小説 - 文藝春秋作品一覧

  • 邪教の子
    3.7
    1巻1,700円 (税込)
    この家はまともな場所ではない。ここは邪教の巣だ。だから私たちは彼女を救い出す。『ぼぎわんが、来る』の気鋭がニュータウンを舞台に描く、戦慄のサスペンススリラー。
  • TOKYO REDUX 下山迷宮
    3.6
    戦後最大の怪事件、「下山事件」。その闇にイギリス作家が挑む未曾有のミステリー大作。 下山国鉄総裁、変死体で発見。おりしも国鉄は、GHQの方針により大規模な人員整理に着手したばかりで、労働組合や左翼分子による犯行が疑われた。 GHQ上層部のウィロビーらの命で捜査を担当することになったGHQ捜査官スウィーニーは、裏社会とのコネを手がかりに占領都市の暗部へと潜ってゆく。総裁の死は他殺か自殺か。警視庁捜査一課と捜査二課が対立し、マスコミや世論も揺れる中、スウィーニーの捜査線上にGHQの謀略機関〈本郷ハウス〉の影が見え隠れし、彼は徐々に戦後の“黒い霧”に呑み込まれてゆく……。 1964年、6月。初のオリンピックを目前にする東京で、下山事件に関する作品の取材を進めていた探偵小説作家・黒田浪漫が失踪した。編集者を名乗る男の依頼で黒田の行方を追うことになったのは元刑事の私立探偵・室田。だが消えた作家の足跡を追ううちに、室田は東京の暗い半面にひそむ黒い黒い迷宮に少しずつ踏み込んでゆく……。 そして1988年、12月。病床に臥せる天皇の容態を憂えて沈む東京に、翻訳家ライケンバックはいた。かつてCIA工作員として日本に派遣され、やがて日本文学の研究者として東京に住むことになったライケンバックのもとに、戦後の忌まわしい事件の亡霊がやってきた。彼の運命を狂わせた下山事件。その亡霊が、今、ここ、昭和の最後の年に。あのとき、占領下の東京で何があったのか――? 犯罪小説史に異形の刻印を黒々と刻む〈東京三部作〉、完結編にして最高傑作の誕生。
  • 永久保存版 「知の巨人」 立花隆のすべて(文春ムック)
    4.0
    【特別保存版】 〇「田中角栄研究――その金脈と人脈」全文掲載 池上彰 徹底解説 NHK入社二年目の私は、その記事をむさぼるように読んだ―― 【THE BEST OF 立花隆】 〇司馬遼太郎×立花隆 「オウム真理教と日本の「悪」」 〇山中伸弥×立花隆 「iPS細胞の未来を語る」 〇僕のがんゲノム解読 〇壮絶な立花式取材の現場で/岡田朋敏 〇東大生たちに語った特別講義 【特別寄稿】「今こそ立花隆を読み返す」 山折哲雄/中野信子/恩田陸/国谷裕子/橋爪大三郎/読書猿/ 瀬名秀明/吉川浩満/徳岡孝夫/片山杜秀/保阪正康 〇「知の巨人」からのメッセージ 「好き嫌いこそすべての始まり」 【連続ロングインタビュー】ぼくはこんな風に生きてきた 〇「橘隆志」が「立花隆」になるまで 聞き手・湯川豊 〇「田中角栄研究」と「日本共産党の研究」 聞き手・小林峻一 〇ロッキード裁判への執着 聞き手・堀鉄蔵 〇なぜ「宇宙」へ、そして「脳」へ 聞き手・中野不二男 〇インターネットの現在と未来 聞き手・野村進 【「立花隆」とはなにか?】 〇野坂昭如 あとは吉永小百合だけ 〇筑紫哲也 まれな種族 〇梅原猛 ソクラテス的意味における哲学者 【「立花隆」いくつもの「顔」】 〇女性週刊誌アンカーマン・立花隆 梨元勝 〇怖そうなひと・立花隆 蜷川真夫 〇文学青年・立花隆 青木克守 【グラビア】 〇知の砦「猫ビル」探検記 〇鬼才の脳を覗く! 〇ある日、こんなところの立花隆 〇立花ゼミ生が送る追悼メッセージ 【未発表草稿「形而上学」発見!】 〇立花隆が書きたかった仕事 緑慎也 〇年譜・全著作リスト
  • 武漢病毒襲来
    4.0
    妻子の待つ武漢へ、新型肺炎が蔓延し封鎖された中国をゆく男の決死行。 中国からの亡命を余儀なくされた作家が放つ渾身のコロナ文学。 本書は2通りの読み方ができます。まず、新型コロナ発生源となった中国で何が起きていたかを描くものとして―― 反骨の亡命文学者が、コロナ禍下の民衆の悲劇と、それを隠蔽する国家の罪を暴く告発の書として。そしてまた、 いち早くコロナ禍に正面から挑んだ現代小説として――封鎖された大地を旅する艾丁を通じて、現在の「中国」が、 スリリングに、ときに大らかに描かれてゆきます。病毒の街・武漢で、艾丁を待ちうける運命とは……。
  • 平成史―昨日の世界のすべて
    3.0
    平成は、1970年に始まっていた――!? 団塊からZ世代まで必読の日本の全貌! 小泉純一郎から安室奈美恵まで――平成育ちによるはじめての決定版平成史が誕生した。気鋭の歴史学者として『中国化する日本』で脚光を浴び、その後、双極性障害による重度のうつの経験をもとにした『知性は死なない』で話題を集めた著者が、「歴史学者としての著す最後の書物」と語る、渾身の一作。昭和天皇崩御から二つの大震災を経て、どんどん先行きが不透明になっていったこの国の三十年間を、政治、経済、思想、文化などあらゆる角度から振り返る。新型コロナウイルスによる政治・社会の機能不全の原因も、「昨日の世界」を知ることで見えてくる。 ◎担当編集者より◎ ★未来のヒントは、すぐそばの過去にある  唐突ですが、クイズです。 ・小泉純一郎、安倍晋三だけがなぜ長期政権に? ・五輪・万博と田中角栄がリバイバルし続ける理由とは? ・中国、韓国は日本を「追い抜いた」のか? ・オンラインでつながっても孤独なのはどうして? ・「Automatic」「Lemon」爆発的ヒット曲の背景 ・『エヴァ』が令和まで完結しなかった理由とは? ……それらの答えをすべて記したのが。本書『平成史―昨日の世界のすべて』となります。
  • 夏物語
    4.4
    大阪の下町で生まれ小説家を目指し上京した夏子。38歳の頃、自分の子どもに会いたいと思い始める。子どもを産むこと、持つことへの周囲の様々な声。そんな中、精子提供で生まれ、本当の父を探す逢沢と出会い心を寄せていく。生命の意味をめぐる真摯な問いを切ない詩情と泣き笑いの筆致で描く、全世界が認める至高の物語。 ※この電子書籍は2019年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • プリンセス刑事
    3.2
    1~3巻719~800円 (税込)
    化学ミステリー「化学探偵 Mr.キュリー」シリーズで人気を博す著者が文春文庫に初登場! 美少女プリンセス×刑事ミステリー! 女王が国を統べる日本というパラレルワールドを舞台に、王位継承権を持つお姫様が刑事となって大活躍! 彼女を支える若手刑事とのバディものとしても楽しめる、とびきりキュートなミステリー。 憧れの刑事になった青年・芦原直人。 同じ課に配属された新人刑事は、なんと王女様!? 美しく気高いプリンセス刑事・白桜院日奈子だった。 直人は、あまりにも立場の違う王女とのコンビに戸惑いながらも、共通の話題を見つけ、また彼女の刑事という職業への真摯な思いに触発され、自らも変わっていく。 ふたりが挑むのは、凶悪な連続殺人犯ヴァンパイア。 ふたりは、さまざまな試練を乗り越え、事件を解決することができるのか――!? ふたりの“バディ”をとりまく、個性豊かな身辺警護役の刑事や、妹思いが過ぎる兄王子、などなど濃いキャラクターにも要注目です!
  • 刺青 痴人の愛 麒麟 春琴抄
    3.0
    美しく驕慢な女に無条件でひれふす男達の姿は宗教的法悦境にあるかのよう。絢爛な文体と鮮やかな風俗描写、小説の神髄に酔いしれる。 ※この電子書籍は1966年4月に文藝春秋より刊行された『現代日本文学館 16 谷崎潤一郎 I 』に収録された作品の文庫版を底本としています。
  • 怪談和尚の京都怪奇譚 幽冥の門篇
    4.0
    大好評シリーズ「怪談和尚の京都怪奇譚」第4弾! 無人島の夜釣りに現れた光。夢で見た絵に描かれていたもの。「私」に付きまとう人影。日常の隙間に怪異は潜む。 三木住職が語る、実話怪談集。
  • 渦 妹背山婦女庭訓 魂結び
    3.9
    江戸時代の大坂・道頓堀。穂積成章は父から近松門左衛門の硯をもらい、浄瑠璃作者・近松半二として歩みだす。だが弟弟子には先を越され、人形遣いからは何度も書き直させられ、それでも書かずにはいられない。物語が生まれる様を圧倒的熱量と義太夫のごとき流麗な語りで描く、直木賞&高校生直木賞受賞作。 ※この電子書籍は2019年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 花ホテル
    4.3
    平岩弓枝さんが円熟期に書いたミステリアス・ロマン。 舞台はフランスのコートダジュール。海をのぞむリゾートホテル「花ホテル」の経営に人生の再出発をかける美貌の女主人・朝日奈杏子と彼女を支える敏腕マネージャー佐々木三樹を主人公にした連作短編小説。 光あふれる南仏を舞台に、華麗で危険なドラマが繰り広げられます。 平岩さんの代表作である『御宿かわせみ』が好きな方なら、絶対にハマる一冊。1983年には山本陽子さん・名高達郎さんの主演でドラマ化されました。 ※この電子書籍は、1983年4月に新潮社より刊行された単行本を新潮文庫で文庫化した作品を二次文庫化した、文春文庫版を底本としています。
  • わたしたちに手を出すな
    3.6
    ハンマーを持って迫りくる殺し屋から逃げる老婦人、孫娘、勇猛な元セクシー女優。 彼女たちの勇気と家族の再生を描く傑作ミステリー。 私、人を殺してしまった。言い寄ってきた老人を灰皿で殴り倒した未亡人リナは、男を残して娘の家へ駆け込んだ。 だが、そこにハンマーを持つ殺し屋が襲撃してきた。娘の愛人がマフィアの金を強奪したというのだ! 元ポルノ女優と孫娘も道連れにリナの逃避行が始まる。女たちの絆を描いて絶賛を受けたミステリー。
  • 公爵家の娘 岩倉靖子とある時代
    4.0
    昭和8年、一斉検挙・起訴された「赤化華族」のなかに岩倉具視の曾孫がいた――。出自と時代に翻弄された少女の哀しい運命を追う。 ※この電子書籍は1991年7月にリブロポートより刊行された単行本、および2000年10月に中央公論新社より刊行された文庫本を底本とした文春文庫版です。
  • 後列のひと 無名人の戦後史
    3.6
    最前列ではなく後ろの列の目立たぬところで人や組織を支えてきた人々の物語。良く生きた人生の底にはその人だけの非凡な歴史がある。
  • 西の果てのミミック
    4.0
    1巻1,599円 (税込)
    【電子書籍特典付き/電子書籍には書き下ろしショートショートを収録】 ミュージシャンとして活躍する渡會将士(わたらい・まさし)氏の初となる小説作品。 主人公が訪れた長崎県で、奇妙な女性と出会い、不思議な出来事に遭遇するエンターテインメント小説。 ある夜「僕」は長崎港でずぶ濡れの女と出会う。 女は美しく、その瞳は井戸の底のように暗かった。 和、中華、オランダの文化が入り乱れる長崎を舞台に、オールドムービー、歴史、オカルト、グルメがちゃんぽんになって、 物語は奇妙なキメラへと姿を変えてゆく。 200曲以上の詞を世に送り出してきたミュージシャンの鮮烈作家デビュー作!!
  • 最終結論「発酵食品」の奇跡
    3.0
    言わずと知れた「発酵仮面」こと小泉武夫先生による「くさうま(臭くて美味い)」の決定版。今回は実際に小泉先生が発酵の現場に足を運んで、思わず仰天した「奇跡の発酵食品」の中から絞りに絞った17品目を紹介します。小泉先生がその食品といかにして出会ったか、からスタートする各章は、紀行文としての魅力もたっぷり。日本国内はもとより、中国の奥地にまで出かけていきます。また、出かけた先で出会った人たちも、一癖も二癖もある魅力的な人物でした。  小泉先生が初めて出会った青森の果物の熟ずし、古文書で見つけた紙を発酵させた「紙餅」など、聞いたことがない発酵食品から、「100人がそれを食べたら、98人が気絶寸前、2人が死亡寸前になる」韓国のホンオ・フェ(エイの刺身)や、「風上で缶を開けると風下の人が気絶する」という北欧のシュールストレンミング(イワシの缶詰)など、悶絶級のものまで、いやはや読んでいるだけで臭い。それでいて、美味しそうだから不思議だ。  小泉節満載の本書は、発酵のうんちくもたっぷりあって、勉強にもなる。「口噛み酒」とは「こめかみ」の語源になった発酵で、古代、麹菌がまだ知られていなかった頃、若い巫女さんが、ごはんを口に入れ、ぐちゃぐちゃになるまで30回ほど噛んで、それを壺にぺっと吐き出す。これを貯めておくと、自然に発酵して、数週間でアルコール度数が9度以上(ビールくらい)の酒になる。小泉先生は自分の研究室で、これを実際に試してみた。伝統に則って噛むのは4人の女子大生。こめかみをしびれさせながらも、見事に古代のお酒が蘇った。
  • Phantom
    3.5
    1巻1,400円 (税込)
    外資系食料品メーカーの事務職として働く元地下アイドルの華美は、 生活費を切り詰め株に投資することで、 給与収入と同じ配当を生む分身(システム)の構築を目論んでいる。 恋人の直幸は「使わないお金は死んでいる」と華美を笑うが、 とある人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめり込んでゆく。 そのアップデートされた物々交換の世界は、 マネーゲームに明け暮れる現代の金融システムを乗り越えゆくのだ、と。 やがて会員たちと集団生活を始めた直幸を取り戻すべく、 華美は《分身》の力を使おうとするのだが……。 金に近づけば、死に近づく。 高度に発達した資本主義、その欠陥を衝くように生まれる新たな幻影。 羽田圭介の新たな代表作。
  • トライアングル・ビーチ
    4.0
    スタイリストの実香子は、 カメラマンの早瀬との長年の愛人関係に倦んでいた。 広告の撮影で訪れた沖縄で、実香子は早瀬に怒鳴られる若いアシスタント・浩を見る。 その晩、実香子は早瀬に誘われて部屋を訪れるが、隣は浩の部屋で――(表題作)。 くすぶる女たちの官能を生々しく描く、著者初期の傑作短篇集。 解説・内藤麻里子 若さゆえの性の喜び、 熟し始めた性の馴れ合いに 思わずため息をついてしまう(解説より) triangle beach 底知れぬ女たちの欲望 男を奪おうとしている、 あの若い女を殺したい その言葉を聞きさえすれば、 もう彼には用はない 自分にできることは、 セックスでねじ伏せること 酔いと夢心地の中で 行われたから罪悪感はない ※この電子書籍は1991年12月に文藝春秋より刊行された文春文庫『短篇集 少々官能的に』を改題した新装版を底本としています。
  • 穴あきエフの初恋祭り
    3.7
    近づいたかと思えば遠ざかり、遠ざかると近づきたくなる、意識した瞬間にするりと逃げてしまうもの――。 十年ぶりに再訪したはずの日本(「胡蝶、カリフォルニアに舞う」)、重ねたはずの手紙のやりとり(「文通」)、何千何万年も共存してきたはずの寄生虫(「鼻の虫」)、交換不可能な私とあなた(「ミス転換の不思議な赤」)。 ドイツと日本の間で国と言語の境界を行き来しながら物語を紡ぎ、『献灯使』で全米図書賞(翻訳部門賞)を受賞するなど、ますます国際的な注目が集まる言語派作家・多和田葉子さん。「移動を続けること」が創作の原動力と語る著者が、加速する時代の速度に飲み込まれるように、抗うように生まれた想像力が鮮烈なイメージを残す7つの短篇集。 ※この電子書籍は2018年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 百花
    3.8
    「あなたは誰?」 徐々に息子の泉を忘れていく母と、母との思い出を蘇らせていく泉。 ふたりで生きてきた親子には、忘れることのできない“事件”があった。 泉は思い出す。かつて「母を一度、失った」ことを。 母の記憶が消えゆく中、泉は封印された過去に手を伸ばす──。 記憶という謎<ミステリー>に挑む新たな傑作の誕生。 「あなたはきっと忘れるわ。 だけどそれでいいと私は思う」 「また母が、遠くに行ってしまいそうな気がした。 あの時のように」 ……あの一年間のことは、決して誰にも知られてはいけなかった。 『君の名は。』『天気の子』を生んだ稀代の名プロデューサーにして、 小説『四月になれば彼女は』『世界から猫が消えたなら』で 作家としても大きな衝撃を与えてきた川村元気。 各界からも反響が続々! ◆息子と母の切ない思いに、胸が熱くなりました。──吉永小百合 ◆深い感動のうちに読了した。  ぼく自身の母親の思い出と重なり、他人事ではなかったのだ。──山田洋次 涙が止まらない──現代に新たな光を投げかける、愛と記憶の物語。 解説は『長いお別れ』の中島京子さんです。 ※この電子書籍は2019年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 太陽と毒ぐも
    4.1
    「角田光代の隠れた傑作」といわれる、 不完全な恋人たちの、キュートでちょっと毒のある11のラブストーリー。 リョウちゃんは、あたしのたいせつな恋人は、 あたしの前で口を開いた洞窟なのだ。 そうしてあたしは未だその入り口で立ちすくみ、 その一番奥に何があるのか見極めるための 一歩を踏み出せないでいる。   ──「お買いもの」より ハッピーエンドから始まる恋人たちの幸せな日常。 どこにでもいるようで、でもちょっとクセのある11組の恋人たち。 買い物依存症、風呂嫌い、万引き常習犯、迷信好き……。 この恋愛短篇集は、極端な恋人たちを描きながらも、 いつしか、読む者の心の奥に眠らせていた記憶を呼び覚ます。 文句なしの面白さと怖さに震える、長年偏愛されてきた傑作です。 「だが、だからこそ、物語が進むにつれて、そのおかしさが物悲しさへと変わっていく。 どうして、この人は、このままで許してもらえないのだろう。 どうして、最初は許されていたものが、許されなくなってしまうんだろう。(中略) 相手の中の「どうしても許せない部分」が、自分の過去、コンプレックス、傷、そしてそれらに飲み込まれずに生き続けるためにまとってきたたくさんの鎧と関係していることに気づいていくのだ。 作中で「裸んぼで暮らせたら問題なかったんだろうな」という言葉が出てくるが、この物語たちは、裸んぼではいられない、過去を、痛みを、コンプレックスを、すがるものを切り離せずに着膨れながら生きていくしかない人間のかなしみを見つめた作品なのだ」(解説より 芦沢央) ※この電子書籍は2007年6月に文藝春秋より刊行された文庫の新装版を底本としています。
  • 彼方のゴールド
    4.0
    1巻850円 (税込)
    老舗出版社「千石社」で営業部から総合スポーツ誌に異動になった目黒明日香、26歳。勝ち負けにこだわるスポーツへの苦手意識が強かったが、仕事は次から次へとやってくる。野球にバスケットボール、水泳、陸上……ライターやカメラマンとともにアスリートの努力と裏側を取材するうちに、スポーツの魅力と、伝える仕事の面白さを知っていく。 解説・大矢博子。 ※この電子書籍は2019年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 遺言 野村克也が最期の1年に語ったこと
    4.5
    2020年2月に亡くなった、名将・野村克也氏。 著者は元サンケイ・スポーツの記者で、ヤクルト時代に野村監督を担当。その縁で交流が続き、 沙知代夫人が亡くなった後のおよそ1年間、野村氏の“最後の話し相手”となった。 ノムさん晩年の語録── 「沙知代には『オレより先に逝くなよ』と言い過ぎたのかな……」 「長嶋より先には死ねん! これまでずっと長嶋には負けたくないと思って生きてきたんだから。やっぱり最期も、長嶋より後がいい」 「銀座のクラブで一緒に飲んだとき『王に抜かれる』と思った」 「監督になるなんて、思ったこともなかった。おふくろに連絡を入れたら、“おまえ、引き受けちゃダメだよ。そんな大役、おまえにできるわけがない”って止められた。身内からも期待されていなかったんだ。大学出じゃない。派閥もない。人望もないしな」 「父親を早くに亡くしたから、どういう父親になればいいか、さっぱり分からなくて、不安やった。いつも自信がなかった。 “ふつうの父親というのはこういうものだ”ということが、心でわからんのや。やってもらったことがないから。 自分の中に“父親とはこうあるべき”という柱がない。克則にとっていい父親だったか、わからんな。いまでも」 「東京五輪の監督は、ワシではダメなのか?」 「克則監督の胴上げを見て、ぽっくり死にたい」 長嶋との久々の、そして最後の握手、 伊藤智仁、川崎憲次郎ら“教え子”との同窓会、 そして野村は、死のおよそ1年前、前妻との間の息子と克則を引き合わせていた……。 野村克也が、他の誰にも語らなかった「本音」であり、「遺言」である――
  • 枝の家
    -
    1巻1,800円 (税込)
    老夫婦が暮らす郊外の平凡な家にふと現れる、怪しきものの影――「老い」や「記憶」をテーマにしながら、リアリズム小説でもあり幻想譚でもあるような文学の深みを覗かせる。練達の技で磨き上げられた八編の小宇宙。
  • 彼岸花が咲く島
    3.8
    1巻1,800円 (税込)
    その島では〈ニホン語〉と〈女語〉が話されていた 記憶を失くした少女が流れ着いたのは、ノロが統治し、男女が違う言葉を学ぶ島だった――。不思議な世界、読む愉楽に満ちた中編小説。
  • 零の晩夏
    4.2
    1巻1,800円 (税込)
    岩井俊二が描く、生と死の輪郭線。 モデルが例外なく死に至るという“死神”の異名を持つ謎の絵師ナユタ。その作品の裏側にある禁断の世界とは。渾身の美術ミステリー。
  • ナインストーリーズ
    3.3
    満足? 後悔? 愉悦? 絶望?  人生の黄昏を迎えるとき、人は自らの来し方をどう捉えるでしょうか。 長く別居して年一回の対面を重ねる夫婦、 定年間近の独身男の婚活、 還暦過ぎの女友達二人、 かつて交際していたアイドル歌手同士の再会……。 乙川さんの新作は、誰の身にも起こり得る人生模様を端正な文章で紡ぎます。 時代小説から現代に小説の舞台を移してからも大佛次郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞、島清恋愛文学賞など数々の評価を得ている筆者による9つの物語。
  • 戦前昭和の猟奇事件
    3.0
    大正から昭和に入るころ、犯罪は現代と比べてひとつひとつが強烈な存在感を放っていました。新聞や雑誌が競い合って報道し、読者もこぞって読み漁る――。 本書では、その発端ともいえる、「鬼熊事件」(一九二六年)を皮切りにして、合わせて9つの事件とその報道の顛末を紹介します。 ◎鬼熊事件 激動の昭和に入る直前。千葉の農村で七人を死傷し、四十日間もの間逃走した事件があった。犯人の鬼熊は、一躍メディアのスターに。 ◎岩の坂もらい子殺し(1930年) 東京板橋の貧しい人々の町で、赤ちゃんを育てられない親から「養育金」を貰い、殺していた事件。記者と警察の思惑が絡み合い「大事件」報道化。 ◎天国に結ぶ恋(1932年) 華族家の大学生と旧家の令嬢の心中事件が、女性の遺体盗難という猟奇的展開と相まって話題に。「二人の恋は清かった」と空前のブームになった。 ◎翠川秋子の心中(1935年)。 日本初の女性アナウンサー翠川秋子。夫に先立たれながらも、働いて子どもを成人まで見届けた女性が選んだのは、家出と十数歳下の男性との入水自殺。彼女を追う記者たちの「働く女性への偏見」が炸裂。 ◎日大生保険金殺人(1935年)。 実父の院長とその妻、娘が共謀して、放蕩息子の日大生を殺害。狙いは、彼にかけられた現在の一億円相当の生命保険金。当時はめずらしかった「保険金殺人」だった。当時の警視庁刑事部長も「前代未聞の犯罪」と唸る。 ほか◎阿部定事件(1936年)◎津山三十人殺し(1938年)◎チフス菌饅頭事件(1939年)◎父島人肉食事件(1945年)など有名事件を紹介。
  • ハダカの東京都庁
    3.6
    1巻1,400円 (税込)
    ・小池都知事の会見で指名されるのは、お気に入りの記者ばかり ・小池都知事が執務室で最も熱心なのは、ワイドショーのチェック ・「再就職」という名の天下りの実態 ・謝罪会見のお辞儀の静止時間と角度は決められていた! ・都庁職員はネット見合いで大人気! ・家庭持ちの男女、管理職同士の不倫が横行 ・東京都庁の所有不動産は、実は一等地ばかりだった…… ・(株)はとバス、(株)東京メトロ……優良企業ばかりの「都庁ホールディングス」 ・粛清人事、密告奨励、隠浪費……「女帝」の大罪 東京都庁に30年以上勤め、知事のスピーチライター、人事課長を務めた元幹部が、 実際に見て聞いた、その驚くべき内幕。 鈴木、青島、石原、猪瀬、舛添、小池……歴代都知事の人物評付き!
  • ウディ・アレン追放
    4.0
    突然降ってわいたように起こったスキャンダルは、まるでギリシャ神話のような家族の悲劇だった――。 かつては「ウディの映画に出演すればオスカーを獲れる」とまで言われ、ニューヨークを象徴する文化人のアイコンとして名声をほしいままにしたウディ・アレン。 ハーベイ・ワインスタインのセクハラ暴露をきっかけに世界中に広がる#MeToo運動で、またもやハリウッドを干されている。 四半世紀前に勃発した、元交際相手ミア・ファローの養女への性的虐待のスキャンダルは、法廷闘争にまで発展し、いまもなおミア側との間で泥沼の様相を呈している。 ミア・ファローや養女のディラン、ウデイの実の息子であるローナン・ファロー、当時のベビーシッター、ミアの養女でウディの現在の妻スンニたちの証言や記録をもとに、 在米20年、ハリウッドを見続けた著者が公正な視点で虐待があったのかどうかその謎に迫る。 永遠に本人にしか分からない謎に、当時の記録をもとに公正に迫る。
  • 星影さやかに
    4.0
    1巻1,700円 (税込)
    ★〈マカン・マラン〉著者が描く感動の家族小説 戦時中、近所から「非国民」と呼ばれる父親を恥じ、 立派な軍国少年となるべく日々を過ごしていた良彦。 それから終戦を経て約20年後、 良彦の元に父の遺品の日記が届く。 なぜ父は心を病み、非国民と呼ばれたのか―― 本当に正しかったのは誰だったのか―― そして、良彦の家にまつわる数奇な運命とは―― 激動の昭和を生きた親子三代の記憶が紐解かれる。
  • 堤清二 罪と業最後の「告白」
    3.6
    第47回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞作。月刊「文藝春秋」の連載『堤清二の「肉声」』に大幅に加筆したもので、セゾングループの総帥だった堤清二氏が死の一年前、父・康次郎氏そして弟の義明氏との関係をじっくり振り返った一族の物語です。 清二氏が、著者の児玉さんに10時間以上も語った堤家の物語は、愛憎と確執に満ちた肉親相食む世界でした。 康次郎氏は西武グループの礎を築いた実業家であると同時に、強引な手法で「ピストル堤」の異名をとり、異常な好色でも知られていました。清二氏ら七人の兄弟姉妹の母親だけで四人、そのうち二人とは入籍をしませんでした。関係を持った女性はお手伝いから看護士まで相手選ばず、清二氏の母・操さんの姉妹とも関係を持ちそれを操さんも承知していたといいます。その異常な環境で、清二氏・義明氏兄弟は静かな“狂気”を身の内に育まざるをえませんでした。 フォーブス誌の世界長者番付で世界一位に輝いた義明氏と、セゾン文化で一世を風靡した清二氏は、一転して凋落し、軌を一にするように堤家も衰退の一途を辿ります。 西武王国について書かれた本は数多くありますが、清二氏が初めて明かした一族の内幕は、堤家崩壊の歴史であると同時に、悲しい愛と怨念の物語であり、どうしようもない定めに向き合わなければならなかった堤家の人々の壮大な物語です。 ※この電子書籍は2016年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 神様の罠
    3.6
    人気作家6人の豪華すぎるアンソロジー! ミステリー界をリードする作家による、珠玉の「罠」。 好きな作家を指名買いの方も、新たなお気に入り作家を探す方も納得の一冊です。 「夫の余命」乾くるみ 「崖の下」米澤穂信 「投了図」芦沢央 「孤独な容疑者」大山誠一郎 「推理研VSパズル研」有栖川有栖 「2020年のロマンス詐欺」辻村深月
  • 立ち上がれ、何度でも
    4.0
    1巻880円 (税込)
    「強さ」を求める二人の熱き青春小説! 小学校でのいじめを経て成長した二人はプロレスのリングに上がる。天性のスターか不遇のヒーローか。想いを乗せたゴングが鳴る。 ※この電子書籍は2018年8月に文藝春秋より刊行された単行本『ストロング・スタイル』を加筆・改題した文庫版を底本としています。
  • 泥濘
    4.5
    「疫病神」の最強バディ、凶弾に倒れる! 桑原・二宮コンビの新たな標的はワルの警察OB。「週刊文春」連載で警察の腐敗に斬り込み大反響を呼んだ『疫病神シリーズ』第七弾! ※この電子書籍は2018年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 世界を変えた14の密約
    4.3
    私たちの過去、現在、そして未来はすべて企業が決めていた! イギリスを代表するジャーナリストが世界のタブーを徹底追及。英BBCが番組化し大反響! 日本では単行本刊行当時、「林先生の初耳学」(TBS系)で紹介され、話題になった書の文庫化。 【現金の消滅】 1998年、スタンフォード大学。のちのペイパル創業者達が出会い、始まった。 【熾烈な格差】 2009年、中間層消滅を予言した銀行家。富裕層OR貧困層ビジネスへと舵が切られた。 【ダイエット基準】 ダイエット関連業界の儲けのために、BMIを27から25に引き下げ、肥満人口を増やす。 【買い替え強制の罠】 1932年、電球の寿命が6カ月に決められる。アップル製品のバッテリー問題も。 【フェイクニュースの氾濫】 1981年、マードックとサッチャーが取引。有名メディアが買い取られる。 ほかにも、【投機リスク】【租税回避のカラクリ】【薬漬け】【改革されない働き方】【新自由主義の誕生】【企業の政府支配】【AIに酷使される未来】【知性の取引】【21世紀のインフラ】にまつわる密約など。 解説・佐藤優  ※この電子書籍は2018年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 特攻 最後の証言
    4.7
    人間爆弾「桜花」、人間魚雷「回天」、陸軍水上艇「マルレ」、海軍特攻艇「震洋」、水中特攻「伏龍」、零戦、艦攻、襲撃機……。いずれも異なる兵器で彼らが目指したのは「自死」だった。昭和戦中史の一大悲劇として語られる「特攻」に志願し、生き延びた人たちに戦後生まれの若者がインタビューを試みる。果たして特攻に強制はあったのか、命を賭してまで守りたかったものは何か。いずれの証言も深く胸をうつ。戦争を知らない読者のために詳細な注と、写真・図版を収録。特攻を知る上で不可欠の一冊。
  • 最終飛行
    3.8
    1巻2,200円 (税込)
    世界中的ベストセラー『星の王子さま』の作者サン=テグジュペリ。 彼は作家であると同時に、飛行機乗りでもあった。 純粋で、かつ行動的なサン=テグジュペリは、ナチスドイツ占領下でドゥ・ゴール派とヴィシー派の政治抗争に巻き込まれる。 苦渋の選択の末に渡ったアメリカで書き上げたのが、自身唯一の子ども向け作品『星の王子さま』だった。 そして、念願の戦線復帰が叶い、ナチスドイツとの戦闘に復帰。危険な偵察飛行を繰り返し――。 破天荒な愛に、かけがいのない友情。困難な時代に理想を求めて葛藤する姿。 サン=テグジュペリの半生を精彩豊かに描く長編小説。
  • シェフたちのコロナ禍 道なき道をゆく三十四人の記録
    4.2
    コロナ禍で苦境に置かれた飲食業界。 補償なき自主休業か、儲けの出ない営業か、 それとも他に道はあるのだろうか。 レストランやお店を続けることはできるのか。 料理人であり、スタッフを抱えるリーダーでもある シェフたちの心は揺れに揺れた。 2020年春の緊急事態宣言、そして冬の感染再拡大を前に シェフたちは何を思い、どう動いたのか。 そして「これから」のお店の舵取りは。 フランス料理のグランメゾン、 横丁の老舗にオフィス街の新店――。 刻々と変わりゆく状況下、 シェフたちへの取材をライフワークとする著者が、 願いを込めて書きとめた34人の言葉の記録。
  • 平成くん、さようなら
    3.8
    社会学者・古市憲寿、初小説。 安楽死が合法化された現代日本のパラレルワールドを舞台に、平成という時代と、いまを生きることの意味を問い直す、意欲作! 平成を象徴する人物としてメディアに取り上げられ、現代的な生活を送る「平成くん」は合理的でクール、性的な接触を好まない。だがある日突然、平成の終わりと共に安楽死をしたいと恋人の愛に告げる。 愛はそれを受け入れられないまま、二人は日常の営みを通して、いまの時代に生きていること、死ぬことの意味を問い直していく。 なぜ平成くんは死にたいと思ったのか。そして、時代の終わりと共に、平成くんが出した答えとは――。 『絶望の国の幸福な若者たち』『保育園義務教育化』などで若者の視点から現代日本について考えてきた著者が、軽やかに、鋭く「平成」を抉る! ※この電子書籍は2018年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 正しい女たち
    3.6
    1巻690円 (税込)
    容姿や年齢、結婚、セックス、お金とプライド… 本音の見えづらい関心事を正しい姿という共通のモチーフで鮮やかに切り取る短編集。 不倫に悩む親友にわたしがしたこと(「温室の友情」)、 同じマンションに住む女に惹きつけられる男(「偽物のセックス」)、 残り少ない日を過ごす夫婦の姿(「幸福な離婚」)――。 偏見や差別、セックス、結婚、プライド、老いなど、 口にせずとも誰もが気になる最大の関心事を、正しさをモチーフに鮮やかに描く短編集。 解説・桐野夏生 ※この電子書籍は2018年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • うつくしい子ども
    4.2
    14歳の兄は、それでもこの世界をあきらめなかった 裏山で見つかった、9歳の少女の惨殺体。“犯人”は、まだ13歳のぼくの弟だった。絶望と痛みの先に、少年が辿りつく真実とは――。 ※この電子書籍は2001年12月に文藝春秋より刊行された文春文庫の新装版です。
  • 柘榴パズル
    3.7
    「この夏が、永遠に続けばいいのに」。 とぼけたお祖父ちゃん、明るいお母さん、クールなお兄ちゃん、甘ったれの妹。 十九歳の美緒を囲む、仲のいい家族の日常。 身近で起こる奇妙な事件は、山田家の皆が力を合わせて謎を解く。 そんな一家に、怪しい影が忍び寄り――。 ある家族のひと夏を描いたミステリー連作短編集。 解説・千街晶之 ※この電子書籍は2015年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 新・AV時代 全裸監督後の世界
    5.0
    ドラマ「全裸監督」の土壌はここにある! 90年代のAV業界に革命を起こしたSODの高橋がなりなど、社会の良識から逸脱し破天荒な試みをする人々を濃密に描き出した傑作。
  • 白墨人形
    4.0
    スティーヴン・キング強力推薦! 少年時代の美しい思い出と、そこに隠された忌まわしい秘密。 最終ページに待ち受けるおそるべき真相。 世界36か国で刊行決定、叙情とたくらみに満ちた新鋭の傑作サスペンス。 あの日、僕たちが見つけた死体。はじまりは何だったのか。僕たちにもわからない。みんなで遊園地に出かけ、 悲惨な事故を目撃したときか。白墨のように真っ白なハローラン先生が町にやってきたときか。 それとも僕たちがチョークで描いた人形の絵で秘密のやりとりをはじめたときか――。 あの夏。僕には四人の友達がいた。太り気味のギャヴ、不良を兄に持つミッキー、シングルマザーの息子ホッポ、そして牧師の娘ニッキー。 不良たちに襲撃されることも、僕がニッキーへの恋に胸を焦がすこともあったが、この日々が終わるなんて考えもしなかった。 でも町では不和が広がりはじめていたのだ。僕の母の診療所への反対運動をニッキーの父が煽り、 ミッキーの兄に悲劇が降りかかり、少女の妊娠騒ぎが起こる。大人たちにも、僕たちのあいだにもヒビが入りはじめた。 そして、あの子が殺された。森で。バラバラになって。見つけたのは僕たちだった。でも、頭部は見つからないままだ。 30年が経った現在。白墨人形の絵とともに、あの事件が甦る。あの人が死んだことで、事件は解決したはずなのに。 20年ぶりに帰郷したミッキーは言った。「おれは真犯人を知ってる」。僕は友人たちとともに、あの夏の秘密を探りはじめる……。 第2作『アニーはどこにいった』も絶賛発売中! ※この電子書籍は2018年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 六月の雪
    3.9
    1巻1,100円 (税込)
    夢破れた30代の将来への不安、認知症がはじまった本人と周囲の驚愕。 いまの日本の現代的なテーマと、台湾と日本との現代史がからみ合う、乃南アサ台湾ものの決定版! 30代前半、独身の杉山未來は、声優になるという夢に破れ、父母、妹、弟と離れ、祖母・朋子と東京でおだやかな二人暮らし。 ある日、祖母の骨折・入院を機に、未來は祖母が台湾うまれであることを知る。 彼女を元気づけるため、未來は祖母ゆかりの地を訪ねようと台湾へと旅立つ。 ところが戦前の祖母の記憶はあいまいで手掛かりが見つからない。 そこで出合ったのはひと癖もふた癖もある台湾の人たち。 台湾が日本の植民地であったこともぼんやりとしか知らない未來は、中国国民党に蹂躙された台湾の人々の涙を初めて知る。 いっぽう、朋子は認知症を発病し、みずからの衰えに言いようのない恐怖を覚えていた。 それに追い打ちをかける、朋子の遺産目当ての実の娘、真純(ますみ)の突然の出現……。 未來は祖母のふるさとに辿りつくことができるのか。 朋子の衰えに、未來は間に合うのか。そして長い旅路の果てに、未來が下した重大な決断とは……。 『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』と続く著者の台湾ものの、決定版とも言うべき感動巨篇。 ※この電子書籍は2018年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 英文学教授が教えたがる名作の英語
    5.0
    フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、ポー、村上春樹―― 「黄金の抜粋」で出会う本物の英語! カンタンな英文だけでは、英語を操るための「体幹」が身につきません。 歯ごたえたっぷりの名作には、英語的感覚を身につけるためのお役立ちヒントがたっぷり。 時代背景や小説のルールなど丁寧に解説し、和訳、語注や文法の説明も充実。読むための入り口までご案内します。昔から気になっていたけど、なかなか手に取れなかったという有名作品の原文をこの機会に是非。 読んでみると、やっぱりおもしろい! おかしい! 怖い! おもしろくて読む英語は、次のステップにつながります。読まずにいるのはもったいない。 東京大学英文学教授による、英米文学講義。 『老人と海』、 『高慢と偏見』、 「黒猫」、 『ガリヴァー旅行記』、 『ロビンソン・クルーソー』…… 「本物の英語」を読む! これがあのガリヴァーですか。 ロビンソン・クルーソーはこんな人でしたか。 『高慢と偏見』の恋愛術がすごい。 「黒猫」、キモチ悪い。 百聞は一見にしかず。 気になるあの名作に、なまの目で触れてみてください。 ――この本は、もっと英語を読めるようになりたいという人に、おすすめの入口を提供する本です。(「はじめに」より)
  • 八咫烏シリーズ外伝 きんかんをにる
    4.5
    ※こちらの電子書籍は2021年4月26日発売の単行本『烏百花 白百合の章』に収録している全8篇のうち、8番目の短篇を電子化したものです。 奈月彦と浜木綿の娘である紫苑の宮は、内親王という立場ながら自由な環境で暮らしている。奈月彦は、紫苑の宮に干し金柑の作り方を教えながら、幼い娘の幸せを祈る。だが一方で、ある予感を抱くのだった。
  • 八咫烏シリーズ外伝 かれのおとない
    4.0
    ※こちらの電子書籍は2021年4月26日発売の単行本『烏百花 白百合の章』に収録している全8篇のうち、1番目の短篇を電子化したものです。 北領の平民の家に生まれたみよしは、面倒見がよくいつも優しい一番上の兄・茂丸を慕っていた。山内衆になるため勁草院に入峰した茂丸は、そこで仲良くなった雪哉を家に連れてくる。貴族出身だがまったく気取ることなく自分や村の子ども達に接する雪哉に、いつしかみよしは心惹かれていくのだった。 だが、山内を大きな地震が襲い、山内衆となった茂丸は若宮の護衛中に死んでしまい――。
  • 八咫烏シリーズ外伝 おにびさく
    -
    ※こちらの電子書籍は2021年4月26日発売の単行本『烏百花 白百合の章』に収録している全8篇のうち、5番目の短篇を電子化したものです。 山内の工芸全般を担う西領では、あらゆる分野の職人が切磋琢磨しながら生活している。 登喜司(ときじ)もその一人。彼は死別した父の跡を継いで、貴族の必需品である「鬼火灯籠」を生業としていた。 西家の「お抱え」職人だった父との力量の差を痛感し、将来に悩む日々。そんな矢先、皇后・大紫の御前が美しい飾り灯籠を所望していることを知り――。
  • 八咫烏シリーズ外伝 ちはやのだんまり
    -
    ※こちらの電子書籍は2021年4月26日発売の単行本『烏百花 白百合の章』に収録している全8篇のうち、3番目の短篇を電子化したものです。 西家の御曹司として生まれた明留(あける)と、その親友で優秀な近衛・千早(ちはや)の前に現れた、粗末な衣を着た薄汚い若者。名前はシン。 なんと千早の最愛の妹・結が、この若者との交際を認めてほしいという。日頃から無口な千早の代わりに、明留は率先して話を聞こうとするのだが、ぶっきらぼうな態度のシンへの印象は悪くなる一方。慌てる明留の傍ら、肝心の千早は「だんまり」を決め込むばかりで……。
  • 八咫烏シリーズ外伝 はるのとこやみ
    -
    ※こちらの電子書籍は2021年4月26日発売の単行本『烏百花 白百合の章』に収録している全8篇のうち、7番目の短篇を電子化したものです。 楽才を重んじる東領出身の双子・伶と倫。貴族たちから蔑まれる身分でありながら、大貴族・東家で楽人見習いとして「竜笛」の練習に励んでいた。 いつか宮中に上がることを夢見る二人だが、短気な伶とおおらかな倫の間には、圧倒的な音の差があった。伶は出来の良い弟に内心嫉妬するが、ある時、長琴を見事に奏じて東本家の養女に迎えられた、浮雲と出会ってから倫の様子がおかしくなり……?
  • 八咫烏シリーズ外伝 なつのゆうばえ
    -
    ※こちらの電子書籍は2021年4月26日発売の単行本『烏百花 白百合の章』に収録している全8篇のうち、6番目の短篇を電子化したものです。 山内の地を四分して統治する四家がひとつ、南家。その当主の娘として生まれた夕蝉は、宗家の若宮に輿入れし皇后となるべく、幼少から厳しい教育をほどこされてきた。しかし、対面した若宮には威厳が感じられず、さらには権力争いによって両親までも喪ってしまい――。第1巻「烏に単は似合わない」以前、あの主要人物の過去が掘り下げられる。
  • 八咫烏シリーズ外伝 ふゆのことら
    -
    ※こちらの電子書籍は2021年4月26日発売の単行本『烏百花 白百合の章』に収録している全8篇のうち、2番目の短篇を電子化したものです。 北領風巻郷の郷長一族の末っ子・市柳は、「風巻の虎」と名乗り、同じような年頃の郷民と徒党を組んで遊びまわっていた。将来を決めかねる市柳だったが、立場も年齢も似ている垂氷郷の雪哉が、若宮の側仕えになると聞いて複雑な心境に。そのような中、北領の少年達が一堂に会する武術大会が開催される。第四巻「空棺の烏」で触れられた、市柳と雪哉の因縁をひもとくエピソード。
  • 八咫烏シリーズ外伝 あきのあやぎぬ
    -
    ※こちらの電子書籍は2021年4月26日発売の単行本『烏百花 白百合の章』に収録している全8篇のうち、4番目の短篇を電子化したものです。 亡くなった夫に借金が発覚し、二人の幼子を抱えて困窮する環。そんな彼女に「私のところに来るかい?」と声をかけたのは、西本家の次期当主である顕彦だった。言動からは軽薄な印象が漂い、さらには「十八人の妻がいる」という顕彦だが、環は生活のため側室入りを決意する。第一巻「烏に単は似合わない」以前のエピソード。
  • 質問する力
    4.1
    質問することから全てが始まる! 国のいいなりに自分の人生を過ごすのか。それとも自分で理論だてて考えて充実した人生を送るのか。 盛田昭夫氏など政財界有名人のエピソードを交えながら、1985年以降の世界情勢の変化、年金、郵政民営化、日本の教育など諸問題を鋭い視点でとらえ「質問する力」こそが人生やビジネスにとって最大の武器になると説く。
  • 誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち
    5.0
    1巻1,599円 (税込)
    40ヵ国、100種以上の動物と出会った名物TVマンの初の著書! ブラジル南部の町ラグーナでは、7月になるとボラ漁が盛んとなる。 それに協力するのがイルカである。イルカからの合図にあわせて網を投げることで、ボラを獲ることができるのだ。 このイルカたちは餌付けされたものではなく、正真正銘、野生のものである。 しかも、この協力関係は昨日今日、はじまったものではなく、イルカの間で何世代にもわたって受け継がれているという。 またコペラ・アーノルディという南米アマゾンに棲む熱帯魚は、マニアの間では超有名な存在だ。 なんと、水中ではなく、10センチほど飛び上がって、空中の葉っぱに産卵するからだ。 これだけなら、外敵から卵を守るための進化だと解釈できるが、この魚の最も特徴的なところは、葉っぱに産み付けた卵に、水を掛け続けることだ。 空中にあれば卵が乾いてしまうことを、この魚はいかにして理解したのだろうか? ほかに――。 10年ほど前から、毎年夏に世界中のジンベエザメがカリブ海のユカタン半島沖に大集結すようになったのはなぜか? オオアリクイは“哺乳類きっての変わりもの”と言われている。 体の大きさに比して頭がとても小さく、歯が1本もなく、舌が体長の半分もあり、体温が極めて低いなど、ほかの哺乳類との違いが際立っているからだ。 独特の進化を遂げた理由はなにか? イチジクが一年中花をつけることを可能にするオランウータンとコバチの働き。 子育てをするアマゾンの古代魚ピラルクー……。 本書では、「ダーウィンが来た!」「NHKスペシャル」などを手がけた、NHKの自然番組名物ディレクターが、世にも不思議な動物たちの生態を紹介する。
  • 古木巡礼
    5.0
    1巻2,000円 (税込)
    「古木たちのささやきが聞こえますか?」 倉本聰さんが多忙な日々の傍ら、 ライフワークとして描き続けてきた点描画に、 全国各地の古木の声を聞き取った詩が収録された、 待望の詩画集が刊行! 点描画は全点フルカラーで収録! 絵と詩でじっくりと古木たちの声を読み味わう、保存版詩画集です。
  • 完落ち 警視庁捜査一課「取調室」秘録
    3.6
    警視庁捜査一課の「取調室」 “伝説の刑事”と容疑者の息詰まる対決! 「完落ち」とは、全面自供すること。したたかで狡猾な犯罪者と警察はどう戦っているのか。 「取調室」という密室での緊迫したやりとりを初めて明らかにした本格ノンフィクションです。 生々しい現場を語るのは、警視庁捜査一課の幹部だった大峯泰廣氏。ロス疑惑、宮崎勤連続幼女誘拐殺人事件、 オウム真理教地下鉄サリン事件など、数多くの大事件の捜査に携わったことから、大嶺氏は“伝説の刑事”と呼ばれるようになり、 “落としの天才”として周囲の信頼を勝ち取ります。著者の赤石晋一郎氏は2年以上も大峯氏に取材を重ねました。 大峯氏はいかにして容疑者を落とすのでしょうか。 犯罪者の背景を丁寧に解き明かし、相手の表情をうかがいながらベストのタイミングで、こちらの手の内を明かすテクニックは、 まさにプロフェッショナルの技。宮崎勤事件では、彼が嘘の証言で漏らした「有明」という地名を突破口に自供へと導き、 宝石商殺人事件では、元警察官だった容疑者のプライドを刺激する一言で一気に自白へと持ち込みます。 緻密な計画殺人者から、冷血きわまりない殺人犯、愛憎に翻弄された犯罪者まで、刑事と犯人との壮絶な闘いのドラマが次々に展開します。 大峯氏は後年、世田谷一家殺害事件の捜査をめぐる警察上層部の方針に納得できず、定年を前に自ら警視庁を去ることになりました。 現場の状況から、大嶺氏にはある“犯人像”が見えていたのです……。大峯氏が職を辞した経緯も、本書で明らかになります。
  • 彼女は頭が悪いから
    4.1
    2019年に上野千鶴子さんの東大入学祝辞や様々な媒体で取り上げられた話題作が文庫で登場! 私は東大生の将来をダメにした勘違い女なの?  深夜のマンションで起こった東大生5人による強制わいせつ事件。非難されたのはなぜか被害者の女子大生だった。 現実に起こった事件に着想を得た衝撃の「非さわやか100%青春小説」!  横浜の3人きょうだいの長女として育ち、県立高校を経て中堅の女子大学に入った美咲と、渋谷区広尾の国家公務員宿舎で育ち東大に入ったつばさ。 偶然に出会って恋に落ちた2人だったが、別の女の子へと気持ち が移ってしまったつばさは、大学のサークル「星座研究会」(いわゆるヤリサー)の飲み会に美咲を呼ぶ。 そして酒を飲ませ、仲間と一緒に美咲を辱める。美咲が部屋から逃げ110番通報したことで事件は明るみに出ることに。 しかし、事件のニュースを知った人たちが、SNSで美咲を「東大生狙いの勘違い女」扱いする。 柴田錬三郎賞選考委員絶賛! 無知な若者を生み出した社会構造と、優越、業といった人間の醜さが、本作には鮮烈に描いてある。――伊集院静 どちらか一方を悪者に仕立て、もう一方を被害者に仕立てがちだが、本作はそんな単純な構図では描かれていない。―逢坂剛 女たちの憂鬱と絶望を、優れたフィクションで明確に表した才能と心意気は称賛されるべきである。――桐野夏生 テーマ性とメッセージ性の際立つ作品、批判をおそれず書かれた力作だ。――篠田節子 平成における最も重要な本の一冊だと私は考える。――林真理子 ※この電子書籍は2018年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 小屋を燃す
    3.3
    文学と医業という二足の草鞋を綱渡りのように穿いて四十余年。 総合病院を定年退職し、今は非常勤医師として働く著者が、近年の己を題材に編み上げた四篇。 「畔を歩く」:定年退職を機に、うつ病を発症してから負担の軽い健康診断担当になり、 時に肩身が狭い思いもしながらも、しかし生き延びるためには文筆を止める訳にはいかなかった日々を回想する。 おさまらぬ気持ちを、畔をしっかりと歩いて宥める。 「小屋を造る」:同年配の地元の男らと山から木を伐り出し、簡素な小屋を建て、焼酎で乾杯する。 「四股を踏む」:定年間際の診療で、超高齢の女性患者から、処女懐胎の体験談を聞く。 「小屋を燃す」:六年前に小屋を建てたのと同じメンバーで、老朽化した小屋を壊す。 といっても、二人の男は先に逝ってしまっていた。 解体跡で飲み食いを始めると、死んでいるはずの者たちが次々と現れる。 ※この電子書籍は2018年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子
    4.5
    その女性は、出生前診断をうけて、「異常なし」と 医師から伝えられたが、生まれてきた子はダウン症だった。 函館で医者と医院を提訴した彼女に会わなければならない。 裁判の過程で見えてきたのは、そもそも 現在の母体保護法では、障害を理由にした中絶は 認められていないことだった。 ダウン症の子と共に生きる家族、 ダウン症でありながら大学に行った女性、 家族に委ねられた選別に苦しむ助産師。 多くの当事者の声に耳を傾けながら 選ぶことの是非を考える。 プロローグ 誰を殺すべきか? その女性は出生前診断を受けて、「異常なし」と医師から伝えられたが、生まれてきた子は ダウン症だったという。函館で医師を提訴した彼女に私は会わなければならない。 ※この電子書籍は2018年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 音叉
    4.4
    日本を代表するロックバンドTHE ALFEEの高見澤俊彦による初小説は、 恋愛と音楽に溢れる70年代青春小説! 東京の平凡な大学生・雅彦は同級生と組んだバンドでデビューを目指す一方、学生運動に染まる響子やグラマーな加奈子、憧れの美佐子先輩との恋愛模様に翻弄される。 順風満帆に見えた大学生活だが、思いがけない悲劇でデビューか友情かの決断を迫られることに。さらにある歴史的事件によって恋愛にも陰りが……。 何者かになりたくて足掻く青年たちを、原宿のレオンや赤坂のビブロスといった70年代東京カルチャーをふんだんに盛り込んで描き出す。 音楽業界を知り尽くした著者ならではの視点が光るスピンオフ短編も収録。 さらに、文庫用に書下ろしエッセイも収録。 ※この電子書籍は2018年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 海を抱いて月に眠る
    3.6
    1巻850円 (税込)
    自らのルーツを問い直す渾身の一作 在日一世の父の遺品から出てきた一冊のノート。そこには家族も知らない半生が記されていた。そこから浮かび上がる父の真実の姿とは。 ※この電子書籍は2018年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 神のふたつの貌
    2.7
    ――神の声が聞きたい。 牧師の息子に生まれ、一途に神の存在を求める少年・早乙女。 彼が歩む神へと到る道は、同時におのれの手を血に染める殺人者への道だった。 三幕の殺人劇の結末で明かされる驚愕の真相とは? 巧緻な仕掛けを駆使し、“神の沈黙”という壮大なテーマに挑んだ、21世紀の「罪と罰」。 ※この電子書籍は2004年に刊行された文春文庫を、新装版で刊行したものを底本としています。単行本は2001年9月に文藝春秋より刊行されています。
  • 乗客ナンバー23の消失
    3.7
    一件落着――そう思ってからが本番です。 ニューヨークまで逃げ場なし。豪華客船に渦巻く謎また謎。 amazon(ドイツ)でレビュー数1,400超、評価平均4.2。 ドイツ・ミステリーの最終兵器セバスチャン・フィツェックの代表作登場。 事件解決のためなら手段を選ばぬ囮捜査官マルティンのもとに、5年前に豪華客船「海のサルタン号」船上から忽然と姿を消した 妻子にまつわる秘密を明かすという連絡が届いた。相手がマルティンを呼びだしたのは、因縁の客船。そこでは2か月前に 船から姿を消した少女が忽然として出現。さらなる事件が次々に起きていた。 ニューヨークへ向かう客船の中で走り出す複数のプロット――。船の奥底に監禁された女と、彼女を詰問する謎の人物。 娘の忌まわしい秘密を知って恐慌を来たす女性客。何者かとともに不穏な計画を進める娘。船室のメイドを拷問する船員と、 それを目撃した泥棒。船の売却を進める船主と、船の買い手である中米の男も乗船しており、マルティンを呼びだした富豪の老女は 「この船には恐ろしい秘密が隠されているのよ……」とささやく。 この客船の中で何が起きているのか? からみあう嘘と裏切りと策謀――真相はめくらましの向こうにある! そしてあなたが「一件落着?」と思ってから、ドイツ・ミステリー界最大のベストセラー作家が腕によりをかけて仕掛けた意外な真相のつるべ打ちが開始される! ※この電子書籍は2018年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 阿川佐和子のこの棋士に会いたい(文春ムック)
    3.9
    「週刊文春」大好評連載「阿川佐和子のこの人に会いたい」の30年近い歴史のなかから、 棋士が登場する11の対談を収録。 羽生善治、渡辺明、谷川浩司、森内俊之、佐藤康光、佐藤天彦、先崎学、杉本昌隆、瀬川晶司、そして米長邦雄……。 将棋の天才たちの本音に迫る抱腹絶倒、珠玉のトーク。 〈空前の将棋ブームである。 発端となったのは、なんといっても藤井聡太氏の出現であろう。 この天才棋士が生まれる背景と、その歴史を築き、 彼を育んできた偉大なる先輩たちの思いと功績を これほど綴った本は、この一冊をおいて他にはないと思われる。たぶんね。〉 (阿川佐和子「はじめに」より) 【目次】 杉本昌隆 「彼が小学二年生のときからタイトルを取ることは 確信していたので全然驚かない」 先崎学 「将棋の世界を継続させることの大事さを 後輩に伝えたくて飲みに連れて行くんです」 佐藤康光 「まだ藤井聡太さんの本当の強さは引き出されていない気がします。 今後、タイトル戦に出ると……」 佐藤天彦 「将棋は、何十手先まで読む力より、 少し先の局面がいい形になるか見極められる力が重要」 羽生善治 「投了って非常に難しいんですよ。 他の人だったらまだ続けるというケースもあるし」 森内俊之 「羽生さんに名人を獲られたら楽になって、 半年後に竜王と王将を獲ったんです」 米長邦雄 「女房が言ったんです。『あなたは勝てません。 若い愛人もいない男が勝てると思いますか』」 瀬川晶司 「取材が増え続けたので、マスコミも みんな僕の応援団と思うようにしました」 谷川浩司 「羽生さんが別の世界の人に 見えたこともあります」 渡辺明 「小さい頃からの目標を達成して、 喜びで頭が真っ白になってしまった」 渡辺明&伊奈めぐみ 「マンガのエピソードって実話なの」(渡辺) 「若干、盛ってるけど、普段からメモはしてるよ」(伊奈)
  • がんマラソンのトップランナー 伴走ぶっとび瀬古ファミリー!
    4.0
    1巻1,300円 (税込)
    25歳で血液がんの一種「ホジキンリンパ腫」を発症し、33歳までの8年間に治療、入院、たびたびの再発などジェットコースターのような治療生活を送っている青年がいます。あのマラソンの瀬古利彦氏の長男昴さんです。 その治療はまことに過酷なものでした。抗がん剤投与、再発、骨髄移植、オプジーボ投与、脳への転移、放射線照射……頭痛や吐き気、呼吸障害など半端ない苦痛にさいなまれ、なかなか出口の見えない治療生活の中、時には心が挫けそうになりながらも、昴さんはある言葉を胸に、明るく前を向き続けています。 それは、2020年の実業団対抗ニューイヤー駅伝を入院中の病室のテレビで観ていた時のことでした。問診に訪れた医師がテレビを観ながら「昴くんはトップランナーですからね!」と言ったのです。昴さんは、トップの選手を後ろの選手が追いかけている映像を観ながら頭の中で何かが繋がり、ぶわっと涙が出てきたそうです。 「ああ、僕はトップランナーなのか。今味わっている辛さも、副作用も、いい作用も、もしこれから僕と同じ状況になる人たちがたくさんいるとしたら、先例としてその人たちが生きて行くための手助けになるのか。これが自分が病を頂いている意味なのか。誰かのためになっているのか」と。これが今の昴さんの治療へのモチベーションであり、本書のタイトルの由来です。 本書は過酷な現実を明るく、時には笑いを誘う筆致で描き出しています。昴さんは言います。「『人生は近くで見ると悲劇だが遠くから見れば喜劇だ』というチャップリンの言葉のように、経験を客観的にみることでユーモアに変えられる。それをやってみたいと思っています。ユーモアに変えられたなら、その経験を『本当に乗り越えた』と言えるのではないか」。この言葉の通り本書は、祖母・両親・兄弟ら家族とのユーモラスな交流を交えつつ書かれた、笑いとひたむきさにあふれた「人生の応援歌」です。
  • 警視庁科学捜査官 難事件に科学で挑んだ男の極秘ファイル
    4.0
    解明せよ! その毒物は何なのか? 黒煙はどう流れ被害者たちを襲ったのか? 閉じ込められた幼児はいつ窒息したのか? 科学捜査官第一号となり、日本の科学捜査の基礎を築いた著者が初めて明かした戦いの軌跡。 警視庁科学捜査官第1号となった著者は、全国の数々の難事件を背後から支えてきた。 地下鉄サリン事件では最初にサリンを同定、サリンを製造したオウムの土谷正実と取調べで対峙し自供を引き出した。 和歌山カレー事件では思わぬ場所からヒ素を発見、ルーシー・ブラックマン事件では暴行ビデオの解析から使用薬物を特定した。44人の死者を出した歌舞伎町ビル火災では、煙の流れを検証し、防火扉が閉まっていれば多くの人命が助かったと結論、管理者の業務上過失致死傷罪立証に寄与した。 知られざる科学捜査の真実が明かされる、まさに一気読み必至のドキュメントだ。 本書に登場する主な事件 地下鉄サリン事件 東電OL殺人事件 イラン人トランク詰め殺人事件 警視庁清和寮爆破事件 和歌山カレー事件 長崎・佐賀連続保険金殺人事件 国立療養所アジ化ナトリウム混入事件 奈良硫酸サルブタモール殺人未遂事件 ルーシー・ブラックマン事件 北陵クリニック薬物使用連続殺人・殺人未遂事件 世田谷一家4人殺害事件 新宿歌舞伎町ビル火災 川崎協同病院安楽死事件 東京駅コンビニ店長刺殺事件 福山市保険金目的放火・殺人事件 パロマガス湯沸器事故 大阪幼児死体遺棄・殺人事件 名張毒ぶどう酒再審請求
  • 小林秀雄の政治学
    3.5
    1巻1,001円 (税込)
    「文芸批評の巨人」像が一新される! 「政治嫌いの文学者」というイメージが強い小林秀雄。だが著作を丹念に読むと、政治、戦争への深い関心と洞察が。 新しい小林像。
  • 眠れない凶四郎(五) 耳袋秘帖
    3.3
    狂人が描いた絵を見る夜半過ぎ 不眠症が続く凶四郎の身辺に幽霊が出没する。 妻殺しの一件が解決した後も、未だ不眠症の癒えない南町の土久呂凶四郎は、 奉行の根岸の計らいで夜専門の見回りを続けることに。 江戸の闇は意外に騒がしく、今宵もまた幽霊が出る屏風だの、 盗みに入ったお店でお化けが出たと騒ぐ間抜けな泥棒だの、凶四郎は振り回される。 事件を解決する凶四郎に安眠できる日は訪れるのか。 大好評、耳袋秘帖・殺人事件シリーズ第5弾!
  • 風のベーコンサンド 高原カフェ日誌
    3.8
    1~2巻743~800円 (税込)
    心の痛みに効く、とびっきりのカフェご飯! 東京の出版社をやめ、百合が原高原にカフェを開業した奈穂。 かつてペンションブームに沸いたが、今はやや寂びれ気味の高原にやってきたのは、離婚を承諾しないモラハラの夫に耐えかね、自分の生活を変えるためだった。 そんな背水の陣ではじめた奈穂のカフェには、さまざまな人が訪れる──。 離れた娘を思う父、農家の嫁に疲れた女性、昔の恋に思いを残した経済アドバイザー……。 「ひよこ牧場」のバターやソーセージ、「あおぞらベーカリー」の天然酵母のパンや地元の有機野菜など、滋味溢れる食材で作られた美味しいご飯は、そんな人々に、悩みや痛みに立ち向かう力を与えてくれる。 奈穂のご飯が奇跡を起こす6つの物語。 ジューシーなチキンのコンフィとモミジイチゴをのせたベビーリーフサラダ/ 高原野菜と鶏肉のチーズクリームシチュー/特製さくさくベーコンサンド/ “男前な口どけ”のイチゴ入り泡雪羹/5種類のお豆のカレー/ 蕪と水菜と胡桃のサラダ/百合根のポタージュ/薔薇のシロップに漬けたくずきり…etc. 女性を主人公に多くのベストセラーを輩出してきた著者が、自らレシピを試して「絶対においしいものだけ」がぎっしり詰まった連作集は、読者に栄養をたっぷり届けます。 解説は漫画家の野間美由紀さん。 ──人間の心の機微の中にはいつも謎が隠れている。そんな謎を優しい目線で描いたこの小説も、紛れもなく上質なミステリーなのである。(解説より) 料理研究家の高山かづえさんが作る高原カフェレシピも特別収録!
  • ガラスの城壁
    3.9
    友との誓いを胸に、少年はいま立ちあがる。 父がネット犯罪に巻き込まれて逮捕された。真犯人を捕まえるため、悠馬は友人の暁斗と調べ始めるが――。真相にたどり着けるのか!? ※この電子書籍は2019年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 文春将棋 読む将棋2021(文春ムック)
    4.0
    すべての棋士にはドラマがある。 盤上で魂を削りあっている棋士のストイックな佇まいを描きたい、 技術はわからなくても、その筋書きのないドラマを伝えたい。 そんな思いから生まれた、将棋の魅力が詰まった すべての将棋ファンに送る1冊! 一章  「藤井聡太と若き才能」 棋士18人が証言する「藤井聡太、進化の過程」 「教授」勝又清和七段の<王位戦と藤井聡太>回想録 佐々木大地五段 将棋は生きる希望だった 西山朋佳女流三冠 三段リーグの藤井聡太戦 斎藤慎太郎八段 名人挑戦への道「4強に五分以上で」 広瀬章人八段 対局で感じた藤井聡太二冠の進化と成長 野原未蘭女流1級 秘伝の将棋「英春流」 東大将棋部と藤井聡太ほか 二章 羽生世代と見果てぬ夢 藤井猛と行方尚史、二人は戦友 さよなら、八王子将棋クラブ 深浦康市九段 諦めない「粘りの棋士」 桐山清澄九段 73歳現役最高齢棋士「幕を閉じた順位戦」 豊川孝弘七段 こうしてできたオヤジギャグ 山崎隆之八段 初のA級へ「齢40にして強くなる」など
  • やわらかな足で人魚は
    4.3
    一体どうしたら自分は人間になれるのだろう。 当たり前に愛される人間の子供に。 タワマンを舞台に電話詐欺の嘘によって結びつく偽物の母と息子。 “前科”のある中学教師と孤独な少女。 悲しみを抱えた二人が出会うとき、世界は色を変える。 『昨日壊れはじめた世界で』が話題沸騰のオール讀物新人賞作家の、痛々しいほど危うく美しい傑作短編集。 四六時中わけもなく淋しくて、悲しくて、心許ない。 まるで私たちの足元にはちゃんとした地面がないかのようだ。──「水に立つ人」 人魚姫が王子を刺せなかったなんて、やっぱりウソだ。いつの間に引っ張り出したのか、赤い万能ナイフは陽の手の中にあった──「やわらかな足で人魚は」 この短編集の五人の主人公たちは、皆、「どこにでもいるけれども、悲しみを抱えているとは傍目に分からない人たち」だ。 香月夕花の描く世界は、どこまでも儚く、残酷で、美しい。 満場一致でオール讀物新人賞を受賞したデビュー作「水に立つ人」と同名の短編集を改題し、「逃げていく緑の男」を追加して再構成。 解説:川本三郎 ※この電子書籍は2016年10月に文藝春秋より刊行された単行本『水に立つ人』の文庫版を底本としています。
  • 死の島
    3.0
    大手出版社を定年退職後、カルチャースクールで小説講座を持つ澤登志夫、69歳。 女性問題で妻子と別れて後も、仕事に私生活に精力的に生きてきた。 しかし、がんに侵されて余命いくばくもないことを知るとスクールを辞め、人生の終幕について準備を始める。 講座の教え子・26歳の宮島樹里は、自分の昏い記憶を認めてくれた澤を崇拝し、 傍にいることを望むが、澤はひとり冬の信州へ向かった。 澤は、最後まで自分らしく生きることができるのか。「ある方法」を決行することは可能なのか…。 プライド高く情熱的に生きてきた一人の男が、衝撃的な尊厳死を選び取るまでの内面が描きつくされ、 深い問いかけを読者に与える傑作長編。 解説・白石一文 ※この電子書籍は2018年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • オクトーバー・リスト
    3.9
    ドンデン返しの魔術師が技巧のかぎりを凝らした 前人未踏&驚愕連続の “逆行” ミステリー! 本書は最終章ではじまり、第1章へとさかのぼる。 娘を誘拐され、秘密のリストの引き渡しを要求された女ガブリエラ。隠れ家にひそみ、誘拐犯との交渉に向かった友人の帰りを待っていた。 しかし玄関にあらわれたのは誘拐犯だった。その手には銃。それを掲げ、誘拐犯は皮肉に笑った……。 だが読者よご用心。全ては見かけ通りではない。章ごとに物語は時間軸をさかのぼり、あなたの知らなかった「事実」が次々に明かされ、 白は黒に、黒は白に反転をくりかえす。謎のオクトーバー・リスト。それを狙う者たち。迷路のようなニューヨークの街で展開される人狩り。 正解最強のサプライズの魔術師ディーヴァーが繰り出すサスペンスとサプライズ。そして全ての真相が明かされるのはラスト2章! 『ボーン・コレクター』『ウォッチメイカー』などでミステリー・ファンを狂喜させてきたベスト・ミステリー作家の神髄がここにある。
  • ウチの娘は、彼氏が出来ない!!
    4.3
    私だって恋してみたい。と娘(二十歳)は思っていた。 でも、漫画は次々に新刊が出るし、コミケに向けてコスプレの準備もしなきゃだし。 オタクの私はそれでも結構忙しいのだ。 なんていうか、“ご縁”もなかったし。 そんなことより心配なのはウチの母! いい歳して天然、暴走、世間知らずなかーちゃんを放っては置けない。 そんな時、二人に突如吹きつけた恋の春一番! 娘にとっては人生初の、母にとっては久々の、恋! 少女のような天然母・碧と、しっかり者のオタク娘・空。 トモダチ母娘のエキサイティングラブストーリー。 2021年1月クール、日テレ系列で放送の水曜ドラマを小説化。 出演:菅野美穂、浜辺美波、岡田健史、川上洋平(Alexandros)、東啓介、沢村一樹、有田哲平、豊川悦司ほか
  • 47都道府県の底力がわかる事典
    4.0
    「地方消滅」の危機が叫ばれて久しいが、政府が打ち出す「地方創生」の施策は成功しているとは言えない。 一方で、もともと持っている力を活かして成果を上げている地域もある。そこに暮らす人々の知恵と工夫と努力と挑戦が 地域を再生させているのだ。日本の地方には底力がある! 47都道府県「地域再生の物語」を網羅! 秋田県 秋田市――商店街スゴロクで街を知る、人を知る 山形県 寒河江市・山辺町――世界が欲しがる山形ニット 埼玉県 熊谷市など――猛暑が生んだ奇跡の米 福井県 大野市――水道を引かないまちの誇り 岐阜県 長良川鉄道――捨てられた路線を黒字列車が走る 大阪府 堺市など――ニュータウンにレモンを植えよう 兵庫県 豊岡市――在宅看取り率ナンバーワンの秘密 福岡県 北九州市――死の海から「環境」のまちへ 宮崎県 西米良村――年間二万人が来る限界集落 ほか
  • シチュエーションズ 「以後」をめぐって
    5.0
    1巻1,700円 (税込)
    芸術家たちは大震災にどう向き合ったか 大震災を、映画監督、写真家、演劇人、小説家はどう受け止めたか。未曾有の惨事に芸術は有効か。表現活動の最前線に相対する批評。
  • 愛のかたち
    -
    1巻710円 (税込)
    親子の葛藤、女の友情、そして運命の出逢い。5人の男女のさまざまな愛のかたちを、パリと京都を舞台に描き出す大河恋愛小説です。 表題作「愛のかたち」に加え、「南の島から来た男」を収録。いずれも、悲痛な運命に抗って力強く生きる登場人物の姿が、静かな感動を呼びます。国際派女優そしてジャーナリストとして世界中で活躍をしてきた岸恵子ならではの贅沢でスケールの大きな人生賛歌です。 ※この電子書籍は2017年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 敗れざる者たち
    4.2
    勝負の世界に青春を賭け、燃え尽きていった者たちのロマンを描く、 スポーツノンフィクションの名作が、待望の新装版に! 燃え尽きたいと望み続けついに叶わなかったボクサー、 栄光の背番号3によって消えた三塁手、夭折した長距離ランナーの「思い」、 良血馬達との決戦に臨むサラブレッ ド― “勝負の世界に何かを賭け、 喪っていった者たち”をテーマに書き継がれた6篇。 著者の原点ともいうべきスポーツ・ノンフィクシ ョンの金字塔! 沢木耕太郎が、徒弟修業中の自分にひとつの可能な道筋が見えてきた、と語る、自身の出発点ともいえる記念碑的作品。 解説・北野新太
  • トコとミコ
    4.0
    6歳から96歳まで、歴史に翻弄された二人のヒロイン。 伯爵家の令嬢・燈子と、遊び相手に選ばれた使用人の娘、美桜子。 ふたりはトコとミコと呼び合い、友情を育みながら、大人への階段を上っていく。 だが、終戦を境に伯爵家は没落、才気煥発な美桜子は実業界で成功し、燈子とその家を支えていく。 時に慈しみ、時に妬み傷つけ合いながらともに歩んだふたりの90年を描く、感動の大河ロマン! ※この電子書籍は2016年12月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 灼熱起業
    4.0
    1巻880円 (税込)
    サラリーマンで終わるつもりはない! 見果てぬ夢を追う男の物語。 放送局のエース営業マン・武田光司は、周囲の反対を押し切って退職、自転車の輸入販売を始めた。 商習慣の違いで失敗し、信頼する部下や取引先にも裏切られ、幾度も会社存続の危機に。 家族や仲間、先輩経営者に支えられ、急成長するスーパーマーケットでの販売に活路を見出すが……。 解説・高成田享 ※この電子書籍は2000年3月にKADOKAWA、2005年11月に講談社より刊行された文庫を、2021年2月に改題し刊行した文春文庫を底本としています。
  • 任務の終わり 上
    4.5
    ミステリーとホラーを最高レベルで融合させた、巨匠渾身の三部作・完結編! あいつの悪意がふたたび動き出す――。 相棒のホリーとともに探偵社を営むホッジスのもとに、現役時代にコンビを組んでいたハントリー刑事から 現場にきてほしいとの連絡が入った。事件は無理心中。6年前に起きた暴走車による大量殺傷事件で 重篤な後遺症を負った娘を、母親が殺害後に自殺したものとみられた。だがホッジスとホリーは 現場に違和感を抱き、少し前にも6年前の事件の生存者が心中していたことを突き止める。 一方、6年前の事件の犯人が入院する脳神経科クリニックでは、怪事が頻々と発生していた――。 エドガー賞受賞の傑作『ミスター・メルセデス』でホッジスと死闘を演じた「メルセデス・キラー」が静かに動き出す。 底知れぬ悪意が不気味な胎動をはじめる前半戦が、ここに開始される。 ※この電子書籍は2018年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 文春ムック 渋沢栄一 道徳的であることが最も経済的である
    -
    1巻1,100円 (税込)
    2024年から発行される一万円札の「顔」となる日本資本主義の父・渋沢栄一。NHK大河ドラマ「青天を衝く」の主人公でもある渋沢栄一とはどんな人物だったのか。十九年間かけて評伝『渋沢栄一 上下巻』(文春文庫)をまとめた鹿島茂さんが渋沢の偉大さを解き明かす。 はじめに  渋沢栄一の「偉さ」を探索する旅 第一章 日本の資本主義を興した男の足跡 日本の資本主義はどこからきたのか 渋沢栄一とサン・シモン主義 渋沢栄一はいかにして日本に資本主義を根付かせたのか 適材適所を徹底し、資本主義を育む 企業経営と再建の手腕 第二章 親族が語る知られざる素顔 渋沢家百年のオヤジの背中  ×渋沢雅英  現当主が語った渋沢家四代とっておきのエピソード 正しい道理の「富」でなければ企業の永続はない  ×鮫島純子 エッセイスト 渋沢栄一に学ぶ経世済民の心得  ×渋澤健  「ヘッジファンドやってて、ご先祖さまに悪いかナと……」 第三章 華麗なる人脈 明治・大正・昭和 経済人の群像 M&Aとイノベーションに満ちた時代の寵児たち  ×坪内祐三 評論家、エッセイスト 明治・大正経済人の華麗なる旦那芸ネットワーク  ×山口昌男 文化人類学者 明治から昭和のすごい経営者  ×楠木建  日本を変えた二十人に学ぶ大成功の秘訣  ×佐々木常夫   第四章 現代に受け継がれる経営哲学 “経営農民”渋沢栄一の「たった一人の株式会社革命」  ×福原義春 “ブランド化”こそが「企業永続」のカギである  ×塚越寛
  • Deluxe Edition
    -
    進化した類人猿の処理を任された男、反米テロ組織リーダーの暗殺作戦に参加した少年たち、姐さんにスパイの拷問を依頼された極道の俺、福島の警戒区域にATMや空き巣を狙って侵入したチンピラ、夏休みの少年少女たちに襲われた多摩川の河川敷のホームレス、おやじ狩りを繰り返す少年、運命の人と出会うべく婚活パーティーに参加するサラリーマン、SNSで友達をつくるナイジェリア出身の少女…… 豪華な音楽に彩られた12本の短編が新たな世界の到来を予言する! 『ピストルズ』『クエーサーと13番目の柱』『□』と同時期に書かれた珠玉の12の短編を収録。 芥川賞作家・阿部和重の魅力を堪能できる短編集。 収録作品: 「Man in the Mirror」「Geronimo-E, KIA」「Bitch」「Just Like a Woman」「Search and Destroy」「In a Large Room with No Light」「Life on Mars?」「Sunday Bloody Sunday」「For Your Eyes Only」「The Nutcracker」「Family Affair」「Ride on Time」
  • 日本にとって最大の危機とは? “情熱の外交官” 岡本行夫 最後の講演録
    5.0
    追悼特別出版 国際人たる日本の若者へのメッセージ 海外をめざすビジネスパーソン、そして若者たちへ。 新型コロナウイルスにより急逝した名物外交官が、日米、日中、日朝関係などを、豊富な知識と深い洞察をもって語る。 序文・安藤優子
  • むさぼらなかった男 渋沢栄一「士魂商才」の人生秘録
    3.5
    NHK大河&新しい一万円札の顔! 「幕末の志士」から「日本資本主義の父」へ。誰も知らなかった渋沢栄一の素顔を直木賞作家の中村彰彦が解明する。歴史秘録の決定版!
  • 猫がこなくなった
    4.0
    1巻1,700円 (税込)
    猫好きの友人の高平君がうちに来て、涙ながらにいなくなった猫の話をはじめた、聞けば聞くほど私が外で世話していたキャシーそっくりだった。 ついに1ヵ月経ったところで高平君は、迷い猫のポスターを貼りだした。それを作ったのは二週間目だったが、「貼ったら事実を固定化するみたいじゃん。」と思っていたのだ。レディはきっと帰ってくる、キャシーもそうだ。 果たして高平君のレディはみつかるか?(表題作) 特別に忘れがたい猫、突然伐られてしまった大きなヒマラヤ杉、賢いカラス、鎌倉の家から見えた川端先生のお屋敷、夏の明るい日差しの中で本を読むこと、隣家の物置きに住み着いた赤ん坊連れの女のひと、子猫が友人の手のなかで命を落とした夜明けまでの夜・・・ 「命において死は生きるのと平行して在りつづける」ことを証しだてる9つの短篇小説。
  • キャッシー
    3.0
    1巻1,800円 (税込)
    一人のアイドルの輝ける愛、そして復讐 さえない少女はいかにアイドルとして生まれ変わったのか。誰よりもアイドルの深奥を知る作者が放つ比類なきドラマ。装画・のん。
  • インフルエンス
    3.8
    大阪郊外の巨大団地で育った小学生の友梨。 同じ団地に住む里子が、家族内で性虐待を受けていたことを知り、衝撃を受ける。 助けられなかったという自責の念を胸に抱えたまま中学生になった友梨は、 都会的で美しい親友・真帆を守ろうとして、暴漢の男を刺してしまう。 ところが何故か、翌日警察に連れて行かれたのは、あの里子だった。 殺人事件、スクールカースト、子育て、孤独と希望、繋がり。 お互いの関係を必死に隠して大人になった3人の女たちが過ごした20年、 その入り組んだ秘密の関係の果てに彼女たちを待つものは何だったのか。 大人になった三人の人生が交差した時、衝撃の真実が見えてくる。 女たちが幼いころから直面する社会の罪、言葉で説明できないあやうい関係性、深い信頼。 ラストに用意された、ミステリファンも唸る「驚き」。 『サクリファイス』で大藪春彦賞を受賞した近藤史恵が描く傑作長編。 解説・内澤旬子 橋本環奈・葵わかな・吉川愛でWOWOW連続ドラマ化決定。 ※この電子書籍は2017年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 草にすわる
    3.5
    「五年間はなにもすまい」。大企業を辞めた洪治は無為な日々を過ごしているが ある日付き合っていた彼女から昔の不幸な出来事を聞かされる。 絶望に追われた二人の間には睡眠薬の山があった――(表題作)。 なぜ人間は生まれ、どこに行くのか。一度倒れた人間が一歩を踏みだす瞬間に触れる 美しい短編「草にすわる」「花束」「砂の城」「大切な人へ」「七月の真っ青な空に」を収録。 解説・瀧井朝世
  • 飼う人
    3.0
    1巻880円 (税込)
    ウーパールーパー、カエル、蛾、蝶と、ちょっと不思議な生き物を飼う人々が、いつしかその生き物たちに依存するかのごとく、不穏な領域に踏み込んでいく姿を描いた異色連作集。 全米図書賞受賞で話題の作家の最新作。 夫との生活に疲れた中年女は、家にいた毛虫に「トーマス」という名前をつけて飼うようになった。トーマスへの愛着が深まることで、なじんでいると思っていた夫のことが、いままでとは違って見えてくる。夫の本心とは何なのか。夫の好きなものは何か。夫は何に関心があるのか。夫は何も関心を持っていないかもしれない。じゃあ、わたしは夫の何に関心があるのか。何もないかもしれない。わたしは自分に対しても関心を持つことができない。どうしてこんなことになってしまったんだろう。何がいけなかったんだろう? 疲れた。ほんとうに疲れた……。中年女の心情をリアルに描く――「イボタガ」。 ウーパールーパーに「アポロ」という名前をつけたコンビニで働く青年の話――「ウーパールーパー」。 シングルマザーの母親との軋轢にもめげず、健気に生きていこうとする少年の話――「イエアメガエル」。 「トーマスは羽化しませんでした」という謎のメッセージと共に妻に去られた中年男の話――「ツマグロヒョウモン」。 ※この電子書籍は2017年12月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 監禁面接
    3.6
    『その女アレックス』の鬼才ルメートルが放つ徹夜必至、 一気読み保証のノンストップ再就職サスペンス。 リストラで職を追われたアラン、失業4年目、57歳。再就職のエントリーをくりかえすも 年齢がネックとなり、今は倉庫でのバイトで糊口をしのいでいた。 だが遂に朗報が届いた。一流企業の最終試験に残ったというのだ。 だが最終試験の内容は異様なものだった。 〈就職先企業の重役会議を襲撃し、重役たちを監禁、尋問せよ――〉 どんづまり人生の一発逆転にかけるアラン。愛する妻と娘たちのため、 知力と根性とプライドをかけた大博打に挑む! 解説:諸田玲子 ※この電子書籍は2018年8月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • メディアの闇 「安倍官邸 VS.NHK」森友取材全真相
    3.3
    なぜ放送されないんだ! エース記者はなぜNHKをやめたのか。 官邸からの圧力、巨大組織内で上層部から歪められる報道── スクープの裏側を「忖度なし」に書き尽くす。 社会に衝撃を与えた『安部官邸vs.NHK  森友事件をスクープした私が辞めた理由』を改題し、大幅加筆。 「文庫化にあたって 『この本には虚偽がある』は虚偽である」をはじめ、単行本刊行後の怒濤の展開も描いた決定版。 著者は「森友事件」の発覚当初から事件を追い続けたNHK大阪放送局の司法担当キャップだった。 次々に特ダネをつかむも、書いた原稿は「安倍官邸とのつながり」を薄めるように書き換えられていく。 NHKでも検察でも東京vs.大阪のせめぎ合いが続く中、ついに著者は記者職からの異動を命じられた。 記者であり続けるために職を辞した著者が、事件の核心、取材の裏側、そして歪められる報道の現在を赤裸々に明かす、渾身のノンフィクション。 この話には続きがある。 「この単行本が出来上がろうかというタイミングで赤木雅子さんに初めて会えた。 その後、劇的な展開を見せて、週刊文春での赤木俊夫さんの遺書全文公開、国と佐川氏の提訴に至った。 森友国有地値引きも公文書改ざんも何一つ古びていないし終わってもいない」(「文庫化にあたって『この本には虚偽がある』は虚偽である」より) 今、メディア不信は最高潮に達している。 権力に牙を抜かれ、批判能力を失う一方で、現場の最前線には、真実を伝えるために日夜格闘する記者たちがいる。 すべてはここから始まった――。 メディア、公正な報道が危機に瀕する現代、必読の書。 解説:田村秀男(産経新聞特別編集委員) ※この電子書籍は2018年12月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 2011年の棚橋弘至と中邑真輔
    4.0
    1巻1,001円 (税込)
    プロレスを救った二人の天才の軌跡 総合格闘技の台頭で、アントニオ猪木が主導した路線は頓挫した。プロレス界を救うべく立ち上がった二人の天才が歩んだイバラの道。 ※この電子書籍は2017年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 三人
    4.0
    1巻1,500円 (税込)
    お笑い第七世代の生みの親が描く、傑作青春小説 芸人二人と放送作家のシェアハウス。そのリアルな生態を浮かび上がらせながら、青年の痛切な日々を描く、青春小説の新たなる傑作!
  • 眠れる美男
    -
    川端康成の『眠れる美女』は、高齢男性の性を扱った。 それから60年。川端を敬愛する台湾の第一線女性作家が正反対の方向からタブーに挑んだ。 すなわち、高齢女性の性に正面から挑んだのである―― 元外交官の妻として裕福な生活を送る殷殷は、行きつけのフィットネスジムのインストラクター、パンに惹かれていく。 少数民族の出身で、眉目秀麗な彼―パンの、色白の肌の下に潜んだしなやかな筋肉に直接触れたいという欲望を、殷殷は抑えきれないでいた。 そしてある夜、パンを別荘に招いた殷殷は、彼に眠り薬を盛るのだった…… 〈本書は長くタブーだった高齢女性のエロティシズムを扱った、きわめて挑戦的な作品だ〉(上野千鶴子・東京大学名誉教授)
  • 週刊文春ミステリーベスト10 2020【文春e-Books】
    -
    これがなくちゃ年が越せない!  人気の「ミステリーベスト10」電子版をお届けします。 通算44回目の今回、国内部門はレジェンド作家と新進作家が近年まれにみる大接戦を演じ、 海外部門は正統派ミステリーであの英国作家が驚異の三連覇を果たした。 全国のミステリー通、書店員が選んだ珠玉の20冊。 年末年始に読みたいミステリー小説がきっと見つかる。 【主な内容】 国内部門/海外部門 各ベストテンの発表 国内部門・海外部門第一位作家のインタビュー トップ10作品のあらすじ&熱烈推薦コメントほか

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