お笑い芸人を多数養成した人気講師による、お笑い芸人2人と放送作家の男三人のシェアハウスの様子を描く小説。
こんな内容の紹介文をネットで見て「何だそれ面白そう!」と思い手に取った一冊。
前半(第一章)で描かれるのは、劣等感と現状の不満から行き詰まってたお笑い芸人の主人公。
プライドあるから周りにう
...続きを読むまく頼れず、くすぶって、自分にも周りにも言い訳して、羨望の対象に毒づく。
この小者感、そしてこのやるせなさが痛いほどわかる人間なので前半は読んでて結構辛かった。完全に主人公に感情移入してるくせに、同族嫌悪ってやつか、主人公のことを不快に思う自分がいて。
そして後半、ふとした時から絡まってた糸(こじれた自意識の糸)がほどけるように、物事がうまくいくようになるんだけど、30代になった私にはこの感覚がすごくよくわかった。
以下、作中から引用。
〝人間関係は二本のロープと一緒。上下のロープを結ぶのは難しいけど、横どうしのロープは楽に結べる。つまり年齢やキャリアを振りかざす上下関係より、横に並んで同じ目線になったほうが心の握手は結びやすい。〟
これはたぶん著者自身の気付きによる人生訓のようなもので、特にここが言いたかったのではないかと思う。
そしてこの感覚は私自身の今の仕事の人間関係へのスタンスと似ているのでとてもよくわかる気がした。
先輩も同僚も部下も私にとっては、それぞれが得意な部分で不得意な部分を補い合う、助けてくれる味方だ。だから私は誰にでも「教えてください」と言うし、相談されたら素直な自分の意見を言う。
上下関係でうまくいく場合もあるけど、上下関係では出てこない本音や不満もある。そういうのを大切にしたい。味方を増やしたい。
そう思って働いているし、環境のおかげもあり今のところそれで大きな問題なく働けている。
関係を「横のつながり」にするって、コミュニケーションとして良い形なんだよね。
というわけでその部分が印象的だったんだけど、全体通しても読みやすく、冷静な人間観察も効いていて面白く読めた一冊だった。