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「自分が機嫌よくいられる場所」を見つけよう
「最悪の時代」を生き抜くためのウチダ流哲学
【本書の内容】
特に今の若者たちはほんとうに厳しく、生きづらい時代を生きていると思う。
僕が10代だった1960年代は明るい時代だった。
米ソの核戦争が始まって世界が滅びるのではないかという恐怖が一方にはあったが、そんなことを日本人が心配しても止める手立てもない。
「どうせ死ぬなら、今のうちに楽しんでおこう」という半ばヤケクソの、ワイルドでアナーキーな気分が横溢していた。
だから、自由で、民主的で、いろいろな分野で次々とイノベーションが起きるとても風通しのいい時代だった。
それに比べると、今の日本の社会はとても風通しが悪い。息が詰まりそうだ。
誰もが「生きづらさ」を感じている。世界は移行期的混乱のうちにあり、あらゆる面で既存のシステムやルールが壊れかけているのに、日本の社会はその変化に柔軟に対応できず、硬直化している。
当代きっての思想家・内田樹が、この国の閉塞感の原因を解きほぐし、解決のヒントを提示する。
巻末に「あとがき リーダビリティとは何か」を加え、待望の文庫化!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
本書は現代社会に蔓延する「生きづらさ」を緩和するために、政治や教育における最善の選択肢を提示し、想定されうる暗い未来について思考が停止する日本の国民性については批判的に書かれている。本書では「生きづらさ」を、自分の機嫌が損なわれる場所にいることで起こる心身の不一致と定義している。本書では「生きやすさ」について直接語られることはない。なぜなら文中で列挙されていた「生きづらさ」やその要因を再考し、解消していくことで、心身のズレが修正され、自由度が増し、その結果生きやすくなるという筆者のメッセージだからである。そして我々は後の世代へ「生きづらさ」を残してはいけない。
Posted by ブクログ
学生時代、政治社会学やガバナンス、政治思想哲学だとかに関心があって、内田先生の『ためらいの倫理学』を読んだ。
その本が面白かったのと、本書の帯の紹介文にそそられて買った一冊。
自己啓発本は苦手だけど、「風」なタイトルなだけで、実際の内容は現代政治思想史に近いかなと思った。
雑誌や新聞への寄稿を集めて一冊の本にしているもので、明確な起承転結があるわけではない。
気に入った文をまとめておく。
P222-223
〈生き延びる方途は皆さんが自分で見つけるか、創り出すなりするしかない。
(中略)
そして、その選択の成否については自分で責任を取るしかない。誰も皆さんに代わって「人生の選択を誤った」ことの責任は取ってはくれません。〉
p260-261
〈人は誰も平等であるべきですけど、その理想を実現するためには「自分には他の人よりも多くの責務がある」という自覚を持つ人間が要る。貴賤の差のない世界を実現するためには「ノブレス・オブリージュ(高貴であることの責務)」を感じる人が要る。自分には他の人より多くの責務があると感じる人がいなければ、この社会を住みやすいものにすることはできません。〉
p280-282
〈人間が「落ち目」になるのは、単に金がないとか、健康状態が悪いというような理由からではない。これからどう生きればよいかわからなくなったときに、人間は毒性の強い脱力感に囚われる。
・・(中略) ・・
日本が「落ち目」になったのは個人の努力と国力の向上を結び付ける回路が失われてしまったからである。
・・(中略) ・・
日本が「落ち目」だということについての国民的合意が形成され、なぜそうなってしまったのか、そこからの回復の方位はありうるかについての自由闊達な議論が始まらない限り、この転落に歯止めはない。〉
p285-286
〈日本人にとって、気が楽になるとか、心持ちが落ち着くとか、肩の荷が下りた気がするとかいうのは「自由を達成した」からではないんです。すべての外的な干渉を退けて、自分の思いの通りのことを実践するということを日本人はほんとうは望んでいない。それよりは、ほっとしたい、気楽でいたい。
集団のなかにいると、さまざまな相互に矛盾したり対立したりする要請を調整しなければならないということがあります。それがうまく折り合って、「落としどころ」に話が落ち着いたときに、日本人は解放感と達成感を覚えます。
(中略)
もろもろの干渉が相互に相殺さらて、一種の「ニュートラル」状態を達成したときに、日本人はなぜか深い満足感を覚える。これはどう考えても、ヨーロッパ的な「自由」とは似ても似つかぬものです。〉
p289-290
〈「相容れない立場をなんとか折り合わせる能力」こそが列島住民が生き延びるために優先的に開発してきた資質なんですから。列島民たちはそういう生存戦略で2000年くらいやってきたわけで、いまさら変えろといわれても無理ですよ。
(中略)
日本人は「調和」のうちに安らぐことを、ヨーロッパ人が「自由」のうちに安らぐことを求めるのと同じくらいに切実に求めているのであって、それはそれで一つの「種族の文化」だと僕は思っているのです。〉
なにかを悲観するにしても楽観するにしても
自分自身が立つ場所の背景や特性を理解した上で、思い至りたい。
そう強く思った一冊。よかった。
Posted by ブクログ
「生きづらさ」って、自分の内面についての本かと思って手に取ったけどそうではなくて。
今の社会って、生きづらいよね、という感じ。
著者が色々なところで掲載していたエッセイや対談をまとめた本。ぱらぱらと読めるけど、時々思想強めと感じたり。
以下メモ
・家事は他人の身体を配慮する技術。他者の体が経験する生理的な快適さを想像的に先取りする能力。
家事が好きだと思えたとき、それは娘がいたとき、親がいたとき。
・若い人たちは「株式会社みたいな制度」しか経験したことがない。トップが方針を決めて下がそれに従う、彼らがそれを自然で合理的なシステムだと信じても責められない。
・ハラスメントは古仏語harace(追跡)に由来する。猟犬に追われた獲物が感じる、倒れるまで終わりなく続くきわめて激しい疲労
MeToo運動を単なる「セクハラ狩り」に矮小化してはならない。この運動は、あまりに日常化しているせいでそれと感知されない暴力的な支配--被支配の関係を可視化するものである。
・水道の民営化
・日本の学生に欠けているのは、自分と価値観も行動規範も違う「他者」と対面したときに、敬意と好奇心をもって接し、困難なコミュニケーションを立ち上げる意欲と能力。学校で子どもたちが身につけてきたのは、自分と価値観も行動規範もそっくりな同類と限られた資源を奪い合うゼロサムゲームを戦うこと。
・元号を使う理由
時間を区切ってみせる、区切らないと落ち着かない。
区切って見せた後で、あたかもそこに決定的な時間断絶が存在したかのように区切りの前後でふるまいを変えてみせる。
まず区切りをつけてから、事後的にその区切りに「リアリティ」を付与する。
・日本人が求めているものは「自由」ではない
すべての外的な干渉を退けて、自分の思い通りのことを実践するということを望んでいない。そんなの大変そう。それよりはほっとしたい、気楽でいたい。求めているのはある種の「調和」。
Posted by ブクログ
サンデー毎日の政治に関する連載のまとめ。政治に関するコラムなので、時事的には少し古いものもあるし、情勢予想として外しているものもあるのだけれど、根本にある日本政治の問題点に関する指摘は今でも通じる。
大して変革もせずに古い制度にしがみつき、かつジリ貧になるなかで、少しでも得しようという感覚に溢れた現代社会。株式会社化が社会の全面に渡って展開され、学校、大学、行政、地域社会が効率を重視して運営されている。結果として日本の基礎体力を奪い続けている。日本はストックで食べているところが大きいと思うけど、そろそろそのストックも尽きてしまう。
何とかしなければいけないのだけれど、簡単な解決策に飛びつかず、一歩ずつやっていくしかないんだけど。
最後にミス・マープルが家から出ずに自分の記憶や周囲の人間関係からのアナロジーから行う推理方法こそが新たな発見のためのキーという話は面白い。一見関係ないところに関係をつくることで知的衝撃が走る。意識して考えてみたいと思う。
Posted by ブクログ
内田さんの書かれたものを読むと、どこかで同じようなことを言われていたなあと思うことが多いのだが、でも読んでいて面白い。
本書では時事ネタが多く取り上げられているが、それらについて書かれた文章は、ともすると後になって読むと古いと感じることも多いのだが、そんなことはない。ある出来事や事象の奥にある真の問題点にまで内田さんの考えが届いている上に、それを納得させる文章術の妙があるからこそ、今でも興味深く読ませるのだと思う。
また、これは不幸なことではあるのだが、本書のタイトルの「生きづらさ」が、今も大きくは変わっていないことにも拠るのだろう。例えば、本書では安倍政治への批判的文章がある。その安倍さんは亡くなった。しかし、いわゆる安倍政治的な政治は、今の自民党政権下変わらず続いている。それが問題だ、変えようという動きも、政界からも国民からも大きくは出てきていない、例えばそんな状況。
あるいは、公共的なものがどんどん減って、至るところどれだけ儲かるで考えるようになってしまっている状況(都市の再開発はもとより、教育、医療の分野まで)。
グチばかり言っていても仕方がない。自分のできることを、少しずつでもやっていくしかない。.
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ビジネス・実用
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