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戦争、疫病、貧困と分断、テクノロジーと資本の暴走――歴史はかつてなく不確実性を増している。「転換点」を迎えた世界をどうとらえるのか。縮みゆく日本で、私たちがなしうることは何か。人類最高の知性の目が見据える「2035年」の未来予想図。
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Posted by ブクログ
コロナ禍とウクライナ戦争で、世界の経済のグローバル化は減速した。だが、世界の経済のグローバル化はこれからも持続していくだろうという。SNSが普及して、これからに必要なのはリテラシー教育らしい。「未来の自分に利他的になろう」というメッセージには共感した。急速に物事が変化していく時代に、生涯学び続ける姿...続きを読む勢を持ちたいと思った。
世界の頭のいい人たちからコンパクトに要点教えてもらおう!という、ある意味とても今っぽい本。中公新書で出た企画が成功したので、後追いという印象もある。 後追いとはいえ、世界は変わっており、最新の状態を前提にスピーディに新書化してるので、つまらないということはない。 今回はコロナとウクライナを前提に話し...続きを読むている。 複数の人が話し、それをまた複数の人が感想を言う二重構造で議論が深まっていて良い。 学ぶとは考える体験であり、時間がかかるためデジタル化やコスパとは相容れないないという言葉は印象的。 多元的に考えるという言葉一つでも、人によって表現が違い、印象も変わる。 読後は「もっと本を読もう、ネットは減らそう」となった。
『エマニュエル・トッド』 (2022年現在、今後の世界情勢について)私は歴史家が本職。でも歴史の話はまったく役立たず。なぜなら、私たちが経験しているのは、まったく新しい何かだから。 歴史と違う点 ・20世紀初めは各国人口増加したが、今は中国も含め減少する見通し ・冷戦時は、ロシアとNATOが直接対決...続きを読むしたことはないが、ウクライナ戦争は、核使用が現実味を帯びるロシア対NATOの本物の戦争 ・プーチンは独裁者だと言うが、ヒトラーや、ムッソリーニ、スターリンと違いイデオロギーが無い折衷的で多様な独裁者 ・各国国民は超個人主義になった。それはロシア国民も同じ。だから国家間の経済紛争や戦争が行っているのにどこの国民もここです。だから参加したがらない33 中国に選択肢は無い。どうしたってロシアに加担せざるを得ない。一方、新興国のインド、トルコ、イラン、パキスタンなどは今後の世界を決める立場になる。しかも彼らは先進国を好きじゃない(旧植民地だから)。それにこれらの国は強烈な父権制文化の国で、女性解放などの先進国の理論には興味を示さない。彼らに選択を迫るのは危険だ39 『マルクス・ガブリエル』 ロックダウンシステムは「近代史上で初めて世界が中国を真似たシステム」。直ぐに見直されたが。56 コロナ禍で分かったのは「国境無き世界」はまだ存在せず、相変わらず「国民国家」が世界の潮流だという姿が炙り出されたこと。結局どの先進自由民主国も、マスクやワクチンを奪い合い、国家内の医療保険制度の範囲に壁を作った57 SNSでは、自由民主主義の水準に達する会話は成立しない。「Twitterで誰が大統領になったのか」を忘れてはいけない。(ガブリエルはコロナ禍の中でSNSアカウントを消去した)71 アイデンティティーで人を見るのは間違っている。例えばジェンダーの問題で、相手をノンバイナリーやクエスチョニングの人として見るのは道徳的に間違い。なぜなら見解の是非を「相手のなかの人間性を見て判断」するのではなく「その人のアイデンティティーを見て判断」しているから。ここで言うアイデンティティーとはジェンダー、人種、国籍など72 SNSでフェイク認定されてBANされる、といった国家が行えば「言論統制」と大問題になることを、Twitterなどの一企業が行っていることは異常 與那覇98 「現代に歴史は参考にならない」は賛成。無文字社会から文字社会になり、歴史は「記憶=暗唱」⇒「記録=叙述」になった。そして現代、歴史は「データ=検索」の時代になってしまった。必要な時に歴史を「つまみ食い」する。私は「歴史家」という肩書きを辞めて「評論家」になった。與那覇109 「日本はアジアで唯一の先進国」というパターナリズムをそろそろ捨てるべき。技能実習生というシステム自体が「途上国人を勉強させてやる」という建て前で成り立っている。これを「人口減少で衰退する日本の生活を維持するため『お手伝いに来てもらっている』」と正直に改めるべき。與那覇119 グローバリゼーションの原因のひとつは「道徳にとらわれない自己利益の追及」だ。「これは禁止されていない」「法的には間違っていない」と経済活動する。これは道徳を外部委託している(政府や行政たけが担っている)ことが関わっている。しかし難しいのは利益追求と道徳がトレードオフになっていて、解決法が見つからないこと。ミラノビッチ167 アフリカや南米、一部のアジアの国で見られるような極端な貧困や低開発がなくなった世界ができたとする。おそらくそうすると、より人々の交流が活発になるのと、各国内(先進国)の格差問題や不平等の縮小が起こると予想できる。ミラノビッチ186 「リープフロッグ現象」先進諸国が経験した段階を「蛙飛び」にして新興国で特定の技術やインフラが先進国より速いスピードで整備、浸透すること。アフリカでは銀行口座持てなかった人々が電子マネーを使い、物資が行き届かず餓死者が出てた村にドローンでモノが供給されたり、携帯ゲームで教育が普及したりしている224 ジャック・アタリの「ポイズンフードをやめよう」「ナチュラルなものを接種しよう」という主張に疑問。アフリカでは虫害や干ばつに強いので遺伝子組み換え大豆が人々の命を救っている。反ポイズンフード思想を先進国の理論で、無自覚に、急速に強要すれば反論と大混乱を招く。小川227 SNSは秒で情報を得られるが、「考える」ことが出来ない。《人新世の資本論》は面白かったが、結論の「一人ひとりが考えて立ち上がるしかない」が不満。本当に今必要なのは「一人ひとりが立ち上がるために、人々に啓蒙や教育をどう届けるか」という方法論だ。東229 AIの恋人が出来たとする。長いあいだ恋人として会話したけれど、ある日、実は会話はアルゴリズムだったと発覚する。その「恋人」に「今まで会話してくれてありがとう」と言えるか。多くの人は「裏切られた」と思い結婚詐欺に遭ったと同じように感じるのでは?東239 私は「人々はそんなに理解しあわなくてもいい」と心から思っている。「理解しあえなくても共存できればいい」と考えるのが大事。この考えは人類が共存しあえる社会を作れる可能性がある。それに自分や自分と同じ考えのグループが、危機に陥って解決策が無い時、自分たちの思想が破綻したときに、全く想像もつかない「別の考え」を得られるリスクヘッジにもなりうる。小川240
いずれの登壇者も中国を(アメリカも)過大評価せず、いずれたち行かなくなると考えている。また今後注目すべきインドについての見解が興味深かった。 アタリ氏の「未来の自分に優しく」は、まさにその通りである。
考え方、捉え方の好き嫌いはあると思うが、ガブリエル、トッド好きはすんなり読める。対談内容を日本人がさらに評論するという形式は面白い。本人がいないので忖度もなく好き勝手(良い意味で)言える。 4人の主要な意見はもちろん勉強になるが、それでもその道を本業とする人たち固有の考え方の特長があるように感じる(...続きを読む翻訳も影響すると思うが)。広い知識を持ってしても、どこかに嗜好、好みが出てきて面白い。
並行してエマニュエル・トッドを読んでいたのでその理解が深まったが、やはり複数名を一冊に取り扱うようなダイジェスト本だと論説の中身が浅い。広く浅く、まずは関心を、がコンセプトなのだろうからそこで文句を言ってはいけないのだが。本書に関しては、先の賢者たちの言説紹介よりも、後半の日本人同士のセッションの方...続きを読むが面白く感じた。 與那覇氏。「よなは」。と読むらしい。この方の発言で、「民主主義は皆が理性を働かせ、今より良くなっていくことを建前としている」のだから、「ニヒルな人間不信とは相性が悪い」という内容に共感を覚えた。ニヒリストは、もの凄く大きな権力とか構造に対して諦めてしまい、民主主義を放棄しがちだ。しかしこれは程度問題であり、誰しもニヒリスト的な一面を持つし、常にロマンチストではいられない。具体的な行動としては、例えば投票権を放棄するという事。世界を変えようという希望を失わない人間だけが政治に参加するともいえるし、為政者側は、圧倒的無力感を大衆に与えれば、支配力を向上させられるともいえる。ドキリとするが、今の日本はどうだろうか。我々の敵は、与えられたニヒルという心理操作にもあるのかもしれない。 何に投票しても変わらない。この状態は圧倒的無力だが、我々の意識はそれよりも目の前の「スマホ」に集中し、絡めとられている。その事について、マルクスガブリエルは、ツイッターやフェイスブックを「反民主主義的存在」と批判的である。教養ある人々ですら、過激化したり、陰謀論に走ったり。大衆の注意力は散漫となり、言論は空砲のようにネット上に放たれる事で現実世界には一時的に行使されるが、持続性を持たない。ネットとリアルの結節点が脆弱だ、というのは、ネットの聴衆が既成の現実世界では権限を持たなかったり、ノイジーマイノリティを含んでいたりと。先の都知事選ではネットの影響を見たが、しかし、まだ現実世界、既得権と戦うには足りなかったのである。 ガブリエルは、SNSを「民主主義の敵だ」とした。これに関しての與那覇氏の意見も面白い。SNSを通じて会話や議論を続けるかぎり、極端な主張ばかりが増幅されてゆき、中間的・中道的な思考は両側から攻撃されて衰弱してゆくという力学が働く、と。リアルな付き合いが重要なのは、「偶然性」があるから。リアルであれば、地元が一緒というだけで、異なる意見も包摂される。しかし、ネット上では、そもそも同意見である事が結束理由になるから。ゆえに、意見が増長され、原理主義化していく、というのは私もどこかで書いたが、全く同感である。ここで言う偶然性とは、意図的ではない所与の前提の事だったはず。意図して集まるのは宗教的だ。だから分断は宗教論争を起こす。 異なる意見や考え方と共に生きる。多様性で許容したふりをしつつ分断するのではなく、いかに折衷案を見出していくか。素朴に考えれば、なんだこれが民主主義ではないか、という事である。私にとって、本書の白眉は與那覇氏であった。
個人的に未来予測ものには目がないです。 特に4名中3名(エマニエルトッド、マルクスガブリエル、ジャックアタリ)が好きな方でもあり、読まない訳にはいかないと思い、手にとりました。 正直、インタビュー形式の為、特に目新しい情報がなく、ちょっと残念なところです。 総じて、中国は↓ インドは↑日本はリ...続きを読むップサービスで気持ち↑ という内容でした。
トッドさんが好きなので買いました。以下引用ではないのですが、 「第一次世界大戦、第二次世界大戦と現在起きている紛争は違う。前者は人口が増え、成長している世界で起きた。現在は衰退国の戦争である。本質的に全然違うものである。現在は国民の意思と乖離し、政府が戦争をしている。」 納得。だからどうなる、という...続きを読むところまでは落とし込めていません。歴史学者のトッドさんでさえも未知の領域なのである。そのうち考えをまとめてくれないかな。
海外の有識者2人への個別インタビューに対して、国内の有識者2人が討論するという面白い構成。 各国のコロナ対策の是非、ロシアのウクライナ侵攻に対するスタンスなど、インタビューを掘り下げていくと、有識者によって意見の食い違いがあることが分かり、国籍や立場によって複雑な事情があることを理解した。 SNSや...続きを読むデジタル技術によって、人々が「単純化」された理論への志向が強くなり、少しでも異質なモノを見つけ次第排除しようとする傾向は、私自身も含め危惧している。リアルの交流が減ると、ついつい異質な他者を排除できるからだ。ただし、同じ価値観を共有できるほど、社会が単純ではない。 人間は不確実で不完全な生き物。理解できない行動は誰にもある前提のもと、「agree to dissagree」のマインドを意識したいと思う。 例えば、これまで読んだことの無いようなジャンルの本やニュース記事を読むとか、賛成出来ない意見に少しだけ耳を傾けるとか。そこまでやるのが苦痛であれば、価値観の合う人(仲の良い友人や家族など)と、自分の間にあるビミョーな違いを探して見るのも良いかもしれない。もちろん、アラ探しではなく、良い関係を維持したままが望ましいが。
4名の著名な知識人へのインタビューと、それを踏まえた日本の知識人による論評という構成。日本の知識人の方々は、確り自身の意見を述べていて好感が持てた。 また4名のインタビューの中では、ミラノビッチ氏の話が面白かった。 曰く、エレファントカーブを見ると、程度の差こそあれ、あらゆる人々がグローバリゼ...続きを読むーションを通じて所得が増加していることがわかる。また、グローバリゼーションに反発するのは、相対的に恩恵の少ない先進国の中産階級だけで、国内政策での対応が可能である。 そう考えると、保護貿易的な政策で中産階級を保護するより、再配分や成長産業への労働力移動を通じた、グローバリゼーションに抗わない政策の方が効果的ということなのだろう。 また、無道徳的な資本主義と道徳的な共同体は両立しない/経済成長しないと絶対的貧困は減らせないとも述べている。 つまり、無道徳的でも資本主義を通じて経済成長を続けるしか道はないということで、現実的な意見だと感じた。(因みに無道徳とは、”道徳・倫理について、内なる規範ではなく、法律などの外部規定に依存する”ことらしく、必ずしも悪いことではない)
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エマニュエル・トッド
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