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小さな入り江と低い山並みに挟まれた土地に十歳の尊は連れて来られた。言葉が話せず体も動かせない兄と尊を、都会の狭い部屋に残していなくなった母があれほど嫌っていた田舎。豊かな自然と大人たち、霊的なるものに慈しまれ、尊は癒されていく。芥川賞受賞作「九年前の祈り」に連なる<希望と再生>の物語。
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Posted by ブクログ
映画「誰も知らない」を彷彿とさせる都会の子捨ての話を背景に、だが作家は人と社会の温かさを信じている人だ。 何があったか、詳細はわからぬまま、厳しい経験を経た10歳の尊はいま、消息の知れない母の故郷、南の小さな漁村にいる。 いつまでも続くかのような夏休み、掃き清められてしんと静かな神社、老人が毎日参る...続きを読む墓、縁側で食べるスイカ、遠慮なく出入りする近所の人たち。 都会に暮らし外国でも暮らした作者が故郷を思う時の風景はこういうものなのだろうか。 そして、母がつぶやいていた「こんなところ、早く出て行きたかった」という言葉もまた作者の言葉か。 幻を見る尊の目から彼らが消える日はくるのか。 なまなましい暗さをたたえながらも見えるものは明るい、この作品の続きが読みたい。
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