Posted by ブクログ
2015年07月18日
ジュール・ルナール『にんじん』新潮文庫
はじめの方は、読み進めれば進めるほどに憤りや嫌悪感、不快感が募るばかりだった。
一言で片付けるなら、かわいそうなにんじん。
しかし、話が進むにつれて、段々とお母さんの方がかわいそうに思えてくる。
なぜなら、お母さんは誰にも好かれていないからだ。
一方...続きを読むのにんじんは、母親からの精神的虐待はあるものの、彼を想う人は周りにいく人もいる様子だ。
特に、名付け親のおじさんは、この話のなかで唯一と言っていいほどにまともで暖かい人物である。
ルナールの自伝的小説である本書の大きなメッセージの一つであり、ルナール自身が最も求めた言葉が、次に述べる名付け親のおじさんのセリフのように感じる。
「わしには子供がおらんが、自分の子供が猿だとしたら、猿のケツでも舐めるがね。」