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終わりが見えないウクライナ戦争にガザ戦争。トランプ大統領の再選で、自由・平等を基盤とする民主主義がゆらいでいる。ヨーロッパにおける右派勢力の躍進から、選挙のたびに民主主義に亀裂が入っているように見える。社会の現状を的確に分析し、普遍的な価値の意義と日本の取るべき道を問い直す、実践社会学講義。
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Posted by ブクログ
民主主義と資本主義が離反してきているのではないかという問いかけをスタートに、様々な論点から現代社会を考察している.植民地主義と人種主義がガザ戦争に深く関与しているという考察、社会構想論をベースとした交響圏とルール圏の議論など表面的な理解しかできなかったが、興味ある分野でもあり楽しめた.イスラエルとパ...続きを読むレスチナの戦争について仲介役を日本が行ったらどうかという提案.面白いと思った.政府と民間レベルでのアプローチを例示している.政府はパレスチナを正式国家として承認し、民間は双方の側の批判的な抵抗勢力をさまざまな方法で結び付ける.実現出来たら素晴らしいことになるだろう.トランプの登場を冷静に考察している部分も楽しめた.
現在社会で、世界で起こっていることに対して、明瞭で確固とした視座を与えてくれる1冊。 特にアメリカ大統領にトランプが再選された背景の分析が分かりやすかった。 「このままでは、民主党は今後、永遠に勝てないだろう(中略)今後、民主党の大統領が生まれる見込みはない」(p341)との言は恐ろし...続きを読むいが、そうかもしれないと思わされる。 トランプは西洋を内部から、プーチンは西洋を外部から否定しようとしている(pp340-341)という見立てにも納得させられた。 また、アメリカ大統領選に関連して、兵庫県知事選への言及があるのも、興味深い。 斎藤元彦(+立花孝志) vs 稲村和美は トランプ vs カマラ・ハリスと同じ関係(p328)だと言うのである。
「民主主義」と「権威主義」を対立軸として、そのどちらかと「資本主義」が夫婦になるという考え方は面白い。その上で、今まで良好な夫婦関係であった「民主主義」と「資本主義」が離婚の危機?にあるのだという。 そもそも民主主義は、われわれが思うほど、正しくて公平で納得感のある価値観ではないのだと思う。集団が...続きを読む束になり肥大化していく過程で生じる権威主義(世襲的正統化)に対し、選挙という形で門戸を開いたという程度だろう。結局、未だに世襲は多いのだ。勿論、誰しもがチャレンジできる社会を謳う理想は素晴らしい。一方で極めて単純化すれば、これは“多数決“である。 人事採用に「アルムナイ」という言葉、制度があるが、企業が一度退職した元社員(アルムナイ)を再雇用するもの。例えば、ある国がアルムナイを前提に自国民に対し転籍を促したとしよう。選挙権を手に入れて侵入したい国を混乱、転覆させ、また自国籍を復活させるような侵略方法だ。白人以外が欧米の選挙で当選していくように、日本でも日本国籍を得た外国人が当選していく日は近い。これへの忌避感として、民主主義はその崩壊の過程に排外主義を経由する。 国家が国籍を「アルムナイ」化し、影響力の投射を目的として国外に潜在的な工作員として送り込む可能性を想定するとき、民主主義はあまりに無防備である。移民受け入れ、多様性の尊重、政治参加の自由。これらは確かに美しい理念だが、外部からの制度的攪乱のリスクを前提にしたとき、民主制度はどこまで持ちこたえられるのか。 さらに「少数派保護」という詭弁を権威主義や民主主義がどう扱い得るか。非差別や生活保護などの枠組みは確かに存在するが、それはあくまで“最低限”の保障に過ぎない。結果的に社会は、少数派を「保護された存在」として囲い込み、むしろ隔離と身分固定を生み出しているのではないか。保護を名目にした隔離。平等を名目にした不平等。こうした構造的矛盾が放置されたまま、理念だけが善として称揚されるとき、民主主義は自らの内部から脆弱化していく。 結果として、弱者や外国人に対して「排外主義」を掲げる政党が台頭する。この現象そのものが、実は民主主義内部に潜む“構造的必然”ではないか。なぜなら、民主主義は多数決を基本原理としながら、同時に基本的人権を掲げる。ここにすでに論理的矛盾があり、社会的ストレスが増すほど、多数派は「自分たちの利益」が奪われていると感じ、少数派への保護が“過剰”に映る。こうして、多様性や寛容を掲げる民主主義の内部から、価値観的にそれを否定する勢力が合法的に生まれる。民主主義への信頼は、この逆説を十分に扱いきれていない。 ー このおよそ10年に関して言うならば、グローバルなレベルで民主化が進捗しているどころか、権威主義的な体制の方が増加する傾向にある。スウェーデンのヨーテボリ大学の研究所は、民主主義的であることの条件を、「公正な選挙があるか」「人権が尊重されているか」「言論の自由があるか」「法の支配が貫徹しているか」等の要素に分け、それらを指標化し、総合した上で、世界各地の民主主義の度合いを計測している。それによると、2021年、全体として民主的と見なしうる国と地域が89であるのに対して、非民主的な国と地域は90である。つまり、非民主的な体制の方が民主的な体制よりやや多く、しかも地球の人口の70%が非民主的な体制のもとにいる。 ー ユヴァル・ノア・ハラリが『ホモ・デウス』で的確なことを述べている。人々が、民主的な選挙結果に縛られなくてはならないと感じるのは、彼らそれぞれが、他の投票者たちとの間に基本的なつながりがあるのを実感できているとき、そのときに限られる。もし他の投票者たちの感覚が私とはまったく異なっており、彼らが私の思いを理解しておらず、私の死活的に重要な利害に対していかなる配慮ももっていないと私が感じていたならば、私はたとえ百対一で選挙に負けたとしても、その結果に従う必要はない、と感じるだろう。ウクライナ戦争やパレスチナ紛争を、利害関係者の間の選挙によって解決することができない理由も、ここにある。民主的な選挙が成り立つためには、投票者たちの間に、互いの基本的なつながりを実感させるような暗黙の合意、自分と敵対する者も「私のことをも配慮した上で私とは異なる意見をもっているのだ」と実感できるような基本的な合意がなくてはならない。たとえば、基本的な信念や価値観を共有している者の間でのみ、民主的な選挙は機能する。 資本主義は世界レベルで成立し得るが、民主主義は決して国境を越えはしない。本書の感想からは逸れているが、恐らく民主主義の危うさという目線は一緒だろう。民主主義と資本主義の“夫婦仲”が揺らぐ今、改めて立ち止まって考えるための一冊である。
並行して読んでいたハラリの本とテーマがどこかしら被る。 時代背景としてやむを得ないか。 コラム集の形をとっているため、いくつかの塊に分かれる。 1部は民主主義と資本主義が離婚思想、、、全体主義のせい 2部はおたくがテーマ。そこからなぜかジブリ映画「君たちはどう生きるか」の話に。 映画館で観る気はせ...続きを読むず、でも日テレの放送は録画して、そのうち観ようと思ってた。 上映中はネタばれ絶対禁止だったし、その後もそうだと思っていたが、 この本で思い切りネタバレしてる。核心まで。観る気が半分失せた、、、 3部はガザ進行。ジェノサイドと言い切る。私もそう思う。 しかしアメリカはそう思わない。日本もそれにつきあう。。 4部はトランプ旋風そのものが主題。なんだかなあ、だ。1部とつながっている。 とらえどころのない新書ではあった。 第1部 離婚の危機を迎えている民主主義と資本主義 (1) 民主主義の幸せな結婚 民主主義の劣勢?/民主主義の二つの定義/近代民主主義のための「超越論的な条件」 /すばらしい結婚――民主主義と資本主義 (2) 離婚しようとする資本主義 離婚がささやかれる/商品物神・貨幣物神/ローダーデールのパラドクス/資本主義 の下での伝統の「強化」/資本主義の二人目の配偶者/離婚の恐れ (3) 自由――資本主義の魅力の中心 資本主義の優位の源泉/自由の劣化――西側の資本主義における/功利主義の中国 /説明責任の二つの方向/二つの監視社会/中国人だけが…… (4) 離婚の決心がつかない民主主義の運命 民主主義的な決定は必ずしも正義ではない/離婚を受け入れられないと……/グロー バルな民主主義は可能か/結論は離婚 第2部 西洋近代の罪と向き合うとき Ⅰ 市民的抵抗が極端に少ない例外的な国 1 21世紀、世界では「非暴力抵抗」が非常な勢いで増加している 「ママ.クリーニング小野寺よ」/オタクたちの超能力/非暴力抵抗の有効性/日本 社会の極端な例外性/トータルな破局への予感 2 〈世界〉ではなく、セカイで 「フリーライダー」狙い/セカイ系/なぜ非現実になるのか/脱線――『党生活者』の 夫婦とセカイ系のカップル/「認知地図」の歪み 3 「オタク」から「クイズ」へ……しかし…… オタク――〈世界〉ではなく「世界」/この縮減はなぜ生ずるのか/クイズ――「オタクのオタ ク」/それは私への問いかけだった――君のクイズ Ⅱ どうすれば日本は「戦後」を清算できるのか 1 選ばれるのを拒否した主人公 スタジオジブリの『君たちはどう生きるか』/眞人は拒絶した/鬼殺隊に入るのを拒絶 した炭治郎……ではないとしたら/漫画版『ナウシカ』の結末/「現実」と「虚構」/ 選ぶこと=選ばれること 2 「悪」に汚染された者として出発する 類似の先行作品から/拒否の理由/死者との二律背反的関係/「虚構=現実」への逃避 /問題は「その後」である Ⅲ ガザ戦争と普遍的な価値 1 ガザ戦争とは何か これはジェノサイドである/ハマースがロシアで、イスラエルがウクライナなのか?/ガザ戦争の歴史的背景西洋近代の罪悪 2 「交響圏とルール圏」の一形態としての二国家解決 二国家解決の挫折/交響圏とルール圏/ゲマインシャフト・間・ゲゼルシャフト/「カ エサルのものはカエサルに、神のものは神に」なのか? 3 内的な敵対関係 司法改革への反対運動――イスラエルにおける/共通の敵による団結/内的な敵対関 係──ユダヤ人の側/内的な敵対関係──パレスチナ人の側 4 交響性はどこにあるのか? 希望はある/交響性の所在/片目のダヤン 5 仲介者はどこにいる 二つの学生運動――「反ガザ戦争」と「反ベトナム戦争」/哲学のアクチュアリティ/ アメリカは仲介者たりうるか?/ほかにも仲介者がいる、だが…… 6 日本は何をなすべきか――ガザ戦争に対して 敗戦のトラウマ/日本の過ち――植民地主義と人種主義/「善意の犠牲者」だった?/ 西洋の自己批判能力/西洋の偽善/普遍性を律儀に受け取ること/「絶望」から「希 望」へ Ⅳ 西洋近代の自己否定? 1 世界的な大事件は二度起きる――ただし二度目は…… 大事件は二度起きる/トランプが勝った、というよりも……/不可能な極端vs可能な 中庸/最も「大胆な主張」――日本の総選挙まで 2 ふしぎなトランプ支持 反体制運動のノリで/トランプ支持の二つのタイプ 3 ヨーロッパの(自己)否定としてのトランプ 「我々」労働者は包摂されているのか?/既成支配層の欺瞞/寛容な社会の二つの極 限/最も不品行な男が道徳の保守者になる仕組み/マスコミはマスコミゆえに拒絶さ れた/なぜ小児性愛なのか?/ヨーロッパの否定/ならばどうすべきか?
分厚い新書だが、雑誌連載のまとめということである程度の連続性を持ちながらも読み進めるにそこまで苦労しない。サブカルだったり、気になるが著者著作が引き合いに出されたりしながら、時事的な話題に振れつつ思索を進めるという形で、時間を経て読み返すにもよさそう。
現状分析や歴史的な部分の分析はさすが。ただ、「べき」論になり未来について語り始めると荒唐無稽の感が否めない。
月刊誌『一冊の本』に掲載された時事的な評論をまとめた本で、前著『この世界の問い方』の続編。今回は2022年12月~2025年2月の評論。 主題は「西洋近代のその功罪」で、著者は、現在を大きな歴史の転換点と捉えているが、それを規定している原理や法則が何かということを、時事的な評論を通じて、理解する作業...続きを読むを推し進めようとしている。 1.「離婚の危機を迎えている民主主義と資本主義」 かつて東西冷戦を勝ち抜いたことで、西側陣営の資本主義・民主主義は最良の選択と思われ、資本主義と民主主義は車の両輪だと信じられてきた。 それが21世紀に入り、かつての社会主義体制の生き残りの共産党一党独裁を維持してきた中国の「権威主義体制」が、資本主義を我がものとし、驚異的な経済成長を成し遂げた。西欧の産業革命を別にすれば、中国の経済成長は、人類史上最大の経済的ブレイクスルーと言える(日本の高度成長と比較してもスケールにおいて遥かに凌駕している) そして西側の民主主義的資本主義と中国の権威主義的資本主義とを比較した時に、どのような差異があるのか? その差異はわずかで、西側のそれは、少しだけ余分な自由を与えているだけではないのか? そのわずかの差は、中国の一党独裁を内側から崩壊させるような不満を、人民の中から生み出しはしない。また中国は極端な監視社会と言われているが、よく考えてみれば西側の資本主義でも状況はあまり変わらない。GAFA(ガーファ)と呼ばれるアメリカの巨大IT企業も、インターネット上の活動から個人情報を収集し、そこから利潤を得ている。西側の資本主義の中にいる我々が、中国の監視社会の人々よりも、自由だと思ったら大間違いだと著者はいう。そして、詳細は省略するが、国民国家の民主主義は、必ずしも「自由」や「正義」に合致した決定を導き出すとは限らない例も多数ある。 ただ、いろいろと問題があったとしても、我々が、なお民主主義を最良の政治形態であると見るならば、民主主義は資本主義と離婚しなくてはならないと、著者はいう。では、再婚相手は・・・? 2.「西洋近代の罪と向き合うとき」 (1)ガザ戦争に見る植民地主義と人種主義 ガザ戦争が複雑なのは、ここに西洋近代の二つの罪(植民地主義と人種主義)が重なっているという。著者は、ガザ戦争の歴史的背景から説き起こす。 かつてナチスはユダヤ人を差別し、その存在を抹消しようとした(ホロコースト)。ヨーロッパの人々は、ユダヤ人をかくも激しく排除した人種主義(ナチズム)を、自分たちが生み出したことに大きな罪の意識を覚え、その償いとして、第2次世界大戦の戦勝国(国際連合)が、ユダヤ人にイスラエルの土地を与えた。しかしこの場所は別の民族、主にイスラム教を信じるアラブ人が何百年以上も住み続けた土地であり、それをあたかも自分たちが自由にできる土地であるかのように、ユダヤ人に与えた。 これは植民地主義の手法である。植民地主義には、しばしば人種主義(人種差別)が随伴している。植民地における先住民や奴隷の支配・搾取は、人種主義によって正当化される。イスラエル建国という植民地主義も、人種主義とセットになっている。アラブ人への人種主義的な差別や排除という形で、それは実践された。 ユダヤ人は、ヨーロッパの極端な人種差別に苦しめられたが、そのユダヤ人が今度は、パレスチナで人種差別による「ホロコースト」を実施している。 パレスチナ問題の解決策は、パレスチナを主権国家として承認し、そのパレスチナ国家とイスラエルが平和共存する以外に解決策はないと、著者は断言する。 しかし、現在のイスラエルのネタニヤフ政権もハマスも、この考え方を完全に拒否している。果たして、ガザに平和の訪れる日はいつになるのであろう。 (2)西洋近代の自己否定としてのトランプ 著者は、トランプ大統領の登場ということの思想的・イデオロギー的な意味を、啓蒙主義の時代以降の西洋の近代史の中で解釈したとき、西洋が自らを否定しようとしていることに気づくという。 トランプ支持者には二つの異なる勢力が共存している。「労働者および過激なナショナリスト」と、「テクノ・リバタリアン」。この両者は、社会的背景を異にしているだけではなく、はっきりとした対立した意見を持ち、互いに矛盾したことを目指している。なぜ両者は連帯できているのか。それは「同じもの」に反発しているからである。「同じもの」とは、民主党が代表しているリベラルなエリート、既成支配層である。 民主党は社会の多様性を唱える。移民を積極的に受け入れ、「LGBTQ+」を尊重し、誰にも公平に対応しようと主張する・・・それなのに―(労働者は思うのだ)―「我々」はどうなっているのか・・・我々は尊重などされていない、むしろバカにされている。既成の支配層が享受している利益や特権から締め出され、排除されている。 これには、グローバル資本主義に内在する構造的な原因がある、「エレファントカーブ」(詳細は主略)が示しているように、現在の資本主義は、1990年頃までの資本主義とは異なり、先進国の中産階級だけが所得が伸びない仕組みになっている。ゆえに先進国(アメリカ等)だけを見れば、格差が急激に拡大する。このようにグローバル資本主義の実態は、かつての労働が重視され、尊重されることはなく、労働者であることに誇りが持つことが難しい社会になってきている。 民主党は本来、労働者や組合の利害を代弁する政党だったのに、現在は労働者の支持を失っている。 一方のトランプ支持者のテクノ・リバタリアンは、リベラルな既成支配層以上に、この資本主義を肯定し推進している。労働者達は、自分たちの不遇な状況に最も責任ある元凶そのものを味方と勘違いして手を組んでいることになる。どうしてこんな間違いを犯しているのか。彼等(労働者)には、自分たちの不満の原因が現在の資本主義にあることが見えていないからであり、また彼らも資本主義の中での成功を夢見ているからである。長期的には、彼等はますます悲惨な結果になるであろうと・・・ トランプに関して、もう一つ面白い見方を著者は示している。トランプは、伝統的な価値、保守的な道徳の擁護者ということになっている。しかし、トランプのふるまいは保守的な道徳とはほど遠い。思いついたままを口にし、他人を口汚く罵り、品位あるマナーのすべてを蹂躙している。不品行の程度はますます高まっていく。その中にはセックススキャンダルや犯罪的な事も含まれる。 この事を、どう解釈したらよいのか? トランプを単純にリベラルが目指していた社会への「敵」として、解釈すべきではない。トランプなる人物は、むしろリベラルが指向しているものの極限に見いだされる像である。言い換えれば、リベラルが理想化している状態を極端化し、戯画化して表現すれば「トランプ」という像が得られる。 アメリカのリベラルが実現しようとしている社会は、寛容な社会である。かつてはタブー視されていた行動も、他人に危害を与えない限り、個人の自由として承認される社会。ところで道徳の本性は「禁止」にある、許容性の拡大は、伝統的な道徳から離脱していくプロセスである。このプロセスを徹底的に推し進めたらどうなるか。ほとんど全ての道徳的な禁止を平気で、恥ずかしげもなく公然と侵犯する人物像が得られる。それこそが「トランプ」である。 個々の道徳や規範に対しては、もはや時代遅れのものに感じる、しかしリベラルが推進している「寛容な社会」に対しては何か恐怖を感じる、そういう保守派に対してどんな態度が魅力的なのか。「許容的な社会」へ向かうダイナミズムを、ただ純粋に否定すること。つまり社会正義の規定を蹂躙し、蔑ろにするような人物が、保守派を惹きつける。それがトランプにほかならない。
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西洋近代の罪 自由・平等・民主主義はこのまま敗北するのか
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大澤真幸
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