日本近現代史のB面を炙りだす力作。
かろうじての類書に宮崎学(突破者♪)の諸著作がありますが、あちらはかなりエンタメな方向性。
本作はゴリゴリの研究者の研究成果。著者の名前からすると日系らしいけど、それでも日本の近現代政治史の影を活写するのが米国人って不思議な感じ。頑張れ現役日本人。
維新志士のテロ
...続きを読むから明治の自由民権運動の博徒、大正デモクラシーから昭和初期に猖獗を極めた壮士・院外団の政治的暴力、戦後の政治的暴力の衰退と金権政治の勃興までを、キッチリ通史に仕立ててる。
権威主義的な明治政府の専制的で急進的な執政に、暴動と暴力で対抗した自由民権運動が、帝国議会開設を潮に体制内に取り込まれ、かつて薩長藩閥打倒を旗印に武装蜂起の機をうかがった壮士達が、体制内で相食みあう政党の政争の具に堕落。暴力に拠る政党は国民の信頼を失い、民意の支えを失ない抜け殻のようになった政党では、台頭する昭和軍閥の圧力に対抗しえず、政党政治そのものが倒壊ってあたりが、本書の白眉かと。
本書を読みつつ、令和の世情と議会の先生たちの狂騒を見るにつけ「10年後が心配だぞ」と深いため息ばかりなのです。