Posted by ブクログ
2020年12月12日
20201211
トランプVSバイデン選挙報道の最中、中里さんより推薦図書。今、改めてアメリカとは何か、を紐解く本書は、同時にアメリカに対する日本の在り方、我々の取るべき態度は何か、を強く問う。「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(マックス・ウェーバー)に向き合わざるを得ない。
ー標準な...続きを読むのに例外、その二重性によって、アメリカは「現代」を代表している。
ープロテスタント、ルター派、改革派、カルヴァン派、会衆派(コングリゲーショナル)、ユニタリアン、クエーカー、バプテスト
ーアメリカが新大陸につくった政治システムはイギリス風ではないのです。イギリスに似てはいないというところが面白い。(中略)しいて言うと、建国の父たちが国のありかたを設計しているときに基本モデルとしているのは、ハンナ・アーレントが言っていることですが、古代ローマです。たとえば、セネト(上院)というのもローマからきている言葉です。プロテスタントが精神的なベースになっているのは間違いないんですけれども、政治システムの表面にはキリスト教的な部分があまり出ない。
ーウォーラーステインが言っていることですが、資本主義の特徴というのは資本の蓄積が無限になること、つまり「ここでもういいじゃん」という充足には絶対に到達しないことですね。
ープラグマティズムには、パース、ジェイムズ、デューイといった重要な思想家がいます。
ープラグマティズムのポイントは、ある概念によって何が意味されているかを考えるときに、その概念の対象がどのような結果を我々の経験にもたらすかということが決定的に重要だということです。それが我々の経験にとってよい結果をもたらすのであれば、それは真である。
ーフランシス・ベーコンの四つのイドラ(先入観): 種族のイドラ、洞窟のイドラ、市場のイドラ、劇場のイドラ。人間が自然に持ってしまう錯覚、小さなコミュニティ目線からの偏見、噂話を信じてしまう傾向、権威を盲目的に崇拝する過ち。
ー「インクワイヤリー/探究とは、ダウト/懐疑という刺激によって始まって、ビリーフ/信仰・信念によって停止するプロセスである」(パース)
ー「ホテルの廊下のように、各部屋をつないでいるのがプラグマティズムである。ある部屋では誰かが無神論の書物を書いており、隣りの部屋ではひざまずいて祈りを捧げている人がいる。その隣りでは化学者が実験をしており、四番目の部屋では誰かが理想的な形而上学を考え、五番目の部屋では形而上学の不可能性が証明される。つまり、さまざまな宗教と科学と哲学の配置と共存のことだ」(ジェイムズ)
ー廊下とは何か。それは、キリスト教ではないもの、法律なんです。まず、ピルグリム・ファーザーズのメイフラワー契約。メイフラワー号には、信仰をもたない人びとも半分くらい乗っていた。信仰者とそうでない人びとが共存するための契約だから、世俗のもので、信仰を縛らないのです。
ー彼らは、自分は神に従い、神に従う自分自身に従い、そして他者には従わない、人びとだった。神は自分を支配できるが、そして自分は自分を支配すべきだが、他者は自分を支配できない。この前提に立つと、社会秩序が成り立たない、という問題が起こる。秩序を設定するには、契約以外にないのです。だから、契約に従う。
ーホッブズの社会契約論
ー家族を営みなさいというのは、神の命令です。誰と誰が夫婦になるかも、愛情を媒介するけれども、神が決めたことです。だから、家族を営むのは、大切な神への義務なのです。また、農業も神の命令です。聖書にそう書いてある。楽園を出るとき、アダムとエヴァに神は言う、これからは額に汗して働きなさい。というわけで、農業(カルチャー)は、人間の務めである。いっぽう、神のわさがネイチャーである。ネイチャー(神のわざ)とカルチャー(人のわざ)が合わさって、収穫物(神の恵み)が与えられるんだけど、これは、神と人間との交流です。こんなふうに考えながら、日々を過ごすのです。
ー発明、アイデア、利潤の追求に対する強い肯定感が資本主義システムの加速度的発展に寄与した
ー視えないものを視るというのは、語義矛盾ですけれども、難しい。だから自覚症状が現れないんです。(司馬遼太郎の坂の上の雲、日露戦争時代までの武士道に根差した日本人像の肯定感に対し、太平洋戦争開戦に至る1941年時点の是非論が完璧に抜け落ちており欠落している)
ー(橋爪大三郎・あとがきより)アメリカを知るということは、日本を知るということでもある。そして、「知る」とは、単なる知識の問題ではない。何よりも、自分が「変わる」ことである。学問は、世界を知り、自分が変わること。そして、この世界をより生きるに値するものに変えていくことだろう。そのように、世界を「知る」人びとが増えていくことを願う。