どこまでがリアルで、どこまでが虚構なのか。実在する人物、事件を散りばめながら、その境界線を曖昧にし、臨場感を煽る。しかし、読み手はスッキリとノンフィクションとして受け止められないため、何を信じれば良いか、後味の悪い読後感を引きずる。人は、信じたいものを信じる。作者の思想を混ぜながら、あくまで小説とい
...続きを読むう形で描き切る。
一方では、そうとしか扱えない話だという事。あとがきで訳者も書いている。コロナ禍の武漢におけるロックダウンや病床のリアル。警察とのやり取り。失踪する人たち。蝙蝠を食用にする事で感染症が広がったのか、研究用途が漏洩したのか、そもそも武漢発祥では無いとシラを切り続けるのか。
思い出すと、当初の武漢における医療崩壊や死と直結したパンデミックの恐怖感は、恐らく弱毒化しただろう今のcovid19や社会の雰囲気とはまるで違う。未知への恐怖が大きかった。その退廃的世界観をノスタルジアに思い出す、ある種のコロナ文学として、重要な一冊だと思う。