一葉が漱石・鴎外に比べて(たぶん)読まれていないのは、その文体がハードルだからだろう。かくいう私も、一葉は本書が初めて。長時間移動する機会ができたので(つまり、他に読むものがないので投げ出せない)、挑戦してみた。
案の定、細部まで追うのには苦労したが、短編なのでとりあえず最後まで読み切る。で、また
...続きを読む重要な箇所を読み返すと、だんだん理解が深まった。ネット上にはあらすじ紹介もあるので、後でそれで確認することもできる。
肝心の内容だが、文体の美しさや女性を描いたことの意義は言うまでもなく、展開の巧みさを感じた。なので、先ずは予備知識なしに読む方が、読後の印象は深まると思う。所収作のなかでは「十三夜」が比較的読みやすく、かつ名作なので、これを先に読むのがよいかもしれない。
一葉が残した小説は22編だそうだ。本書は本文250ページ・計8編だけだが、これだけで3分の1以上ということになる。夭折が惜しまれる。