「目的」は遊びの大敵
という小見出しが出てくるが、この部分こそ本書の中核をなす本質だと感じた。
ボードゲームを知らない人向けの紹介レポートとして、6人の有識者による実際にボードゲームを遊んでみたレポートも収録されているものの、
その部分は付録的なものであり、挙げられているゲームも世の中に無数にあるう
...続きを読むちのごく一部でしかない(批判しているのではなく、そもそも良作を挙げたらキリがないし、読書と同様に人によって向き不向きや相性もあるから一概に言えない事情もあるかと思う)。
現実社会においても、
事前に設定された「目的」に縛られてしまった途端におもしろくなくなる、という現象が観察される場面は少なくない。
仕事でも、スポーツでも、過度に「目的」に縛られると単なる作業と化してしまい陳腐化する。
明示的でない、自ら設定する裏テーマがあって初めて生き甲斐に感じることができるのは
多くの人にとって思い当たるところがあるのではないかと思う。
本書は、そうした社会現象の縮図を、
誰か特定の人に具体的な責任を負わせないファンタジーとして追体験できる環境を与えてくれるのが
アナログゲーム(ボードゲーム)である、と指摘する。
あくまでも遊戯(ゆげ)に徹するところに意義があり、
そのことを体験すれば、現実社会における振る舞いを自ら振り返って見直すきっかけにもなる、
と説明している。
実際の感じかたは人それぞれだろう。
それでいいのだ。
コロナ禍を経て加速しているボードゲームブームの背景には、
コミュニケーションの枯渇を補うツールの需要が急激に高まっているのかもしれない。
ボードゲームを単なる遊びで終わらせず、
人生の幸福度を上げるツールとして活用するアプローチを積極的に提案し、その構造を深掘りしながら平易に提示する良書。
とても共感いたしました。