あらすじ
前職の人間関係や職場環境に疲れ果て退職した茉子は、親戚の伸吾が社長を務める小さな製菓会社「吉成製菓」に転職する。
父の跡を継いで社長に就任した頼りない伸吾、誰よりも業務を知っているのに訳あってパートとして働く亀田さん。やたらと声が大きく態度も大きい江島さん、その部下でいつも怒られてばかりの正置さん、畑違いの有名企業から転職してきた千葉さん……。
それぞれの人生を歩んできた面々と働き始めた茉子は、サービス残業や女性スタッフによるお茶くみなど、会社の中の「見えないルール」が見過ごせず、声をあげていくが――。
一人一人違う〈私たち〉が関わり合い、働いて、生きていくことのかけがえのなさが胸に響く感動長編!
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Posted by ブクログ
春らしい表紙とタイトルに惹かれて手に取りましたが、内容は仕事や人間についてシビアに書かれた作品でした。
特に「だいじょうぶって訊く時は相手の返事をあんまり信用したらあかんし、だいじょうぶって答える時は、ほんまにだいじょうぶな時だけにせなあかんらしいです」という言葉が印象的でした。
関西弁なのも相まって個人的に読みやすかったです。
Posted by ブクログ
主人公が強いなあ、と思いました
ただ、強くても、悩むこと考えることは、人間らしいなと思いました
どちらかと言えば、私は弱い人間です、主人公のように発言出来ません
きっと周りの人も眩しく見えると思う人もいる。
少しずつ会社関係が変わるのが良かったです
劇的変化!ではなく、多少の変化が良かった
特にパワハラされていた人物が、こうした着地になったか〜と驚きつつ、良かったなあ
うん、全体的に良かった
Posted by ブクログ
好きな映画や味や、楽しめるものが違っても、それでもやっぱり、わたしはあなたに会いたい。その気持ちを伝えたかった。でもなかなか言葉にならなかった。どれほど時間がかかっても、ちゃんと言おうと思った。言わなければきっとなかったことになってしまうから。(219ページより引用)
「でも、相手の全部が好きではなくても、『好き』は成立するで」(219ページより引用)
私は「人を好きになる」ということがどういうことなのか、正直よくわかっていません。なんとなく、「自分と共通項が多い人には親近感がわきやすいのかなあ」という認識を持っているぐらいでした。
この場面を読んだ時、「そうか、こういう『好き』もあるのか」と大きな気づきを得られたような気がしました。
お互いの好きなところ、そうじゃないところに真摯に向き合い、思ったことを必死に言葉にして伝えようとする茉子ちゃんと善哉くんの姿を見ていると、なんだか少し泣けてきました。全然悲しい場面ではないのですが。
私は思ったことを言葉にして伝えることをおろそかにしがちなので、少しずつ丁寧に、自分の思いを伝えることに取り組んでみようと思いました。
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おかしいと思ってもそう簡単には変わらないこと変えられないことはある。
今の時代に合わないローカルルールの中で自分なりにできることをして懸命に生きて働く茉子の姿にパワーをもらった。
生きることも働くこともしんどくても悪くない。
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主人公の小松茉子(後ろから読んでも「コマツマコ」)は、縁戚の「吉成製菓」の事務職に転職。権利意識も強く、職場ではハキハキと発言する。頼りない2代目世襲社長は、子どもの頃からの幼なじみの親戚にお兄さん。同じ職場で働く上司や先輩、同僚達の理不尽な数々に疑問を投げかける。一方で、趣味多き茉子と両親や近所の幼なじみの人間関係も見え隠れして、読み進める=採用からの経過=季節の移り変わりで変化する、季節の和菓子、茉子、同僚達の変化や揺れ。前職での辛い思いをしていた同僚への自責の念。ヒューマニズムあふれる群像劇にぐいぐい引き込まれるお仕事小説。職場での勧善懲悪ではなく、登場人物の変化の成長を丹念に綴った物語だが、どこかで起きていそうな内容。読み終わったら、翌日からの職場の風景が違って見えるかもしれません。お仕事小説を綴った「過酷な残業、安い賃金、不当な解雇、パワハラ、セクハラという労働問題のロイヤルストレートフラッシュみたいな会社」は、昨今の世相を反映した、著者の軽妙な問題提起として受け止めたい。
Posted by ブクログ
いとこが社長をする和菓子屋に就職した茉子、その会社の旧態依然とした組織と就業体制に違和感を感じ声を上げても「コネの子」として相手にされず疎まれ、出来るパートのおばさんには「見え過ぎても流された方がラク」とまで言われる…。
ベテラン営業の江島やら先代社長やら、ブラック企業の象徴的なキャラがやってることの一つ一つに心当たりがあって胸が痛い。俺もこうやって人に言われて言うて働いてたなぁ、その結果自分は潰れ、多分他人も傷つけてきたんやなぁ、それが正しい道と信じて。
間違ったことは間違っていると言える茉子の態度は素晴らしいけど、「残酷」ともいわれる。この小説では正しい道を進んでいるように見えても、この「残酷」さが先の時代では間違ったこととされるのかもしれないなぁ。
そうやって修正を繰り返して進んでいくのが「社会」なんだろう。
普遍なのは、それでもパンをかじってた茉子の姿勢。キツいことがあっても食えるのは素晴らしい。そういえばおばちゃんは慰める手段としてちょっとした食べ物を差し出す、という描写もあったな。
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寺地さんらしい、すごくわかりやすいのにすごく深い作品。
刷り込まれた価値観やいまだにはびこっているおかしな常識によってパワーレス状態に陥ってしまうことは、この世の中生きていたらまだまだある。
それをおかしいと思うこと、違うんじゃないかと声を上げることはすごく大変で、でも理解してくれる人が近くにいれば、一人ではないと実感できれば、大変でもできるかもしれない。
そんな希望をあらためて感じられた。
なにより。作中に出てくる和菓子がおいしそう。
Posted by ブクログ
正義感が強くて、少し融通がきかない主人公、小松茉子。上から読んでも下から読んでも、こまつまこ。
はとこが社長をする和菓子製造販売会社に転職し、その会社の古い体質に驚き、指摘したら、「はりきってるな」と釘を刺される。息が詰まるような展開だ。
パワハラ、労災をかくそうとしたり、人によって態度を変える風見鶏的な社長にやきもきする日々。
これがいわゆるお仕事小説なら、茉子が古い会社の体質をぶっ壊して、パワハラいやみなベテラン者社員に制裁を加えて、勧善懲悪〜となるところ。
私も、茉子がズバッズバッと周囲の人たちの間違いおかしさを的確に物言う姿を読みながら、あれ?今回寺地さん作風ちがう?なんて一瞬思ったりしました。
しかし、寺地はるなさんの本ですから、そういうことではない。
茉子の同級生が、茉子に「(いいたいことを言って)気持ちいいんやろな」という。
正しいことを言う人は正しいんだから言っていい、正しいことなら遠慮はいらない、という単純な話ではないのだと、はっと気づかせられる。
弱い気持ちであったり、つらい思い出がありながらも、前に進もうともがいてる人を、正しさの刃で切り刻むことは、してはいけないのだ。
茉子が、気の毒な人たちと思っていた人たちも、自力で解決しようとしたり、這いあがって新たな夢をみつけたりした。
茉子にも、自分と違う考え方の人たちを許容する心が生まれた。これは「長いものにまかれろ」とはまったく違う、とても絶妙な変化で、心の成長だ。
なみだはしょっぱい。おかしはあまい。
涙が出そうになったら、私もあまいお菓子を食べたいと思った。
Posted by ブクログ
茉子ちゃん
話せばわかると思える人は、そんな幸せな家庭に育った、っていう言葉が心に残りました。知らない間に人を不快にさせてるのかもと、思うこと多しのさいきんだったので余計にでした。まあ、でも、そういうのも背負いながら、自分が思うことを伝えながら生きたいです。
Posted by ブクログ
今はやりの「働き方改革」がテーマの作品でした。
小さな会社に長年勤めているとそれが当たり前だと思って都合のいいように使われていたのですが、もう令和の時代ですもんね。サービス残業にセクハラ、パワハラどんとこい。マニュアルないから見て覚えろとか、ほんとは言葉で伝えるのが苦手なだけで、自分もそうやって覚えたのだから仕方ないのかも・・
特定の人がいなくても会社が回っていく環境を作ることがよいことだと思うけど、存在理由があるから頑張れるというのも否定できない。
言いたいことがはっきり言える主人公がバサバサなぎ倒してゆくところが気持ちいい。同じ経理で働く年輩の亀田さんは社員以上に仕事をこなしているのにパート扱いで給料少なく有休もないのに不満を押し殺してマシンのように働いている。
こんな不条理が幅を利かせてよいものなのだろうか。
私も声の大きい人とか苦手で委縮してしまうのですが、正論よりも根性論がまかり通って風通しがなかなか良くならない。もう一人、千葉さんも理路整然と物申しすることができてカッコよかったな。
ズバッと物申したいけどその時は会社を辞める覚悟で言わないといけない雰囲気とか暗黙のルールが労働基準法よりも重視されるなんて雇用関係とゆうより主従関係に近い形態なんですよね。働いてるとゆうよりも生活してるて意識なんだと思うから、うやむやに済ませてしまう感じも強いのかな。
はとこが3代目の社長を務める和菓子会社も魑魅魍魎が支配する村社会の様子でした。
茉子もコネの子と呼ばれながらもその関係を大いに利用し改善していこうと振舞う姿がよかったですけど懐柔されてるような感じも受けたりですが、大きな会社がいいってわけでもないし、茉子自身、人間関係や職場環境に疲れて転職したのだからそこそこに折り合うてんはあるわけだと頭を悩ましますが、甘いもの食べて糖分補って頑張らないとね。
四季折々の和菓子が彩を添えてくれました。
Posted by ブクログ
言葉というものは、発する人の背景も含んでいる。だから同じ言葉を使っていても、「話が通じない」という事が起こってしまう…
自分では相手の事を思って言っているつもりでも、相手にとっては負担にしかならなかったり、何の救いにもならなかったりする…
言われてみれば当たり前ですが、日頃はそんな事を忘れて無神経な言葉を発しているのでは?と考えさせられました。
Posted by ブクログ
和菓子の会社にコネ入社した茉子。
正しいことを口にしたらめんどくさいことになる。
でもおかしいものはおかしい。
みんなこうやって言えたらいいのにな笑
Posted by ブクログ
こんな会社世の中にはまだたくさんあるんだろうな〜
今の自分は茉子と同じような正義感で行動するタイプだけど当事者からみたらかなり迷惑な人に思われてたりするんですよね、
若い頃は我慢して周りに合わせなきゃいけないと思ってたけど
やっぱり良くないことは良くない、おかしいと思ったことは声に出して訴えるべきだと思います。
かわいそうな人だから、会社に必要な人だから、お世話になった人だから、そんなの言い訳にすぎない、誰でも面倒な事は避けたいけど少しでもみんな平等に幸せに生きていける世の中になるといいな〜と感じた1冊でした。
Posted by ブクログ
正直こんなテーマで、小説が成り立つのだなぁと感心した。温かいお仕事小説ではない。恋愛でも、友情でもない。トンガッてしまう心を隠さずに表すための作品。
かなり昔のおじさん達の苦悩していた作品を、現代の置き換えたような趣を感じる。
しかし、大丈夫という言葉を用いずに、相手。気遣うのは、なかなか大変やな。
Posted by ブクログ
ストーリーとは関係ないが、普段無自覚にやってしまいがちな考え方を言語化してくれる表現に多く出会えた。
・人になにかを尋ねる時には、無意識に自分がほしい返答を期待してしまうことが多い。
他人は基本自分がしてほしい話はしてくれないもの。綺麗なストーリーを期待しない方が良い。
・規模の大きい会社だから良い就職先で、小さな会社だから高学歴の人間が入ると人生の失敗だという発想。
魅力ある人間がどんどん出世していって、その会社を大きくしていく可能性も大いにある。
・だいじょうぶかと訊く時は、あまり相手の返事を信用してはいけないし、だいじょうぶと答える時は本当にだいじょうぶな時だけにしなくてはいけない。
Posted by ブクログ
人間関係に疲れて退職した主人公茉子(まこ)が、営業2名、事務2名の和菓子会社に縁故で就職。旧体質の社風の中、それに反発する自分、そういった社風の中で折り合いをつけながらやっている人々など、様々な人との関わりで成長していく物語だと思います。
長いものに巻かれることが良しとされない昨今、本当にそうなんだっけ、価値観はもっと多様なものなのかな、と、身近な題材でそう思わせてくれるような内容と感じました。
星4つです。
#美文
Posted by ブクログ
ブラックほどではない会社でも、当たり前のようにある好ましくない暗黙の了解事項。なくならないパワハラ・セクハラ。おかしいと声を上げても無視されたり報復されたりするダークな空気漂う職場。
それでも声を上げようと決めて臨んだ転職先の小さな製菓会社を舞台に、孤軍奮闘する1人の女性を描くヒューマンドラマ。
◇
小松茉子は、目の前に座る男を見た。
男は名を吉成伸吾といい、茉子のはとこに当たる。現在27歳の茉子より5つか6つ年上だが、幼い頃からよく知る相手だけに、今日から「社長」と呼ぶことに違和感がある。
ついそんなことを考えつつぼんやりしていると、「話聞いてる?」と伸吾から声がかかった。ハッと我に返った茉子に「会社では小松さんと呼ぶから」と伸吾は言って、社内を案内するため立ち上がった。
茉子は今日から、伸吾が社長を務める吉成製菓という、社員35名の小さな会社で働くのである。
事務所内には机が5つあって、事務員用と営業員用が2つずつ、向かい合わせに並んでいる。入口にもっとも近いいわゆる下座が茉子の席だ。そして上座に当たるいちばん奥の入口に向いた机が伸吾の席のようだ。
茉子の向かいがベテラン事務員の亀田の席だと言ったあと伸吾は、「亀田さんはパートさんやから、話題は慎重に選ばなあかんで」と心配そうに付け加えたのだった。
( 第1章「春の風」) ※全6章。
* * * * *
作品の魅力は主人公の茉子です。
前の職場での劣悪な人間関係に嫌気が差して退職した茉子は、はとこの伸吾が社長を務める製菓会社「吉成製菓」に就職しました。
茉子がこの会社に勤める気になった理由は2つあります。
1つ目は、伸吾に懇願されたことです。
急な心臓の病で引退した父親に替わり、いきなり社長に就任した伸吾は、ベテラン揃いの社員たちに言いたいことも言えません。折よく事務に1人欠員ができたので、気心の知れた茉子に来てもらうことにしたのでした。
2つ目は、「吉成製菓」に対する思い入れです。
茉子の保育園時代のこと。祖父の葬儀に参列した茉子は、焼かれて出てきたお骨を見て泣き出してしまいます。「死」というものを認識したからなのですが、祖父の死を悲しんでいると勘違いした1人のおじさんが、持っていた小鳥の形をしたお饅頭をくれました。
その美味しさに思わず泣き止んだ茉子にとって、おじさんがつぶやいた「涙はしょっぱい、お菓子は甘い」ということばと、そのとき食べた「こまどりのうた」は特別な存在になったのでした。
でも本作は、若社長の期待と和菓子への熱い想いに支えられて奮闘する若い女性を描いた爽やか系の物語ではありません。
社会や世間に根強く残っている理不尽な慣行や、パワハラ・セクハラ・モラハラ等の人権無視の言動に、いちいち異を唱えては跳ね返されイライラモヤモヤしつつも挫けずに行動する女性の姿を描く物語です。
そして、茉子が鉄の女のような闘士タイプでないところが物語のミソになっています。
小鳥にすぎないこまどりですが、その鳴き声はとても大きく、まるで自分の存在や主張をアピールするかのようです。
茉子の主張や抗議もこまどりのさえずりに似ています。これが設定としておもしろい。
社会に影響を及ぼすだけの力は若い茉子にはありませんが、言わなければ何も始まらない。
そんな茉子のさえずりもなかなか功を奏さず、中盤まではイライラモヤモヤし通しで少し疲れます。
でも、寺地はるなさんらしいカラッとした文章と展開のテンポのよさで気づけば終盤を迎えていました。
勧善懲悪・万事解決とならずに、少しずつ事態が好転していくところが却って心地よかった。
前途はまだまだ多難ではあるのですが、それでも現状を改善していこうとする茉子のしぶとさに希望を感じる、とてもいいエンディングでした。
Posted by ブクログ
登場人物のいろんな人に少しずつ共感出来てしまうところが、しんどい。
「要するにあんたは若くて、元気で、自分のために使う時間がいっぱいある、そういうことや」
「疲れるとなんにも考えたくなくなる。考えずにぜんぶ呑みこむ方が楽やって思うようになる」
「ささいなことでも大事なことでも、考える時間と労力が惜しいぐらい、忙しかった」
「前例がない場所では、自分が前例になるしかない」
ても戦おうとすると「この子ほんまにがめついな」って言われる。労働者の当然の権利なのに。
で、被害者なのかっていうと、
「ずっと見て見ぬふりしとったくせに」ってなる。
消極的な加害者?
けど他人には厳しいのね。
「そうやって、ずっと「わかる」「わかる」って言い合ってたらええやん」
どれもこれも覚えがありすぎて、しんどい。
高校生の娘が先に読んで、声が大きい人のお話、とまとめてくれた。うん、そだね。
この子が社会に出て、いろんな経験を積んでから読んだら、他にも思う所が出てくるかもしれないけど、分かって欲しいような欲しくないような。
自分自身にも古臭い固定観念みたいなのがあって、小さなお子さんがいるママが子ども置いて飲み会?と眉をひそめたりしてるけど、それもパワハラになっていくんだろう。気がついたら是正するようにしなければ、と思ってるけど、気がつかないことも多いから。
けどきっと
「たぶん、なんでもでぎすよ。わたしたち」
ひとりでは無理だけど。
皆それぞれに何かは、きっと。
Posted by ブクログ
和菓子の製造会社で働きはじめた茉子と、彼女を取り巻く人々の物語。
おかしいことはおかしいと主張する茉子。大事だしかっこいいと思うけど、吉成製菓みたいな体質の会社だと、疎まれたり反発されたりして、やりづらいだろうな。
私も割とおかしいって言いたくなる人だけど、言うこともあれば、まいっかとなることもあるんだよな。小さい会社とはいえ、会長にまでちゃんと意見を言えるのは、偉いな。
なかなかうまくいかなくて苦しいけれど、終わりに近付くにつれて少しずついい変化が見られて、少し安心した。
あと、善哉の人柄がほっとする。
Posted by ブクログ
ゆるっと読めるお仕事ストーリー。
和菓子の蘊蓄に、ん?なんか知ってるぞ?と思ったら、和菓子のアンシリーズで履修済みだった。
和菓子の表現は前述作に及ばず。美味しそうではあるが、愛しくはない。
Posted by ブクログ
寺地はるなの作品はいつもタイトルと表紙に騙される。和菓子を愛でながらほのぼの進む物語かと思いきや、思いっきり『お仕事小説』だった。
老舗の中小企業にありがちな旧態依然とした職場や社員に物申していく主人公の茉子が、普通なら痛快なはずなのに、何故か絶妙にモヤモヤさせるキャラで、読んでいくのが少々苦しくなってくる。どうしてなのかと思っていたら満智花と虎谷さんが見事に言語化してくれてなるほど、これが言いたかったんだな、と腑に落ちた。
誰しもこういう言動はしてしまうな、と自身を振り返りたくなった。
可愛い表紙からは想像できない物語だった。
Posted by ブクログ
会社は色んな立場の人で成り立っている。
立場が違えば意見も違うし、経験値や世代によってそれは同じ。
誰かが声を上げて「新・働き方改革」を提示しないと意外と会社は昔のままのルールのことが多い。
でもその声を上げる人が若い新人だったりすると一瞬で叩かれる。これは難しい。
柔軟な考え方が出来れば一番良いんだろうけど、なんせ決定権がある立場の人の質による。
Posted by ブクログ
親戚が営む和菓子製造販売の小さな会社にコネで転職した茉子。
残業はタイムカードを切ってから。
それ法律上間違ってるし、それはパワハラでしょう。
古い体制の会社だとあるあるだよな。それが当たり前になってまかり通ってるんだよなと思う事に茉子はらひとつずつ抗議していく。
だからといって劇的に状況が変わるわけではないけれど、少しずついい方向に向かっていく。そんなお話し。
それはそうと、働いている人がうちのお菓子が1番美味しいと自信を持って言えるのっていいなぁ。幸せな職場だよなぁと思う。なかなかない気がする。
Posted by ブクログ
大丈夫って訊くときは相手の返事をあまり信用してはダメ、大丈夫って答えるとは本当に大丈夫な時だけ。
このことば、あぁホントそうって思った。
実際いままで考えた事なかった。
これを読み終えた後すぐにこまどりのさえずりを検索しちゃいました。
Posted by ブクログ
親戚の会社で働く茉子(まこ)が、パワハラとか職場環境について指摘するのだが、後輩を守ってあげられなかった過去の苦い経験に基づくことがわかり、といった筋でやや説教臭く感じたがまあまあ楽しめた。満智花や善哉などの周辺のキャラクタがちょっと薄かったの残念。
Posted by ブクログ
労基法違反の事例集みたいな小さな和菓子の会社に就職した茉子。おかしいことにはさらっと意見できるのがカッコいい。思ったことを口に出せる人も、そうではない人もいるけど、みんなそれぞれの想いを抱えて生きてるってことに思いを馳せられました。
Posted by ブクログ
美味しそうな表紙に思わず目が釘付けになってしまいました!
物語の舞台は、和菓子を製造する製菓会社「吉成製菓」。主人公は小松茉子(27歳)、前の職場は人間関係や職場環境に悩まされ退職した経験がある。そんな茉子に、うちの会社に来てほしいとアプローチしたのが親戚の伸吾だった。茉子は「吉成製菓」に勤務することになったが、サービス残業やあからさまなパワハラなど悪しき状況が常態化しているにも関わらず、社長である伸吾は頼りなくパートの亀田さんも我関せず状態…。何とか、現状打破を図りたい茉子が周囲の人々を巻き込みつつ、奮闘する内容です。
今まで読んできた寺地はるなさんの作品とちょっと違う感じかな。でも寺地はるなさんの作品って、結構心に響く言葉が綴られてるんですよね。
「…相手の全部が好きではなくとも、『好き』は成立する…」
「だいじょうぶって訊く時は相手の返事をあんまり信用したらあかんし、だいじょうぶって答えるときは、ほんまにだいじょうぶな時だけにせなあかんらしいです」
茉子が入ることによって、少しずつですがいい感じになってきたという希望を感じられたエンディングでした。「こまどりのうた」をはじめ、和菓子の描写はとっても美味しそうで、ちょっと幸せを感じちゃいました。