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Posted by ブクログ
『平成史』を読んで、興味を持った與那覇さんの著作。インタビュー、書評、時評を集めたものなので、歴史学界隈の人々や状況への怒りのような通底するものはあるものの、一冊の本として一貫したロジックは薄い。一方で、公開された文章の集まりから、鬱病から回復し、教員職を辞して学会から距離を取り、文筆家としてポジションを確立しようとある意味踠いている様子はよくわかる。歴史学の業界からは相当に煩さく思われているのではないかと思うのだが、こと「歴史学」に関しては、単なる古文書の解読に過ぎない実証主義を批判し、歴史学を現在の社会や個人の行動において過去の学びから何を提示すべきかを問う学問であるべきと著者は規定する。そこに嫉妬や個人に対する先入観が混じっていないかは疑問ではあるが、そのポジションを選び取り、強く批判する側に敢えて回っているように思う。そのベースとなるのは、鬱病となるまで突き詰めて考えたという経験と、『平成史』という世に問うた大作であるだろう。
ひとつ本書で繰り返し論点とされるのが、コロナ禍において行動の制限を躊躇いなく行った政府と、唯々諾々と受け入れたメディアを含む日本社会に対する、それでいいのかという怒りを伴う問いかけである。日本は人口当たり死亡率などコロナの影響度が相対的には少なかったにも関わらず、過度に政策を安全側に振り、それでいて誠実な説明と備えもなく経済活動を含む社会面で後々まで悪影響を与えるものを今だけの雰囲気で受け入れたというのだ。この本はコロナにおいて最大の影響があった2021年夏の第五波の前に書かれたものではあるが、今でもなお與那覇さんは同じ主張を繰り返すことだろう。
コロナ対策においては、たらればの話も含んでしまうし、戦力の漸次的投入を避けるべきだという戦い方の選択の問題でもあるし、いつまでもマスクを外さないという日本の社会的特性の問題もあり、単純な答えもなく万人にフェアな結論もない問題ではあるが、歴史学者としてひとつの確固とした主張を行っていることは評価できると思う。
実際にコロナに罹って重症化してICUで人工呼吸器につながれた身としてもし言うとすると、それでも日本の自粛対応は過度であったとも思うのである。それでもなお、あれ以外の方法はなかったのかもしれないとも思う。もし今やるべきことがあるとすれば、きちんとこれまでの対応を検証することと、日本の医療環境や地方自治体・政府のDX化も含めて見直すことではないだろうか。
敢えてお薦めする本ではなく、與那覇さんの本を読みたければまずは『平成史』など他の本を読むべきではないかと思う。ただ、與那覇さんの強い個が見える本ではある。
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