「ローカル企業復活のノウハウ」 富山和彦著
【本書の概要】
本書は、元産業再生機構のメンバーらが設立した「経営共創基盤」の事業と実践内容について紹介しています。経営共創基盤は、大企業ではなく、各都道府県で事業を営む中小企業を支援しています。中小企業の競争力と利益力を高めるための具体的な考え方と実践論が記述されています。
【本書のターゲット】
本書は、中小企業で働いている方や、クライアントに中小企業がいらっしゃる方にお勧めです。中小企業の経営課題や改善策に関心がある方にも参考になると思います。
【本書のポイント】
本書のポイントは、経営共創基盤が経営分析する際の4つの視点と、情報を集計、分析するときに大切な2つの視点です。
【経営分析の4つの視点】
経営分析の4つの視点とは、事業、組織、ガバナンス、財務です。財務は結果/アウトプットであり、そのアウトプットを高めるインプット要素がそのほかの3つの視点です。具体的には、事業、組織、ガバナンスとなります。
中小企業では、納税のために決算はしていますが、決算の裏側にある数値の実態(事業、顧客、そして仕入れ先、外注先)把握まで行っているケースは少ないです。そのため、経営共創基盤は、経営支援を行う折に、事前準備として情報を整理し、分析します。
その際に重要なのは、以下の2つの問いに答えることです。
•儲かる事業は何か?または儲かっていない事業は何か?
•儲かっている顧客はどこか?または儲かっていない顧客はどこか?
これらの問いに答えることで、事業の強みや弱み、顧客のニーズや満足度、競合との差別化などを明確にすることができます。書籍にありますとおり、これは当たり前のことですが、この当たり前のことを行うということがどれほど重要なのか?も記載しています。
【情報の分ける化と見える化】
情報を集計、分析するときに大切な2つの視点とは、「分ける化」と「見える化」です。
「分ける化」とは、一定の基準をもとに「仕分け」を行うということです。前章にあるとおり、事業であれば、事業別に利益率を算出し、儲かる事業と儲かっていない事業を仕分け、区別するということです。
「見える化」とは、仕分けた結果情報を、経営側で判断しやすい状態に加工することです。書籍では、ウォーターフォールグラフも引用しています。
ウォーターフォールグラフとは、最初の値から最後の値までの数値の増減と内訳をビジュアル的に表現するグラフです。ウォーターフォールグラフは、数字の根拠や構成を説明するのに適しているため、プレゼンや報告などでよく使われます。例えば、売上や利益の増減要因分析、製品別の売上構成、キャッシュフロー分析などに活用できます。
【本書を通じた学び】
本書を読んで、私が学んだことは以下の3つです。
1;分ける、見える化は基本であること。
情報を分けることで、問題の本質や改善の方向性が見えてくる。情報を見える化することで、経営判断の根拠や効果が伝わる。
2;実行、計測、修正を連続させること。
実行しっぱなしにしないこと。経営改善は一回きりではなく、継続的なサイクルである。実行したことの効果を計測し、必要に応じて修正することで、より良い結果を得ることができる。
3;委員会活動をレビューすること。
企業体に委員会(戦略、リスク、ガバナンス)がある場合は、情報源として活用するが有効であること。なぜならば、全社的な経営情報にアクセスできるため、経営判断の一助になるから。委員会は、経営の透明性やチェック機能を高めるだけでなく、経営の効率化やスピード化にも貢献する。
【まとめ】
本書は、中小企業の経営改善に役立つノウハウを紹介しています。経営分析の4つの視点と、情報の分ける化と見える化の2つの視点を理解し、実践することで、中小企業の競争力と利益力を高めることができます。本書は、中小企業の経営に関心がある方にお勧めです。