼に記憶された女体。眩い光と濃い影の性愛の世界へ誘う幻想小説。
  • 楡家の人びと 第一部
    4.4
    1~3巻649~693円 (税込)
    溢れる楽天性と人当たりの良さで患者の信頼を集めるドクトル楡基一郎が、誇大妄想的な着想と明治生まれの破天荒な行動力をもって、一代で築いた楡脳病院。その屋根の下で、ある者は優雅に、ある者は純朴に、ある者は夢見がちに、ある者は漠とした不安にとまどいながら、それぞれの生を紡いでゆく。東京青山の大病院と、そこに集う個性豊かな一族の、にぎやかな年代記の幕が上がる。
  • 楡家の人びと(第一部~第三部) 合本版
    値引きあり
    3.0
    1巻1,409円 (税込)
    溢れる楽天性と人当たりの良さで患者の信頼を集めるドクトル楡基一郎が、誇大妄想的な着想と明治生まれの破天荒な行動力をもって、一代で築いた楡脳病院。その屋根の下で、ある者は優雅に、ある者は純朴に、ある者は夢見がちに、ある者は漠とした不安にとまどいながら、それぞれの生を紡いでゆく。東京青山の大病院と、そこに集う個性豊かな一族の、にぎやかな年代記の幕が上がる。 ※当電子版は『楡家の人びと』(第一部)~(第三部)の全三巻をまとめた合本版です。
  • 庭(新潮文庫)
    4.1
    私は夫と離婚をする。そのことを両親に報告せねばならない。実家へ向かう路線バスのなかで、老人たちがさかんに言い交わす「うらぎゅう」。聞き覚えのない単語だったが、父も母も祖父もそれをよく知っているようだ――。彼岸花。どじょう。クモ。娘。蟹。ささやかな日常が不条理をまといながら変形するとき、私の輪郭もまた揺らぎ始める。自然と人間の不可思議が混然一体となって現れる15編。(解説・吉田知子)
  • 人形の家(新潮文庫)
    3.9
    小鳥のように愛され、平和な生活を送っている弁護士の妻ノラには秘密があった。夫が病気の時、父親の署名を偽造して借金をしたのだ。秘密を知った夫は社会的に葬られることを恐れ、ノラをののしる。事件は解決し、夫は再びノラの意を迎えようとするが、人形のように生きるより人間としていきたいと願うノラは三人の子供も捨てて家を出る。近代劇確立の礎石といわれる社会劇の傑作。
  • 人間ぎらい
    -
    夫の女ぐせの悪さに嫌気がさし家出した桐江は、連れ込み旅館で働いている。今は何が起ころうと無感動、寂しさも消え、なぜか安心して暮している桐江。それは、「人間ぎらい」(表題作)になったからなのか――。夫に裏切られる女、妻に踏みにじられる男。男と女の、相寄り相離れる感情の動きや不可思議な成り行きをユーモアの中に、ほんの少し人生のホロ苦さをミックスして描く9編。
  • 人間ぎらい
    3.8
    主人公のアルセストは世間知らずの純真な青年貴族であり、虚偽に満ちた社交界に激しい憤りさえいだいているが、皮肉にも彼は社交界の悪風に染まったコケットな未亡人、セリメーヌを恋してしまう――。誠実であろうとするがゆえに俗世間との調和を失い、恋にも破れて人間ぎらいになってゆくアルセストの悲劇を、涙と笑いの中に描いた、作者の性格喜劇の随一とされる傑作。
  • 人間の絆(上)(新潮文庫)
    3.7
    幼くして両親を失い、牧師である伯父に育てられた青年フィリップ。不自由な足のために劣等感にさいなまれて育ったが、いつしか信仰心を失い、芸術に魅了されてパリに渡る。しかし若き芸術家仲間と交流する中で、自らの才能の限界を知り、彼の中で何かが音を立てて崩れ去る。やむなくイギリスに戻り、医学を志すことになるのだが……。誠実な魂の遍歴を描いたS・モームの決定的代表作を新訳。
  • 人間万事塞翁が丙午
    4.0
    呉服問屋が軒をつらねる東京・日本橋堀留町の仕出し弁当屋〈弁菊〉。人情味豊かであけっぴろげ、良くも悪くもにぎやかな下町に、21歳で嫁いできたハナは、さまざまな事件に出会いながらも、持ち前のヴァイタリティで乗り切ってゆく。――戦中から戦後へ、激動の時代をたくましく生きた庶民たちの哀歓を、自らの生家をモデルにいきいきと描き出した、笑いと感動の下町物語。直木賞受賞。
  • 忍者丹波大介
    3.3
    豊臣秀吉歿後、諸国大名の勢力は二つに分れ、関ヶ原の合戦で徳川方が勝利をおさめる。激変する時代の波のなかで、信義をモットーにしていた甲賀忍者のありかたも変質していく。丹波大介は甲賀の立場をすて一匹狼となり、自分が信ずるものにだけ従い、黒い刃風をくぐって活躍する。さまざまの武将の去就と歴史の裏側で暗躍する忍びの者の裸形を痛快に描く長編時代小説。
  • 人情裏長屋
    4.0
    居酒屋でいつも黙って一升枡で飲んでいる浪人、松村信兵衛の胸のすく活躍と人情味あふれる子育ての物語『人情裏長屋』。天一坊事件に影響されて家系図狂いになった大家に、出自を尋ねられて閉口した店子たちが一計を案ずる滑稽譚『長屋天一坊』。ほかに『おもかげ抄』『風流化物屋敷』『泥棒と若殿』『ゆうれい貸屋』など周五郎文学の独壇場ともいうべき“長屋もの”を中心に11編を収録。

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  • 人情武士道
    3.5
    御用人の佐藤欽之助は、妻を通して琴の稽古友達だった女から、夫の仕官の世話を頼まれる。その女が、かつて縁談を申し込んで断られた和枝であることを知った欽之助は、思いがけない行動で依頼を果たす……。著者の鋭い人間観察眼を際立たせている表題作の他に、後年の“職人もの”の先駆をなす「しぐれ傘」や“滑稽もの”の「竜と虎」など、初期の傑作12編を収める。

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  • にんじん
    3.9
    にんじん――。髪の毛が赤くてそばかすだらけのルピック家の三番目の男の子はみんなからそう呼ばれている。あだなをつけたのはお母さんだ。お母さんは、にんじんに夜の暗闇のなかをにわとり小屋の扉を閉めに行かせたり、おもらししたおしっこを朝食のスープに混ぜて飲ませたりする……。だが、にんじんは母親のいじわるにも負けずに成長してゆく。生命力あふれる自伝的小説の傑作。
  • 額田女王
    3.8
    大化改新後の激動する時代、万葉随一の才媛で“紫草のにほへる妹”とうたわれた額田女王をめぐる大ロマン。朝鮮半島への出兵、蝦夷征伐、壬申の乱……と古代国家形成のエネルギーがくろぐろと渦巻く中で、天智・天武両天皇から愛され、恋と動乱の渦中に生きた美しき宮廷歌人の劇的で華やかな生涯を、著者独自の史眼で綴り、古代人の心を探った詩情ゆたかな歴史小説。
  • ぬばたま(新潮文庫)
    3.4
    ときどき、こんな人がいるのです。山に入ったまま、帰って来られなくなってしまった人が──。仕事も家族も失い、絶望のうちに山を彷徨う男が見た恐ろしい幻影。少女の頃に恋した少年を山で失った女の、凄絶な復讐。山で見たおぞましい光景が狂わせた、幼なじみ三人の運命。死者の姿が見える男女の、不思議な出会い。闇と光、生と死、恐怖と陶酔が混じり合う、四つの幻想的な物語。
  • 沼地のある森を抜けて(新潮文庫)
    4.1
    はじまりは、「ぬかどこ」だった。先祖伝来のぬか床が、うめくのだ――「ぬかどこ」に由来する奇妙な出来事に導かれ、久美は故郷の島、森の沼地へと進み入る。そこで何が起きたのか。濃厚な緑の気息。厚い苔に覆われ寄生植物が繁茂する生命みなぎる森。久美が感じた命の秘密とは。光のように生まれ来る、すべての命に仕込まれた可能性への夢。連綿と続く命の繋がりを伝える長編小説。
  • ぬるい毒(新潮文庫)
    3.5
    あの夜、同級生と思しき見知らぬ男の電話を受けた時から、私の戦いは始まった。魅力の塊のような彼は、説得力漲る嘘をつき、愉しげに人の感情を弄ぶ。自意識をずたずたにされながらも、私はやがて彼と関係を持つ。恋愛に夢中なただの女だと誤解させ続けるために。最後の最後に、私が彼を欺くその日まで──。一人の女の子の、十九歳から五年にわたる奇妙な闘争の物語。渾身の異色作。
  • ネイティヴ・サン―アメリカの息子―(新潮文庫)
    4.3
    1930年代、大恐慌下のシカゴ。アフリカ系の貧しい青年ビッガー・トマスは、資本家令嬢で共産主義に傾倒する白人女性を誤って殺害してしまう。発覚を恐れて首を斬り、遺体を暖房炉に押し込んだその時、彼の運命が激しく変転する逃走劇が始まった――。現在まで続く人種差別を世界に告発しつつ、アフリカ系による小説を世界文学の域へと高らしめた20世紀アメリカ文学最大の問題作が待望の新訳。
  • 猫だましい
    3.9
    こころの専門家・河合隼雄先生は、実は大のネコ好きです。今までに読んだ古今東西のたくさんの猫物語の中から、特にお気に入りのにゃんこ達を選んで、お話しいただきました。長靴をはいた猫、空飛び猫、鍋島の化け猫、100万回生きたねこ……ネコのことが分ると、ヒトの心も分る、かもしれませんよ。(大島弓子さんの感想マンガは電子書籍版には収録しておりません。)
  • 猫といっしょにいるだけで(新潮文庫)
    4.4
    五十代、独身、母と二人暮らし。仕事のスランプで切羽詰る日々だった。訪れた神社で「しあわせをください」とつぶやいた翌日、庭の白木蓮の切り株に、彼らは舞い降りた。「猫は嫌いだし、生き物は飼わない」と決めていたが、愛護協会や保健所も頼れない……。やがて始まるにぎやかで、穏やかな日常。『日日是好日』の著者が描く、笑って泣ける猫日和! 『いっしょにいるだけで』改題。(解説・酒井順子)
  • 猫と針
    3.1
    1巻396円 (税込)
    高校時代の友人が亡くなり、映画研究会の同窓生男女5人が葬式帰りに集まった。小宴がはじまり、四方山話に花が咲くが、どこかぎこちない面々。誰かが席を外すと、残りの仲間は、憶測をめぐらし不在の人物について語り合う。やがて話題は、高校時代の不可解な事件へと及んだ……。15年前の事件の真相とは? そしてこの宴の本当の目的は? 著者が初めて挑んだ密室心理サスペンス劇。
  • 猫を拾いに(新潮文庫)
    3.9
    誕生日の夜、プレーリードッグや地球外生物が集い、老婦人は可愛い息子の将来を案じた日々を懐かしむ。年寄りだらけになった日本では誰もが贈り物のアイデアに心悩ませ、愛を語る掌サイズのおじさんの頭上に蝉しぐれが降りそそぐ。不思議な人々と気になる恋。不機嫌上機嫌の風にあおられながら、それでも手に手をとって、つるつるごつごつ恋の悪路に素足でふみこむ女たちを慈しむ21篇。
  • ねじの回転(新潮文庫)
    3.8
    イギリス郊外に静かに佇む古い貴族屋敷に、両親と死別し身を寄せている眉目秀麗な兄と妹。物語の語り手である若い女「私」は二人の伯父に家庭教師として雇われた。私は兄妹を悪の世界に引きずりこもうとする幽霊を目撃するのだが、幽霊はほかの誰にも見られることがない。本当に幽霊は存在するのか? 私こそ幽霊なのではないのか? 精緻で耽美な謎が謎を呼ぶ、現代のホラー小説の先駆的な名著。
  • ねじまき鳥クロニクル(第1部~第3部)合本版(新潮文庫)
    4.0
    1巻2,607円 (税込)
    「人が死ぬのって、素敵よね」彼女は僕のすぐ耳もとでしゃべっていたので、その言葉はあたたかい湿った息と一緒に僕の体内にそっともぐりこんできた。「どうして?」と僕は訊いた。娘はまるで封をするように僕の唇の上に指を一本置いた。「質問はしないで」と彼女は言った。「それから目も開けないでね。わかった?」僕は彼女の声と同じくらい小さくうなずいた。(本文より) ※当電子版は新潮文庫版『ねじまき鳥クロニクル』第1部~第3部の全3巻をまとめた合本版です。
  • 根っこと翼―美智子さまという存在の輝き―(新潮文庫)
    -
    自分の中だけにしまっておくのはあまりにもったいないと思ってきた――。「私たち、同じ本を持っているのね」とおっしゃる純情さ。「私はやはりキリギリスね」と楽しそうに語るお声。「陛下が誘ってくださったの」とお喜びだったダンス。そして、悲しみに寄り添う「根っこ」と、希望へと飛翔する「翼」を世界中に届けた歴史的スピーチの背景。二十年来の親友が綴る美智子さまとの珠玉の時間。(解説・尾崎真理子)
  • 熱帯植物園
    3.0
    覚えたてのセックスは考えてたよりよかった。正直いっていまは猿のようにはまってる。でもあたしには生理がまだない。女じゃないのにセックスしてる――。16歳になった日、下校途中に、薔薇の花束を抱えた派手な女が待っていた。あたしと同じ名前のおやじの愛人が……。ほとんど拉致されて連れて行かれたレストランで、おやじの愛人・由美が言った。「名前を変えてほしいの」――。10代の生と性を描いた5編を収録。R指定の室井佑月衝撃のデビュー作!

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  • 寝ても覚めても本の虫
    3.9
    「もうぞくぞくとするような楽しみなのだ」――大好きな作家の新刊を開く、この喜び! 本のためなら女房の小言も我慢、我慢。眺めてうっとり、触ってにんまり。ヒーローの怒りは我が怒り、ヒロインの涙は我が溜め息。出会った傑作は数知れず。運命の作家S・ツヴァイク、目下の“最高”N・デミル、続編が待ち遠しいT・ハリスに、永遠の恋人M・H・クラーク……。ご存じ読書の達人、児玉清さんの「海外面白本探求」の日々を一気に公開。

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  • 眠狂四郎虚無日誌(上)(新潮文庫)
    4.5
    旗本の妻女を次々に犯し、無辜の民をも容赦なく斬る――。質実英邁と目されていた将軍家世継・徳川家慶が突如豹変し、乱行を重ねていた。家慶は何故豹変したのか、本物なのか。その鍵は、四年前に没したはずの近藤重蔵にあった。蝦夷地に秘められた謎を探る狂四郎。襲いかかる公儀隠密、最強の刺客明日心剣。謎と謎が交錯し、淫靡なエロティシズムが匂い立つ出色のシリーズ第五弾。
  • 眠狂四郎孤剣五十三次(上)(新潮文庫)
    -
    水野越前守忠邦の側用人・武部仙十郎の密命により、徳川幕府に対する薩摩など西国十三藩の謀議を探るため東海道を西へ向う眠狂四郎。江戸日本橋で岸和田藩主の懐中より謀議の連判状をまきあげたのを皮切りに、五十三の宿駅ごとに待ち受ける各藩のさまざまな刺客と対峙しながら旅を続ける。赴くところ、襲い来る凶刃と上がる血煙! 各宿駅の風物・人情を背景に狂四郎の活躍を綴る快作。
  • 眠狂四郎殺法帖(上)(新潮文庫)
    5.0
    佐渡の金銀山の不正を探るために西丸老中・水野越前守の送り込んだ隠密が、次々に姿を消した。真相究明を依頼された眠狂四郎の前に立ちはだかる刺客たち――少林寺拳法の達人・陳孫の助けを借り、刺客をかわしながら狂四郎が探り出したのは、本丸老中・水野出羽守、加賀百万石、豪商・銭屋五兵衛らの、将軍家斉を操り人形にしようとする恐るべき陰謀であった……。
  • 眠狂四郎独歩行(上)(新潮文庫)
    -
    二代将軍秀忠の正統を称する若者を頭にあおぎ、幕府転覆をはかる風魔一族と傾いた幕府の支柱たるべく旗本八万騎からえらばれた秘密集団黒指党との壮絶な死闘。葵の刺青を持つ娘を救ったために死闘にまきこまれた狂四郎に風魔の手練者が襲いかかる。狂四郎を慕う薄幸の美女、予知能力をもつ怪盗、そして、冴えわたる秘剣円月殺法……。殺気とエロチシズムに溢れる本格伝奇時代長編。
  • 眠狂四郎無頼控(一)(新潮文庫)
    4.2
    徳川二百年の泰平が文化・文政の爛熟を生んで、人情、風俗ともに頽廃した江戸を舞台に、異端の剣客眠狂四郎を登場させ、縦横無尽の活躍を描く。ころび伴天連が大目付の娘を犯して生ませた混血特有の風貌で女をひきつけ、しかも平然と犯し、異常の剣“円月殺法”をふるって容赦なく人を斬る。昭和31年「週刊新潮」の創刊とともに登場するや大反響をまき起した著者の代表作である。
  • 眠狂四郎無頼控(一~六)(新潮文庫) 合本版
    値引きあり
    -
    徳川二百年の泰平が文化・文政の爛熟を生んで、人情、風俗ともに頽廃した江戸を舞台に、異端の剣客眠狂四郎を登場させ、縦横無尽の活躍を描く。ころび伴天連が大目付の娘を犯して生ませた混血特有の風貌で女をひきつけ、しかも平然と犯し、異常の剣“円月殺法”をふるって容赦なく人を斬る。昭和31年「週刊新潮」の創刊とともに登場するや大反響をまき起した著者の代表作である。 ※当電子版は『眠狂四郎無頼控』(一)~(六)の全六巻をまとめた合本版です。
  • 眠狂四郎無情控(上)(新潮文庫)
    -
    豊臣秀頼は生きていた。大坂城落城後、西国のある藩で庇護され、死の直前、豊臣遺産百万両のありかを示す文書を大奥に隠した――。シャム、ラオス等の在留邦人の夢を背負った美女千華、陽明学に基づく改革を願う同朋衆百名、悪徳商人阿蘭陀屋嘉兵衛、謎の兵法者死神九郎太、目付下条主膳等、いずれもが百万両争奪に命を賭ける。狂四郎の運命や如何に。シリーズ最高峰の痛快伝奇活劇。
  • 眠れぬ真珠
    4.0
    出会いは運命だった。17も年下の彼に、こんなにも惹かれてゆく――。孤高の魂を持つ、版画家の咲世子。人生の後半に訪れた素樹との恋は、大人の彼女を、無防備で傷つきやすい少女に変えた。愛しあう歓びと別離の予感が、咲世子の中で激しくせめぎあう。けれども若く美しいライバル、ノアの出現に咲世子は……。一瞬を永遠に変える恋の奇蹟。情熱と抒情に彩られた、最高の恋愛小説。
  • 眠れる美女
    3.7
    波の音高い海辺の宿は、すでに男ではなくなった老人たちのための逸楽の館であった。真紅のビロードのカーテンをめぐらせた一室に、前後不覚に眠らされた裸形の若い女――その傍らで一夜を過す老人の眼は、みずみずしい娘の肉体を透して、訪れつつある死の相を凝視している。熟れすぎた果実の腐臭に似た芳香を放つデカダンス文学の名作「眠れる美女」のほか「片腕」「散りぬるを」。

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  • 眠れる森の美女―シャルル・ペロー童話集―
    4.5
    仙女の呪いで百年の眠りについた美しい王女――。王子様のお迎えで目覚めたのちの恐怖を描いた表題作のほか、赤頭巾ちゃん、長靴をはいた猫、親指小僧からシンデレラまで。あの懐かしい童話が新鮮な翻訳と美しく読みやすい活字、繊細な挿絵とともに甦りました。不思議でロマンチックで楽しい。そしてちょっとだけグロテスクで残酷……。そんなペローの童話の世界へ、ようこそ!
  • ノエル―a story of stories―
    4.0
    孤独と暴力に耐える日々のなか、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の圭介。妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、主人公と会話するように童話の続きを書き始める小学生の莉子。妻に先立たれ、生きる意味を見失いながらボランティアで読み聞かせをする元教師の与沢。三人が紡いだ自分だけの〈物語〉は、哀しい現実を飛び越えてゆく――。最高の技巧に驚嘆必至、傑作長編ミステリー。
  • 野菊の墓
    4.0
    政夫と民子は仲の良いいとこ同士だが、政夫が十五、民子が十七の頃には、互いの心に清純な恋が芽生えていた。しかし民子が年上であるために、ふたりの思いは遂げられず、政夫は町の中学へ、民子は強いられ嫁いでいく。数年後、帰省した政夫は、愛しい人が自分の写真と手紙を胸に死んでいったと知る。野菊繁る墓前にくずおれる政夫……。涙なしには読めない「野菊の墓」、ほか三作を収録。

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  • 残りものには、過去がある(新潮文庫)
    3.8
    「あの子さ、やっぱりお金目当てかな」まだ肌寒い春の日、清掃会社の2代目社長・友之と、同じ会社で契約社員として働く早紀の結婚式が始まった。18歳差のカップルを揶揄する声を耳にしつつ、栄子は披露宴の祝辞に臨む。今日初めて会った新婦の〈友人代表〉として――。列席した新郎の旧友、新婦の従姉、そして主役の二人も、人には言えない秘密を抱えていた。誰かの幸せを祈りたくなる6編!(解説・一木けい)
  • 望みは何と訊かれたら
    3.8
    パリの美術館で、槙村沙織は三十数年ぶりに秋津吾郎に再会する。彼こそは、学生運動の果ての凄絶な粛清リンチから身ひとつで逃走した二十歳の沙織を、半年間匿ってくれた男性だった。運命の再会は二人に何をもたらすのか──。殺意と愛情がせめぎあう極限状況で人生を共有しあった男と女ゆえの、根源的な結びつきと、身体も魂も貫く究極の悦楽を描き尽くした著者最高の恋愛小説。
  • 乗取り
    4.0
    株の買占めによる老舗デパートの乗取り。金と若さだけを武器に、現代における最も劇的なこの戦闘に挑んでいく、闇屋あがりの青年実業家、青井文麿。媚びと虚勢を徹底して使いわけ、金と金、顔と顔でつながった財界の厚い壁に体当たりしていく青井の姿に、高度成長期の日本が象徴される。現実に起った事件に材をとり、経済界の深奥での暗闘をスピーディなタッチで暴いてみせた快心作。

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  • 野火
    4.1
    敗北が決定的となったフィリッピン戦線で結核に冒され、わずか数本の芋を渡されて本隊を追放された田村一等兵。野火の燃えひろがる原野を彷徨う田村は、極度の飢えに襲われ、自分の血を吸った蛭まで食べたあげく、友軍の屍体に目を向ける……。平凡な一人の中年男の異常な戦争体験をもとにして、彼がなぜ人肉嗜食に踏み切れなかったかをたどる戦争文学の代表的名作である。

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