あらすじ
前職の人間関係や職場環境に疲れ果て退職した茉子は、親戚の伸吾が社長を務める小さな製菓会社「吉成製菓」に転職する。
父の跡を継いで社長に就任した頼りない伸吾、誰よりも業務を知っているのに訳あってパートとして働く亀田さん。やたらと声が大きく態度も大きい江島さん、その部下でいつも怒られてばかりの正置さん、畑違いの有名企業から転職してきた千葉さん……。
それぞれの人生を歩んできた面々と働き始めた茉子は、サービス残業や女性スタッフによるお茶くみなど、会社の中の「見えないルール」が見過ごせず、声をあげていくが――。
一人一人違う〈私たち〉が関わり合い、働いて、生きていくことのかけがえのなさが胸に響く感動長編!
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とても面白かった。前向きな気持ちになれた。
色々、みんな自分の立場や考え方もあるけど、歩みよれたり、見方を変えると違う景色がみえる事ってあるかもね。
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寺地はるなさん3冊目。
キャラクターの描かれ方はドライなのに、それぞれがとても愛おしく感じられる。
それぞれの得意なこと苦手なこと、できることできないことに、筆者の「良い」「悪い」の判断基準がいっさいにじまず、一貫してただそこに存在している人として描写されているからかな。
主人公の茉子は「言いたいことを言える」人。ただ、それはある種の「傲慢さ」「残酷さ」と裏表になっている。私自身が茉子と同じタイプの人間なので、耳が痛い部分、ハッと気付かされる部分がたくさんあった。茉子自身も少しずつそのことに気づいて思い悩むが、結局うまく言語化できなかったりしてその悩みが根本的に解決するわけではない。ただ、最終的には茉子のその性質が最後にはみんなが変わるひとつのきっかけになったりする。
「川のほとりに立つ者は」でもそうだったが、持たざる者を主人公にして「物語」を描こうとしないところもいい。現実では、他人にまつわる劇的な「物語」はなく、ただそれぞれが必死に立って生きているという事実しかない。他人に物語を期待すること自体が、傲慢さの現れなのだと、茉子と一緒に私も気がつく。
強くなくてもいい、人は簡単には変わらない。だけどそのままでも一歩を踏み出すことができる。
突き放しているようで、こんなに温かいメッセージはないと思う。
とても大切な一冊になった。
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思ったことを口に出せるのが良いときもあるしそうでないときもある。勝手に期待するのも自分のやり方を押し付けるのも良くない。茉子の考え方というか考えを言葉にできるのは羨ましい。昭和気質で大変そうな会社だけど、作ってる和菓子がとても美味しそう。
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おもしろかった!「もやもや図鑑」みたいな物語でした。まわりから見たら、堂々と自分の意見を言えるような人に見えても、どこかに「もやもや」はありますよね。
ギャグ抜きの吉本新喜劇風ですが、出てくる人たちいろいろと「もやもや」してます。
いまどきの「会社」を舞台にした物語ではありますが、「ブラック企業」とか「働き方改革」といった、「会社」をどうにかしようというガチの企業小説とは、ちょっと違うようです。
その会社とは「吉成製菓」。時代に取り残されてそうな「すすけてブラック化」した感じの会社です。
決して、偽装・脱税・社会保険料のちょろまかし・鉄拳制裁などなどの、真っ黒企業ではありません。
主人公の、小林茉子(こばやし・まこ)さんは、20代、女性、会社員、実家暮らし。そんなかたの「もやもや」ならば、あれこれの「人間関係」か「会社」に原因がありそう。たぶん、その流れで「吉成製菓」が舞台なのでしょう。
わたしは読む前、企業小説的な物語と思い込んでいました。
ところで最近読んだニュース記事に「英国で日本文学が人気」というのがありました。
記事の内容は、欧米の小説のように白黒つける「対決」のような話ではなく、身近なことをふんわりと書かれていて、癒されるのが良い、みたいだったかな。
そういう意味では、この物語も「The 日本文学」です。
登場人物たちのそれぞれの「もやもや」を少しづつ、少しづつ晴らすように物語はすすみます。
ところどころに書かれる、作者の寺地はるなさんの言葉がよかったです。その言葉たちが癒しのキャンドルライトのようで、ゆらゆらと道を明るくしてくれて、よい感じです。
四季折々の和菓子たちとお茶で、もてなされたよう。ほんとうに癒されます。
いつもはcaféで珈琲とともに読書されるかたも、この本ばかりは季節の「和菓子」と、いまなら「新茶」をならべ、読書されてはいかがでしょうか。
そんなかんじです。
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この作家さんの本を読むのは、「水を縫う」に次いで2冊目です。
これは、和菓子屋が舞台の物語でした。
「こまどり」という鳥は、大きな声で鳴くのだそうです。
一人ひとりが誰でも何らかの事情と歴史を抱えて生きていて、それを表に出すか出さないかは、それぞれの事情で決めるのでしょうが、でも、言いたい事はちゃんと言わないと、何も変わってはいかないんですよね。
みんなそれぞれ良い方向に進んでいけて、良かったです。
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関西の街の小さな製菓会社を舞台にしたお仕事小説。
春に始まって春に終わる物語。
社長の親戚で入って来た主人公が、会社の昔からの慣習を変えていこうとするが、何でも新しいから便利だからって変える事が正しいのか?波風を立てずにただ会社に言われるがままの条件を受け入れて働く亀田さんのような働き方が良いのか?自分も働いていて同じような事を考えるし、小さい会社なりの暗黙のルールとか敢えて言わない風潮とかわかるなー。と思いながら読みました。
仕事に行き詰まった時に、思い出しそうな本でした。
表紙もそうですが、和菓が美味しそうでこまどり庵に行ってみたいと思いました。
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和菓子屋さんのお仕事と
マコさんの周りの人間関係が
なかなかリアルでした
現実にありそうで赤裸々な話
ただ、マコさんに共感出来なかった〜
きっとマコさんと私は合わないんでしょうね笑
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和菓子屋さんの甘くかわいいイメージとはちょっと違い苦味が走る。親子経営、サービス残業、パワハラ、モラハラ諸々など正直、親戚でもこんな会社で働くのは嫌だししんどいと思う。見て見ぬ振りも辛いものだと思うし標的にされたらなお辛い。意外と亀田さんは好きだけど、扱いづらい人ばっかりなところに善哉がいい人過ぎて感動すら覚える。茉子の母の言葉にハッとさせられるものが多く、確かに本を千冊読んだからといって感性や想像力や論理観や知識が蓄えられるわけではなく何の自慢にもならないな…と思えた。茉子が前例になったのが感慨深く、和菓子が美味しそうで食べたくなった。
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古い大勢のブラック企業の体制に立ち向かう勇ましい女子と言うありきたりな物語と思いきや、意外な内容と一見勇ましく正しくみえる主人公の迷いに、すごく共感覚えた。
「大丈夫って聞く時は、相手の返事はあんまり信用したらあかんし、大丈夫って答える時はほんまに大丈夫な時だけにせなあかんらしいです」
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親戚の経営する和菓子店に就職した主人公が、古い体質の会社で格闘する。
昭和生まれなので、色々、『一昔前ってこうだったよね』って共感しながら読んだ。令和になってだいぶ緩和されてきたんだろうけど、まだまだこういう考え方が生きている職場も少なくないのだろうとも思う。
正直、ほんきのブラック企業だったら、この程度では変わらないのだろうとは思うけれども、一人一人が自分のやり方で前に進もうとしている姿には素直に感動する。おもしろかった。
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仕事がメインの寺地はるなさん作品読んだの、初めて。寺地さんの目線で書くと、こうなるよね。
やさしい文章だし、お話もやさしいんだけど、かなり重ためのテーマもガッツリ差し込んでくる。寺地さんのそういうところが、現実っぽい。
主人公が自分かと思ったという人、意外といて安心した。
「傷ついたり迷ったりするのは弱い人間だけだとでも思っているのか」って、別の寺地作品のセリフを思い出すシーンが度々あった。
自分の意見をはっきり言うの、少なくとも私は「自分の意見を聞いてくれる環境があったから」ではない。「その言葉に従っていたら自分が壊される」という確信があって、そんなことされない権利が自分にあると信じるために自分の意見を言ってきた。流されることのほうが怖かった。聞いてもらったから言えるんじゃない。言わないと死ぬから言うしかない。言わなくても死なない、「流されていれば大丈夫」と思えた人たちのことが逆に羨ましいよ、私は。
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和菓子が出てくるのでほっこりするところもあったが、けっこう考えさせられる重い内容だった。
「大丈夫?」って声かけ、わりと日常で使ってしまっていて、違う言葉を使った方がいいのかなぁと思ってしまった。どんな言葉がいいんだろう…難しい
茉子の母が、なんかいいなと思った。
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タイトルがかわいいので読んでみた。
読んだら季節ごとに相応しい和菓子を食べたくなった。
実は比較的強い人目線からのお話だなと思った
困ってる人に気をかけて、ズバズバものを言える茉子の気持ちもわかるし、伸吾や満智花みたいに自分だけ我慢してやり過ごしたり、何かを選べなかったりする気持ちも共感できた。茉子自身は自分が強いなんて思ってないし、迷いながら意思決定をしていた。強い人もたくさん悩むんだなと思った。
人は場面や場所によって強い人にも弱い人にもなれるんだと思う。
茉子が「私は人を一側面だけで見るのが得意だ…」みたいなことを考えてて、私もそうだなって思う。粗暴な態度な人、時間にルーズな人を見るとそういう人はもうあまり好きじゃない。でももしかしたら何か事情が…みたいな思考になるのは少し難しい。でも一側面で評価しちゃダメだよな。。
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皆が皆、強い訳じゃないんだな。。。
誰しも弱い部分を持っていて、それを堂々と表に出せる人もいれば、出したくない人もいる。
私はよく『だいじょうぶ!』って言ってしまうけど、本当に大丈夫でなければ言わない方がいいにグサッときた。
『だいじょうぶ!』で本当に大丈夫だと思われて、誰も手を貸してくれなくても恨んではいけない。。。だって『だいじょうぶ!』って言ってしまってるのだから。心配をかけたくはないけど、少し手を貸してほしいって素直に甘えられたら楽なのだけど、なかなか性格ってものは変えられないよなー。
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主人公茉子に憧れる。しっかり自分の考えを持っているところ。それをしっかり他者へ伝えられるところ。自分の考えは足りていないかもしれないことに自分で気付きながら相手の状況を思いやることができるところ。
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親戚の会社に再就職した茉子。サービス残業や昼休憩中の電話当番、同じ仕事をしていても顔新卒じゃなければ事務職は正社員にしないなど中小規模の理不尽あるあるが一杯。それに声をあげる茉子は煙たがれるけど経営者側も少しは考えないとね。自分にはどうでもいい人だけど誰かの大切な人、と言う言葉には忘れがちなことを教えられた。
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登場人物のけったくそ悪くなる描写に、ますます磨きがかかっていると思う(褒め言葉)。
舞台は和菓子の「吉成製菓」。中途入社した茉子の視点で、それまで会社の‘前からそうやった’ことが、少しずつ変わっていく。彼女の正しさが、時にキュッと胸を苦しめる。自分が聞いたことだけで、勝手に他人のストーリーを創るのは止めようと思った。
また、茉子の母の「フィクションがなんの役にもたたんから好きなんや」に共感。あっけらかんとしていて、憧れる。やっぱり、関西弁落ち着くわ。
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人はひとりひとり性格も考え方も違う。でもみんな懸命に生きている。自分と他人とは違うということを心に留めて、自分の正義を人に押し付けないということを作者は言いたかったのかなと思った。
和菓子の会社で事務員として働き始めた茉子。社長は、はとこの伸吾。入社してみて、パワハラやサービス残業など多くの問題点に気がつく。体調不良で社長を退任した伸吾の父である会長の影響が大きい。気がついたことを指摘して、労働環境を良くしていこうとする茉子。でもなんだか古巣のパート事務員や営業マンと関係がぎくしゃくする。
会社では上司と部下、同僚といった関係でも一人一人には色々な背景があって、必ずしも社長だから、先輩だからといって頼りになる存在というわけではない。でも、それでもみんな一生懸命に自分の力を振り絞っていて、弱くて情けない自分を持て余している。人間は強くて、弱い。
P153『みんな、勝手に他人に期待する。そのすべてをいちいち抱えていたら、いつかはその重さに耐えきれなくなる時が来る。他人の期待を自分の義務にしてはいけない。』この文章が胸に響いた。厳しくて優しい。人はいつも人に傷つき、人に助けられる。
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寺島さんらしい分かりやすくて解釈の幅がある小説だった。最後のこまどりは何のメタファー?人間は1人では寂しいということ?亀田さんは何の象徴?能力はあるのに能力を正当に評価されないジェンダーギャップ?小説ならではの対立する人物の背景構造をさりげなく紹介してうまくまとめられているのがよかったですね。
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親戚の会社に入社した茉子はおかしいと思った事をきちんと言葉にするタイプ。会社の古い体質を変えていこうとする。清々しくてスッキリした。
*大丈夫?って聞いた時、大丈夫という返事は信用したらアカン。大丈夫?と聞かれた時、大丈夫じゃない時は大丈夫と答えたらアカン。なるほど!
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親戚が経営する和菓子の会社で働くことになった茉子。
ところが、頼りない2代目社長、常に威圧的で部下に横柄な態度を取る営業、サービス残業が黙認されている実態など、新しい職場には見過ごせない問題が山積していて…。
読みながら、最初は主人公を囲む登場人物たちが好きになれず、茉子と一緒にモヤモヤを募らせていたのですが、だんだんと1人ずつの人生にスポットが当てられていき、その人の背景や苦悩を知ると、最終的には始めよりもみんなのことを好きになって読み終えることができました。
出自も性格も違う色んな人と関わり合いながら働いていくこと、生きていくことって本当に難しいよなぁと改めて。
ラスト、みんながそれぞれ少しずついい方向に向かって動き出せて良かったです。
あと、主人公が勤める会社が経営する「こまどり庵」の和菓子がとても美味しそうで、作中モヤモヤする場面も多い中での癒しでした(^^)
和菓子デザインの装丁もかわいくてお気に入りです。
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話せば分かるって普通に使ってたけど
相手が分かってくれるから成立するんだ
大丈夫っても簡単に声かけていたけど
大丈夫って思える人に声かけていたのかも
話の所々に凄く深い話が散りばめられていた
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主人公が転職した先の小さな会社は、問題だらけ。読んでいて思わずイライラし、モヤモヤ。サービス残業やパワハラなど、今どき信じられないような職場環境に驚いた。
でも、和菓子のシーンはどれも美味しそうで、そこだけは癒やされた。
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親戚が経営する和菓子屋さんに再就職した主人公。会社にはその規模に関わらず、いろんな人がいて当然いろんな人間模様がある。取り扱う商品が和菓子なんて夢を感じなくもないが、登場人物がそれぞれよく描かれている。そう、どこで働いても大変なのだ、身内が経営者だったとしても。いや、だからこそなのか。
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前職場で 上司からパワハラをうける後輩のことを“見て見ぬふりをした”という負い目をもつ茉子は親戚の伸吾が社長を務める小さな製菓会社『吉成製菓』に転職する。 もう二度と同じ失敗はしない、という決意だったのだが
この会社ではそれは難しいという結論が出た。
人それぞれ 育ってきた環境も 性格も能力も 背負っているものも 当然ちがう。 そんなものが集まってできている会社という組織に問題がまったくおきないわけがない。
「職場ではできる人が、力のある人が、ルールになる」などということを社長自ら言っているような会社は話にならない。
この先 バイトの千葉のような女性がどんどん出世していけるような『吉成製菓』であるといい。
職場の理不尽さというものは なかなか無くならない。飼い慣らされて 理不尽を理不尽とも思わなくなってしまうことが一番コワイのかもしれない。
Posted by ブクログ
おばあさんが葬儀でバタバタして落ち着いた後にいただいた和菓子を食べて、とてもおいしいと感じる話が印象的だった。
忙しい生活の中で、やっと自分の時間を持てた時に食べる繊細な和菓子に癒される気持ちはとても想像できる。
誰かを励ましたい時、気にかけている時に甘いものを贈る話にも確かに!と思って、お菓子のもつ癒しパワーを改めて感じた。
古い体質の会社の「見えないルール」問題は、きっと全国にたくさんあると思う。
吉成製菓は茉子のように発言できる人がいて、社長の伸吾が聞く耳を持っているからいずれ改善できるはず。
私の会社は無理だな、、、羨ましい。
人それぞれのスタンスの違いがあって難しい人間関係など、リアルな内容だけに、激しい展開はなく、単調ではある。
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涙はしょっぱい、お菓子は甘い。
親戚が営む小さな製菓会社に転職した茉子。
はっきり言って好きになれないし、身近にはいてほしくないタイプ。
でもなあなあにせずキッチリ考えて主張し行動するのは評価に値する。
「他人の期待を、自分の義務にしてはいけない」
Posted by ブクログ
ー 他人の期待を自分の義務にしてはいけない。
と言うフレーズが胸に残った。
人に勝手に期待して、その人が期待に応えるよう努力することが当然と思う上から目線は嫌だなあ、と。
と言いつつ、自分も陥ることあるんだけど。
Posted by ブクログ
Audibleで。
寺地さんらしい。
職場の人間関係。
そして、マンションが同じ幼なじみ。
確かに「強くていいな」と思われている主人公には過去があり「見てみないふりしてたやん」と言われたことにつきまとわれる。
「大丈夫?」と声をかける人は「大丈夫」しか期待していないと言うことに愕然とする。
自分の正義は他人の正義でもない。
痛いほど、人はそれぞれだと言うことがこの物語にはある。
それに、何回となく直面して主人公は省み成長する。
同じように読み手の私も省みる、そんなお話。読後、優しい。
とりあえず、本人の居ないところでの憶測のプライベートは語らず居よう。
と、最後に私は和菓子派
全部食べてみたい(爆)