Posted by ブクログ
2022年05月16日
お亡くなりになられたときに私の好きな多くの作家さんが本気で悼み、悲しみから抜け出せずにいるお姿を拝見し、著者の初期の代表作を読んでみたくなりました。
実は、著者の半生はTVで見ただけ、作品は源氏物語とエッセイしか読んだことがなく、小説を読むのは初めてです。
本書は私小説で、主人公が、妻子ある男と8...続きを読む年間不倫関係にあり(それを先方の妻も承知している)、そこに、かつて主人公が離婚する原因となった年下の男が登場し、再び関係を結んでしまうという四角関係が連作短編集の形で収録されていました。
この設定だけ聞くと、ドロドロな愛憎劇をイメージするかもしれませんがそうではありません。
著者の鮮やかな筆至が、初めに感じていた生々しさを読み進める度にどんどん軽減させ、読後はむしろ清々しい印象まで与えています。
主人公は自由だし恋愛体質だし奔放なんでしょうけど、でも、それに勝る覚悟や正直さや冷静さの方が印象的です。
相反する印象が同居し違和感がないのはさすが多くの作家さんが尊敬する方の作品だと思いました。