小説 - 集英社作品一覧

  • 日本ダービー殺人事件
    3.0
    競馬専門誌「週刊ホース」の新人記者芦沢は、先輩・松本の強烈な個性に興味を持っていた。日本ダービーを間近に控えた五月、十二連勝を飾る本命馬タマキホープのオーナーとジョッキーのもとに、「出走を取り消せ」という脅迫状が舞い込んだ。十津川警部はその文面に無気味さを感じる。厳重な警戒にもかかわらず、続々と起る怪事件。競馬界内部の不正と仕組まれた罠にいどむ十津川警部の名推理。長編小説。
  • 乳頭温泉から消えた女
    3.0
    北海道の西に位置する積丹半島。「積丹ブルー」と呼ばれるその海景を前に崖から転落死した男がいた。自殺か他殺かは定かではない。ちょうどその直後、男の取引先の女性社員・皆川が乳頭温泉で忽然と姿を消していたことが判明。果たして事件との関連は? 温泉で失踪発覚の瞬間に立ち会ったリスクコンサルタントの円堂雅流は、皆川の女友達の協力も得て、独自に捜査に乗り出す。札幌、積丹半島、小樽、余市……。北海道のさまざまな交通機関を絡めた推理行から、終盤は舞台を東京に転じての展開へ。旅情とグルメを連結してのサスペンスフルな謎解き列車が走る!
  • ニューカルマ
    3.9
    人生や社会を豊かにすると喧伝するネットワークビジネス。ある日大学時代の友人から突然かかってきた電話で勧誘されたユウキ。今、彼の勤める会社ではリストラが始まり不安な気持ちが膨らんできていた。そんな状況の中、副業のつもりで入会し、順調に会員を増やしていき、次第にそのビジネスにのめり込んでいくものの、周囲からは冷ややかな目で見られるように。そして思ってもみない落とし穴に嵌まり──。
  • 人形たちの白昼夢
    4.1
    声が出なくなってしまった私は、見知らぬ相手からの招待状に誘われ、レストランを訪れる。給仕人にうながされ料理を口にすると、さまざまな情景が浮かんできて――。(「スヴニール」)荒廃した世界。空爆から身を潜め、不思議な「声」に導かれて目を開けると、自動機械人形(オート・ドール)が現れた。豪奢で美しい、暗殺用の人形に連れられて向かった先には――。(「リューズ」)『魚神』『男ともだち』の著者が贈る、リアルと幻想が溶けあうような12のショートストーリー。
  • 人間界の諸相
    4.0
    謎に満ちた女・菱野時江とは何者なのか――。突如、連絡が取れなくなった時江の消息を追う二人の友人、渋崎咲子と古河内栗美は、携帯端末のSNSを頼りに彼女の居場所を突きとめた。そこには「あの国は暮らすにはいいが、生きるのは窮屈すぎる」という一文が……。(「幻の淑女」より)文学界の異才・木下古栗が挑んだ、なんともトリッキーなエンタメ風小説! 作品の全貌は、読んでみてのお楽しみ。
  • 人間失格
    4.0
    「恥の多い生涯を送ってきました」3枚の奇怪な写真と共に渡された睡眠薬中毒者の手記には、その陰惨な半生が克明に描かれていた。無邪気さを装って周囲をあざむいた少年時代。次々と女性と関わり、自殺未遂をくり返しながら薬物におぼれていくその姿。「人間失格」はまさに太宰治の自伝であり遺書であった。作品完成の1か月後、彼は自らの命を断つ。
  • 人間のしわざ
    4.3
    この世界のどこに救いや癒しがあるのか――戦後70年に問いかける衝撃作。男は戦場カメラマン。紛争を追いかけて世界中を駆け回り何十年も家庭を顧みず、結果、妻の死を知ったのは葬儀が執り行われた後だった。今は、テロリストとの関係が疑わしい引きこもりの息子と暮らし、妻の裏切りの記憶に苦しんでいる。かつて、互いに惹かれあいながら結ばれなかった女との逢引先で男が語り始めたのは、青春の日々に長崎の町で掘り出された喉仏の骨、黒こげの殉教者の慟哭、そして30年前の雪の日の、爆心地での教皇の祈りだった――。デビュー20年。『聖水』『爆心』に続き新たに殺戮と紛争の世紀を問う衝撃作。長崎という土地の記憶を探り続けてきた著者の、到達点であり出発点がここに。【目次】人間のしわざ/神のみわざ
  • ネガティヴ
    3.7
    妻に不倫の恋をさせ、それを材料に、同時進行で作品を書こうともくろんだ流行作家。この「仕組まれた恋」を発端に、不気味な連続殺人がはじまった……。いつのまにか現実と物語との境界がうすれ、この世の裏側(ネガティヴ)の世界が現実にまぎれこんでくる――底知れない怖さを描く、異色のサスペンス長篇!
  • 猫君
    3.7
    茶虎で金目銀目の猫みかんは、病に伏せる育ての親のお香から「お前さんは『猫又』になりかかっている」と告げられた。20年生きた猫は、人に化けて言葉を操る妖になるというのだ。この世を去った飼い主を取り殺したと疑われ、追われるみかんは先輩猫又によって吉原遊郭に匿われ、江戸城内に新米猫又の学び舎「猫宿」があると教わる。さらに猫又史のその名を刻む英雄「猫君」の再来が噂されているらしく……。「猫宿の長」と呼ばれる謎の人物をはじめ、様々な師匠のもと、みかんが仲間とともに数々の試練に挑む江戸ファンタジー開幕!
  • 猫だけがその恋を知っている(かもしれない)
    4.0
    1巻759円 (税込)
    お節介を焼くのは、暇だからだ――海と山に囲まれたこの町で、今日もたくさんの猫たちが人間の恋を見守っている。「オレと、つき合ってくれませんか!」「いや、無理です」憧れの年上女性に失恋した大学生の渉。「前に進むって、なんだと思う?」大切な恋人の“不在”にもがき続けている会社員の千咲。苦しくて、切なくて、でも時々うんと幸せで、諦められない…。『交換ウソ日記』著者が贈る不器用でかっこ悪くて愛おしい、書き下ろし恋愛連作短編集。
  • 猫だまりの日々 猫小説アンソロジー
    3.6
    仕事を失った青年の願いを叶えるべく、彼を訪ねてきた猫。かつて飼っていた猫に会えるという噂のある、ちょっと不思議なホテル。猫飼い放題の町で出会った彼と彼女の恋。猫が集まる縁結びの神社で起きた、恋と友情にまつわる出来事。死後に猫となり、妻に飼われることになった男――。人気作家が描く、どこかにあるかもしれない猫と誰かの日々。全五編を収録。 【目次】ハケン飯友 椹野道流/白い花のホテル 谷 瑞恵/猫町クロニクル 真堂 樹/縁切りにゃんこの縁結び 梨沙/神さまはそない優しない 一穂ミチ
  • 猫はときどき旅に出る
    4.0
    第1部発表から十一年を経て完成された長編小説の傑作! 作家兼脚本家兼映画監督兼劇画原作者兼誠実なる酔っぱらい人間、楠三十郎の遍歴。
  • 猫まみれの日々 猫小説アンソロジー
    4.3
    猫専用の洋裁店を訪れる客たちとそれぞれが選ぶ生き方、NOと言えない女性が出会った『見えるひとにしか見えない』猫、なぜかイケメン同期の飼い猫の世話係に選ばれたOL、愛猫家の店長が営む喫茶店の常連客になったお嬢様、元捨て猫にまつわる「ありがとう」の言葉たち―――人気作家が描く、どこかにあるかもしれない猫と誰かの日々。好評につき第二弾が登場! 【目次】猫町洋裁店(かたやま和華)/猫又の小料理屋さん(水島 忍)/七匹もいる!(毛利志生子)/Cafeトラ猫のマスターは猫を愛しすぎている(秋杜フユ)/ありがとう(前田珠子)
  • ねじの回転 FEBRUARY MOMENT(上)
    3.9
    1~2巻495円 (税込)
    近未来。時間遡行装置の発明により、過去に介入した国連は、歴史を大きくねじ曲げたことによって、人類絶滅の危機を招いてしまう。悲惨な未来を回避するために、もう一度、過去を修復してやり直す。その介入ポイントとして選ばれたのが1936年2月26日、東京「二・二六事件」の早朝。そして史実にかかわる3人の軍人が使命をおうことになる。過去の修復はできるのか!?
  • 熱帯安楽椅子
    3.5
    恋をしてから、小説が書けなくなった「私」。自分を甘やかしたい。横になる寝台が欲しいのだ。そう言った私に、男友達はバリ島行きの航空券を手配してくれた。暑い国で休んでおいで。行っておいで、あの熱帯の安楽椅子に。そこで出会った男たちと愛しあううち、私の中にバリ島の熱が染み込んでゆく。豊潤で濃密な愛の物語。
  • 熱風
    3.5
    【第48回講談社児童文学新人賞佳作受賞作】「こいつにだけは絶対に負けたくない!」テニスの練習試合で他人を見下すような態度の対戦相手・順一を見て、中学2年の孝司は無性にそう思った。ところが、ある大会で2人はダブルスを組むことに。ハンデがあり、性格もプレーも正反対な彼らは、不器用ながらも、本気でぶつかり合う。そんな中、大会前にある事件が起こり……。一途な情熱を鮮やかに描く、第48回講談社児童文学新人賞佳作受賞作。
  • ネバーランド
    4.0
    舞台は、伝統ある男子校の寮「松籟館」。冬休みを迎え多くが帰省していく中、事情を抱えた4人の少年が居残りを決めた。ひとけのない古い寮で、4人だけの自由で孤独な休暇がはじまる。そしてイブの晩の「告白」ゲームをきっかけに起きる事件。日を追うごとに深まる「謎」。やがて、それぞれが隠していた「秘密」が明らかになってゆく。驚きと感動に満ちた7日間を描く青春グラフィティ。
  • 眠りなき夜
    4.0
    【第4回吉川英治文学新人賞受賞作】弁護士・谷の同僚、戸部が失踪、つづいて彼と関わりのあった小山民子が殺された。メモを手がかりに、谷は山形県S市に飛んだ。早速、三人組に襲われる。黒幕とみられる大物政治家・室井などの名が浮かぶ。そして戸部の惨殺体発見…。民子との間に何があったのか? 室井との関連は? 友の死を追って、谷は深い闇を解明すべく、熱い怒りを雪の街に爆発させる。第一回日本冒険小説協会大賞受賞作。
  • 眠る魚
    3.3
    ガイドや通訳をしながら南太平洋のバヌアツに暮らす彩実は、東日本大震災からしばらくの後、父の訃報を受けて故郷の北関東の町に一時帰国する。放射線被害についての危機感の相違や、保守的な家族たちの思考と言動に噛み合わない思いを抱くうち、「アオイロコ」という奇妙な風土病の噂を耳にする。そんな中、彩実の口中の腫瘍が悪性と診断され、入院することに――。坂東眞砂子、絶筆作品。
  • 眠れる森の夢喰い人 九条桜舟の催眠カルテ
    3.3
    他人の夢が見えてしまう能力を持つ砂子は、勤めている寝具販売店で奇妙な客にスカウトされる。彼の名は、九条桜舟。催眠療法士を名乗る彼に、患者が苦しむ原因を深層心理から取り除く“貘”に勧誘された砂子が出会うのは、美しくもアクが強い三人の貘達と、不安や苦しみを抱えクリニックを訪れる患者達…。その心に秘められた謎に迫るサイコロジカル・ミステリー!
  • 脳研ラボ。 准教授と新米秘書のにぎやかな日々
    4.0
    学生時代の知人のツテで、S総合大学脳科学研究所(略して“脳研")で秘書として働くことになった山影陽乃、27歳。担当の准教授・千条誠は端整な顔立ちと明晰な頭脳を持つエリート。だけど汚部屋の住人だった! 出勤初日、8年前のバスツアー旅程表をゴミで捨てると、突如奇声を発し…? 意思の疎通と服のセンスが独特な千条、秘書を警戒するポスドク・辻ナオ、チャラい院生・高柳圭――クセが強めの千条ラボの面々にかこまれて、新米秘書・陽乃の奮闘の日々が始まる!
  • 逃がれの街
    4.5
    愛する女・牧子のために暴力団員2人を殺した。生々しい感触が今も幸二の掌に残っている。自分の行為に対して言い訳などなかった。終わってしまったことからは何もはじまらない……。警察と暴力団の双方が追ってくる。逃げるだけだ。公園で知り合った幼いヒロシを唯一の友に、幸二は今、“逃がれの街”を求めて雪の軽井沢へ……。
  • 残された者たち
    3.4
    尻野浦小学校には、杏奈先生と飛鷹かおるという生徒、そして英語まじりで話をする校長先生がいるばかり。そう、ここは海沿いの限界集落。残りの住人はかおるの父とかおるの兄だけ。そこにある日、山向こうの「ガイコツジン」集落から、エトーくんがやってきて――。それぞれの人生を抱え、集まった人たちの濃密な関係が織りなす、風変わりな家族の物語。
  • ノストラダムスと王妃 上
    3.3
    フィレンツェの富豪メディチ家のカトリーヌは、フランス王太子アンリ二世に輿入れしたものの、夫は寵妾ディアヌの虜。商家の娘と蔑まれ、子供にも恵まれず、宮廷で影の薄い存在だった。自分を守り、権力を握ろうとするカトリーヌは、預言者として評判になったノストラダムスに手をのばす。権謀術数の宮廷大河ロマン。
  • 能登怪異譚
    4.2
    市助には8人の子がいた。その子らが夜ごと寝間を抜け出して、朝まで箪笥の上に坐っている。そのうちに市助を除く家族全員が夜な夜な箪笥に上がるようになって――。(「箪笥」)。能登を舞台に玄妙な語り口で綴る9つの不思議な物語。恐怖と戦慄の半村フォークロア。
  • のるかそるか
    -
    東京オリンピックを数年後に控えた東京は、千載一遇のチャンスとばかりに、一攫千金をもくろんだ怪しげな人間が金の臭いを嗅ぎつけて世界中から集まっていた。地面師の吉村貴市もその一人。口先三寸で手に入れた六本木の60坪の土地を武器に大博打を計画した。ペテン師野郎のあの手この手の欲と色にまみれた騒動を描いた傑作長編。
  • 【新装版】呪い人形(木部美智子シリーズ)
    3.2
    悪名高い宗教家が入院中に死亡した。多額の布施を強要されて家族を失った老婆が「自分が呪い殺した」と名乗り出る。しかし疑いの目は正義感の強い若い研修医の工藤孝明に。濡れ衣を晴らし個人病院の勤務医になった工藤だが、またも彼の目の前で患者が死亡し嘱託殺人を疑われることに……。取材を進めるフリーライターの木部美智子は、「呪われて」死んだ者がほかにもいることを知るが──。人間が秘める暗部に鋭く迫る社会派ミステリー。『蟻の棲み家』でベストセラー作家となった著者の初期の傑作、待望の新装版(重複購入にご注意ください)。
  • 呪いの花園 ミステリー組曲「幻影稼業」
    4.5
    男は、その人形をいとおしむように撫でて、「これを使えばあなたの望みは叶いますよ」と言った…(表題作「呪いの花園」)。夜の街でノッペラボーの“呪い人形”を売る男や、“悪夢”を買わせてくれと頼む黒装束の人物――この世にはあなたの知らない「幻影稼業」がうごめいている! 心の闇に潜むさまざまな願望や欲望の顛末を描いた、異色の連作ホラー6篇。そっと仕掛けられた甘美な毒にご注意。
  • ノン・サラブレッド
    3.5
    明治時代の名馬ミラ。血統書がなく、その子孫は非サラブレッド=サラ系と分類された。1970年代、厩務員の大谷はサラ系の名馬ミラの子孫を担当する。その馬は彼や周囲の思いを背負い活躍し始める。舞台は現代に移り、競馬記者小林のもとに、ミラの血統書の存在をほのめかす電話が……。一枚の血統書が競馬の歴史を根底から変えるのか。人々の夢を乗せた「もし」の結末は。壮大なる競馬史ミステリー。
  • 廃院のミカエル
    3.8
    食品輸入会社の現地職員としてアテネで働く美貴は、仕事で訪れたとある村で廃院となった修道院を見つける。その宿坊の壁に描かれた大天使ミカエルを目にして以降、彼女の周りでは次々と不可思議な現象が起こる。無人の聖堂で不意に聞こえる祈りの声、相次ぐ村人の死、積み重なる家畜の死骸。全ては神の仕業か悪魔のいたずらか。異国の地を舞台に繰り広げられるサスペンス長編。
  • 廃墟建築士
    3.5
    いつか崩れて自然へと回帰していく姿に魅せられ、「私」は廃墟を作り続けてきた。時の経過によって醸成される廃墟こそが、その国の文化的成熟度を表すのだ。だがある時、「偽装廃墟」が問題となり…。(「廃墟建築士」)。七階での事件が多発し、市は七階の撤去を決定した。反対する市民は決起集会を開くが…(「七階闘争」)。意識を持つかのような建物に現実と非現実が同居する、不思議な4編の物語。
  • 拝啓 彼方からあなたへ
    4.0
    「自分が死んだらこの手紙を投函してほしい」と中学時代の親友・響子に託された「おたより庵」の店主・詩穂。やがて、彼女の死を知った詩穂は手紙を開封し、過去にまつわる事件に巻き込まれてゆく。町屋の並ぶ、どこか懐かしい町で「あの日の約束」が再び動き出す。店を訪れる者と、想いを伝えたい大切な誰かを繋ぐ、手紙ミステリー。著者初の単行本が、待望の文庫化!
  • 拝啓 彼方からあなたへ
    3.8
    託された手紙と親友をめぐる謎――。心に響くハートフル・ミステリー! 「わたし、思うんです。手紙に望みがあるとしたら、ひたすら届けられたいと願ってるんだろうなって。」手紙にまつわる雑貨店『おたより庵』を経営する詩穂が出会ったさまざまな想いをこめた手紙たち。その中で詩穂は、親友の死をめぐる事件に巻き込まれてゆく――。
  • ハイドロサルファイト・コンク
    4.0
    「遠くない未来に、私は死ぬ」。病とは無縁だった著者・花村萬月が、このままでは2年後の生存率が20%の骨髄性異形成(こつずいせい・いけいせい)症候群に罹り、骨髄移植を受けることになった。それは現在まで続く地獄の始まりだった。これは、現世の報いなのか? 発症から骨髄移植、GVHD(移植片対宿主病)、間質性肺炎、脊椎四ヵ所骨折など、副作用のオンパレードへと到る治療の経過を観察しつづけた作者自身によるドキュメンタリー・ノベル! 「血液検査の結果、完全に血液がO型からAB型に変わった。爪のかたちや体毛、髭など、ずいぶん外見上の変化がある。食べ物の好みもまったく変わってしまった。加えて精神が大きく変貌したのかもしれない。自分の血液をすべて殺して、他人の血液を迎えいれる。凄いことだ。」(本文より)
  • ハウス
    -
    せつない愛の予感、すれ違いに苛立つ恋、そしてひとりの部屋で過ごす眠れぬ日々――。12人の主人公達が、あいた心の隙間をうめてくれる自分だけの居場所をさがしあてるまでの、12編の物語。それは家庭でも家族でもなく、私達が不思議なほど心地よさを覚えしまう、唯一の場所。そして、それは、もうひとりのあなたの物語……。哀しみから立ちなおる女性達の姿を描く、著者初の連作小説。
  • ハガネの女
    4.0
    学生時代の友人に誘われ、臨時教員として公立小学校に赴任した芳賀稲子、通称「ハガネ」。だが、彼女が担当することになったのは、次々と担任が辞めていった訳ありのクラス。ひと癖もふた癖もある子供たちと非常識な苦情を申し立てるモンスターペアレンツ、そしてイジメや不登校の問題に、あだ名どおりの強さと誠実さで立ち向かうハガネだが…? 『YOU』で連載された人気マンガを小説化。
  • 白春
    -
    赤穂藩京屋敷留守居役の小野寺十内と妻お丹に仕えるろく。親を知らず耳が聞こえぬ彼女だが、出会いに恵まれ仕合わせな日々を過ごしている。しかしろくが二十歳になった年、藩主浅野内匠頭の江戸城松の廊下での刃傷という一大事が出来する。忠義を貫き命を散らすのが武士の一分ならば遺された者の一分とは……。滋味溢れる筆致で赤穂事件の顛末と家中の人々の覚悟を描く第9回中山義秀文学賞受賞作。
  • 博物館のファントム 箕作博士の事件簿
    4.2
    自然史博物館で働くことになった女性新人分類学者・池之端環。植物標本の整理を命じられ、未整理の標本や資料が大量に詰め込まれた旧館「赤煉瓦」に足を踏み入れた環が出会ったのは、そこに棲みつくファントムこと変人博物学者の箕作類。「どんなものも絶対に捨ててはならない」が口癖の箕作と、片付け魔の環のでこぼこコンビが、博物館で起こるさまざまな事件の解決に動き出す!
  • はぐれ鴉
    4.0
    【第25回大藪春彦賞受賞】 寛文六年、豊後国・竹田藩で城代一族二十四人殺しという凄惨な事件が起きた。 一人逃げ延びた城代の次男・次郎丸は復讐のため、江戸で剣の腕を磨き、名を変え、義理の叔父で下手人である現城代・玉田巧座衛門がいる竹田の地を十四年ぶりに踏んだ。長い時を経て再会した巧座衛門は、兇行を目の当たりにした当時の印象と違い、みすぼらしい容姿で、高位にありながら地位や名誉に関心がない変わり者と周囲から噂されていた。 そして次郎丸は竹田小町と評判の巧座衛門の娘・英里と出会い、予期せず惹かれていく。恋か復讐か、千々に乱れる心を抱きながらも、煮え滾る復讐心を支えに必ずや叔父を討つと心に誓うのだが……。
  • 函館天球珈琲館 無愛想な店主は店をあけない
    3.7
    北海道新幹線が開通する直前、奔放すぎる母親のせいで横浜から函館に単身移り住むことになった女子高生・真緒。遠縁の大伯父が住む函館山の洋館「遠野邸」に向かうのだが、そこにいたのは不審すぎる若い男だった。謎を抱えたままその無口な男と同居生活を始めた真緒だったが、「遠野邸」がかつて伝説の珈琲を出す喫茶店で今はほとんど店をあけていないと知り…!?
  • 箱庭図書館
    3.6
    僕が小説を書くようになったのには、心に秘めた理由があった(「小説家のつくり方」)。ふたりぼっちの文芸部で、先輩と過ごしたイタい毎日(「青春絶縁体」)。雪面の靴跡にみちびかれた、不思議なめぐり会い(「ホワイト・ステップ」)。“物語を紡ぐ町”で、ときに切なく、ときに温かく、奇跡のように重なり合う6つのストーリー。ミステリ、ホラー、恋愛、青春……乙一の魅力すべてが詰まった傑作短編集!
  • ハコブネ
    3.7
    十九歳の里帆は男性とのセックスが辛い。自分の性に自信が持てない彼女は、第二次性徴をやり直そうと、男装をして知り合いの少なそうな自習室に通い始める。そこで出会ったのは、女であることに固執する三十一歳の椿と、生身の男性と寝ても実感が持てない知佳子だった。それぞれに悩みを抱える三人は、衝突しあいながらも、自らの性と生き方を模索していく。芥川賞作家が赤裸々に紡いだ話題作。
  • はしたかの鈴 法師陰陽師異聞
    4.0
    死の匂いに満ちている平安京。陰陽師寮に属さない法師陰陽師・芦屋道満と狩衣に指貫姿の鷂。彼女はすべてを記憶する特殊な力を持っていた。ある日検非違使に絡まれた美しい女を助けると、彼女は行方が分からない夫を探しているという。不穏なものを感じ真相を調べることに──。さらに、時が狂うという摩訶不思議な事件、安倍晴明との邂逅、謎の白き蝶紋に苛まれる道満の過去。謎解き平安京、開幕!!
  • 走るジイサン
    3.9
    頭の上に猿がいる。話しかければクーと鳴き、からかえば一人前に怒りもする。お前はいったい何者だ――。近所の仲間と茶飲み話をするだけの平凡な老後をおくっていた作次。だが、突然あらわれた猿との奇妙な「共同生活」がはじまる。きっかけは、同居する嫁にほのかな恋情を抱いたことだった……。老いのやるせなさ、そして生の哀しみと可笑しさを描く、第11回小説すばる新人賞受賞作品。
  • はじける
    -
    「全てに絶望してしまわないために、たった一つでいい、手つかずのまま残しておきたいことがある。そこに希望を託していたいと私まで思うようになったのは、いつの頃からだろう。」雑誌やチラシから文字を切り抜き続ける文彦と生活をともにする数子。いまある日常から抜け出す術もなく、静かに絶望が忍び寄ってくる。あらゆるものが廃れていくこの街で明るい未来はどこにあるのだろう。不器用に生きる二人にとっての希望とは――。
  • はじまらないティータイム
    3.5
    【第31回すばる文学賞受賞作】4人の過剰な女たち。あなたは誰に共感? 努力で「できちゃった略奪婚」した里美。その結果、離婚の憂き目にあった佐智子。そんな彼女を心配し、探偵活動を始める伯母ミツエ。その娘で不妊に悩む奈都子。女たちは対立しながら奇妙な友情を育む。
  • 働く女
    3.3
    客を思う誠実さゆえに売り上げの伸びない百貨店外商部のチハル。無神経で時代錯誤のオヤジたちに悩まされるベテランOLのトモミ。手抜きのできない損な性分でボロボロになって働くエステティシャン、タマエ…。その他、ワガママ大女優から、ポリシーあるラブホテル店長まで、十人十色の働く女を活写! 共感し、思わず吹き出し、時には少々ホロ苦い。等身大の女たちの奮闘努力に、勇気の出る短篇集。
  • 裸の華
    4.3
    舞台上の骨折で引退を決意したストリッパーのノリカ。心機一転、故郷札幌で店を開くことに。訳ありの凄腕バーテンダーやタイプの違う二人の女性ダンサーと店は軌道に乗り始める。しかし、私も舞台に立ちたい、輝きたいという気持ちは募るばかりで──。ノリカの表現者としての矜持と葛藤。そして、胸が詰まるような踊り子たちの鮮烈な生き様を描く、直木賞受賞作『ホテルローヤル』に連なる一冊。
  • 八月の青い蝶
    4.2
    【第26回小説すばる新人賞受賞作】「わしはずっと八月を、くり返してきたんじゃ」。急性骨髄性白血病で自宅療養することになった亮輔は、中学のときに広島で被爆していた。ある日、妻と娘は亮輔が大事にしている仏壇で古びた標本箱を見つける。そこには前翅の一部が欠けた小さな蝶がピンでとめられていた。それは昭和二十年八月に突然断ち切られた、彼の切なくも美しい恋を記憶する品だった。
  • 八十八夜物語 1
    4.5
    1~5巻440~555円 (税込)
    夏も近づく八十八夜。野にも山にも若葉がしげる。古い歌を口ずさむたびに、亡き母の言葉がよみがえる。「一年のうちで、いちばん美しい季節が八十八夜の頃。あなたの人生の八十八夜を大切に……」。加納妙子、23歳。この美しい季節を無駄にすごせない。殺風景なオフィス、平凡な男たち、ありふれたOL生活に別れを告げようと思った。
  • 8年
    3.4
    オリンピックで華々しい活躍をし、当然プロ入りを期待されたが、ある理由から野球を捨ててしまった投手・藤原雄大。8年後、30歳を過ぎた彼は、突然、ニューヨークのメジャー球団に入団する。あの男ともう一度対戦したい! その悲願のためだけに……。一度は諦めた夢を実現するため、チャレンジする男の生き様を描くスポーツ小説の白眉。第13回小説すばる新人賞受賞作。
  • 蜂蜜色の瞳 おいしいコーヒーのいれ方 Second Season I
    3.4
    何の保証もないとわかっていても、彼女から強い約束を引き出したい。僕だけだ、と。一生、僕以外は愛さない、と。遠距離恋愛で、思うように会えない勝利とかれん。久々に週末を一緒に過ごすが、ちょっとした誤解から、なんとなくギクシャクしてしまう。愛おしすぎて、相手を思いやる気持ちが空回りする。それでも少しずつふたりの歩みはすすんでいく……。人気シリーズ待望のSecond Seasonへ。
  • ハッピー☆アイスクリーム
    3.8
    そんなわけないけどあたし自分だけはずっと16だと思ってた――将来への不安、不意に訪れる孤独、どうしようもなく募る恋心。女子高生の揺れる気持ちを鮮やかに切り取り、話題を呼んだ17歳のデビュー短歌集に、胸にせまる青春小説5編を加えたリミックスバージョン。思春期のとまどいがリアルに息づき、切ない共感と甘い郷愁をさそう。きらめく言葉がぎっしりつまった、宝石箱のような作品集。
  • ハッピー・チョイス
    3.7
    貴世は39歳、独身、小説家。体験のない「殺人」は書けても、体験のない「結婚」が書けずに悩んでいる。そんな貴世が、結婚小説のリサーチのため蕎麦打ち合コンに潜入。なんと急性蕎麦アレルギーを発症するものの、朦朧とする意識の中で、ある男性と出会い……。出会いをよせつけない磁場を抜け出して、遠かった「結婚」がついに現実に!? 幸せを求めて、貴世が選んだ「私らしい結婚」の答えとは?
  • はつこい
    3.7
    地方都市で暮らす平凡なOLの亜季子。高校生のときからつきあっている恋人・遥生は東京で暮らしていて遠距離恋愛中だが、いずれは彼と結婚するつもりでいる。新居にする予定のマンションを購入し、幸せな未来を思い描く亜季子。だが、地元に戻ってきた遥生に、東京で出逢った女性を呼び寄せて一緒に暮らすつもりだと告げられてしまう。亜季子の平凡な日常の歯車が、少しずつくるい始めて……。
  • 初恋温泉
    3.6
    初恋の女性と結婚した男。がむしゃらに働いて成功するが、夫婦で温泉に出かける前日、妻から離婚を切り出される。幸せにするために頑張ってきたのに、なぜ――表題作ほか、不倫を重ねる元同級生や、親に内緒で初めて外泊する高校生カップルなど、温泉を訪れる五組の男女の心情を細やかにすくいあげる。日常を離れた場所で気づく、本当の気持ち。切なく、あたたかく、ほろ苦い恋愛小説集。
  • ハツコイハツネ
    -
    コーヒーショップの店員に一目惚れした亮介。勢い余って告白した相手は、中学校の同級生・香澄だった。8年前、ピアニストを目指していた亮介に「素敵な音を出すのね」と告げてきた転校生の香澄。一学期だけを共に過ごし、また転校していった彼女との運命的な再会から交際が始まるが、実は香澄は人の感情が音として〈聴こえる〉という特殊な体質だった。そんな香澄と音を〈奏でる〉亮介、音が導く二人の運命は、時を経て、再び重なりあっていく……。音を巡る切なく愛しい、初めての、そしてたった一つの恋の物語。
  • 果て遠き丘
    3.8
    世界中で自分だけが幸せでありたいと願う香也子、他人の愛を壊すことが楽しいゲームですらある香也子の熾烈な嫉妬心にもろくも崩れてゆく愛の数々……。北都旭川の残照にあざやかに浮かびあがる美貌の姉妹の愛のかたちと、人間の信頼を、痛烈なエゴイズムを描きながら謳いあげる長編。
  • はとの神様
    3.7
    転入したての5年生、みなと。父の仕事の都合で各地を転々、病的に潔癖な継母との毎日に、何かを待ち続けていた。同級生・悟は物知り博士。父が鳩レースにのめり込み、母と離婚していた。そんな二人が鳩を拾う。持ち主のオランダ人に届けにいき、同い年の娘ユリカと出会った。居場所のない者同士、響き合った三人は、自分たちだけで鳩を飛ばしに遠く稚内を目指す。少年たちの冒険と成長を描く傑作長編。
  • 鳩の栖
    3.9
    水琴窟という、庭先に水をまくと珠をころがすような安らかな音が鳴る仕掛け。操がそれを初めて知ったのは至剛の家の庭だった。孤独な転校生だった操を気遣ってくれた爽やかな少年至剛。しかし、快活そうに見えた彼には、避けがたい死が迫っていた。病床の至剛の求めるまま、操は庭の水琴窟を鳴らすのだが……。少年たちの孤独と淡い愛情、儚い命の凛々しさを描く表題作など珠玉の短編五編。
  • 花埋み
    5.0
    女に学問はいらないという風潮が残る明治初期、医学の道を志した女性がいた。日本最初の女医・荻野吟子である。夫に膿淋をうつされた屈辱と痛みから、同じ悩みをもつ女性を救うべく、かたくなな偏見と障害を乗り越え、医師の資格を取得し、医院を開業。やがて、婦人問題に取り組む社会活動にも参加していく。数奇な運命に満ちた愛と苦悩の生涯を医師出身の著者が、情熱と共感をもって描く評伝小説。
  • はなうた日和
    3.8
    定年間近の平凡な会社員・虹脇は、突然部下の美人OLから飲みに誘われる。手を握られながら「副社長を殴ってほしい」と頼まれて――。(「ハッピー・バースデイ」)。売れないアイドルのミドリは、今日もオタク相手に撮影会。しかしその帰り、子連れの元カレと再会し……(「五歳と十ヵ月」)。さえない日常の中にある、小さな幸せときらめきを描いた短編集。
  • 花折
    -
    鮎子は画壇の重鎮である父に英才教育を受けて育ち、東京藝大へ。利根川に臨む取手キャンパスで、裏山に住むイボテンという男と出会い、性に塗れた日々を過ごす。夏休みには実家に寄寓する小説家・我謝と沖縄へ。男を知り、取り込みながら画家として覚醒しようとする鮎子の変化を父は見抜いていた――。流麗な文体、混沌の描写、深奥の含意。ひとりの画家の人生を通し創作の本質に迫った長編小説。
  • 花木荘のひとびと
    4.3
    盛岡市北上川沿いにある小さなアパート花木荘。そこに住む人々は少し不器用な人間ばかり。心の隙間を買い物で埋めるOL、時計修理に没頭し、うまく人間関係を築けない青年、高いプライドが邪魔をして、客と喧嘩をする美容師。そんな彼らが管理人のトミと触れ合う中で少しずつ心が開いていく…。ちょっと泣けて、ちょっと癒やされるハートウォーミングストーリー。
  • 花盛りの椅子
    3.6
    傷ついた古家具には、無数の命が仕舞われている。緑生い茂る山の中、ぽつんと佇む「森野古家具店」。そこには、過去の沁みこんだ被災家具たちが、各々の物語をたずさえ集まってくるのだった――。職人見習いの「鴻池さん」が、家具に秘められた当時の記憶に触れる、感性ゆたかな連作短編集。
  • 花散るまえに
    4.1
    今村翔吾氏 推薦! 「たおやかな筆致で描かれる、苛烈な愛のゆくえ。この作品を書く感性をまぶしく思う」 最初に父親から教えられたのは自害の作法……細川忠興は愛を知らなかった。 玉(ガラシャ)は、妻として忠興に寄り添いたいと思う。 しかし父・明智光秀の謀反により、夫婦の運命は暗転。 謀反人の娘となって幽閉された玉は、やがてキリスト教の愛に惹かれていく。 一方、忠興は玉の心を失う孤独と恐怖から、刃を振り上げ――。 本当に大切にすべきものは何だったのか。 物語は歴史上もっとも美しいラストシーンへ。 細川ガラシャと忠興、日本史上もっとも歪んだ純愛を描いた歴史小説。
  • 花と舞と 一人静
    3.3
    「芸の道か恋の道、どちらかしか選べない」そう語る母に反発心を抱く日の本一の白拍子・静。どちらも手放したりしない、絶対に――。後見人・桜町中納言への淡い想いや、何かが足りない己の舞に悩む日々の中で、静は運命の相手、源義経に出会う。それは、一途で激しい恋の始まりだった。時代の波に翻弄されながらも、いつしか義経のためだけに舞いたいと願うようになる静。襲いくる無慈悲な運命……。舞と恋を胸に、己の足で立ち上がる、切なくも美しい静御前の生涯を描く傑作時代長編。
  • 花に隠す ~私が捨てられなかった私~
    3.0
    その欲望は決して叶えてはいけない――。不倫を続ける夫との生活に疲れた妻は、猛暑を超える暑さをもたらす灼熱の太陽を利用した完全犯罪を思いつく。その夫の不倫相手もまた、自分のものにならない男を手に入れようとして極寒の吹雪の中、男を手にかけた。殺意はまるで季節のように巡る。一線を越えるか、踏みとどまるか――。さまざまな季節に花開く、秘密と欲望を描いた短編集! 咲き誇れ、殺意。
  • 鼻に挟み撃ち
    3.8
    御茶ノ水、聖橋のたもとで演説をする奇妙な男。ゴーゴリの「鼻」と後藤明生の「挟み撃ち」について熱く語るその男は、大声を出すには相応しくないマスクをしている。そしてまた道行く人々もみな同様に。なぜ誰もが顔を隠しているのか、男の演説の意図は何なのか。支離滅裂に思える内容に耳を傾けるうち、次第に現実が歪み始め――。政治小説の再来を目指した表題作の他三篇を含む幻惑小説集。
  • 花の埋葬 24の夢想曲
    -
    ひとは夢の中でさまざまなものを思い描く。生と死、愛と憎、肉体と精神、官能と苦痛、永遠と瞬間、安心と恐怖。あるときは縛られ閉じこめられ、あるときは解き放たれる。亡くなった家族や友人たちの思いが私を圧迫したり、癒したりする。そんな不条理で豊穣な「夢の世界」を確かな筆致で描く。自らの夢をもとに紡いだ24編のショート・ストーリー。
  • 花の骸
    -
    東北から出稼ぎに上京した男性三人組は、建設現場の仕事が過酷で、一緒に逃げ出す。だが金に困り、強盗に入った屋敷で、女の絞殺現場を目撃。後日、三人のうちの一人が撲殺され……。刑事達は、その屋敷に出入りする外国籍の女と官財界の大物に注目。国際的人身売買組織と国を揺るがす大がかりな汚職に迫っていく。国有地払い下げに絡む黒い霧、裏で暗躍する大物たち。色と欲に塗れた悪を炙り出す刑事の執念の捜査行の結末は? 日本人の精神の荒廃を描き、最後の大どんでん返しに震撼する圧巻の社会派ミステリー。
  • 花は六十
    -
    「いったいおばあさんは何が楽しくていきているのかしら」と話していた私がなんと還暦を迎えた。隣に住む同い年の静さんは、ひょんなことから、大学生の男の子からデートに誘われる。のろけ話を聞かされる私の心中は穏やかではない。はしたないと思いながら、妬んでいる自分がいるのだ。そんなとき、私にもお見合い話が持ち上がる。女は60歳からが花。いまや、60歳は恋愛適齢期。
  • 花嫁レンタル、いかがですか? よろず派遣株式会社
    3.0
    早世した有名女優の娘である真尋。わざと地味メイクを施し、母親そっくりの顔を変えて生きてきた。母とは違って引っ込み思案で、なるべく目立たないようにしたかったのだ。横浜で就職活動をしていた真尋に、声をかけてきたのは人材派遣会社の社長を名乗る人物。破格の報酬のその仕事とは、挙式直前に逃げた花嫁の身代わりとして、式に出てほしいというもので…!?
  • 花を運ぶ妹
    -
    東南アジア放浪の果てにヘロインの罠にはまり、インドネシア・バリ島で投獄された画家・哲郎。兄の逮捕を知ったカヲルは単身バリ島へ飛ぶ。現地領事館も麻薬犯罪には及び腰で助けにはならない。裁判は混迷を極め、官憲によるフレームアップで哲郎は極刑を言い渡されるかもしれない。不慣れなアジア的な混沌の中で、果たして妹は兄を救うことができるのか……。交錯する生と死、西欧とアジア、絶望と救済。バリ島の濃密な空気の中で繰り広げられる舞踏劇、魔女ランダと怪獣バロンの戦いは永遠に続く。真の救いとは何かを問いかける長編小説。毎日出版文化賞受賞の傑作。
  • ハニー ビター ハニー
    3.7
    陽ちゃんは親友の沙耶香の彼氏だ。でも、わたしは彼と寝ている。沙耶香のことは大切だけれど、彼に惹かれる自分を止められない――(「友だちの彼」)。ライブでボーカルの男性に一目惚れし、誘われるままにホテルへ。初体験。…あたしは本当にこういうことがしたかったの?(「もどれない」)甘やかで、ほろ苦く、胸のちぎれるような切なさをたたえた全9話。人気歌人初の恋愛小説。
  • 母 ―オモニ―
    3.5
    太平洋戦争が始まる年、許嫁の父を訪ねて18歳の母は単身、朝鮮から日本に渡った。熊本で終戦を迎え、「在日」の集落に身を寄せる。そして、祖国の分断。正業に就くことも祖国に還ることもできない。貧困に喘ぎながら生きることに必死だった他の在日一世たちとともに、忍従の日々を過ごす。ひたむきに、「家族」を守るために――。かけがえのない母の記憶をたどり、切なる思いをつづった著者初の小説。 【ナツイチ2013対象作品】
  • 母のあしおと
    4.6
    愛する妻の死後、楽しく暮らすことに後ろめたさを覚える夫。(「はちみつ」)「私はあなたのお母さんじゃない」恋人の言葉が忘れられない次男。(「もち」)義母に嫌われているのではないかと悩む長男の婚約者。(「ははぎつね」)母・道子の人生は"平凡"な、どこにでもあるものだったのだろうか──? 道子の死後から少女だった頃まで、その人生を遡る。七つの視点で綴られた感動の連作集。
  • 母の国から来た殺人者(十津川警部シリーズ)
    -
    製薬会社社長がカラオケクラブで毒殺された。捜査班の十津川警部は、胸に白いカーネーションを挿した“みどり”と名乗る女が現場から消えたことを知る。女はカラオケの歌詞「母恋」を読み間違えたと聞き、室蘭本線の母恋駅へ。だが現地で、犯人と思われる女と同じ名前の女性は既に死んでいると判明。そして函館で次なる殺人が……。連続殺人事件の被害者たちに接点はあるのか? 十津川警部が愛と殺意の連鎖に挑む! 東京と北海道を舞台に描く鉄道&旅情ミステリー。
  • 母のはなし
    3.4
    「おれの子じゃない。知らない」ハルエの妊娠報告に夫のタケシは言い放った――。優しい両親、きょうだいに囲まれて、楽しい幼少期を過ごしたハルエだったが、金にうるさく自分勝手、超細かい性格の夫との結婚生活は、びっくりすることだらけだった。子供たちが成長し、念願の離婚をしたところでハルエの中で何かがはじけた。娘、妻、母、そして老人となっていく女の一生をおおらかに描く。
  • 母六夜
    -
    父と子が、同時にひとりの女に魅かれ、愛憎の業のなかにあえぐ名作「沼津」、大岡文学のライトモチーフになる女性像を幻想的な世界に現出する「母六夜」ほか「焚火」「問わずがたり」「木下氏の場合」など、著者の文学世界の核心をかたちづくった傑作十三篇を収録。
  • ハミザベス
    3.8
    【第26回すばる文学賞受賞作】はたちの誕生日を前に、死んだと思っていた父が本当に死んだらしい。マンションを一部屋とハムスターを遺産として受け取った、まちる。母と暮らした家を出て、地上33階で静かに重ねる日常。元恋人の幼なじみや、父の同居人だった女性との不思議な関係と友情……。不器用なやさしさをユーモアでくるみ、流れる会話でつむぐ、新しい小説世界。注目作家のデビュー作ほか『豆姉妹』収録。
  • ハムレットは行方不明 上
    5.0
    大学の写真部顧問、衣笠教授は三年前に兄を交通事故で失い、やがて兄の未亡人を妻に迎え教授の地位も受け継いだ。父の事故死に疑惑を抱いた息子の久志は失跡し行方不明…。ある日、女子大生・綾子が新宿の歩行者天国で撮った一枚の写真を見て衣笠教授は顔色を変えた。そこには失跡中の義理の息子、久志が写っていたのだった。久志は何故姿を現わしたのか。青春ミステリーの前編。
  • はやぶさ 遥かなる帰還
    5.0
    2003年、5月9日。内之浦宇宙空間観測所から、小惑星探査機「MUSES-C」が打ち上げられた。「はやぶさ」と名付けられたその探査機は、小惑星「イトカワ」のサンプルを持ち帰ることを目標に、長い宇宙の旅へと出発する。「はやぶさ」は「地球スウィングバイ」を経て順調に航行していくが、「イトカワ」到着の前後に、リアクションホイールが故障、エンジンも不調をきたし、次第に満身創痍となっていく。果たして、「はやぶさ」は星のかけらを採って、無事に地球に帰ってくることができるのか――。
  • 払い戻した恋人
    4.4
    「犯人はボクじゃない! ところで君に一目惚れしたので結婚して。でもその前に一千万円でボクの容疑を晴らしてくれない?」美人でちょっぴりケチなOL冴子は、ひょんなことから恋人殺し容疑の青年と知り合った。人間以外なら“来るものは拒まず”がモットーで貯金が趣味の冴子は、この申し出を引き受けさっそく調査を開始したが…。恋とお金と殺人の長編ミステリー。
  • はるかな町
    5.0
    友達の姉さんへ寄せた淡い想い、夏期休暇の映画会、放課後の図書室、校庭のポプラの樹々……。過ぎ去った少年の日への懐かしみを、詩人、作家である著者が磨かれた感性で豊かに綴る青春の日の讃歌。“はるかな町”へあなたを誘う創作集。33編収録。
  • 遥かなる航跡(集英社インターナショナル)
    5.0
    1972年、18歳の夏。カメラ好きのフランス人である「ぼく」は、偶然日本にやってきた。繊細で礼儀正しい日本人と触れ合ううち、急速に日本に惹かれていく自分。そして日本人の青年に誘われて瀬戸内海の島を訪れた「ぼく」は、そこで一人の少女と恋に落ちる……。それから30数年、日本人女性と結婚し、日本の会社のトップに上り詰めた「ぼく」のもとにある女性からの手紙が届く。シャネル日本法人社長が、自らの体験をもとに書いた自伝的小説。
  • 遥かなる水の音
    4.0
    〈僕が死んだら、その灰をサハラにまいてくれないかな〉。亡き周の希望を叶えるために共にモロッコへと旅立つ4人。いまの恋愛関係の行き先に不安を覚える緋沙子。近づきつつある老いにおびえるゲイのフランス人、ジャン=クロード。ふとしたはずみで身体の関係ができ、気持ちの整理がつかない幼なじみの浩介と結衣。愛の深さ、強さとは。そして生きることとは。様々な愛の形を浮き彫りにする感動長編。
  • はるさきのへび
    4.0
    26歳の平凡なサラリーマンの、妻以外の女性との、ちょっとドキドキする出会いと、アヤシク微妙な心の動きをとらえた「階段の上の海」。赤ちゃん誕生と育児を、新米ママの視点で描く「海ちゃん、おはよう」。娘の成長を見守る父親の心と家族のエピソードをちりばめた「娘と私」。冬眠から目覚めたばかりのへびのように、のんびり、でもそわそわする人生の一時期を温かいタッチで綴る私小説3編。
  • 春のソナタ
    3.9
    聡明で、魅力的な表情の女性だ――17歳の直樹が年上の早苗に抱いた第一印象である。高校生のバイオリニストの直樹は、音楽を愛しながらも、ピアニストの父と同じ道を進むことをためらう。そんなある時、美貌の早苗に出会った。その時から彼の生活に明らかな変化が起きる。高校生の愛と自立、人生の試練を流麗に描く青春小説。
  • 春のめざめは紫の巻 新・私本源氏
    4.3
    須磨の流人生活から京へ戻り、政界最高の実力者となった光源氏。三十を過ぎてオジンの仲間入りだが、本人は都一の美男と自惚れ屋のまま。相変わらず色恋に熱心で、意中の姫のもとへ通うのだが……。少女から思い通りに育てたはずの紫の姫に翻弄され、生真面目な末摘花には興ざめの対応をされ、思いのズレル散々な日々。「源氏物語」の女人側からみた源氏の恋物語を現代風に描く愉しい古典パロディ。
  • 晴れた空(上)
    3.0
    1~3巻715円 (税込)
    なぜか、東京大空襲のあとはよく晴れた日が続いた。終戦…その日もまた、青空だった。焦土と化したなか、戦争で両親を失った孤児たち8人の逆境に挑む人生がはじまった。けなげに、しかも逞しく生きぬく彼らを通して、疾風怒濤の「昭和」時代を描く。著者の記念すべき作品として、話題をよんだ感動の大河ロマン。
  • ハロワ!
    3.5
    さまざまな事情を抱えた求職者たちが訪れる、ハローワーク宮台。沢田信は、民間の人材紹介会社から転職したばかりの新米就職相談員だ。慣れない業務に励む信を「指名」してやってくるのは、一癖も二癖もある求職者ばかり。理想が高くて尊大な元銀行マンに、面接を怖がるアラサー女子……。信は彼らの信頼を勝ち取ることができるのか? 理想と現実の間で揺れる28歳男子の「お仕事探し」奮闘記。
  • ハローサヨコ、きみの技術に敬服するよ
    3.2
    高校一年生の誠が抱える秘密、それは幼馴染の小夜子と二人でネットにまつわる事件を解決していること。誠が依頼を受け、小夜子が実作業を担当する。当初は厄介ごとが彼女に降りかからないように選んだ手段だったが、誠は次第に罪悪感を覚え始める。自分たちがしているのは人助けか、はたまた犯罪か。思い悩む彼を待ち受けていたのは予想もつかない事件だった――。甘酸っぱく愛らしい学園小説。
  • 犯罪ストリート
    -
    二千万円の金が入った買物袋を拾った警察官。完全に隠し通せるはずが……。(悪徳警官) 自分とは関係のないところでもてあそばれる結果となったひとりの女の運命。(空白の肖像) 虚実が錯綜した中でうごめくルポライターの生態。(重層軌道) など、ふとしたことから罠に落ち、深みにはまる男と女の人生を、鋭く抉るクライム・ノベル、6編を収録。
  • 犯罪調書
    4.0
    犯罪はその時代の意匠である。新聞の結婚案内欄を利用した連続殺人事件。イギリスの大国主義が生みだした「ピルトダウン人偽造事件」。農商務省の官吏がおこした本邦初のバラバラ殺人事件など、世界を騒然とさせた古今東西の犯罪を収集、軽妙な筆で事件の謎と人間のドラマをさぐった犯罪調書。
  • 反人生
    3.7
    「人生作り」には興味がない。流れる季節を感じるだけで、世界は十分面白い――。夫を亡くしてひとり暮らしの荻原萩子・五十五歳が抱く、バイト仲間の年下女子・早蕨へのときめきと憧れ。――「反人生」/世界を旅する寅次郎、ユーモアのセンスあふれる桃男。男友だちから新たな感覚を学ぼうとする大沼の行く末は……。――「越境と逸脱」など全4編。男と女、親と子、先輩と後輩、夫と妻。無意識に人々のイメージに染み付いている役割や常識を超えて、自由でゆるやかな連帯のかたちを見つける作品集。
  • 韓素音の月
    -
    【第19回(1995年)すばる文学賞受賞作】語言不通、心、急……。男が書いた謎の言葉が、不思議な恋の始まりだった。性の相性は最高なのに、言葉がまったく通じない二人。急激に変化する現代の北京を舞台に、日本人女性と中国人男性の滑稽なほどの誤解と交感を軽やかに、鮮やかに描く。表題作を含む三つの「越境する恋」の物語。新世紀恋愛小説の決定版。
  • バイオリン狂騒曲
    -
    国際コンクール目前。黒人バイオリニスト、レイの楽器が突然ホテルから消えた。残されたのは1枚の脅迫状。盗まれたのは、かの名器ストラディヴァリウスだった――差別と偏見に耐えようやく掴んだ大舞台への切符。バイオリンを狙う思惑と計略が渦巻く中レイは決勝の舞台に立つことができるのか!? そして明らかとなるバイオリンに隠された衝撃の秘密とは!?――「音楽の描写が特に素晴らしく、自分が読んでいるのか、それともコンサートを聴いているのか時々わからなくなってしまう」(ワシントン・ポスト)他、各紙が絶賛! 手に汗握る、青春音楽ミステリー!!
  • バクテリア・ハザード
    3.3
    天才科学者・山之内明が発明した「ペトロバグ」。それは、石油を生成するとてつもない細菌であった。世界の石油市場を根本から覆し、戦争にまで発展しかねない脅威を感じた石油メジャーは、山之内殺害およびペトロバグ略奪の指令を発した。目に見えない細菌が、時に驚くべき能力を発揮し、その強力さゆえに人類の危機をも引き起こす……。来るべき脅威に警鐘を鳴らす、著者の新たな予言の書。
  • 幕末舞妓、なみ香の秘密
    4.0
    京都祇園のお茶屋兼置屋、「鈴乃家」のひとり息子で、市内の高校に通う小野貴史。ある日、自宅の物置小屋で足をすべらせ、目覚めるとなぜかそこは幕末の京都だった――。当時の「鈴乃家」は、小野小町の再来といわれるほどの人気舞妓がいたはずなのだが、実際には廃業の危機に瀕していた。このままでは貴史が生まれないことになってしまう!? タイムスリップ幕末異聞!

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