廖亦武のレビュー一覧

  • 武漢病毒襲来

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    昔、友人の一人が佐藤優『国家の罠』を貸してくれたことがある。彼は本を手渡す際にこう言った。

    「これはあくまでも"フィクション"だからね。」

    その言葉通り、あくまで虚構=小説として読んだが、とても面白く夢中になって読んでしまった。
    書籍が面白くなるかどうかは、著者がどう構成するかによって決まるのであって、真実か否かなど些細な問題にすぎない。
    自然主義文学の大家エミール・ゾラは、「ありのままに描こうとしても必ずそこには自己のフィルターが介在する。」と語っている。つまり完璧な真実など存在しない。本を心から楽しむのであれば、真実を求めるメガネを外して読まなければならないと思う。

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    2025年09月02日
  • 銃弾とアヘン :「六四天安門」生と死の記憶

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    天安門事件で、中国公安当局に捕まった人たちを訪ね歩き、当時の状況、その後の有為転変を聞き取ったものをまとめている。もう30年も経過してしまったのかと思うと、未だに民主派追求の手を緩めない中国のしつこさは、万国の公安当局共通のことと改めて認識する。敢えて他国のことに手を突っ込み、劉暁波の救出を試みたメルケルをはじめとするドイツの政治家たちの、自らの思想に忠実な矜持には驚く。

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    2019年11月13日
  • 武漢病毒襲来

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    どこまでがリアルで、どこまでが虚構なのか。実在する人物、事件を散りばめながら、その境界線を曖昧にし、臨場感を煽る。しかし、読み手はスッキリとノンフィクションとして受け止められないため、何を信じれば良いか、後味の悪い読後感を引きずる。人は、信じたいものを信じる。作者の思想を混ぜながら、あくまで小説という形で描き切る。

    一方では、そうとしか扱えない話だという事。あとがきで訳者も書いている。コロナ禍の武漢におけるロックダウンや病床のリアル。警察とのやり取り。失踪する人たち。蝙蝠を食用にする事で感染症が広がったのか、研究用途が漏洩したのか、そもそも武漢発祥では無いとシラを切り続けるのか。

    思い出す

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    2022年11月15日
  • 武漢病毒襲来

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    小説としては正直読みづらいと感じる。今のある程度コロナウイルスが制御されてきたような時期から見るとここで書かれる武漢の状況そのものがデマのように感じてしまいそうになるけど、ここに書かれていることはそれなりの真実を写しているのだろう。そしてコロナウイルスの有無に関わらず中国共産党の抑圧的な社会で生きるということのむずかしさ、そしてそのような世界は現実に今も数多くの人が生きているという現実に目が眩む。それを難しいと感じないように見猿聞か猿言わ猿的に生きていく人はおそらく多し、それはそれほど難しくなくできてしまうのだろうけど、そんな社会を垣間見ることができる。

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    2021年10月24日
  • 銃弾とアヘン :「六四天安門」生と死の記憶

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    ネタバレ

    銃弾とアヘン
    ~「六四天安門」生と死の記憶

    著者:廖亦武(リャオ・イーウー)
    発行:2019年7月10日
       白水社

    天安門事件というと、わたしなんかは周恩来への弔いがらみで起きた1976年(高校生の頃)を思い浮かべるけど、今では戦車が出てきた1989年の方が一般的らしい。前者を四五天安門事件、後者を六四天安門事件と呼ぶというのは、今回、初めて知った。この本は六四に絡んで逮捕されて刑務所に入れられた人たちへのインタビューで構成されている。

    著者は詩人、民間芸人、亡命作家。自らも、詩の朗読と映像詩の撮影で逮捕され、4年収監されていたが、凄絶な拷問を受け、2度自殺を図った。それでも4年で出

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    2021年03月29日