小説・文芸 - 集英社文芸単行本作品一覧

  • 書楼弔堂 待宵
    続巻入荷
    4.1
    3~4巻2,310~2,530円 (税込)
    舞台は明治30年代後半。鄙びた甘酒屋を営む弥蔵のところに馴染み客の利吉がやって来て、坂下の鰻屋に徳富蘇峰が居て本屋を探しているという。 なんでも、甘酒屋のある坂を上った先に、古今東西のあらゆる本が揃うと評判の書舗があるらしい。その名は “書楼弔堂(しょろうとむらいどう)”。 思想の変節を非難された徳富蘇峰、探偵小説を書く以前の岡本綺堂、学生時代の竹久夢二……。そこには、迷える者達が、己の一冊を求め“探書”に訪れる。 「扠(さて)、本日はどのようなご本をご所望でしょう――」 日露戦争の足音が聞こえる激動の時代に、本と人との繋がりを見つめなおす。 約6年ぶり、待望のシリーズ第3弾! 【目次】探書拾参 史乗 探書拾肆 統御 探書拾伍 滑稽 探書拾陸 幽冥 探書拾漆 予兆 探書拾捌 改良
  • 地面師たち ファイナル・ベッツ
    3.8
    シンガポールのカジノで元Jリーガーの稲田は全財産を失い失意のどん底にいた。一部始終を見ていた大物地面師・ハリソン山中は、詐欺メンバーの一員として稲田に仕事を依頼する。日本に戻り、ディベロッパーの宏彰、支援者の菅原と共に準備に入るが、予定していた苫小牧のプランが突然白紙となり、代案として北極海航路開通を見込んだ釧路へ変更を余儀なくされる。しかし、成功すれば200億円超えの大金が見込まれる前代未聞の大仕事。ハリソン山中が狙いをつけたターゲットは、シンガポールの大手不動産ディベロッパーの御曹司・ケビン。在留メンバーの一人、マヤによる色仕掛けの罠に嵌ったケビンは、逡巡しつつも、日本人の親友・リュウの後押しもあり、釧路の用地購入に乗り出す。一方、警視庁捜査二課のサクラは、不動産詐欺の捜査過程で地面師一味の関与を疑い、ハリソン山中が趣味の狩猟で頻繁に北海道を訪れていたとの情報を得て渡道するのだが――。 前作『地面師たち』がNetflixにてドラマ化! 2024年7月25日(木)より世界独占配信スタート。
  • チェーン・ディザスターズ
    4.5
    202X年7月。 長年危惧されていた南海トラフ地震が発生し、日本列島の太平洋側は壊滅状態に。 若き環境大臣・早乙女美来は、特に被害が大きかった愛知へ向かった。 名古屋では、地元IT企業「ネクスト・アース」がAI技術を駆使して開発した「エイド」によって、迅速な行方不明者の捜索と救助、避難所運営がおこなわれていた。 追い打ちをかけるように東京直下型地震が発生。 さらに、8月には過去最大級の大型台風が首都圏を襲う。 東京のビル群は崩れ落ち、閣僚の大半が亡くなり、緊急事態に対応するため美来が史上最年少で総理大臣に抜擢される。 しかし、絶望的な状況で、ついには富士山噴火の予兆が見え始め…… 初の女性総理・早乙女は、ネクスト・アースのCEO・利根崎に協力を仰ぎながら、日本最大の危機に立ち向かう。 崩壊に向かう日本を救うことが出来るのか――。 防災シミュレーション小説の第一人者の集大成。
  • チンギス紀 一 火眼
    3.9
    ユーラシア大陸に拡がる人類史上最大の帝国、その礎を築いたチンギス・カン。波乱に満ちたその生涯と、彼と出会った様々な英雄たちの生きざまを描く、新たな歴史大長編、ついに開幕! 12世紀、テムジン(のちのチンギス・カン)は、草原に暮らすモンゴル族のキャト氏に生まれた。10歳のとき、モンゴル族を束ねるはずだった父イェスゲイが、タタル族に殺害されてしまう。テムジンのキャト氏は衰退し、同じモンゴル族のタイチウト氏のタルグダイとトドエン・ギルテが台頭、テムジンたちに敵対し始める。危機的な状況のもとで、テムジンは、ある事情から異母弟ベクテルを討ったのち、独りいったん南へと向かった……。草原の遊牧民として生まれ、のちに世界を震撼させることになる男は、はじめに何を見たのか? 人類史を一変させた男の激動の生涯、そこに関わった人間たちの物語を描く新シリーズ、待望の第一巻。
  • こぼれ落ちる欠片のために
    4.2
    真実を見抜き、罪を償わせる。 たった、それだけ。それだけのことが、なぜこんなにも難しい――? マンションの一室で発生したある殺人事件の現場に向かった、県警捜査一課の和泉。 そこで出会った女性警官・瀬良の第一印象は、簡単に言えば「最悪」だった。 しかし、上の命令で瀬良とタッグを組み殺人事件を捜査することになり、 和泉は彼女の類稀な観察力を知ることになる。 二人の懸命な捜査により、事件のかたちが徐々に輪郭を帯びていくが、 待ち受けていたのは「正しい刑罰」の在り方を問う、予想外の真相だった――。 和泉と瀬良が立ち向かった最初の事件「イージー・ケース」ほか、 事件に関する証言を頑なに拒み続ける容疑者の謎を追う「ノー・リプライ」、 解決の糸口が見えない誘拐事件を描く書き下ろし中編「ホワイト・ポートレイト」を収録。 心揺さぶる結末に息を呑む、圧巻の傑作警察ミステリー!
  • 不機嫌な青春
    4.0
    切なくてまぶしい、残酷でもどかしい、思春期(あのころ)のすべてが詰まった胸疼く青春×SF短編集。 アニメ化もされた大人気スポーツ小説『2.43 清陰高校男子バレー部』著者、デビュー20周年記念作! 病院から飛んできた青い風船に結ばれていた手紙によって、思いがけず始まった文通。そこから芽生える、淡い恋と切ない嘘の行方。「零れたブルースプリング」 全ての感覚を周囲に拡散してしまう特殊能力を持ったヒツギ。彼がボランティアとして連れてこられたのは、生まれつき、痛みや温度を感じられないイオリの屋敷だった。「ヒツギとイオリ」 誰かに「ウザい」と思われると、その場から強制的にテレポートしてしまう。中学2年生のナオは、望まない超能力に苦しんでいた。「flick out」 妻を失い、心を閉ざして生きる宮内の前に突然現れたソバージュヘアの不良少女。彼女は亡き妻の名を名乗る。「ハスキーボイスでまた呼んで」 上記4編収録。
  • 月下の黒龍 浮雲心霊奇譚
    4.0
    8~9巻1,760~1,870円 (税込)
    霊を見ることができる赤眼を持つ憑きもの落としの浮雲は、土方歳三とともに京へと旅をしていた。 浮雲は箱根で遼太郎と名乗る謎の青年と出会う。 遼太郎は幽霊に憑かれやすい性質で、様々な怪異を引き寄せてしまう。 浮かぶ生首、干からびた死体、そして生贄を求める龍。 次々と迫る怪異の謎を調べるうちに、浮雲たちは秘められた哀しみと愛にふれていく…… そして明らかになる遼太郎の恐るべき正体とは―― 鮮烈な剣戟と、華麗な謎解き。 幕末ホラーミステリの傑作。
  • アクティベイター
    3.9
    羽田空港に突如、中国のステルス爆撃機が飛来した。女性パイロットは告げる。「積んでいるのは核兵器だ」と。核テロなのか、あるいは宣戦布告なのか。警察庁の鶴来(つるぎ)は爆撃機のパイロットを事情聴取しようとするが、護送中に何者かに拉致されてしまう。囚われた彼女を助けたのは鶴来の義兄で警備員の真丈(しんじょう)だった。核起爆の鍵を握る彼女の身柄をめぐり、中国の工作員、ロシアの暗殺者、アメリカの情報将校、韓国の追跡手が暗闘する。爆発すれば人類史上最大の犠牲者が――その恐怖の中、真丈と鶴来が東京中を奔走する。『天地明察』、『十二人の死にたい子どもたち』、「マルドゥック」シリーズ等数々のヒット作を生み出した著者が、作家生活25年のすべてを込めた極上の国際テロサスペンス。
  • 朽ちゆく庭
    3.6
    かつてのセレブタウンに引っ越してきた山岸家。中学生の真佐也は、転校前に部活をやめ、以来、学校をサボり、部屋にこもるようになる。けれど、その部屋には小学校からの友人・純二がこっそりと遊びに来ている。心配する母親・裕実子と対照的に、父親・陽一は不在がちであまり関心を示さない。真佐也はある日、家の向かいの公園でうずくまっている少女・あかりを見かける。その少女には怪しげな噂がつきまとっていた。一方、陽一は急に在宅勤務だと言って会社に行かなくなり、裕実子は勤務先の税理士事務所の上司と“残業”という名の密会を続けていて……壊れゆく家庭を描く“危険”なサスペンス長編。
  • 教団X
    3.5
    【「アメトーーク!」読書芸人でも紹介され、大反響!】絶対的な闇、圧倒的な光。「運命」に翻弄される4人の男女、物語は、いま極限まで加速する。米紙WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)年間ベスト10小説、アメリカ・デイヴィッド・グーディス賞を日本人で初受賞、いま世界で注目を集める作家の、待望の最新作! 謎のカルト教団と革命の予感。自分の元から去った女性は、公安から身を隠すオカルト教団の中へ消えた。絶対的な悪の教祖と4人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国を根幹から揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、光とは何か。著者最長にして圧倒的最高傑作。 ついに電子版配信開始!
  • リバー
    4.2
    《「本の雑誌」が選ぶ2022年度ベスト10 第一位!》 同一犯か? 模倣犯か? 群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が発見! 十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口が、街を凍らせていく。 かつて容疑をかけられた男。取り調べを担当した元刑事。 娘を殺され、執念深く犯人捜しを続ける父親。 若手新聞記者。一風変わった犯罪心理学者。新たな容疑者たち。 十年分の苦悩と悔恨は、真実を暴き出せるのか―― 人間の業と情を抉る無上の群像劇×緊迫感溢れる圧巻の犯罪小説!
  • ようこそ、ヒュナム洞書店へ
    4.3
    【2024年本屋大賞翻訳小説部門第1位】 完璧な人生なんてないけれど、「これでいい」と思える今日はある。 ネットで人気を博し韓国で累計25万部(2023年9月26日現在)を突破した、心温まるベストセラー小説! ソウル市内の住宅街にできた「ヒュナム洞書店」。会社を辞めたヨンジュは、追いつめられたかのようにその店を立ち上げた。書店にやってくるのは、就活に失敗したアルバイトのバリスタ・ミンジュン、夫の愚痴をこぼすコーヒー業者のジミ、無気力な高校生ミンチョルとその母ミンチョルオンマ、ネットでブログが炎上した作家のスンウ……。 それぞれに悩みを抱えたふつうの人々が、今日もヒュナム洞書店で出会う。 新米女性書店主と店に集う人々の、本とささやかな毎日を描く。
  • 東京ハイダウェイ
    4.1
    ようこそ、心休まる「隠れ家」へ。 東京・虎ノ門の企業に勤める桐人は、念願のマーケティング部に配属されるも、同期の直也と仕事の向き合い方で対立し、息苦しい日々を送っていた。 直也に「真面目な働き方」を馬鹿にされた日の昼休み、普段は無口な同僚の璃子が軽快に歩いているのを見かけた彼は、彼女の後ろ姿を追いかける。 辿り着いた先には、美しい星空が描かれたポスターがあり――「星空のキャッチボール」 桐人と直也の上司にあたるマネージャー職として、中途で採用された恵理子。 しかし、人事のトラブルに翻弄され続けた彼女は、ある日会社へ向かう途中の乗換駅で列車を降りることをやめ、出社せずにそのまま終着駅へと向かう。 駅を降りて当てもなく歩くこと数分、見知らぬとんがり屋根の建物を見つけ、ガラスの扉をくぐると――「森の箱舟」 ……ほか、ホッと一息つきたいあなたに届ける、都会に生きる人々が抱える心の傷と再生を描いた6つの物語。
  • 布武の果て
    3.1
    永禄11年、織田信長が足利義昭を奉じて上洛する。貿易による富で自治を貫く堺の納屋衆、中でも今井宗久、千宗易、津田宗及は天下の趨勢を見定めようとしていた。納屋衆内では、新興勢力である信長に賭けることに反対の声もあがったが、次第にその実力を認めていく。一方、今井、千、津田は信長から茶堂衆に任じられ、茶の席で武将たちの情勢を探り、鉄炮や硝石の手配を一手に握るようになっていた。天正8年、石山本願寺を降伏させることに成功した信長の天下は、目前に迫っていた。しかし、徳川家康の腹心で一向宗徒の本多弥八郎が怪しい動きを見せはじめ……。堺商人たちが辿り着いた、「本能寺の変」の驚くべき真相とは――。茶室を舞台に繰り広げられる、圧巻の戦国交渉小説。歴史時代小説の第一線を走り続ける著者渾身の快作!
  • 難問の多い料理店
    3.2
    『#真相をお話しします』で大ブレイクした結城真一郎が2年ぶりに仕掛ける、 笑いあり、驚きあり、そして怖さあり……の摩訶不思議な本格ミステリ、ここに爆誕!! ――どなたもどうかお読みください。決してご遠慮はありません。 こんなミステリを、私たちはずっと待っていた!! ビーバーイーツ配達員として日銭を稼ぐ大学生の「僕」は、注文を受けて向かった怪しげなレストランで、オーナーシェフと出会う。 彼は虚空のような暗い瞳で、「お願いがあるんだけど。報酬は1万円」と、嘘みたいな儲け話を提案し、あろうことか僕はそれに乗ってしまった。 そうして多額の報酬を貰っているうちに、僕はあることに気づく。 どうやらこの店は「ある手法」で探偵業も担っているらしい、と。 不自然な焼死体が出たアパート火災、空室に届き続ける置き配、謎の言葉を残して捕まった空き巣犯、なぜか指が二本欠損した状態の轢死体……。 オーナーは、配達員に情報を運ばせることで、どんな謎も華麗に解いてしまう。 そして、配達員にこう伝えるのだ。 ――「口外したら、命はない」と。
  • グリフィスの傷
    3.8
    からだは傷みを忘れない――たとえ肌がなめらかさを取り戻そうとも。 「傷」をめぐる10の物語を通して「癒える」とは何かを問いかける、切々とした疼きとふくよかな余韻に満ちた短編小説集。 「みんな、皮膚の下に流れている赤を忘れて暮らしている」。ある日を境に、「私」は高校のクラスメイト全員から「存在しない者」とされてしまい――「竜舌蘭」 「傷が、いつの日かよみがえってあなたを壊してしまわないよう、わたしはずっと祈り続けます」。公園で「わたし」が「あなた」を見守る理由は――「グリフィスの傷」 「瞬きを、する。このまぶたに傷をつけてくれたひとのことをおもう」。「あたし」は「さやちゃん先生」をめがけて、渋谷の街を駆け抜ける――「まぶたの光」 ……ほか、からだに刻まれた傷を精緻にとらえた短編10作を収録。
  • 人間界の諸相
    4.0
    謎に満ちた女・菱野時江とは何者なのか――。突如、連絡が取れなくなった時江の消息を追う二人の友人、渋崎咲子と古河内栗美は、携帯端末のSNSを頼りに彼女の居場所を突きとめた。そこには「あの国は暮らすにはいいが、生きるのは窮屈すぎる」という一文が……。(「幻の淑女」より)文学界の異才・木下古栗が挑んだ、なんともトリッキーなエンタメ風小説! 作品の全貌は、読んでみてのお楽しみ。
  • みどりいせき
    3.7
    【第37回三島由紀夫賞受賞作】 【第47回すばる文学賞受賞作】 【選考委員激賞!】 私の中にある「小説」のイメージや定義を覆してくれた。――金原ひとみさん この青春小説の主役は、語り手でも登場人物でもなく生成されるバイブスそのもの――川上未映子さん (選評より) このままじゃ不登校んなるなぁと思いながら、高2の僕は小学生の時にバッテリーを組んでた一個下の春と再会した。 そしたら一瞬にして、僕は怪しい闇バイトに巻き込まれ始めた……。 でも、見たり聞いたりした世界が全てじゃなくって、その裏には、というか普通の人が合わせるピントの外側にはまったく知らない世界がぼやけて広がってた――。 圧倒的中毒性! 超ド級のデビュー作! ティーンたちの連帯と、不条理な世の中への抵抗を描く第47回すばる文学賞受賞作。
  • 今夜、喫茶マチカネで
    4.0
    「閉店って。店、やめるってことか」 私は無言のまま、ちいさくうなずいた。 昭和29年に待兼山駅の近くで、父と母が始めた書店と喫茶店。1階の書店を兄が、2階の喫茶店を弟が継いだが、時代の流れもあり、最寄駅の名称が変わるタイミングで店を閉じることに。 喫茶マチカネの店主・今澤敦己は、店を愛する客からの提案で、残された数カ月の間、心に残る不思議な経験をゲストが語る会「待兼山奇談倶楽部」を開催する。そこで語られた、人生におけるとっておきの出来事とは……。 心あたたまる連作短編集。 (第一話:待兼山ヘンジ/第二話:ロッキー・ラクーン/第三話:銭湯のピアニスト/第四話:ジェイクとあんかけうどん/第五話:恋するマチカネワニ/第六話:風をあつめて/第七話:青い橋)
  • 赤い月の香り
    4.1
    天才調香師は、人の「欲望」を「香り」に変える――。 直木賞受賞第一作。『透明な夜の香り』続編! 「君からはいつも強い怒りの匂いがした」 カフェでアルバイトをしていた朝倉満は、客として来店した小川朔に、自身が暮らす洋館で働かないかと勧誘される。朔は人並外れた嗅覚を持つ調香師で、その洋館では依頼人の望む香りをオーダーメイドで作り出す仕事をしていたのだ。 朔のもとには、香りにまつわるさまざまな執着を持った依頼人が訪れる。その欲望に向き合ううちに、やがて朔が満を仕事に誘った本当の理由が分かり……。 香りを文学へと昇華した、第6回渡辺淳一文学賞受賞作『透明な夜の香り』に続く、ドラマティックな長編小説。
  • そういう生き物
    4.0
    【第40回すばる文学賞受賞作】千景とまゆ子。高校の同級生である二人は、10年ぶりに偶然再会し、思いがけず一緒に暮らし始める。薬剤師の千景は、とある男との逢瀬を重ねながらも、定年退職した大学の恩師「先生」に心を寄せている。叔母のスナックでアルバイトをするまゆ子は、突然家に尋ねてきた「先生」の孫とカタツムリの飼育を巡り交流を深めつつ、千景をそっと見守る。すれ違いの生活ながら、長く離れていた二人の距離は徐々に縮まっていく。そんな中、高校時代の友人の結婚式が近づき、二人はかつての自分たちの深い関係と秘密とに改めて向き合うことになる。そして……? 一番近くにいるのに、わかり合えない二人。なのにもかかわらず、寄り添う二人。愛と性、心と体の狭間で揺れ動く孤独な心象風景を、瑞々しい文体で描き出す。
  • 夜果つるところ
    3.6
    執筆期間15年のミステリ・ロマン大作『鈍色幻視行』の核となる小説、完全単行本化。 「本格的にメタフィクションをやってみたい」という著者渾身の挑戦がここに結実…! 遊廓「墜月荘」で暮らす「私」には、三人の母がいる。孔雀の声を真似し、日がな鳥籠を眺める産みの母・和江。身の回りのことを教えてくれる育ての母・莢子。表情に乏しく、置き物のように帳場に立つ名義上の母・文子。ある時、「私」は館に出入りする男たちの宴会に迷い込む。着流しの笹野、背広を着た子爵、軍服の久我原。なぜか彼らに近しさを感じる「私」。だがそれは、夥しい血が流れる惨劇の始まりで……。 謎多き作家「飯合梓」によって執筆された、幻の一冊。 『鈍色幻視行』の登場人物たちの心を捉えて離さない、美しくも惨烈な幻想譚。※電子版はリバーシブル・カバー仕様ではありません。
  • こまどりたちが歌うなら
    3.8
    前職の人間関係や職場環境に疲れ果て退職した茉子は、親戚の伸吾が社長を務める小さな製菓会社「吉成製菓」に転職する。 父の跡を継いで社長に就任した頼りない伸吾、誰よりも業務を知っているのに訳あってパートとして働く亀田さん。やたらと声が大きく態度も大きい江島さん、その部下でいつも怒られてばかりの正置さん、畑違いの有名企業から転職してきた千葉さん……。 それぞれの人生を歩んできた面々と働き始めた茉子は、サービス残業や女性スタッフによるお茶くみなど、会社の中の「見えないルール」が見過ごせず、声をあげていくが――。 一人一人違う〈私たち〉が関わり合い、働いて、生きていくことのかけがえのなさが胸に響く感動長編!
  • 22歳の扉
    3.9
    【小説すばる新人賞、史上最年少受賞から8年】 三重で育ち、京都の大学に入学した数学好きの田辺朔。 大学生活に馴染めず、漫然と授業に出て、バイトをしているうちに一回生前期は終わってしまった。 後期に入り、旧文学部棟の地下、通称「キューチカ」でひっそりと経営されているバーのマスターである先輩の夷川と出会い、朔の大学生活は一変した。 夷川につれられ、初めてのウイスキー、タバコ、そしてバーやクラブなど、これまで見たこともない世界を知っていく。 しかし、ある日をさかいに、何の前触れもなく夷川はナイジェリアへ留学に行ってしまった。「バー・ディアハンツはお前に任せる!」の一言を残して。 そこからマスターとしてバーに立つことになった朔は、その大学内の不思議なバーで数々の出会いと別れを経験する――。自由奔放な女の子に振り回されたり、学生運動紛いに巻き込まれたり、自分の行く末に悩んだり…… 二十代前半の「不変」と「今」が詰まった圧倒的青春小説!
  • 書楼弔堂 待宵 探書拾参 史乗
    続巻入荷
    -
    13~24巻396~429円 (税込)
    書楼弔堂電子分冊版、第十三巻。『書楼弔堂 待宵』収録の「史乗」をシングルカット。舞台は明治30年代後半。鄙びた甘酒屋を営む弥蔵のところに馴染み客の利吉がやって来て、坂下の鰻屋に徳富蘇峰が居て本屋を探しているという。 なんでも、甘酒屋のある坂を上った先に、古今東西のあらゆる本が揃うと評判の書舗があるらしい。その名は “書楼弔堂(しょろうとむらいどう)”。 思想の変節を非難された徳富蘇峰、探偵小説を書く以前の岡本綺堂、学生時代の竹久夢二……。そこには、迷える者達が、己の一冊を求め“探書”に訪れる。 「扠(さて)、本日はどのようなご本をご所望でしょう――」 日露戦争の足音が聞こえる激動の時代に、本と人との繋がりを見つめなおす。 約6年ぶり、待望のシリーズ第3弾! ※本電子書籍は『書楼弔堂 待宵』の電子分冊になります。
  • 結城真一郎最新刊『難問の多い料理店』刊行記念小冊子
    無料あり
    3.5
    『#真相をお話しします』で大ブレイクした結城真一郎が2年ぶりに仕掛ける、 笑いあり、驚きあり、そして怖さあり……の摩訶不思議な本格ミステリ、ここに爆誕!! ――どなたもどうかお読みください。決してご遠慮はありません。 こんなミステリを、私たちはずっと待っていた!! ビーバーイーツ配達員として日銭を稼ぐ大学生の「僕」は、注文を受けて向かった怪しげなレストランで、オーナーシェフと出会う。 彼は虚空のような暗い瞳で、「お願いがあるんだけど。報酬は1万円」と、嘘みたいな儲け話を提案し、あろうことか僕はそれに乗ってしまった。 そうして多額の報酬を貰っているうちに、僕はあることに気づく。 どうやらこの店は「ある手法」で探偵業も担っているらしい、と――。 本小冊子は著者インタビューのほか、収録作品の中の一遍「転んでもただでは起きないふわ玉豆苗スープ事件」をお読みいただけます。ぜひDLしてお楽しみください。

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  • シリーズ最新刊『浮雲心霊奇譚 血縁の理』刊行記念小冊子
    無料あり
    4.5
    【無料小冊子】赤眼の憑きもの落とし・浮雲。絵師の卵・八十八。江戸を震撼させる怪異がふたりを襲う――。680万部超の大ヒットシリーズ『心霊探偵八雲』のルーツを描く、幕末ミステリー「浮雲心霊奇譚」。シリーズの最新刊刊行を記念して、「赤眼の理」「妖刀の理」「菩薩の理」「白蛇の理」「呪術師の宴」「血縁の理」各巻刊行時の著者インタビューを収録したデジタルのみの無料小冊子を特別配信!

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  • 『書楼弔堂』シリーズガイドブック2023年版(試し読み付)
    無料あり
    4.3
    「扠、本日はどのようなご本をご所望でしょう――」 明治三〇年代後半。古今東西の本が集う書舗(ほんや)に、今日も迷える者達が訪れる。 約6年ぶり、待望の最新刊『書楼弔堂 待宵』の刊行を記念して、「書楼弔堂」シリーズを紹介するガイドブックを配信します。 登場人物や最新刊の紹介に加え、刊行記念著者インタビューを全文掲載! またガイドブック電子版には『書楼弔堂 待宵』の試し読みを収録しました。 ぜひダウンロードしてお楽しみください。

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  • ずっとそこにいるつもり?【一編無料試し読み版】
    無料あり
    4.4
    閉塞的な現実を背負う人たちの、さまざまな葛藤の中で現れた「気づき」とは。 念願だった映画の宣伝会社に転職した弥生。そんななか、夫から切り出された「ある提案」を受け入れられず、忙しさにかまけ、決断を先延ばしにしていた。だが、その日は確実に迫っていて……(「あなたのママじゃない」)。優良メーカーに内定が決まった大学生の健生。サークルで知り合った友達以上恋人未満の彼女から同棲を仄めかされるが、うやむやにしていた。そんなある日、アパートに帰宅すると、かつて池袋で共に暮らした美空が現れ……(「BE MY BABY」)。ほか全5編の収録作から、 女性作家集団アミの会主催「アミの会短編アワード2022」受賞作「まだあの場所にいる」を無料公開いたします。 ぜひご一読ください。 ○「まだあの場所にいる」内容紹介 初対面なのに物怖じせず、屈託のない転校生の美月を前に、副担任の杏子の心はざわめいた。懸念されることの一つは、クラスの中心的人物で問題児でもある莉愛が虐めの標的にすることだったが……。

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  • 西加奈子最新短編小説集『わたしに会いたい』無料試し読み
    無料あり
    4.7
    西加奈子最新短編小説集『わたしに会いたい』、11月2日(木)発売・配信決定! コロナ禍以前の2019年より、自身の乳がん発覚から治療を行った22年にかけて発表された7編と書き下ろし1編を含む、全8編を収録。 誰かの価値観を押し付けられることが多いこの国で、自分のヒーローは自分でしかない。 フィクションだからこそ描ける、「自分を生きたい」という力強いメッセージに溢れた傑作が誕生しました。 本書の発売・配信に先駆け、表題作「わたしに会いたい」を全文掲載した無料試し読み電子書籍を配信いたします。ぜひDLしてお読みください。 【全文無料公開「わたしに会いたい」あらすじ】 父親が異なる3人の姉を持つわたしが心を許せるのは、いとこのモトだけだった。一人っ子のモトの部屋にはたくさんのおもちゃと本があり、いつもモトの部屋で遊んでいた。ある日、幼稚園で歩き方がおかしいと言われて病院に行くと、骨が変形していて、歩き方は生涯治らないことを告げられる。わたしは、その日もモトの部屋に行った。すると、家に帰って来たモトは、玄関にわたしがいた、と言う。モトは、わたしのドッペルゲンガーに出会ったのだ。それから毎日、わたしは「わたし」について考えた。

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  • 【無料】「東京バンドワゴン」10周年記念小冊子
    無料あり
    3.7
    シリーズ累計130万部突破! 「東京バンドワゴン」シリーズ10周年を記念して、シリーズ全巻の試し読み&小路幸也特別インタビュー(「青春と読書」5月号収録)を収録した無料小冊子を配信いたします。老舗古書店「東亰バンドワゴン」に舞い込む謎を、大家族の堀田家が人情あふれる方法で解決する大人気シリーズの入門ガイド。

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  • 『ラブカは静かに弓を持つ』ロングセラー記念ガイドブック(試し読み付)
    無料あり
    4.0
    誰かを救うチェロの音色。きっと、あなたの心にも響く―― 少年時代、ある事件に遭遇し、トラウマを抱え生きる橘樹。 勤務先の上司から呼び出され、音楽教室の違法行為を探るための潜入調査を命じられる。 橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始めるが、次第に彼の演奏に魅了され……。 感動の音楽小説『ラブカは静かに弓を持つ』のロングセラーを記念して、斉藤壮馬さん、篠田節子さんとのスペシャル対談、著者・安壇美緒さんへのインタビュー、さらにスペシャルショートストーリー『音色と素性』を収録したガイドブックを配信します。 ぜひダウンロードしてお楽しみください。

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  • 池井戸潤最新刊『ハヤブサ消防団』刊行記念ガイドブック(試し読み付き)
    無料あり
    4.0
    ハヤブサ地区に移住してきたミステリ作家を待ち受けていたのは、連続放火事件だった。 果たしてその真相とは? 東京での暮らしに見切りをつけ、亡き父の故郷であるハヤブサ地区に移り住んだミステリ作家の三馬太郎。地元の人の誘いで居酒屋を訪れた太郎は、消防団に勧誘される。迷った末に入団を決意した太郎だったが、やがてのどかな集落でひそかに進行していた事件の存在を知る――。 最新刊刊行を記念して物語の舞台や消防団を徹底解説、さらに体験マンガを収録した『ハヤブサ消防団』ガイドブックを電子版にて配信いたします。電子版のみ、本作の試し読みを併録。ぜひダウンロードしてお読みください!

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  • 【試し読み収録】「スクープ」シリーズ最新刊『アンカー』刊行記念電子小冊子
    無料あり
    3.8
    累計40万部突破の大好評「スクープ」シリーズ! 『スクープ』『ヘッドライン』『クローズアップ』につづく、最新刊『アンカー』単行本刊行を記念して、先行試し読みを収録した電子小冊子を配信します。スクープを狙う記者と捜査一課の刑事がコンビを組む異色の警察小説。ぜひダウンロードしてシリーズの一端をご堪能ください。『アンカー』刊行記念著者インタビュー等も収録。

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  • 【試し読み増量版】この恋は世界でいちばん美しい雨(刊行記念エッセイ収録)
    無料あり
    4.0
    愛した相手の幸せが、自分の命を奪う、なんて――。二人で余命20年。死に瀕した恋人同士は、生きるために過酷な「奇跡」を受け入れる。この恋の結末に、涙せずにはいられない。『桜のような僕の恋人』の著者が贈る、胸打つ長編小説。試し読み増量に加え、刊行記念エッセイを収録した電子無料小冊子。

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  • アウシュヴィッツの図書係
    4.5
    アウシュヴィッツ強制収容所に、囚人たちによってひっそりと作られた“学校”。ここには8冊だけの秘密の“図書館”がある。図書係に指名されたのは14歳の少女ディタ。本の所持が禁じられているなか、少女は命の危険も顧みず、服の下に本を隠し持つ。収容所という地獄にあって、ディタは屈しない。本を愛する少女の生きる強さ、彼女をめぐるユダヤ人の人々の生き様を、モデルとなった実在の人物へのインタビューと取材から描いた、事実に基づく物語。感涙必至の大作!
  • 赤い十字
    4.3
    青年が引っ越し先のアパートで出会った、90歳の老女。アルツハイマー病を患う彼女は隣人に、自らの戦争の記憶を唐突に語り始めた。モスクワの公的機関で書類翻訳をしていたこと、捕虜リストに夫の名前を見つけたこと、ソ連が赤十字社からの捕虜交換の呼びかけを無視していたこと――。ベラルーシ気鋭の小説家が描く、忘れ去られる過去への抵抗、そして未来への決意。
  • あかずの扉の鍵貸します
    3.5
    火事で家族を失った大学生の水城朔実(みずき・さくみ)は、自らを育ててくれた恩人に頼まれ、「幻堂設計事務所」、通称「まぼろし堂」を訪れる。あるじの幻堂風彦(げんどう・かざひこ)が案内してくれたのは、館内に迷路のように広がる部屋の数々。この「まぼろし堂」には、「あかずの間」を貸し出すというもう一つの顔があり、さらには訳ありげな下宿人たちを受け入れてもいて……。
  • あけくれの少女
    4.0
    「どこで、どうやって生きていくのか、うちは自分で決めたい」12歳の少女・真記は上京を目指すも、80年代後半の狂騒に翻弄され……親世代にも子世代にも読んでほしい、宝石のような20年間を描いた佐川光晴の最新長編小説。 広島は尾道の小学五年生・真記は、1970年生まれ。子供のいない伯父夫婦からかわいがられ、養女になるかもと心配事は絶えない。中学では英語部の朗読劇が大成功をおさめ、英語を一生の仕事にしていこうと決意する。念願の学生生活は、80年代後半のバブル経済のただなかで、順調そうにみえたのだが……。 当時の時代背景や男女の考え方を、時に繊細に、時にユーモラスに描出する。真記と同時代を生きた人にも、そしていま同世代の人にも読んでほしい青春小説。
  • 新しい須賀敦子
    4.0
    没後17年を過ぎてもなお、多くの読者を魅了し続ける須賀敦子氏の文学。類まれな知性のうつくしさともいうべきその魅力を読み解く。江國香織、松家仁之、湯川豊の三氏の対談、講演、評論を収録。1)須賀敦子の魅力(江國香織×湯川豊):「須賀敦子さんのエッセイはすべて<物語>になってしまう」と語る江國香織と『須賀敦子を読む』で読売文学賞を受賞した湯川豊の興味津々の対談。 2)須賀敦子を読み直す(湯川豊):起伏の多い人生から生まれた洗練された文章と堅牢な文学を読み解き、その物語性を分析する。 3)須賀敦子の手紙(松家仁之):新たに発見された、親友へ宛てた何通もの手紙を紹介。 4)須賀敦子が見ていたもの(松家仁之×湯川豊) 5)「新しい須賀敦子」五つの素描(湯川豊):父と娘、戦時下の青春、留学、イタリアでの新婚生活、信仰、読書体験、文体など多角的分析。他、略年譜も収録。
  • あのころのパラオをさがして 日本統治下の南洋を生きた人々
    4.0
    第二次大戦以前、日本の植民地だったパラオ。そこには「南洋庁」という役所があり、日本からの移民と現地島民が織りなす「暮らし」がたしかにあった――。当時パラオに赴任した作家・中島敦の小説をきっかけに、著者が当時の南洋諸島に興味を持ち、実際にパラオへ赴き、日本統治時代を知るお年寄りを訪ねて、当時のエピソードを収集した歴史ルポルタージュ。著者はパラオだけでなく、パラオからの帰国者が集団で移住した宮城県蔵王町の北原尾や、宮崎県小林市の環野にも赴いて、当時の証言を集めた。戦中派が世を去って歴史の記憶が薄れる今こそ、広い世代に読まれるべき貴重なエピソードが詰まった一冊。
  • あのころの僕は
    -
    いつかきっと、いろんなことがわかるようになる。 母を病で失った五歳の「僕」は、いくつかの親戚の家を行き来しながら幼稚園に通っていた。大人たちが差し出す優しさをからだいっぱいに詰め込み、抱えきれずにいた日々。そんなとき目の前に現れたのは、イギリスからやってきた転入生のさりかちゃんだった。自分と同じように、他者の関心と親切を抱えきれずにいる彼女と仲良くなった「僕」だったが、大人たち曰くこれが「初恋」というものらしく……。 コンビーフのサンドイッチ、ひとりぼっちのハロウィン、ひみつの約束、悲しいバレンタインデー。 降り積もった記憶をたどり、いまに続くかつての瞬間に手を伸ばす。 第36回三島由紀夫賞候補作、第45回野間文芸新人賞候補作となった『息』に続く、注目の若手による最新中編。
  • あの光
    3.8
    ハウスクリーニングサービスで働く高岡紅は、丁寧な仕事と気配りで依頼人からリピート指名が入るほど信頼を得ていた。だが、入社当時からさほど変わらぬ待遇や問題の多い部下に腐心する日々に疑問を抱いていた。 そんな折、母・奈津子から独立を後押しされ起業を決意する。仕事は軌道に乗り、リピート客である船場薫の強い勧めで新事業「開運お掃除サービス」を立ち上げる。薫の仕掛けで紅のブログがインフルエンサーの目に留まり、書籍化も決定。初セミナーも大成功を納め、カリスマ指導者として一躍時の人となった。 そんなある日、紅のメソッドを曲解した一部の会員の行動がSNSで批判され大炎上。窮地に追い込まれた紅は起死回生を試みるのだが……。 承認欲求と自己啓発の闇を撃つ問題作。
  • 泡

    3.7
    男子高の二年に上がってまもなく学校に行けなくなった薫は、夏のあいだ、大叔父・兼定のもとで過ごすことに。兼定は復員後、知り合いもいない土地にひとり移り住み、岡田という青年を雇いつつジャズ喫茶を経営していた。薫は店を手伝い、言い知れない「過去」を感じさせる大人たちとともに過ごすうち、一日一日を生きていくための何かを掴みはじめる――。思春期のままならない心と体を鮮やかに描きだす、『光の犬』から3年ぶりの新作にして、最初で最後の青春小説。
  • アントワネット
    3.7
    几帳面な「ぼく」と自由なアントワネットは、愛に満ちた理想の二人だった――子供に恵まれないことをのぞいては。病院で診察を受けるも原因は不明。時はいたずらに過ぎ、夫婦の間の亀裂は少しずつ広がっていく。不妊治療に臨む夫婦を夫の視点から描く、オランダ気鋭の小説家による文芸作品。美しい過去への憧憬が、静かに、確かに、胸を打つ。
  • いい子のあくび
    4.0
    芥川賞受賞第一作。 公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人を除けてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ?「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作(「いい子のあくび」)。 郷里の友人が結婚することになったので式に出て欲しいという。祝福したい気持ちは本当だけど、わたしは結婚式が嫌いだ。バージンロードを父親の腕に手を添えて歩き、その先に待つ新郎に引き渡される新婦の姿を見て「物」みたいだと思ったから。「じんしんばいばい」と感じたから。友人には欠席の真意を伝えられずにいて……結婚の形式、幸せとは何かを問う(「末永い幸せ」)ほか、 社会に適応しつつも、常に違和感を抱えて生きる人たちへ贈る全3話。
  • イグアナの花園
    4.8
    動物の言葉が分かる美苑は、植物学者で大学教授の父と、厳格な華道師範である母親と住む家の中庭やアトリエで、生き物たちの言葉に耳を傾けるのが日課だった。一方、学校では人付き合いが苦手で「空気が読めない」子として回りから距離を取られていた。ある日、目覚めると、前日まで元気だった父が急逝した事実を知らされる。そんな美苑に声を掛けたのは、父の同僚である児玉先生。大学の植物園で飼育されている子供のグリーンイグアナを育てないかと美苑に提案する。そして14年間、「ソノ」と名付けられたイグアナと共にアトリエで暮らし、充分満たされた生活を送っていたのだが、突然母から呼び出され、驚愕の通告を受ける。母の体に癌が見つかり余命は恐らく半年。その半年の間に結婚せよと言われ……。
  • いつか君が運命の人 THE CHAINSTORIES
    3.7
    「指輪って、心とつながるものなんだよ」 その指輪をつければ、「運命の赤い糸」が見える――。 切ない願いが込められた指輪がつむぐ、ひとつなぎの恋物語。 「自分なんかじゃ絶対に無理だ」と思っていた片想いの相手と、運命の赤い糸で結ばれたいと願いつづけたら――「僕らはあの頃と変わらない」 つれない恋人との関係に不安を抱いていたところ、指輪の力で相手が運命の人ではないことを知ってしまい――「どうして機嫌のいいときしか好きって言ってくれないの?」……など、“奇跡の指輪”をめぐる6つの恋模様を収録。
  • いつかの朔日
    NEW
    -
    竹千代は今に天下を掌中に入れおるぞ――。 室町幕府の権威が低下し、各地で戦乱が巻き起こっていた激動の時代。 松平家が城を構える三河、周辺国である尾張、遠江、美濃、駿河、信濃らが絡む東海地方の覇権争いは熾烈を極めていた。 そんな争いのなかで、織田家ついで今川家の質物として囚われていた松平家の竹千代――後の徳川家康。 数奇な運命を辿った幼少期から天下人へ。 直木賞候補『まいまいつぶろ』の著者が、天下統一を果たした男を鮮やかに浮かび上がらせる十の物語。
  • 犬たちの肖像
    3.0
    人間のもっとも古い伴侶にして身近な他者──「犬」。古代叙事詩からルネッサンスの戯作、近代小説、SFそして映画と漫画にいたるまで、「犬」のイメージの変遷を辿る。比較文学者にして愛犬家である四方田犬彦による古今東西文学エッセイ集。【目次】ハーマン・メルヴィルを讃えて/乞食の帰還 ホメロス/二人の動物物語作家 シートンとロンドン/孤独の友だち ブニュエルとセリーヌ/犬、人を襲う 鏡花、多喜二、ギャリ/四つん這いになる ドヌーヴと金石範/犬婿入り 『後漢書』と馬琴/冥府より来りて グラス/犬を人間にできるか ステープルドンとブルガーコフ/犬をどう名付けるか/密談ピカレスク セルバンテスとホフマン/犬族から遠く離れて パニッツァとカフカ/東西名犬対決 『タンタン』と『のらくろ』/復員兵という名の野良犬 吉岡実と北村太郎/犬の眼でモノを見る ジョイス、原將人、岡部道男、森山大道/文学的ジャンルとしての、犬の追悼/犬は人なり 谷崎潤一郎と川端康成/愛犬と闘犬 江藤淳と川上宗薫/法(ダールマ)としての犬/あとがき
  • ウェイワードの魔女たち
    4.0
    1619年、アルサは魔女裁判にかけられていた。 1942年、ヴァイオレットは、望まぬ妊娠と婚約に人生を奪われていた。 2019年、ケイトは恋人のDVから逃れ、大伯母の遺した屋敷に隠れていた。 身体を、運命を、自由を、取り戻せ。 「魔女」と呼ばれた一族の女たち。暴力と不条理からの解放を求めた彼女たちの戦い。時代の異なる三人の女性の視点で描かれた絆の物語。 英国で25万部超の鮮烈なデビュー長篇。 (原題 Weyward)
  • うきよの恋花 好色五人女別伝
    4.5
    この恋は、地獄につながっている――。 女はなぜ、男のために火付けをし、火あぶりになったのか(「八百屋お七」)。 女はなぜ、道ならぬ恋におぼれ、自ら鉋(かんな)で胸を突いたのか(「樽屋おせん」)。 女はなぜ、ふしだらな下男と駆け落ちし、心を喪ったのか(「お夏清十郎」)。 江戸時代の人々の注目の的になった恋の事件の裏には、 悲しい“まこと”と、優しい“ほら”があった―― 心中、駆け落ち、不義密通。 江戸のスキャンダルをまとめた井原西鶴の代表作『好色五人女』を大胆に新解釈した、胸に刺さる悲恋時代小説。
  • うま――馬に乗ってこの世の外へ――
    5.0
    今年3月、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」で本物と鑑定され大反響を呼んだ、井上ひさしの未発表戯曲。没後12年にして最新作! 佐々木喜善が収集した伝承・昔話をまとめた『聴耳草紙』の一編「馬喰八十八」をベースに大胆な創意を盛り込んだ作品だ。舞台は「羽前の国、小松郷」。現在の山形県川西町、井上ひさしの出身地。時は「156…年」。病気の老婆を連れて、馬一頭と村にやってきた太郎。村の有力者・横暴な松左エ門は、この馬が黄金のくそをすると聞き、太郎から無理矢理買い上げる。しかし黄金を出さないため馬は殺されてしまう。その後、太郎は巧みなうそを重ねて、松左エ門をはじめとする村人からまきあげ大金を手にしながら、ついに復讐を果たす。太郎の悪漢ぶりが痛快なピカレスク物語。 第一稿、昭和34年6月21日。没後12年にして、井上戯曲ファン垂涎の最新作!
  • 海猫ツリーハウス
    3.5
    【第33回すばる文学賞受賞作】現代の太宰治? 大いに悩む! 25歳の亮介は、服飾デザイナーを目指しながらも、故郷の八戸で実家の農業を手伝いながら「親方」のもとでツリーハウス作りに精を出す毎日。人気者の兄・慎平が都会から「自給自足」の暮らしを求めて帰郷してきたことがきっかけとなり、平穏だった田舎町のつかの間の均衡が崩れはじめる……。青春の苦悩を南部弁を駆使して鮮やかに描き出した、注目の俊英デビュー作。
  • うらはぐさ風土記
    4.2
    30年ぶりにアメリカから帰国し、武蔵野の一角・うらはぐさ地区の伯父の家にひとり住むことになった大学教員の沙希。 そこで出会ったのは、伯父の友人で庭仕事に詳しい秋葉原さんをはじめとする、一風変わった多様な人々だった。 コロナ下で紡がれる人と人とのゆるやかなつながり、町なかの四季やおいしいごはんを瑞々しく描く物語。
  • M

    3.8
    あなたを知ることは、あなたという人を選んだわたしを知ること。 多民族国家の生きた声を掬う在豪作家が贈る、力強くみずみずしい《越境青春小説》。 父の転勤にともない12歳でオーストラリアに移住し、現地の大学生となった安藤真人。憧れていたはずの演劇の道ではなく就職を選ぼうとしていたところ、デザイン科でマリオネットを制作しているアビーと出会い、人形劇の世界に誘われる。日本人としてのアイデンティティの問題に苦しんできた真人のように、「同じアルメニア人と結婚を」と刷り込まれてきたアビーもまた、出自について葛藤を抱えていた。互いを知りたい、相手に触れたい。しかし、境遇が似通うからこそ、抱える背景の微妙な差が、猛烈な「分かりあえなさ」を生み……。 話題の既刊『Masato』『Matt』につらなる、「アンドウマサト三部作」最終章!
  • 黄金の庭
    3.3
    お寺の閻魔様が動きまわり、公園の池の蓮の花からはお釈迦様が現れる。次々と奇妙なことが起こる町に引っ越してきた青奈の目下の悩みは、子どもができないことと職探し。ある日、質屋で手に入れたオパールの指輪がしゃべり出し…。ときに優しく、ときにシニカルに。家族とは、夫婦の愛とは、そして人生の幸福とは──。不思議な町で暮す人々の平凡な日常を柔らかな文章で描く、新しい大人のファンタジー。「この『黄金の庭』という小説のリアルなところは、まったり、ゆったりしている部分です。(中略)非日常は、まったりとした日常のうえで起こる。すごく小説的でありながら現実的で、小説としか言いようがないものです。(高橋源一郎氏・「青春と読書」2013年2月号より)」第36回すばる文学賞受賞作。あたたかな感動を呼ぶ、新たな才能のデビュー作。
  • 黄金比の縁
    3.8
    「会社の不利益になる人間を採る」 不当辞令に憤る人事部採用チームの小野は、会社への密かな復讐を始める――。 (株)Kエンジニアリングの人事部で働く小野は、不当辞令への恨みから、会社の不利益になる人間の採用を心に誓う。彼女が導き出した選考方法は、顔の縦と横の黄金比を満たす者を選ぶというものだった。自身が辿り着いた評価軸をもとに業務に邁進していくが、黄金比の「縁」が手繰り寄せたのは、会社の思わぬ真実だった……。 ボディ・ビルを描いた『我が友、スミス』で鮮烈なデビューを果たした著者が、本作では「就活」に隠された人間の本音を鋭く描く!
  • 億単位の男
    4.0
    発想はすべて億単位。戦後の焦土から、高度成長を経て、バブル経済がはじけた今日。その50年を全力で走ってきた男・坪内寿夫。伝説の再建王と呼ばれた四国の大将のケタ外れで情熱的な人生! 痛快人物立志伝。
  • 推しはまだ生きているか
    4.3
    オモコロライター・作家/ダ・ヴィンチ・恐山(品田遊)さん推薦! 【とにかくこの世は意味不明でしんどい――だけど「それでも。」が、ここと未来を繋いでいる。】 荒廃した東京で過酷なシェルター暮らしを送るあみぱん。唯一の「推し」、ポストアポカリプス系アイドルの節目おわたが配信画面から消えた日、彼女は凸ることを決意した。愛の正体を暴き出す挑戦的な“推し×ロードSF”「推しはまだ生きているか」。 29歳、タワマンとハリー・ウィンストンを夢見る藍子。ある時、謎の生命体に寄生されてから状況は一変し、ついに婚活ゴール男(港区在住、年収1000万円超、塩顔イケメンの細マッチョ)とマッチングするが……。“選ばれたい”願望の先を描く婚活SF譚「君のための淘汰」。 惑星「王球」では、人は老いれば必ず異形の怪物《老骸》と化す。老骸を殲滅する使命を担う「福祉兵器」円狗は、ある村の老骸殲滅作戦で唯一生き残った少女から「わたしのクロージング・プランに付き合ってほしい」と頼まれて――。命を巡る絶望と希望の行方を描き出す「福祉兵器309」。 ほか全5編を収録。最注目の新鋭が、ディストピア都市を舞台に“それでも生きていくこと”への祈りを込めて贈るSF短編集。
  • お墓、どうしてます? キミコの巣ごもりぐるぐる日記
    4.5
    父が急逝し、突然お墓を用意する必要に迫られた著者。そこにコロナ禍の到来、さらには、当たらないだろうと思いつつ応募した市営墓地購入の抽選で、まさかの当選。 お墓、買うの? 誰が? ……私が!? はたして骨壺の運命やいかに!? 脱線上等、北国の迷える日々を綴る、笑いありしんみりありのゆるゆるエッセイ。
  • 温泉妖精
    3.0
    美しい母親と姉のもとで育ち、容姿コンプレックスを抱えて美容整形を繰り返す27歳の絵里。大きな二重、高い鼻、脱色した髪と青いカラーコンタクトで、外国人のふりをして田舎の温泉宿に泊まるのが趣味の彼女は、ある日、向かった旅館で、「影」と呼ばれる嫌味ったらしい中年男性客と出会い――。不思議なエネルギーに満ちた第39回すばる文学賞受賞作。
  • 海風
    3.1
    迫られる攘夷か、開国か――。嘉永六年(一八五三年)六月、浦賀にその姿を現した四隻のアメリカ軍艦。幕府は強大な武力をもって開国を求める艦隊司令長官・ペリーの対応に苦慮していた。清国がイギリスとの戦争に敗れ、世界の勢力図が大きく変わろうとするなか、小姓組番士・永井尚志は、老中首座・阿部伊勢守正弘により、昌平坂学問所で教授方を務める岩瀬忠震、一足先に目付になっていた岩瀬の従兄弟・堀利煕とともに、幕府の対外政策を担う海防掛に抜擢される――。迫り来る欧米列強を前に、新進の幕臣たちが未曾有の国難に立ち向かう。現代へと繋がる日本の方向性を決定づけた重要な転換期を描く幕末歴史小説! 「隠蔽捜査」シリーズをはじめ警察小説の名手が、“薩長史観”に一石を投じる!
  • かくも甘き果実
    3.5
    “ここではないどこか”を求めつづけ、最後には日本で「移民作家・小泉八雲」となった男ラフカディオ・ハーン。彼の人生に深く関わった3人の女性が、胸に秘めた長年の思いを語りだす。生みの母ローザ・アントニア・カシマチは、1854年、故郷への帰路の途中アイリッシュ海を渡る船上で、あとに残してきた我が子の未来を思いながら。最初の妻アリシア・フォーリーは、夫との別離を乗り越えたのち、1906年のシンシナティで、ジャーナリストの取材を受けながら。2番目の妻小泉セツは、永遠の別れのあと、1909年の東京で、亡き夫に呼びかけながら。ジョン・ドス・パソス賞受賞の注目作家が、女性たちの胸の内を繊細かつ鮮やかに描いた話題作。
  • 香夜
    3.0
    満月よ、いましばらく待っておくれ――。月光射し込む死の床で、逢わねばならぬ人がいる、成さねばならぬ事がある。愛して、憎んで、ほとばしる、思い舞い散る幻舞台―作家生活33年、名手はついに和の美に手をそめた。筆冴え渡る傑作長編。死への道程を妖しく鋭く甘やかに描きだす、哀悼と鎮魂の物語。
  • 翳りゆく午後
    NEW
    -
    「人を轢いたかもしれない」 厳格な父親からの一本の電話。それが悪夢の始まりだった―― 80歳目前の武は、教職退任後、市民講座で教える地元の名士。父の武と同じ教職に就く敏明は、妻の香苗と反抗期の息子・幹人との平凡な生活を送っていた。 このところ父の愛車に傷が増え、危険運転が目に余るようになってきたため、敏明は免許返納を勧めるが武は固く拒絶する。 さらに、市民講座の生徒である西尾千代子と武との親密な関係を怪しむ噂が広がり、敏明は悩みを深めていた。 そんなある日、近隣で悪質な轢き逃げ事件が発生。 「あれって――まさか」 疑念に駆られ、事件の真相を探る敏明が辿り着いた“おぞましい真実”とは? 『悪寒』『不審者』『朽ちゆく庭』に続く、不穏で危険な家族崩壊サスペンス!
  • 語りなおしシェイクスピア3 じゃじゃ馬ならし ヴィネガー・ガール
    4.7
    ケイトは、率直な物言いが世間に受けない29歳。エキセントリックな科学者の父と、15歳の妹の三人暮らし。植物学者を目指していたこともあったが、今はプレスクール教員のアシスタントをしながら家事を切り盛りしている。ブロンド美人で夢見るような表情を浮かべている妹は男子にもてるが、ケイトにはいまだに恋人がいない。そんなある日、父が、外国人の優秀な研究助手ピョートルの永住権を獲得するために、とんでもない提案をもちかけてきた――。<女性蔑視>疑惑のあるシェイクスピアの問題作『じゃじゃ馬ならし』を、心の機微を描く名手アン・タイラーが、軽やかにしなやかに語りなおす。
  • 語りなおしシェイクスピア2 リア王 ダンバー メディア王の悲劇
    3.5
    あの「リア王」が、現代のメディア王に。巨大な企業王国をめぐる三人の娘の忠誠と裏切り。テレビ局や新聞社を傘下に収めるメディア王ダンバーは、会社の乗っとりを狙う娘たちによって療養所に入れられるも、脱走。末娘だけが父の身を案じて捜索にのりだすが…。父親から虐待を受け、クスリと酒におぼれた自らの体験を基にイギリス上流階級の腐敗を描き続ける作家が、強烈で横暴な父親「リア王」を語りなおす。解説・河合祥一郎。
  • 彼女は鏡の中を覗きこむ
    3.0
    いつか必ず死にゆく人間の儚さと確かさを描く小説集。祖母が遺した宝石を身に着けると、孫娘は、祖母の過去の体験を夢に見る――「宝石」。資源が枯渇して紙の本がなくなった未来とは?――「燃える本の話」。原子力の歴史と、ひとりの女性の個人史が交わる「日出ずる」。時空を越えて娘の体験と母の記憶が重なりあう「シー」。類まれな想像力と遙かな時間軸で描かれる全4編。
  • 【電子特別版】カモフラージュ(松井玲奈 刊行記念インタビュー付)
    3.9
    あなたは、本当の自分を他人に見せられますか――。恋愛からホラーまで、松井玲奈が覗く“人間模様”。鮮烈なデビュー短編集。■「ハンドメイド」いつもより荷物の重い日が好きだ。お昼の弁当に加えてもう二つ、夜に彼と食べる用の弁当を作る。食べる場所は決まって“ホテル”で――。■「ジャム」僕のお父さんは一人じゃない。お父さんの後ろには、真っ白な顔のお父さんたちが並んでいる――。悪夢的奇想、ホラー怪作!■「いとうちゃん」メイドになりたい。その一心で上京した十八歳の“いとうちゃん”は、メイド喫茶で働き始めるものの、ストレスから体重が増加してしまう。痩せ方がわからず、周囲にも疎まれ不安を募らせていくが――。■「完熟」何もない退屈な田舎での夏休み。年上の雰囲気を身にまとう女に僕は出会う。彼女は水辺で一心不乱に桃を食べていて……。そんな昔の記憶が、大人になった僕のフェティシズムを刺激する――。■「リアルタイム・インテンション」巷で人気の仲良しYouTuber三人組。本音を吐露してしまうという“本音ダシ鍋”を食す企画の生配信で、事件は起きる。■「拭っても、拭っても」広告代理店に勤めるアラサーのゆりは、半年ほど前まである癖(へき)を持つ男性と付き合っていた。その彼に理不尽にフラれたことが心の傷になっていて――。失恋と再生の物語。
  • 【カラー版】動物翻訳家 心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー
    4.3
    「最近、動物園が面白い」。そんな声が聞こえてきたのは数年ほど前。ただ姿形を来場者に見てもらう「形態展示」から、動物本来の行動や能力を見せる「行動展示」へ。動物たちの行動を理解した施設を造る裏側には、飼育員を始めとする様々な人々の絶え間ない努力があった。動物たちの行動を理解し、“心の声”に耳を傾ける。それは飼育員による大胆にして緻密な翻訳作業といえる。埼玉県こども動物自然公園「ペンギン」、日立市かみね動物園「チンパンジー」、秋吉台サファリランド「アフリカハゲコウ」、京都市動物園「キリン」。計4動物園の動物翻訳家、そして動物たちの苦闘の軌跡に迫るノンフィクション! 電子版は、動物写真をカラーで収録! かわいい動物たちの姿を、カラーでお楽しみください。
  • 完結記念!! 「百舌シリーズ」ガイドブック
    無料あり
    5.0
    スタートから33年――、ついにシリーズ完結!! 本シリーズの完結を記念して、小社PR誌に掲載された俳優・西島秀俊さんとの対談や「劇場版 MOZU」の監督・羽住英一郎さんとの対談、シリーズ全体を振り返る著者インタビューを収録したデジタルガイドブックを配信いたします。さらに百舌シリーズの試し読みも収録。公安と殺し屋の攻防を描いた“伝説の物語”を見届けろ! 逢坂剛の世界をより広く知るために、小社配信のほか作品の試し読みも収録。

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  • 我拶もん
    3.5
    【第36回小説すばる新人賞受賞作】 寛保二年。大名や旗本の駕籠を担ぐことを生業とする陸尺の桐生は売れっ子として江戸で人気を誇っていた。ある日、芝居小屋の《市村座》で木戸番と陸尺の大乱闘が勃発。相方の龍太が巻き込まれたと知った桐生は仲間の翔次と共に駆けつける。だが龍太は捕えられ、騒ぎを収めようとしたはずの桐生も結託した仲間に裏切り者扱いされ仕事を干されてしまう。暇を持て余していた八月のある日、大雨により江戸で大洪水が発生。桐生は辛うじて生き延びるも商売道具の右腕に大怪我を負い、かつて恋仲であった娘・おみねも目の前で濁流に呑まれてしまう。何もかも失った桐生は《市村座》の騒動を機に知り合った玄蕃頭・有馬頼ユキ(※)に救われ屋敷で世話になることになり、懇ろだった深川芸者の粧香とも再会。一方、頼ユキの近習である坂西小弥太は、主君が桐生を気に入り、また幼い頃から恋心を抱いていた頼ユキの姉・梅渓院までもが執心であることにいら立ちを覚えていた。そして、使い物にならず腐っていた桐生を痛罵し、桐生は有馬家を去るのだが……。※ぎょうにんべんに童
  • 合本版 浮雲心霊奇譚
    4.5
    赤眼の憑きもの落とし・浮雲。絵師の卵・八十八。江戸を震撼させる怪異がふたりを襲う――。680万部超の大ヒットシリーズ『心霊探偵八雲』のルーツを描く、幕末ミステリー。シリーズ『浮雲心霊奇譚 赤眼の理』から最新刊『浮雲心霊奇譚 血縁の理』の全6冊を電子合本! 単行本版1800ページ超が一冊に!! 単行本掲載のイラストを特別収録。※本電子書籍は単行本版を底本としています。
  • 【イラスト付合本版】ストレイヤーズ・クロニクル 全3冊
    -
    【映画カバー仕様!】驚異的なスピードで動く、100メートル先の話し声を聞く、見たもの全てを記憶する――。特殊能力を持つ若者――昴・沙耶・隆二・良介は特別な絆で結ばれていた。しかし、仲間を人質にとられ、大きな野心を抱いた政治家・渡瀬浩一郎のために裏の仕事をさせられている。一方、世間では「アゲハ」と呼ばれる殺人集団が悪徳官僚など法で裁けない悪人を次々と殺していく。「アゲハ」は正義の仕置き人なのか、冷酷な殺人者なのか。マスコミが騒ぐ中、渡瀬から「アゲハを捕まえろ」という指示を受けた昴たちは――。本多孝好が贈る、新感覚アクション巨編三部作! 「多重人格探偵サイコ」の田島昭宇のイラストも特別収録!! ※本電子書籍は単行本「ストレイヤーズ・クロニクル ACT-1」「ストレイヤーズ・クロニクル ACT-2」「ストレイヤーズ・クロニクル ACT-3」の合本版です。
  • 【合本版】チンギス紀(全十七巻)
    5.0
    時は十二世紀――。 モンゴル高原では、様々な部族、氏族が覇権を競い合っていた。モンゴル族の有力氏族キャト氏の長の嫡男として生まれたテムジン(のちのチンギス・カン)。父がタタル族に討たれ、後継となるはずが、十三歳のとき、ある理由から異母弟を討つことに。対立するタイチウト氏に追われることとなったテムジンは一人砂漠を越えて南へと向かう。放浪中に人と出会い、経験を積んだテムジンは再び故郷へ戻り、十五歳にしてキャト氏の長となる。タイチウト氏との苛烈な戦い、ジャンダラン氏の長・ジャムカとの運命的な出会い……。 テムジンはまずモンゴル族統一のため、旗を掲げ、仲間と共に原野を駈ける! チンギスの波乱の生涯を描く歴史大河小説全17冊を収録した電子合本版。
  • がらんどう
    3.5
    【第46回すばる文学賞受賞作】 最も読む快楽を感じた――岸本佐知子 不穏な虚を抱えたパワーバランスを評価したい――堀江敏幸 (選評より) 「ルームシェアっていうの、やらない? もっと広い部屋に住めるし、生活費も節約できるし、家事も分担できるよ」 「若い人たち同士ならわかるけど……本気なの?」 「四十過ぎた女二人が同居しちゃいけないって法律はないよ」 「でも、普通はしないよ。あと、わたしまだ三十八だよ」 人生で一度も恋愛感情を抱いたことがない平井と、副業として3Dプリンターで死んだ犬のフィギュアを作り続ける菅沼。 2人組「KI Dash」の推し活で繋がったふたりのコロナ禍での共同生活は、心地よく淡々と過ぎていくが―― 恋愛、結婚、出産、家族……どんな型にもうまくはまれない、でも、特別じゃない。 《今》を生きるすべての人へ、あらゆる属性を越えて響く“わたしたち”の物語。
  • 木崎みつ子『コンジュジ』刊行記念小冊子(試し読み付)
    無料あり
    3.5
    【無料小冊子】二度も手首を切った父、我が子の誕生日に家を出て行った母。小学生のせれなは、独り、あまりに過酷な現実を生きている。寄る辺ない絶望のなか、忘れもしない1993年9月2日未明、彼女の人生に舞い降りたのは、伝説のロックスター・リアン。その美しい人は、せれなの生きる理由のすべてとなって……。一人の少女による自らの救済を描く、圧巻のデビュー作。第44回すばる文学賞受賞作にして第164回芥川賞候補作。本書の配信を記念して、著者の木崎みつ子さんと川上未映子さんの対談と試し読みを収録した無料電子小冊子を配信いたします。ぜひダウンロードしてお読みください。

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  • 奇跡集
    3.7
    同じ電車の同じ車両に、たまたま乗り合わせた見しらぬ男女たちがつなぐ、幸せのふしぎスイッチ。第一話「青戸条哉(あおと・じょうや)の奇跡 竜を放つ」――満員の朝の快速電車。ぼくは過去最凶の腹痛に耐えていた。もうダメだと思い、その場にしゃがもうとした瞬間、隣に立つ同い年くらいの女性が、ぼくよりもわずかに早く、しゃがみこんだ。第二話「大野柑奈(おおの・かんな)の奇跡 情を放つ」――大学時代、わたしは小劇団にのめり込んだが、結局就活をして、食品会社へ。通勤途中、具合が悪くて社内で声をかけた女性の様子が気になり、駅を一つ戻ってホームに降りると、そこには意外な先客が――。小さいけれど確かに人生を左右する(かもしれない)7つのミラクルを描く、連作短編小説!
  • 希望の海 仙河海叙景
    3.9
    東日本大震災により失われた日常と、得るべき希望。東北に生まれ、東北に暮らす直木賞作家の、「あの日」を描かない、連作短編集。三年前の秋、早坂希は勤めていた会社を辞めて仙河海市に戻ってきた。病弱の母親の代わりに、スナック「リオ」の切り盛りをしている。過去に陸上選手として活躍していた希は、走ることで日々の鬱憤や悩みを解消していたが、ある日大きな震災が起きて、いつも見る街並みが180度変わってしまう――。(「リアスのランナー」「希望のランナー」)。高校生の翔平は、津波により両親と家を奪われ、妹の瑞希とともに仮設住宅で暮らしていた。震災の影響で環境が大きく変わり、次第に心が荒んでいく翔平だったが――。(「ラッツォクの灯」)。東北の港町に生きる人々の姿を通して紡がれる、3・11からの再生の物語、全9編。【目次】リアスのランナー/冷蔵家族/壊れる羅針盤/パブリックな憂鬱/永久(とわ)なる湊/リベンジ/卒業前夜/ラッツォクの灯/希望のランナー
  • キャプテンの星座
    -
    【第14回すばる文学賞受賞作】市立動物園に待望のゾウがやって来る! 到着を待ちわびる人々のもとに、ゾウが暴れだしたという知らせが……。ゾウに関わる人々の想いに動物園の歴史が交錯する力作。
  • 救命センター カルテの向こう側
    4.0
    シリーズ累計115万部突破! 現役医師が描く、救命センターの知られざる人間ドラマ。一人暮らしで倒れているのを大家に発見され、救命センターに運び込まれた60代男性。家族がいるのかもわからないまま、重症で意識が戻らない――(「孤独死」)。喉とみぞおちを刺され、大量出血で運び込まれたが一命を取り留めた老人。意識が回復して発した言葉は、「妻を殺した」――(「刺創」)。老親への家庭内暴力、孤独死、介護疲れからの無理心中…。救急医療における「最後の砦」である救命センターにも、高齢化の波が押し寄せる。30年にわたり生死の境目を見続けてきた現役救命医が本音で綴った「命」を巡るメッセージ。
  • 教授と少女と錬金術師
    3.5
    【第37回すばる文学賞受賞作!】薬学部の学生・久野は、育毛と油脂の関連を研究する江藤教授に助手を任命され、かつての教え子である永田は乾性油によって人を魅了する光り輝く艶を頭部に作り出すことができた。久野は、永田の勤め先の塾で不思議な力を持つ女子中学生の荻と出会う……。常軌を逸したエネルギーで全選考委員を圧倒し困惑させた、すばる文学賞史上、最大の問題作。「毛」をめぐり、不思議な力を持つ少女と錬金術師が暗躍する、髪と神の支離滅裂で命がけの戦いがはじまる。
  • 虚史のリズム
    NEW
    4.4
    新しい戦前? 否、死者の声は響き続けてきた―― ある殺人事件を機に巻き起こる、国家機密の「K文書」を巡る謎・・・・・・。 近現代史の魔法使いが仕掛ける、至高のメガ、もといギガ、もといテラ・ノベル! 1947年東京、石目鋭二はかねてより憧れていた探偵になることにした。進駐軍の物資横流しなど雑多な商売をこなしつつ、新宿にバー「Stone Eye」を開き、店を拠点に私立探偵として活動を始める。石目がレイテ島の収容所で知り合った元陸軍少尉の神島健作は、山形の軍人一家・棟巍家の出身。戦地から戻り地元で療養中、神島の長兄・棟巍正孝夫妻が何者かによって殺害される。正孝の長男・孝秋とその妻・倫子は行方知れず、三男の和春も足取りが掴めない。他の容疑者も浮かぶ中、神島の依頼を受けた石目は、初めての「事件」を追い始める。ほどなく、石目のもとに渋谷の愚連隊の頭から新たな依頼が舞い込む。東京裁判の行方をも動かしうる海軍の機密が記されている「K文書」の正体を探ってほしいと言われるが・・・・・・。 作中に差し挟まれる、dadadadadadaという奇妙なリズムが意味するものとは? 記憶と記録が錯綜する、超規格外ミステリー。
  • 禁猟区
    3.8
    34歳、ライターの文美子。夫との関係は冷え切り、娘はかわいいが保育園で問題行動を起こしていた。ある日、文美子はママ友から、女性がお金を出して若い男性を「狩る」という「お茶会」に誘われる。乗り気でなかった文美子だが、そこで劇団俳優の夏生と出会い、彼の誠実さに惹かれていく。夫の愛人の来訪、半グレからの脅迫、変貌していくママ友。様々な出来事が降りかかる中、ふたりの関係は引き返せないところまで来てしまい……。『娼年』『眠れぬ真珠』に続く恋愛長篇。
  • 偽装同盟
    3.9
    日露戦争に「負けた」日本。 ロシアの属国と化した地で、男は、警察官の矜持を貫けるのか。日露戦争終結から 12 年たった大正 6 年。敗戦国の日本は外交権と軍事権を失い、ロシア軍の駐屯を許していた。3 月、警視庁の新堂は連続強盗事件の容疑者を捕らえるが、身柄をロシアの日本統監府保安課に奪われてしまう。新たに女性殺害事件の捜査に投入された新堂だったが、ロシア首都での大規模な騒擾が伝えられ……。「もうひとつの大正」を描く、入魂の改変歴史警察小説、第二弾。
  • 暗闇・キッス・それだけで Only the Darkness or Her Kiss
    3.5
    大学在籍中にコンピュータのインタプリタを作製、休学してソフトウェア会社を創業、1980年代にコンピュータ業界で不動の地位を築いた、IT史上の伝説的存在ウィリアム・ベック。会長職を譲り、第一線から退いたウィリアムは現在、財団による慈善事業に専念している。探偵兼ライタの頸城悦夫は、葉山書房の編集者兼女優の水谷優衣から、ウィリアムの自伝を書く仕事を依頼され、日本の避暑地にある彼の豪華な別荘に一週間、滞在することになった。そこにはウィリアムだけでなく、その家族や知人、従業員などが滞在していた。ところが、頸城が別荘に着いた後、思いもかけない事件が発生する。警察による捜査が始まるが、なかなか手がかりをつかむことができない。そんな中、さらなる悲劇が……。取材のために訪れた頸城は、ウィリアムの自伝執筆の傍ら、この不可思議な殺人事件にも関わることになる。果たして、事件は解決できるのか。忘れ得ぬ苦しい記憶を背負った探偵が、事件の謎・愛の影を探求・逍遥する、至高の長編小説。待望の書き下ろし長編ミステリー。
  • 黒のコスモス少女団 薄紅雪華紋様
    3.6
    これは、この世のことならず――。直木賞作家の浪漫あふれる大正怪異事件帖。大正時代の東京。画家を志す槇島風波は裕福な家を出て、風変わりな友人・穂村江雪華と同じ下宿に暮らしていた。天才的な画力を持つ雪華は、さまよう魂を絵で成仏させる不思議な力の持ち主でもある。巷では、何者かが一人歩きの婦女子を縄で縛り上げ、金品を奪う「鬼蜘蛛事件」が起きていた。妹の友達の護衛を引き受けた風波は、雪華とともに事件に巻き込まれ……(「鬼蜘蛛の讃美歌」)。「黒のコスモス団」と名乗る不良少女団に呼び出された風波。兵役忌避で故郷を飛び出した女ボスの幼馴染が、雪華に瓜二つだというのだが……(「黒のコスモス少女団」)。画業で結果を残さなければ家に戻ると、父親と約束してしまった風波。友人である鬼才の画家・平河惣多も、恋から身を持ち崩していた。そんな時、巨大な災害が日本列島を襲い……(「白い薔薇と飛行船」)。変わりゆく帝都で、友と交わり夢を追い怪に惑う青年たち。彼岸と此岸をつなぐ大正怪異事件帖、第二弾。【目次】第一段 鬼蜘蛛の讃美歌/第二段 汝、深淵をのぞくとき/第三段 黒のコスモス少女団/第四段 幽鬼喰らい/第五段 銀座狼々/第六段 白い薔薇と飛行船
  • 愚者の階梯
    3.9
    「勧進帳は不敬である!」 昭和十年、東京。満州国皇帝溥儀が来日し、亀鶴興行は奉迎式典で歌舞伎の名作「勧進帳」を上演。 無事成功するが、台詞が不敬にあたると国粋主義者が糾弾。 脅迫状が殺到した直後、亀鶴興行関係者が舞台装置に首を吊った姿で発見――。 江戸歌舞伎狂言作者の末裔、桜木治郎が大いなる謎に挑む、驚嘆の“劇場×時代ミステリー”! あの戦争へ、日本が最後の舵を切った時代を彫刻する渾身作。 『壺中の回廊』、渡辺淳一文学賞受賞『芙蓉の干城』に続く、昭和三部作完結!
  • 愚道一休
    3.8
    「立派なお坊さんになるのですよ」 母の願いを受けて、安国寺で修行する幼い千菊丸だが、禅寺は腐敗しきっていた。怠惰、折檻、嫉妬、暴力。ひたすら四書五経を学び、よい漢詩を作らんとすることをよすがとする彼の前に将軍寵臣の赤松越後守が現れ、その威光により、一気に周囲の扱いが変わっていく。しかし、赤松は帝の血をひく千菊丸を利用せんとしていることは明らかだった。 建仁寺で周建と名を改め、詩僧として五山の頂点が見えたのにも拘わらず、檄文を残して五山から飛び出して民衆の中に身を投げる。本当の救いとは、人間とは、無とは何なのか。腐敗しきった禅を憎み、己と同じく禅を究めんとする養叟と出会い、その姿に憧れと反発を同時に抱えながら、修行の道なき道をゆくのだった。己の中に流れる南朝と北朝の血、母の野望、数多の死、飢餓……風狂一休の生そのものが、愚かでひたすら美しい歴史小説の傑作。
  • 原爆 広島を復興させた人びと
    4.5
    1945年8月6日午前8時15分、B29から投下された一発の原子爆弾が、広島を死の町に変えた。残留放射能に満ちた市内に通い、原爆症になりながら、その悲劇を記録して後世に残そうとする人物がいた。のちに広島平和記念資料館の初代館長となる長岡省吾である。被爆直後の広島には、彼をはじめとして“原爆市長”浜井信三、世界的建築家・丹下健三など、様々な人たちが集まり、「75年は草木も生えぬ」と囁かれた廃墟の町を、命を懸けて平和都市へと蘇らせた。世界平和を願い、広島に奇跡の復興をもたらした歴史に迫る、感動の群像ノンフィクション。
  • 光点
    3.0
    【NHKオーディオドラマ FMシアター「光点」、2019年1月5日 午後10時~全1回放送!出演:石井杏奈、森口瑤子ほか】汚れた手で彼に触った、どうしたいのかもわからないまま。工場しかない閉じられた町で暮らす実以子。中学を卒業して以来、手帳に職場の弁当工場にいく時間を記すだけの日々。自宅では母親が実以子の持ち帰るにおいに顔をしかめて、娘を追いつめる。「結局あんたみたいなのが、人に迷惑かけても顔色変えずに生きられるのよね」(本文より)。ある日実以子は「八つ山」と呼ばれる裏山で、カムトと名乗る青年と出会う。二人は共に時間を過ごすようになり、それは行き場のない者どうしのささやかな交流であったはずが……。母のいらだち、父の無関心、遠ざけられた現実――。不穏な日常をふりきり、二人が求めた光点とは。第41回すばる文学賞受賞作。
  • こんな大人になりました
    -
    踊るように闘い、祈るように働く―― 気づけばティーンエージャーの息子、生活を共にするようになった恋人。自分だけのために作るナポリタン、国会中継へのやるせない憤り、20年ぶりにこじ開けた鼻ピアス。 女性として、写真家として、シングルペアレントとして、生活者として。 アラフォーからアラフィフの10年間を月々ありのままに記録した、伸びやかでパンクなレジスタンス・エッセイ!
  • コークスが燃えている
    3.9
    筑豊の炭鉱町出身の私(ひの子)は東京に住み、もうすぐ40歳になる。非正規で新聞社の校閲の仕事をしているが、3年限定の仕事なので、いずれ新たな職を探さねばならない。両親は他界していて、年下の恋人だった春生とは1年以上前に別れていた。新型コロナウイルスが広がるなか、前に弟との結婚騒動で出会った女性・沙穂から連絡があり、東京で食事をすることになる。彼女は看護師で、独りで子育てをしていた。ひの子は沙穂の影響で、逡巡しながらも春生にメールを送ってしまう。すると思いがけず返信があり、再び付き合うことになって……。出会いと別れ、他者とのつながり。現代女性が対峙する実相を、かつて炭鉱で労働を担った女性たちに心を寄せつつ描く、鮮烈な中編小説。
  • 剛心
    4.4
    日本近代建築の雄、妻木頼黄(よりなか)。幼くして幕臣の父を疫病で亡くし、維新後に天涯孤独の身となり、17歳で単身渡米。のちにコーネル大学で学んだ異才は、帰国後にその力量を買われ、井上馨の「官庁集中計画」に参加。以来、官吏として圧倒的な才能と情熱で走り続ける妻木の胸には常に、幼い日に目にした、美しい江戸の町並みへの愛情があふれていた。闇雲に欧化するのではなく、西欧の技術を用いた江戸の再興を。そう心に誓う妻木は、大審院、広島臨時仮議院、日本勧業銀行、日本橋の装飾意匠をはじめ、数多くの国の礎となる建築に挑み続ける。やがて、数々の批判や難局を乗り越え、この国の未来を討議する場、国会議事堂の建設へと心血を注ぎこんでいくが……。外務大臣・井上馨、大工の鎗田作造、助手を務めた建築家の武田五一、妻のミナをはじめ、彼と交わった人々の眼差しから多面的に描き出す、妻木頼黄という孤高の存在。その強く折れない矜持と信念が胸を熱くする渾身作、誕生!
  • 最愛の
    3.8
    「約束して。私のことは跡形もなく忘れる、と」 三〇代の久島は、情報も欲望もそつなく処理する「血も涙もない的確な現代人」として日常を生きている。 だが、学生時代に手紙を交わしつづけた望未だけが、人生唯一の愛として、いまだ心を離れない。 望未は手紙の始まりで必ず「最愛の」と呼びかけながらも、常に「私のことは忘れて」と願い、何度も久島の前から姿を消そうとした。 今その願いを叶えるべく、久島は自分のためだけの文章を書き始める。 愛する人が誰よりも遠い存在になったとき、あらたに言葉が生まれ、もうひとつの物語が始まる。 「永遠の恋人」を描いてきた著者が最高純度で贈る、超越的恋愛小説!
  • さざなみの彼方
    4.3
    時は戦国。茶々(淀殿)は幼い頃、住んでいた城を信長に落とされた。父が自害に追いやられるも、生まれた時から共に育ってきた大野治長に守られ、逃げることができた。治長は茶々を一生守ると誓い、茶々も彼にそばに居てもらいたいと願う。その後、ふたりは柴田勝家の元に身を寄せたが、今度は秀吉に城を攻められ、茶々の母が自害する。そして二度目の落城を経験した茶々は、秀吉に側室になれと言われてしまい……。二度の落城。許されぬ裏切り。家康の脅威。運命に翻弄されながらも、互いを思い合う茶々と大野治長の姿を描く、歴史恋愛小説。
  • さすらいの皇帝ペンギン
    -
    小説家・楠三十郎は『テレビ麻布』開局30周年記念のドキュメンタリー番組のレポーターとして南極に行ってほしいとのオファーを受けた。経由地、チリのプンタアレナスで、ある少女からクリスマスプレゼントとして大きな鳥かごをもらうが、中にいたのは皇帝ペンギンの雛。どうやら南極に帰してほしいということだった。そしてペンギンとの悪戦苦闘の旅が始まった――。軽妙な筆致で“生きること”の尊さを描く。三千綱ファン待望の感動長編。
  • サバイバルファミリー
    4.1
    ある日突然、電気がこの世界から消滅! 東京に暮らす4人家族(鈴木家)が直面する、超絶不自由生活! 次第に食料や水が乏しくなっていく中で、父は決断を下す。東京を脱出する! 何が起きているのか分からない状況下、果たして、鈴木一家は生き残れるのか。笑いあり涙あり、平凡な家族の感動の物語。同名映画、原作本。
  • 砂漠の青がとける夜
    3.8
    【第27回小説すばる新人賞受賞作】東京で雑誌編集をしていた瀬野美月は、姉が亡き父親から譲り受けたカフェを手伝うため、京都に移り住んだ。淡々と日々を過ごす彼女の心をよぎるのは、東京での仕事と不倫相手の記憶だった。飲食店の紹介記事で使う言葉への違和感、別れを告げた不倫相手から送り続けられるメール……。自らの気持ちと、それを表現する言葉とのギャップが、美月の心にわだかまりとして残っていた。そんな美月の前に、どこか現実感がなく不安定さを帯びた男子中学生が現れる。平日の夕方にコーヒーを注文する彼は、大人びた物静かな少年だったが、あどけない面も持っていた。二人が親しくなっていったある日、彼は他人とは異なる世界が見えることを美月に打ち明ける。彼の話を聞くうちに、美月は自分の現実感が揺らぐ感覚を抱き、彼自身の存在さえ確かではないという思いを持つようになる。そして、彼だけが知覚する言葉を、ノートに書き留めるようになった美月に訪れた瞬間とは――。繊細な文章表現とみずみずしい感性が光る受賞作。

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