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尻野浦小学校には、杏奈先生と飛鷹かおるという生徒、そして英語まじりで話をする校長先生がいるばかり。そう、ここは海沿いの限界集落。残りの住人はかおるの父とかおるの兄だけ。そこにある日、山向こうの「ガイコツジン」集落から、エトーくんがやってきて――。それぞれの人生を抱え、集まった人たちの濃密な関係が織りなす、風変わりな家族の物語。
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Posted by ブクログ
読み終えて、「え・・なんで?」って思う。そして何とも表現しがたい何色ともわからない渦がもやもやと広がってくる。そのもやもやの広がりに抵抗したくて、何かを掴みたい思いで後戻りしページをめくる。 外の世界と遮断されてしまったかのような小さな小さな集落で、そこに居るのは村最後の生き残りとも言える校長先生...続きを読む、村でただ一人の子ども かおる、肌の色が違う兄 純、兄妹の父であるトビタカ先生、そしてかおるを教えている杏奈先生。 みんな血が繋がっていないし年代もバラバラで、肌の色さえ違っていたりするのだけれど、それぞれ心に何か暗いものを抱えていて、それ故に善良で優しく明るい。 かおるが連れてきたガイコツジンのお友だちエトーくんだってそうだ。 カタコトの日本語しか話せず、意思疎通が完全ではないと本人にもわかっているのだ。だけど彼の疑問形になってしまうカタコトの日本語は大人をあたたかく包み込む。 ハッキリさせないことで、相手を優しく包み込み癒している。同時にそれは、得体のしれない何かへの不安を増長させることにもなる。 それが大人には理解できることでも、子どもには説明がつかない。 時におばあちゃんになり、時に宇宙船になり、説明のつかないそれは形を変える。 子どもには大人が思っている以上に世界が見えていて、しかし彼らにとって説明のつかないそれは、時に深刻な事態を引き起こすことになるのだ。 小さく静かなこの集落で子どもたちの存在はどれほどの光を放っていただろうか。 一人二人と村の友たちを見送ってきたであろう校長先生の混乱と恐怖は想像して余りある。杏奈にしても、純にしても、トビタカ先生にしても、かおるの存在そのものが希望のようなものだったに違いない。 彼らの健やかな成長がただひとつの楽しみとも思えるほど、この集落は生の息吹から遠いところにあった。 子どもたちの素直で無垢な様子が鮮やかな光を放ち、読者を含めた大人たちの不安により濃い影を落とす。 1回読んだだけではハッキリとさせない結末の喪失感は大きい。けれども、ただそれだけではない。 2回読めば残された者たちには強い祈りと希望が湧き、3回読めばそれが明るい未来に続いているようにも思えてくるのだ。 優しさも後悔も祈りも飲み込んで同化していく、まるで宇宙の銀河ように糢糊とした光と闇の間を行き来しながら。
登場人物が皆、それぞれの役割をきっちりと演じているような感じがして、それでもその役割の中でどうにかして幸せであると言い聞かせているみたいだ。 2018/10/14
過疎化と高齢化によって限界集落となった地域に住んでいる5人の登場人物による奇妙な交流物語。 ユーモラスなキャラクターははっきりしているものの、ファンタジーっぽいちょっと揺蕩うような心地よさのある物語。 詳細に書かれた風景や心象の描写が美しい。 繰り返し読んでみなければ理解しにくい小説かも。
限界集落の話で、人口も少なく寂しさを感じさせたり、子供の秘密基地ーー夢を感じたり、隣の村のガイコツジンことエトー君って一体……。 物語、云々、情景を感じさせてくれる小説で景色が浮かんできた。 ただ少し読み手に想像させるようなことが多かった気がした。
いわゆる限界集落の小学校に通うたった一人の児童と女性教師。ふたりを中心に限られた生活圏であまりにも近い関係におかれた人たちのファンタジックなお話。不便な環境であるはずなのに登場人物がみな善人で幸せそうだ。
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小野正嗣
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