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私は夫と離婚をする。そのことを両親に報告せねばならない。実家へ向かう路線バスのなかで、老人たちがさかんに言い交わす「うらぎゅう」。聞き覚えのない単語だったが、父も母も祖父もそれをよく知っているようだ――。彼岸花。どじょう。クモ。娘。蟹。ささやかな日常が不条理をまといながら変形するとき、私の輪郭もまた揺らぎ始める。自然と人間の不可思議が混然一体となって現れる15編。(解説・吉田知子)
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Posted by ブクログ
短編集なのに、重厚感。 最初の「うらぎゅう」から、とにかく気になり、ぞわぞわした。匂いや質感、いろいろ感じられる文章。とくに会話文が好き。
情景など綿密に描写されるありふれてそうな日常を追いかけているうちに、気が付くとありふれているようでそうではない、心がざわざわする世界に誘い込まれてしまっていて。 「彼岸花」と「名犬」が特に好きだった。「名犬」の婆さん2人の会話が最高。 あと、普通そこをきっかけに物語が始まっていくもんだろうというタイ...続きを読むミングでスパッと話が終わる「延長」になんだか痺れてしまった。
リアルな日常の中に、謎の行事「うらぎゅう」や、裏庭の井戸のどじょうをすくいにくるご近所や、校庭を歩き回る蟹などの奇妙な出来事が忍び込んでくるのが、なんとも言えず気持ち悪くて癖になる。 何を伝えたいのかよくわからないのに惹きつけられるのは、現代版内田百閒といった風情がある。 他の作品も気になる。
著者の本は「穴」、「工場」を既読だが、独特の文体が楽しめた.15の短編集だが、匂いに注目している場面が多いと感じた.記憶していることに匂いが連動していることはよく気が付く現象だと思っているが、著者の感覚の鋭さにも関連しているようだ.蟹やクモに注目しているのも意外性があるが、著者の感性に触れるものがあ...続きを読むるのだろう.現実とは少し乖離した世界を漂うような感触が得られる好著だ.
淡々としてて何気ない日常が書かれているように見えて、なんだかゾッとするような不気味さが残る短編たちでした。
一見普通の話のようで、最後数行で、えっ、てなる話の数々。後書きにもあるが、いろんな虫やどじょうや蛙や、苦手な自分からすると薄気味悪い生物がたくさん出てくるが、作者はそれが好きらしい。子供を産むことを期待される嫁(女性)の話がたくさん。避妊手術をした犬が最後に姑のように「ウマンテカ」という『名犬』とか...続きを読む、文学。
短編15作 どれもそんなに長い話ではないけど、たっぷり読んだ感 この少ない文字たちで、どこか別の場所に連れていかれる不思議 知ってるような、どこか経験したような、理解を超えた理解は妙にリアル 好物のダルスープよろしく、どう美味しいは説明できないけど最初から好きでずっと好きみたいな
描写が細かい。私はそこまで思考しないから共感はできないが、常に思考する人はそういう気持ちで過ごしてるのだろうと感じれた。
⚫︎受け取ったメッセージ 虫のような小さな生き物、匂い、共通して庭も登場する短編15篇。 何か引っ掛かる。何かゾワっとする。 日常に起こりそうな不穏。 生きるということは、いつも不確か。 不確かだからこそ、惹きつけられる。 ⚫︎あらすじ(本概要より転載) 私は夫と離婚をする。そのことを両親に...続きを読む報告せねばならない――。 日常の不穏と不条理を浮き彫りにする15編。 芥川賞受賞後初となる作品集、ついに文庫化! 実家へ向かう路線バスのなかで、老人たちがさかんに言い交わす「うらぎゅう」。聞き覚えのない単語だったが、父も母も祖父もそれをよく知っているようだ――。 彼岸花。どじょう。クモ。娘。蟹。ささやかな日常が不条理をまといながら変貌するとき、私の輪郭もまた揺 らぎ始める。自然と人間の不可思議が混然一体となって現れる15編。 目次 うらぎゅう 彼岸花 延長 動物園の迷子 うかつ 叔母を訪ねる どじょう 庭声 名犬 広い庭 予報 世話 蟹 緑菓子 家グモ ⚫︎感想 実家の部屋だったり、借りた家の庭だったり、何が潜んでいるかわからないものに対する畏怖。これらの短編たちから、生物としての人間を強く思わせられる。身近な人であっても不確かさを含んでいる。 ちょっと不穏で不確か、でも描写が克明なので、場面の印象をくっきりと強く感じた。
たとえばマタハラと言ってしまえば簡単に済むが、 (「工場」においては非正規労働の過酷さと済ましてしまう読みもあり得たように) 生理的な居心地悪さを提出する、その手つきゆえに、ホラーであり幻想小説である読後感が生まれる。 人が人としてあるだけで、人が人と関わるそれだけで、必然的に歪みが生じる。 あとは...続きを読む気づくか気づかないかだけで、多くの人は意図的にか無意識には見過ごしている。 それを作者は見る。 カメラでぐいーーっとズームしていくように。(デヴィッド・リンチ「ブルー・ベルベット」の冒頭) 目地も肌理もすべて書き尽くす。 気持ち悪いくらい接写する。 ■うらぎゅう★ ■彼岸花★ ■延長 ■動物園の迷子★ ■うかつ ■叔母を訪ねる ■どじょう★ ■庭声―谷崎潤一郎「鶴唳」によせて ■名犬★ ■広い庭★ ■予報 ■世話 ■蟹★ ■緑菓子 ■家グモ
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