阿部公彦のレビュー一覧
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とても好き。あらゆる人に読んでほしい。
『文章は「形」から読む』というタイトルであるが、ここで言う「形」というのは、「文体」と言った方がしっくりくる人もいるかもしれない。
基本的に、文章というのは、伝えたい「内容」と、その「内容」を伝えるためにどのように表現するのかという「書き方」でできている。雑な例だが、同じ「内容」を伝えていても、「すこし前に詰めていただけませんか」「すこし前に詰めろ」では、印象がちがう。
語尾や情報量、言葉の選び方で、偉そうに見えたり、なんとなくニコニコして感じられたり、丁寧な印象をうけたり。この本では、文章の持つ「内容」ではなく、この「書き方」の特徴に徹底的にこだわっ -
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Posted by ブクログ
まず著者群の面子を見て、少なくとも既知の名前において、それぞれの発信することばを追いかけている人が多いことを確認。演繹的に、その他の著者についても、かけ離れた立場にはないであろうと判断。あわよくば、今後の人生指針になり得る存在と出会えることも期待。前置き長いけど、そんな考えの下、発売前から気にかけていた本書。日本学術会議任命拒否問題についても、どこかでちゃんと読まなきゃと思っていたけど、その欲求も本書で満たされた。中曽根時代から綿々と受け継がれて今に至るってのも、何とも根深くて嫌な感じ。そのあたりまで遡って、ちゃんと勉強しなきゃ。あとは、己でさえままならない自由の取り扱いを、更に次世代に伝える
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Posted by ブクログ
名作の書き出しを引用し、傍線や書き込みでツッコミを入れていく。
そのツッコミに、いちいちハッとさせられる。
この筆者のヨミは只者ではない。
小説を読み込むとはこう言う事なんだな。
こう言う読みこむセンスというか、修行ができている人は、小説読めば読む程、どんどん小説の味を噛み締められるんだろうな。
筆者を尊敬してしまいました。
例えばの本文からの引用
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林芙美子は一見、この「ドライで切り詰めた文章こそが名文だ」という考えを実践しているように見えるかもしれません。でも、実際には冒頭に歌を引用し、しかも未練たっぷりにその歌から距離を置こうとすることで、かえってドライな文章が隠しもつ -
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文学の先生による、文学作品のよさを伝える方法を提案する本、といえばいいのか。
近代文学の名作の冒頭に「らくがき」を書き入れつつ、その作品の特質に光を当てていく。
夏目漱石『三四郎』『明暗』
志賀直哉「城の崎にて」「小僧の神様」
太宰治『人間失格』『斜陽』
谷崎潤一郎『細雪』「刺青」
梶井基次郎「檸檬」
ここらあたりは、ド定番。
江戸川乱歩『怪人二十面相』
といったところで、ちょっとびっくり。
その後のセレクトは以下の通り。
森鴎外『雁』
芥川龍之介「羅生門」
葛西善蔵「蠢く者」
堀辰雄『風立ちぬ』
林芙美子『放浪記』
たしかに、作品の冒頭は、作家が気合を入れて書く(と思われる)とこ -
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Posted by ブクログ
文章は「形」から読む。これは、文章を読む際に重要なのは、言葉そのものよりも、その「形」を見極める力であるという。
その文脈で、特徴的な形態を持つ
・学習指導要領
・料理本
・広告
・断片
・注意書き
・挨拶
・契約書
・小説
・詩
に登場する各ことばの「形」に注目し、そこからことばの働き方を見渡すことをめざしている。
形が重要となるのは、なにも小説や詩だけではなく、あらゆる文章で形は重要意味を持つ。
文は「既存の形式に縛られることばの領域」と「形式をつねに更新することが求められることばの領域」という区分する必要があり、前者は役所の文書などフォーマットが明確に定まっているものがあてはまる。
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