とても好き。あらゆる人に読んでほしい。
『文章は「形」から読む』というタイトルであるが、ここで言う「形」というのは、「文体」と言った方がしっくりくる人もいるかもしれない。
基本的に、文章というのは、伝えたい「内容」と、その「内容」を伝えるためにどのように表現するのかという「書き方」でできている。雑
...続きを読むな例だが、同じ「内容」を伝えていても、「すこし前に詰めていただけませんか」「すこし前に詰めろ」では、印象がちがう。
語尾や情報量、言葉の選び方で、偉そうに見えたり、なんとなくニコニコして感じられたり、丁寧な印象をうけたり。この本では、文章の持つ「内容」ではなく、この「書き方」の特徴に徹底的にこだわって、文章を読む。
本の中で取り上げれあげられる文章例は、「学習指導要領」「料理本」「広告」「断片(見出し、応援やかけ声、メモ・注釈など)」「注意書き」「挨拶」「契約書」、そして「小説」「詩」など多岐にわたる。ただ、一貫しているのは、一見して「客観的」で「論理的」に「内容」を伝達しているように見える文章にも、実は、「書き方」によって、いろいろな印象を生み出しているという考え方だ。
このことを理解するために、本のなかでときどき出てくる活動が面白かった。「学習指導要領」の文章を「料理本」っぽく書くとどんな文章になるか? カフェの「注意書き」を「詩」っぽく書くとどうなるのか? 伝えている「内容」をなるべく変えることなく、別の「書き方」で書いてみる。
そうすると、厳しい公的文書も私を主語にして体言止めにすると「料理本」っぽく見えたり、ただの「注意書き」も改行と繰り返しをするだけで「詩」っぽく見えたりすることが分かる。「書き方」が生み出す印象は、とてつもなく大きい。
文章の最も素朴な見方は、何かを伝えるために書かれるという考え方だと思う。そのため、何を伝えたいのかには目に行きやすいが、それがどう書かれているのかを意識することは難しい。自分が文章を書くときにも、一つのことを伝えるのに、どれだけのバリエーションで文章を書くことができるだろうか、と考えると心許ない。
こういった「文体」に関する意識は、文章を読みなれた人たち、自分の表現を模索している人たちにとっては、感覚的に持っているものだったと思う。それが、とても分かりやすく、まとまっていて、少し感動さえした。
言葉に対するアンテナをより高くしたい人におすすめしたい。