(2019/7/2)
読み応えあり。
識者と呼ばれるひとたちが、内田樹氏の声かけのもと、
人口減少社会について文章をよせたもの。
それぞれの観点、得意技から、人口減少を斬る。
いろんな視点が斬新。
同じテーマで11人の文章を読んだから、誰が何を語ったか、
以下の目次を見ても思い出せないところはあるけど、
特に印象的だったのは、
最悪の事態に備え対策を立てること自体を忌避する文化が日本にはある、
という話し。
いけいけどんどん。
マイナスのことを言うと、士気が下がる、といっていやがる。
そうして突っ走って失敗する事例は多い。
成功する経営者はしっかり対策を立てる。
立てずに行き当たりばったりで行くから、失敗するのだ。
今の国も似たようなものだ。
食べることとセックスすること、という、人間の、動物としての本能の部分が、
AIだの機械化だので「面倒なもの」という範疇に入って、
錠剤と人工授精にとってかわられる、快楽はバーチャルで、、、
実際そんな世の中が来ているようで恐ろしい。
若者はAVで満足しているのではなかろうか。面倒な生身より。
人間が人間であるとはどういうことか、見つめ直す必要があると思う。
それすら考えないでなんとなく生きている人間のなんと多いことか。(ちこちゃん風)
イギリスの緊縮財政社会が貧困層をどんどん苦しめている、とか。
若い女性が行きたいと思わない、いや、行きたくないと思う風習の残る自治体に未来はない、とか。
結婚→子ども というモラルが残る以上、人口減少はさけられない、とか。
用もないのに江戸時代を生き残ってしまった武士、現代に生き残っている、役に立たないものを建てる建築家、とか。
やれ経営者目線でものを考えろ、なんていうから、大上段に構えた詰まらん議論が増えた、とか
うん、面白い。楽しい。
人口減少社会、少子化は肯定のしようがないが、
また、識者の意見が抜本的解決策になるわけもないが、
なんだか充実した本だった。
20―39歳の女性が95%の子供を出産する、この事実は変わらない。
若いうち産まなくていい歳になって子供が欲しくなっても間に合わないのだ。物理的に。
だから早く産め、とは言えない現代だが、そうしやすい環境を社会が作ることは大事。
年食って自分第一で生きている年寄りは最低だ。絶対そうはなりたくない。
結婚しなくてもどうどうと産める社会、産んだ後は社会で育てる、
そういう努力は必要だよ。
・序論 文明史的スケールの問題を前にした未来予測 内田樹
・ホモ・サピエンス史から考える人口動態と種の生存戦略 池田清彦
・頭脳資本主義の到来
――AI時代における少子化よりも深刻な問題 井上智洋
・日本の“人口減少”の実相と、その先の希望
――シンプルな統計数字により、「空気」の支配を脱する 藻谷浩介
・人口減少がもたらすモラル大転換の時代 平川克美
・縮小社会は楽しくなんかない ブレイディみかこ
・武士よさらば
――あったかくてぐちゃぐちゃと、街をイジル 隈 研吾
・若い女性に好まれない自治体は滅びる
――「文化による社会包摂」のすすめ 平田オリザ
・都市と地方をかきまぜ、「関係人口」を創出する 高橋博之
・少子化をめぐる世論の背景にある「経営者目線」 小田嶋 隆
・「斜陽の日本」の賢い安全保障のビジョン 姜尚中