阿部公彦のレビュー一覧
-
-
Posted by ブクログ
事務という身近なテーマに興味を惹かれた。
文学作品や作家に焦点を当て、事務との関係性を章立てしながら説く。
文学という一見事務のような形式的で冷たい印象からかけ離れた題材にも、事務らしさから発せられる魅力を垣間見ることができる、事務の深淵さに触れたような心持ちになる。
「注意の規範」というキーワードが提示される。事務は矮小化された部分への注意によって成立する。その徹底により成り立つ作品もあれば、そこからの逸脱が表現される作品もある。事務という基点から考察する作品の魅力に気付かされ、まだ未読なものがほぼだが早速読んでみたいという気持ちになった。
個人的には第4章「ガリヴァー旅行記」の情報処 -
Posted by ブクログ
ネタバレ今から3年前2019年、当時の首相による日本学術会議の会員任命拒否問題は、政府による自由・学術・教育に対する介入であると大変な危機感をつのらせることになった出来事でしたが、自分の周りでこの件について同じようなことを考えていたり意見を交換したりということがあったのは、小学校教員である友人ただ一人との間でした。
そこにあるものの不穏さを感じ取った人が自分の周りにはあまりにも少なかった、と思います。
それから現在までを振り返ってみるとたった3年の間に自由というものがとても堅苦しく緊張の伴うものになってしまっており今なお進行形であると感じます。
気づいたら周りから固められてて自分は奇特な意見を述べる -
Posted by ブクログ
一部ネットで嫌われてそうな論客たちからのメッセージ集。みなさん、日本から少しずつ自由が奪われていると危惧している。
ある一面の行動・発言が切り取られて批判されることが多い方々だが、その考えに直に触れると、国の在り方や自由について真剣に考えているのが分かる。
例えば表現の不自由展に携わった津田大介氏。近年、アートの世界では政権の意向に沿った展示しかできなくなってきたと言う。意向に反せば、補助金が下りないなど不自由を強いられるそうだ。
詳しく知らないが、おそらく、この展示は慰安婦像などを展示するのが目的ではなく、賛否両論のものを公の場で示すこと自体が目的だったのではないか。こうした国の動きに対 -
-
-
-
-
Posted by ブクログ
大学入試改革で「論理国語」と「文学国語」を分けていることから、文学は論理的ではないと国や経済界は思っているのではないかと感じる。
しかし、文学(小説)を解するためには徹底的に論理的に読む必要があり、文学に論理性がないとは到底いえない。また論理国語とされる試験問題からは、文章の意味は一義的に定まるという考えが読み取れるが、そもそも人間の用いる「ことば」というものは複雑で、文脈や時代の情勢を織り込まないことには意味が正確に取れず、また受け手側のスタンスによっても意味の取り方が変化しうる。
そのため、文学を取り出して囲い込むことは幾重にも間違った政策判断であるように思える。
以上が本書を読んだ感想で -
-
-
Posted by ブクログ
芥川賞や直木賞なんて世界の文学賞のうちに入るのだろうか?日本の作家が書いた日本語の小説しか対象になっていないのに。なんてことを思ったけれども、読んでみました。今年も話題になっているのは、もちろんノーベル文学賞。村上春樹さんがとるかどうか、メディアで騒がれました。この本を読むとわかるのですが、その根拠になっているのがカフカ賞。この賞をとった人が二人、ノーベル文学賞をダブル受賞しているんだそうで、まだ受賞してないのが村上春樹なんだそうです。カフカ賞はチェコ語の翻訳が一冊は出ていないと受賞できないそうで、村上春樹がとった2006年は『海辺のカフカ』が翻訳された年。タイトルがよかった?
そのノーベル -
Posted by ブクログ
学習指導要領、コロナ予防接種の注意点、広告、賃貸契約書などの文書の特徴を詳細に分析し、その分析をもとに文学作品(「坊ちゃん」「渋江抽斎」「卍」「蹴りたい背中」など)を解剖していく。
本としてもはじめはとても面白く、学習指導要領から読み取れるお役所気質(「議論するつもりはないのです。文句など言われたくない。ただ従ってもらいたい。だから弱腰になるような態度はとりたくない。」P29)は、その通りだなと膝を打った。
が、文学でない文章の分析があまりに続くと飽きてしまう自分がいる。なるほどと思いはするが、文学の文章のように面白くないし、分析すること自体に喜びがない。その特徴や性質を掴み、それを文学作品 -
Posted by ブクログ
事務のワードに釣られました。宇宙の影の帝国である事務がいかに文学を侵食していったかについて、文系先生(差別とかじゃないです!)による評論です。現国教科書の評論文のところに載っているような感じです(悪口じゃないです!)。
こういう本は久しぶり。良く言えば縦横無尽、反対に、思いつきで大雑把とも感じます。私には難しく、理解困難な感じです。
全12章、1・2章は「夏目漱石と事務」です。漱石ファンは必読でしょう(たぶん)。
3章は、事務と言えば注意力、注意力と言えば発達障害、と展開します。なんか風が吹けば桶屋が儲かるを思い出します(バカにしてません!)。
飛んで、9章エクセル思考で小説を書く -
Posted by ブクログ
文学者による、小説の読み方が分からない、という人に向けた読み方指南書。とは言いつつ、やっていることは、とてもお手軽で、より本を面白く読む上でとても参考になった。
著者は、小説を読むときの方法として、本文を「いじる」ことをお勧めする。ここで言う「いじる」というのは、思わず「なんじゃこりゃ?」と言いたくなる部分に、鉛筆で記しを付けて、どこがおかしいか、忘れないようにコメントを書き込むこと。難しい小説ほど、意味が分からず、先に進むのが面倒くさくなってしまうのだが、まさしく、そうなってしまう原因の部分に「どうしてこんなふうになっているんだろう?」「どうしちゃったの?」という疑問をぶつけて、その異様さ