夏の終り(新潮文庫)

夏の終り(新潮文庫)

小説・文芸
605円 (税込)

3pt

妻子ある不遇な作家との八年に及ぶ愛の生活に疲れ果て、年下の男との激しい愛欲にも満たされぬ女、知子……彼女は泥沼のような生活にあえぎ、女の業に苦悩しながら、一途に独自の愛を生きてゆく。新鮮な感覚と大胆な手法を駆使した、女流文学賞受賞作の「夏の終り」をはじめとする「あふれるもの」「みれん」「花冷え」「雉子」の連作5篇を収録。著者の原点となった私小説集である。

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  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    新潮社
  • 掲載誌・レーベル
    :
    新潮文庫
  • タイトル
    :
    夏の終り(新潮文庫)
  • タイトルID
    :
    1050478
  • 電子版発売日
    :
    2021年12月02日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

閲覧環境

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夏の終り(新潮文庫) のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    習慣になった不倫は断ち切ることが難しい。

    という言葉に度肝を抜かれた。
    不倫が習慣だと? 私たちが普段特に何も考えず、ただ体に染み付いたルーティンのように行っているもの。例えば歯磨き、靴を履く、ご飯を食べる、スマホを触る。
    そんな、とくべつ頭で何も考えなくても自然にできるような習慣化したものの1つに、不倫だとは。

    瀬戸内寂聴はアッパレです。
    感情の言語化が非常に巧みだな。

    そして、本の中で妻子持ちの慎吾と付き合いながら、同じく同時進行で関係を持っている涼太から
    「僕はあなたにとってどんな存在か?」
    と問われたとき、
    主人公の言った
    「憐憫よ」
    という返しにも驚愕した。「P77」
    その時は、へぇ〜憐れみ、可哀想っていう自惚れのような気持ちで付き合っているんだなぁと斜に構えて解釈してしまったのだが、
    改めて考えると、自分にもそんな憐れみの気持ちで付き合っている存在がいなくも、ない、な。
    始めは愛があり、好きなんだけど、本命に気持ちが傾くにつれ2人へ注ぐ愛情は等しくなくなっていく訳で、いつの間にか平行だった天秤はどちらかへ大きく傾き、軽さに上へ上がった方への扱いがぞんざいになってしまう。
    インスタントでキープのような愛人。
    それに比べて、肉体関係を持たなくとも、ただ2人でいるだけで幸せを感じる。浄福という。それが不倫相手だとしても。いや、不倫相手だからこそなのかな。
    2人でいる時間が8年も続けば、それは習慣となるだろう。十何年と毎日行ってきた食後の歯磨きを、今日から止めなさいと言われたら嫌だし違和感感じまくるもの。
    それが恋愛相手ならより一層、断ち切るのは容易ではないのだろう。

    そして、この物語が瀬戸内寂聴の経験に基づいた私小説だということだから、更にリアリティは増す。人生は経験だよ、と身に染みて感じる。
    不倫したことないのに、あたかも自分がしているように思えてしまうから、文章力はさすがだと感じた。

    印象的な文章↓

    P39 愛は抽象的な聖心の貴族であり、肉欲はその前では無様な道化にすぎなかった。

    P117 歳月に綯いからまれた習慣は、裁ち切る努力をするよりも、そのまま巻き込まれていく方が、はるかに安易で楽なのだ。心も安堵の倦怠感になかば満たされかけていることに気づいてぎょっとした。
    ↓慎吾と別れる決断をする主人公のシーン
    P164 別れという土壇場にのぞんでも、知子は新語に切りつける刃があるのなら、それで時分を傷つける方がやさしかった。
    (好きな相手、愛することが習慣化した相手を傷つけるなんてできないもの。)

    0
    2024年05月21日

    Posted by ブクログ

    いかにも、瀬戸内寂聴さんの本です!という題名の、『寂聴 九十七歳の遺言』、『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』などの本よりも、この本や、『あちらにいる鬼』、あと少し毛色が違うかもしれないが『おちゃめに100歳! 寂聴さん』などの方が、インパクトがあって寂聴さんを身近に感じられるような気がする。
    解説にもあるように、「悪魔と愉しみを分つ部分」が拡大されていても、それが深められ、「普遍性を獲得し」ているからなのだろうか。
    『和泉式部日記』も読んでみたくなった。

    0
    2023年05月25日

    Posted by ブクログ

    文章が美しすぎて、いちいち感激しながら読んだ。

    離れられない恋も、結局は日々の忙しない日常に戻ればすぐ埋もれてしまう。
    ふっきれて軽くなった後、桜を見ているシーンはとても良かった。

    0
    2022年06月21日

    Posted by ブクログ

    瀬戸内寂聴さんの訃報に接して初めてその波瀾万丈な人生を知り、作品が気になって読んでみた。

    倫理的にみるとどうしようもなくダメダメだけど、文章から情景が浮かんでくるような、其々の気持ちが痛い程伝わってくる、美しい小説だった。惹き込まれたぁ〜

    私も、男性に転がり込まれた生活を、別れを決意しそれを告げてもなおズルズルと引き摺って仕舞う遣る瀬無さには覚えがある。隣で横になりながら次の場所での生活の手続きをして、自らの決断で残してきたくせに、心が切り裂かれるように淋しくなって、連絡が途切れたら不安で見捨てられたような気持ちになりながらも、いつの間にか新しい生活に慣れて存在を忘れちゃって、ある時ふと本当の別れを実感して一人感傷に浸っちゃうような…
    瀬戸内寂聴さんには遠く及ばないけど、敢えて辛い状況に身を置き、流した涙の量だけ愛が深まるような気がしていた学生の頃の不憫な勘違いを、思い出した。もうあの頃のような気力は到底ない笑
    なかなかに心が掻き乱される作品でした。

    0
    2021年12月12日

    Posted by ブクログ

    8年間妻子ある男との不倫に疲れてきた主人公。
    最初は作者の力に圧倒されたが、少しずつ読み進めると主人公のもとに夫と別れる原因の男と再開し、その男とも関係を持つようになるが、語り口はどこかあっさりとしている。

    最後はどちらの男とも別れることになる。
    きっと中途半端ではダメなのだということに気がついたのだろう。

    大きく分けると2つの話だが、2つとも背景は一緒だった。

    0
    2014年05月08日

    Posted by ブクログ

    ここまで正確に書き連ねられる冷静さが、
    美しくはかなく、彼女を頑強にする。

    習慣による常識の逸脱や、
    それによって発される異様な存在感。

    これを読むことで、私も整理された。

    0
    2014年05月04日

    Posted by ブクログ

    2人の男と互いの関係をぐっちゃぐちゃに絡ませ合う知子。恐るべし。
    彼女はどうしたら満たされるのか…?解決の糸口が全く見えなかった。
    白い着物を着て、汗と泥だらけになりながら浮気相手の家を探す姿がとても痛ましく感じた。
    濃厚な夏の匂いがしてくる小説だった。

    0
    2026年05月02日

    Posted by ブクログ

    映画「あちらにいる鬼」がとても面白かったので、面白かったのに、本書を紐解いた。映画は、中年を過ぎて男と確かに別れるために尼になるまでの、男と瀬戸内寂聴とその妻の不思議な三角関係を、淡々と描いたものだった。

    本書も、著者と不倫男とその家庭との不思議な三角関係が出てくるが、映画の不倫男と本書の不倫男は現実でも別人である。むしろ、映画の前日譚だった。知っていて紐解いた。

    1960年代。未だ不倫が不貞と言われていた時代だ。刊行年は昭和38年(1963年)。瀬戸内晴美(寂聴)が、新進の小説家として台頭していた頃。もしかして未だ井上光晴(「あちらにいる鬼」での不倫男)にも会っていないのかもしれない。晴美(もちろん、小説内では別名になっている。職業も違う)は、経済的に男に依存していない事を誇りにしている。現代ならば当たり前だが、当時としては娼婦以外では画期的だったのか。その他、女性から別れを切り出すとか、新しい不倫の形を描いたとして、当時は意義のある小説だったのかもしれない。

    連作短編で前四篇は登場人物は同じで、むしろ長編の雰囲気。知子(晴美)は、売れない小説家の小杉と8年間付かず離れずの関係を持っていたが、昔の男と寝てしまった事をキッカケとして別れを切り出す。現代になって読んで驚くのは、あまり知られていなかった井上光晴との不倫の構造とあまりにも似ていたことである。

    ・知子は小杉と不倫の終わりかけに、やはり若い男とも関係を持ってしまう。
    ・小杉の妻は、長い間小杉の不倫を知りながら、知子を非難したり小杉を非難したりする事なく、淡々と過ごしていた。
    ・知子は小杉との関係を精算するためには、小杉が通ってくる自宅を畳んで他所に引越しをしなければならないと思い込む。男はそれを淡々と受け入れる。

    コレは井上光晴の娘・井上荒野が書いた「あちらにいる鬼」と同じ経過だ。引越しの代わりに、もっと徹底的な「尼になる」ことを晴美が選んだに過ぎない。瀬戸内晴美は、全く同じ事を井上光晴との関係で繰り返したのだろうか。詳しい人はいるかもしれないが、今回そこまで調べることができなかった。

    短編集の最後の1篇「雉子」だけは、登場人物の名前を変え、彼女の最初の不倫から子供を捨て、次の不倫の顛末までざっと振り返っている。そこで、以下のように「まとめ」のような記述がある(牧子とは瀬戸内晴美のこと)。

    男に溺れこむ牧子の情緒は、いつの場合も、とめどもない無償の愛にみたされていた。それは娼婦の、無知で犠牲的な愛のかたちに似ていた。(略)牧子の愛は充たされるより充したかった。たいていの男は、おびただしい牧子の愛をうけとめかね、あふれさせ、その波に足をさらわれてしまう。結果的にみて、牧子に愛された男はみんな不幸になった。

    ←決定的な不幸を招く直前に、晴美は寂聴になったのだろうか?

    0
    2022年12月13日

    Posted by ブクログ

    瀬戸内寂聴自選集「あふれるもの」のレビューを書きたかったのだけど、どこを探しても出てこず登録できなかったので仕方なくこの本に。
    「花芯」「あふれるもの」「夏の終り」「けものの匂い」「みみらく」「蘭を焼く」「吊り橋のある駅」収録。

    少し前に「あちらにいる鬼」という小説を読んだのだけど、それが著者の井上荒野さんによる父(井上光晴氏)と瀬戸内寂聴の不倫を描いたもので、何気に瀬戸内寂聴の小説って読んだことなかったと思い、手始めに私でも知っている短篇を含んだこの短篇集を読んでみた。
    あとがきによると、1篇を除き、ほぼ出家前の、瀬戸内晴美時代のものだそう。映画化もされているから代表作とも言える「夏の終り」や、これも映画化されているはずの「花芯」など個人的にとても読みやすいものもあれば、「蘭を焼く」や「吊り橋のある駅」など暗喩めいていて多少難解なものもある。
    著者による自選集で、後者のほうは著者的に「この時期は挑戦的だったけれど不評だった」というようなこともあとがきに書かれてある。
    読み解くには頭を使いそうなので今回はやめて素直に物語を読んだのだけど、じっくりと読み解いていくのもまた一興なのだと感じるような物語だった。

    「花芯」は読み始めから肉欲の世界だなと雰囲気で感じて、個人的には瀬戸内寂聴のイメージ通りだったのだけど、これを発表した当時は世の中に受け入れられず5年ほど文壇を干されたのだそう。女性という性の立ち位置が現在とは違ったせいもあるのだろうけど、このレベルの肉欲の物語って今ならそんなに珍しくもないから、昔は今とは全然違ったのだなと思わされる。

    「あふれるもの」と「夏の終り」は連作で、本来は「夏の香り」が先に書かれたもので、後に書かれた「あふれるもの」が物語の時系列としては先になるかたちで描かれている。
    38歳独身の主人公・知子が、妻帯者である恋人の慎吾と、かつて愛した元恋人である涼太の間で揺れ動く。女のしたたかさとその陰にひそむ弱さ、業の深さなどを感じる。

    全体の雰囲気を一言で言うと、エロい話じゃなくてもどことなくエロい。文章自体に色香が漂っている。
    世代的にもそうだし、とくにファンでもない私は、瀬戸内寂聴の生き方をつぶさに知っているわけではないけれど、初めて作品を読んでみて、この方が出家した理由がなんとなく分かった気がした。
    そしてまた「あちらにいる鬼」を再読すれば感じるものも違ってくるのかも知れない、などと思った。

    0
    2022年06月10日

    Posted by ブクログ

    お亡くなりになられたときに私の好きな多くの作家さんが本気で悼み、悲しみから抜け出せずにいるお姿を拝見し、著者の初期の代表作を読んでみたくなりました。
    実は、著者の半生はTVで見ただけ、作品は源氏物語とエッセイしか読んだことがなく、小説を読むのは初めてです。

    本書は私小説で、主人公が、妻子ある男と8年間不倫関係にあり(それを先方の妻も承知している)、そこに、かつて主人公が離婚する原因となった年下の男が登場し、再び関係を結んでしまうという四角関係が連作短編集の形で収録されていました。

    この設定だけ聞くと、ドロドロな愛憎劇をイメージするかもしれませんがそうではありません。
    著者の鮮やかな筆至が、初めに感じていた生々しさを読み進める度にどんどん軽減させ、読後はむしろ清々しい印象まで与えています。
    主人公は自由だし恋愛体質だし奔放なんでしょうけど、でも、それに勝る覚悟や正直さや冷静さの方が印象的です。

    相反する印象が同居し違和感がないのはさすが多くの作家さんが尊敬する方の作品だと思いました。

    0
    2022年05月16日

夏の終り(新潮文庫) の詳細情報

  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    新潮社
  • 掲載誌・レーベル
    :
    新潮文庫
  • タイトル
    :
    夏の終り(新潮文庫)
  • タイトルID
    :
    1050478
  • 電子版発売日
    :
    2021年12月02日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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