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前職の人間関係や職場環境に疲れ果て退職した茉子は、親戚の伸吾が社長を務める小さな製菓会社「吉成製菓」に転職する。
父の跡を継いで社長に就任した頼りない伸吾、誰よりも業務を知っているのに訳あってパートとして働く亀田さん。やたらと声が大きく態度も大きい江島さん、その部下でいつも怒られてばかりの正置さん、畑違いの有名企業から転職してきた千葉さん……。
それぞれの人生を歩んできた面々と働き始めた茉子は、サービス残業や女性スタッフによるお茶くみなど、会社の中の「見えないルール」が見過ごせず、声をあげていくが――。
一人一人違う〈私たち〉が関わり合い、働いて、生きていくことのかけがえのなさが胸に響く感動長編!
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Posted by ブクログ
なんや、神経質で繊細な子やなぁと思った。
小松茉子は今日から6-7歳年上の従兄の伸吾を社長と呼ばねばならない。亀田さんは特別なパートさんだから会話に気をつけるように言われる。伸吾の父が心臓を患って引退して、社長職を継ぐ。事務の子が辞めるからと伸吾に誘われた。
家に帰ると満智花が両親と映画を見ていた。菜の花の辛子和えは満智花が作ったらしい。満智花は同じマンションに住む看護師。最近ちょっと茉子の家に入り込み過ぎているのではないかと思っている。
二ヶ月たった。亀田とは親しくしていない。亀田は以前、こまどり庵で勤めていたが、結婚出産後復帰して事務のパートに回っているらしい。江島さんのパワハラチックなところが茉子にはダメだ。
満智花がこまどり庵に就職した。正置さんが江島さんに背中を叩かれて階段を落ちて骨折。正置は工場に戻ることを希望する。
Posted by ブクログ
寺地はるなさんの『こまどりたちが歌うなら』を読み終えた。
正直に言う。
この本を読むのは、とても辛かった。
大好きな作家さんの作品なのに、はじめて「早く読み終えてしまいたい」とさえ思ってしまった。それほどまでに、この物語は容赦なく私の傷口を抉ってきた。
表紙に騙されてはいけない
可愛らしい表紙。
どこか温かみのあるタイトル。
手に取ったときは、きっと心温まる物語なのだろうと思っていた。
だが、ページをめくった瞬間から、その予想は裏切られた。
この作品は、容赦なくリアルな社会の現実を突きつけてくる。優しさで包まれた物語ではなく、私たちが目を背けたい「職場の闇」を、まっすぐに照らし出す作品だった。
『吉成製菓』という名の、どこにでもある職場
主人公の小松茉子(こまつ まこ)は、親戚の吉成 伸吾(よしなり しんご)が社長を務める『吉成製菓』に勤め始める。
和菓子を作り、販売する、小さな会社だ。
そこで茉子が目にしたものは──
タイムカードを押してからのサービス残業。
部下に怒鳴り散らす理不尽なパワハラ上司。
有休が取りづらい雰囲気。
パートを不当に扱う空気。
『見て見ぬふり』が漫然と蔓延り、『暗黙の了解』がまかり通る職場。
読みながら、私は何度も息が詰まった。
ここに描かれているのは、私のかつての会社だった。かつての私だった。かつての上司だった。そして──いまの私でもあった。
自分の過去と向き合わされる苦しさ
物語を読み進めるたび、記憶が蘇ってくる。
おかしいことを「おかしい」と言った日のこと。周囲の冷たい視線。上司からの圧力。誰も味方してくれない孤独感。そして、最終的に退職に追い込まれた、あの苦い経験。
茉子は言う。「前例がない場所では、自分が前例になるしかない」と。
なんて真っ直ぐな言葉だろう。なんて力強い姿勢だろう。
茉子は、おかしいと思ったことをおかしいとハッキリ言える人間だ。いきなりの理想郷は無理でも、目の前のことにひとつずつ向き合おうとする。そのひたむきさが、物語の中で輝いている。
だが、そのひたむきな姿勢は時に反感を買い、周囲に疎まれる。
私も同じ経験をした。おかしいことをおかしいと言うことの何がいけないのか。この小さな世界を変えてやりたい──そう思って声を上げた。
だが、私の場合は物語のように、茉子のように、上手くはいかなかった。
読みながら、その記憶が生々しく蘇ってきた。私にとって、この作品は容赦なく傷口を抉ってくるものだった。
それでも、読んでよかった
苦しかった。辛かった。何度も本を閉じたくなった。
それでも、茉子の姿を見続けてよかったと思う。
茉子の真っ直ぐさ。ひたむきさ。言いたいことを言う勇気。そして、それが少しずつ周囲を変えていく様子。
私の生きる小さな世界も、こんな世界だったら良かった。そう心から思った。
もしかしたら、私が諦めてしまった場所でも、茉子のように粘り強く向き合い続けていたら、何かが変わっていたかもしれない。そんな後悔と希望が、胸の中で入り混じる。
読むべきなのは、こんな人
この本を勧めたいのは──
職場の理不尽に疲れている人。声を上げたいけれど、声を上げられない人。
かつて声を上げて、傷ついた経験がある人。
そして、「変えられるはずがない」と諦めかけている人。
この物語は、優しい慰めを与えてはくれない。傷口に触れてくる。痛みを思い出させる。
だけど、それでも──いや、だからこそ──読む価値がある。
茉子の姿は、私たちに問いかける。
「あなたは、どうしたいのか」
「あなたは、何を変えたいのか」
「あなたは、諦めてしまっていいのか」
最後に
可愛らしい表紙とタイトルに騙されてはいけない。
この作品は、優しい物語ではない。だが、必要な物語だ。読むのが辛くても、目を背けてはいけない現実がそこにある。
寺地はるなさんは、この作品で「職場」という小さな世界の闇と光を、丁寧に、そして容赦なく描き出した。
もし、あなたが今、職場で何かに苦しんでいるなら。もし、声を上げることを躊躇しているなら。
この本を手に取ってほしい。
茉子の姿が、きっと何かを教えてくれるはずだから。
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