小説 - 集英社作品一覧

  • 虹の彼方
    4.4
    【第19回柴田錬三郎賞受賞作】間に合ってよかった……。女優の志摩子と作家の正臣。48歳と43歳の女と男が出会い、恋に落ちる。それぞれに家庭があり、名声がある。この恋が、どれほど周りの人を傷つけるのか、世間の非難を浴びるのか。わかっていながらも、無防備な子供のように愛し合うふたり。遊びの恋ならどんなに楽だろう。もうもどれない、もう一人では生きていけない。切なさが胸をうつ第19回柴田錬三郎賞受賞作品。
  • 夜の挨拶
    -
    出生の秘密と、忌まわしい強姦事件から男に対する憎悪と、性の喜びを失った神立麻由加は、大学を中退して夜の世界に飛び込んだ。翳りのある美貌と才能を発揮して彼女はナンバーワンのホステスにのし上がる。そんなとき同僚のホステス、仲間圭子の死に疑惑を抱き、燃えぬ肉体を武器に事件の真相に追う……。虚飾に彩られた夜の世界の表裏を暴きながら、女性の哀しい性(さが)を流麗な筆致で描く異色サスペンス。
  • ハイランドの花嫁 偽りの令嬢は荒野で愛を抱く
    4.5
    15世紀末イングランド。伯爵令嬢でありながら庶子であり、姉が世間体の悪い死を遂げたために修道院に押し込められていたシャーロットは、ある日父に伯爵家の屋敷に呼び寄せられ、こう告げられる。「シャーロット。そなたに命じよう。エリザベスの代わりに嫁ぐのだ。スコットランドのハイランドへと」。スコットランドは当時、イングランドの敵国。そしてハイランドがどんなところか、シャーロットはまったく知らない。しかしシャーロットに背く術はなく、言われるままにエリザベスになりきるため、赤毛をブロンドに脱色し、着たこともないようなドレスに袖を通して結婚式に参列するのだが……。偽りから始まる、真実の愛。そしてシャーロットが見つけた幸せの形とは…?
  • 黄金の刻 小説 服部金太郎
    4.5
    明治七年。十五歳の服部金太郎は、成長著しい東京の洋品問屋「辻屋」の丁稚として働いていた。主人の粂吉は、金太郎の商人としての資質を高く評価し、ゆくゆくは妹の浪子と結婚させ、金太郎を辻屋の一員として迎え入れようとする。だがそんな思いとは裏腹に、金太郎は、高価ゆえに持つ人の限られていた「時計」に目をつける。鉄道網の発達により、今後「正確な時間」を知ることの重要性が高まると見抜いていたのだ。いずれは時計商になりたいという熱い想いを粂吉に伝えるが…。経済小説の名手が史実をもとに描く、世界的時計メーカー「セイコー」創業者の一代記!
  • ボーダーズ
    3.9
    1~3巻913~1,067円 (税込)
    東京新橋で銀行立て籠り事件が発生した。男性客が刺殺された後、犯人は逮捕されたが、被害者は40年前に成田闘争のデモで機動隊員を殺して手配され、公安に追われた男だった。その捜査に警視庁特殊事件対策班(SCU)が動きだす。SCUは犯罪が多様化する中、あらゆる事件の現場に介入できることを許された警視総監直轄の組織でチームは5人。公安出身のキャップ・結城から被害者の藤岡を調べるよう指示された八神は、犯人、被害者、公安が複雑に絡む事件の真相に、特殊能力を個々に持つメンバーの協力を得て挑む。才能豊かな刑事チームを描く警察小説!
  • MY (K)NIGHT マイナイト
    -
    夫の浮気を知り、寂しさを埋めようとする主婦。余命わずかな母親に婚約者を紹介したい高校教師。映える写真を撮り続けるインスタグラマー。“救い”を求める3人の女性が頼ったのは、[MY KNIGHT]の“デートセラピスト”=一夜かぎりの恋人たち――。川村壱馬、RIKU、吉野北人(共にTHE RAMPAGE)の3人が主演を務める同名映画を小説化。カラー写真もふんだんに盛り込み、映画の世界を再現する。
  • ホテル・アルカディア
    3.0
    ホテル・アルカディアの支配人のひとり娘・プルデンシアは、コテージに閉じこもっていた。投宿していた7人の芸術家は、彼女を元気づけ、外に誘い出すべく7つのテーマに沿った21の不思議な自作の物語をコテージ前で順番に語りだした。この朗読会は80年たった今も伝説として語り続けられ、廃墟と化したホテル・アルカディアには聖地巡礼のようにして、芸術家たちのファンが何人も訪れる。80年前、あの朗読会の後、芸術家たちはどうしたのか、そしてひとり娘のプルデンシアはどうなったのか? かつて味わったことのない読書体験を保証! 第30回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作。
  • 灯台からの響き
    3.9
    板橋の商店街で、父の代から続く中華そば屋を営む康平は、一緒に店を切り盛りしてきた妻を急病で失って、長い間休業していた。ある日、分厚い本の間から、妻宛ての古いはがきを見つける。30年前の日付が記されたはがきには、海辺の地図らしい線画と数行の文章が添えられていた。差出人は大学生の小坂真砂雄。記憶をたどるうちに、当時30歳だった妻が「見知らぬ人からはがきが届いた」と言っていたことを思い出す。なぜ妻はこれを大事にとっていたのか、そしてなぜ康平の蔵書に挟んでおいたのか。妻の知られざる過去を探して、康平は旅に出る――。市井の人々の姿を通じて、人生の尊さを伝える傑作長編。
  • 風よ あらしよ 上
    4.2
    1~2巻913円 (税込)
    明治28年、福岡県今宿に生まれた伊藤野枝は、貧しく不自由な生活から抜け出そうともがいていた。「絶対、このままで終わらん。絶対に!」野心を胸に、叔父を頼って上京した野枝は、上野高等女学校に編入。教師の辻潤との出会いをきっかけに、運命が大きく動き出す。その短くも熱情にあふれた人生が、野枝自身、そして二番目の夫でダダイストの辻潤、三番目の夫でかけがえのない同志・大杉栄、野枝を『青鞜』に招き入れた平塚らいてう、四角関係の果てに大杉を刺した神近市子らの眼差しを通して、鮮やかによみがえる。著者渾身の評伝小説!! 第55回吉川英治文学賞受賞作。
  • 罪深き海辺 上
    4.0
    東京からほど遠くない場所に位置する山岬市、母が捨てた故郷にアメリカ育ちの干場功一(ほしば・こういち)は帰ってきた。お殿さまと呼ばれた大地主の伯父、干場伝衛門は全財産を市に寄付して六年前に亡くなっており、お陰で財政破綻寸前の港町は立ち直ったという。そこへ突如、遺産相続人が現れたことで、かつて利権に群がった政治家や企業は色めき立ち――。閉塞感漂う田舎町で疑心暗鬼の人間ドラマが幕を開ける。
  • 【新装版】呪い人形(木部美智子シリーズ)
    3.2
    悪名高い宗教家が入院中に死亡した。多額の布施を強要されて家族を失った老婆が「自分が呪い殺した」と名乗り出る。しかし疑いの目は正義感の強い若い研修医の工藤孝明に。濡れ衣を晴らし個人病院の勤務医になった工藤だが、またも彼の目の前で患者が死亡し嘱託殺人を疑われることに……。取材を進めるフリーライターの木部美智子は、「呪われて」死んだ者がほかにもいることを知るが──。人間が秘める暗部に鋭く迫る社会派ミステリー。『蟻の棲み家』でベストセラー作家となった著者の初期の傑作、待望の新装版(重複購入にご注意ください)。
  • 虹の橋からきた犬
    3.8
    「犬コロと仕事のどっちが大事なんだ?」ワンマン社長の南野は、愛犬が病気で定時に帰ろうとする部下に激怒する。だが、これを機に社員一同の不満が爆発し、逆に孤立することに。そんな中、ひょんなことからゴールデン・レトリバーの子犬を飼うことになった彼は、その子犬“パステル”の純粋さに触れることで変わり始め、彼らはソウルメイトになっていくが……。愛犬が著者に注いでくれた無償の愛が起こした、数々の奇跡を基にした感動のストーリー。「作家生活二十四年、百作近い著書を生み出してきた私が完成した原稿を読み返して初めて涙した」――ペットロスからの希望を描く一番泣ける犬小説。
  • 怪しくて妖しくて
    3.0
    ショートショートの名手、阿刀田高が贈る。夢と現実(うつつ)のあわいに現れる、日常の恐怖を描いた珠玉の短編集。黒髪の美しい、不思議な女の後を追って……「黒髪奇談」、かつて「殺したい人、いますか」そう尋ねた孤独な少女……「向日葵の夢」、暗い土蔵のなかに捨て置かれた鏡、その中で蠢くものは……「鏡の中」、同じ夢を見る。他人には言えない秘密を持った日には……「白い部屋」など全12編。
  • ASK トップタレントの「値段」上
    -
    1~2巻913~935円 (税込)
    「奇跡の9頭身女子高生」としてデビューし、瞬く間にトップタレントとなった堀口優奈。高飛車な態度で傍若無人な振る舞いを続ける彼女は、後輩タレント・ゆらぎの台頭に苛立ち、頭脳と暴力でのし上がった所属事務所社長の新庄に歯向かう。彼の逆鱗に触れたことで、恋人とのSEX動画を拡散された彼女は、莫大な違約金を背負い、超高級風俗店勤務を余儀なくされる。そこには、最低な客たちがいて!?
  • 雨降る森の犬
    4.2
    父親を病でうしない、母親との確執を抱えた女子中学生の雨音(あまね)は不登校になり、山岳写真家の伯父・道夫のもとに身を寄せた。道夫はバーニーズ・マウンテン・ドッグのワルテルとともに自前のログハウスに住んでいた。ログハウスの近くには大きな別荘があり、雨音はそこの持ち主の長男で高校生の正樹と知り合う。正樹は再婚した父親と若い母親に対して、複雑な感情を抱えていた。雨音と正樹は道夫の影響で登山の魅力を知るようになり、道夫の愛犬ワルテルと自然との触れ合いが、二人の心を少しずつ癒していく。家族の問題を抱えた中学生と高校生が、道夫とワルテルと過ごすなかで自らの生きる方向性を見出していく、心に響く長編小説。
  • あるいは修羅の十億年
    3.0
    テロ、移民、スラム化した東京、菌糸の生物兵器…2026年の“未来の歴史”を幻視せよ。舞台は2026年東京。放射能汚染によって隔離された被災地「島」からやってきた、天才的騎手・喜多村ヤソウ。東京オリンピック後、スラムと化した“鷺ノ宮”を偵察する「島」生まれの喜多村サイコ。先天性の心臓病を患う少女・谷崎ウラン。17歳と19歳と18歳の3人が出会うとき、東京を揺るがす事態が巻き起こる――。日本、フランス、メキシコ、そして「島」。遥かな未来になけなしの希望を託す、近未来長編。
  • 波の鼓動と風の歌
    -
    自己肯定感が低く、日陰にいる者を自認し、生きづらさを抱えて暮らしている女子高生のナギは、校外学習で行った小さな山で湖に転落。人と獣のまじりものの姿で目覚める。岩牢に囚われた彼女を救ったのは、紺碧の瞳をした少年。元の生活に戻ることを願い、共に都を目指すが……。煌めく星の海。空を翔ける翠竜。美しい異境の地には、恐るべき“秘密”が眠っていた。交錯する人々の思惑は、やがて国の存亡を懸けた戦いに発展し――。その時、ナギが選び取る運命とは? 魂震える、冒険ファンタジー。令和の『ナルニア国物語』誕生!
  • 戦士の賦 土方歳三の生と死 上
    -
    1~2巻902円 (税込)
    幕府の浪士新徴に応じて、土方歳三は近藤勇、沖田総司らとともに京に上り、新選組を結成した。尊攘・佐幕両派が入り乱れ騒然としていた京の巷で、不逞浪士を相手に血刃をふるう新選組の武名は、池田屋の変、蛤御門の変などの活躍で天下に響きわたった。土方は副長として近藤を助け、隊内を鉄の規律で統制してゆく――。幕末激動の時代に剣に己の魂を託し、意地と誠を貫いた男の壮烈な生涯、その知られざる実像に迫る! 巨匠・三好徹が遺した不朽の名作。
  • 紅蓮の雪
    -
    伊吹の最愛の双子の姉・朱里は20歳の誕生日を迎えた日、なんの前触れもなく自殺した。朱里の遺品の中から大衆演劇「鉢木座」の半券が見つかり、それが死ぬ前の最後の足取りであることを知った伊吹は、少しでも真相に迫るべく一座の公演に行った。公演後、座長に詰め寄る伊吹の姿を見た若座長の慈丹は、その容姿を見初め、入団を強く進めた。伊吹は何か手がかりが掴めるのではないかと入団を決意し、以降、訓練と舞台に追われる。そんなある日、ひょんなことから両親と鉢木座との繋がりが露見。それは鉢木座の過去に秘められた禁断の事実だった……。血脈に刻まれた因縁、人間の最果てと再生を描いた問題作。
  • ホーム
    3.9
    20年前、大リーグのニューヨーク・フリーバーズでプレーをしていた藤原雄大。52歳となった今は、マイナーリーグの巡回コーチをしている。ある日藤原は、現役時代のライバルで、大リーグ機構上級副社長であるヘルナンデスの訪問を受けた。東京オリンピックのアメリカ代表監督が亡くなったため、代わりに監督をやってくれないかと打診されたのだ。悩んだ末にその依頼を引き受けた藤原は、戦力補強のため、アメリカと日本の二重国籍を持つ大学生天才スラッガー、芦田をスカウトする。しかし、そこには二つの故郷の狭間で苦しむ若者の姿があった――。元日本人大リーガーが金メダルを目指す! 圧巻のスポーツ小説!!
  • GA・SHIN! 我・神
    -
    東京の片隅でホームレスの謝花に拾われた少年、臥薪正太郎は500円玉を無限に生み出せる特殊能力を持っていた。少年に成長した彼の力と触媒役の謝花を宗教ビジネスに利用しようとする「高階組」幹部、榊原の謀略により、二人は沖縄へ導かれる。やがて対立する臥薪と謝花。それは人間の想像を超えた神と悪魔の壮大な地球規模の闘いにまで発展する。宗教とは? 善悪とは? 芥川賞作家が描く、五感に訴えるディテール描写と想像を超えるスケール感で揉みくちゃにされる幻の傑作SF叙事詩。文字表現の到達点の極致!
  • 「タ」は夜明けの空を飛んだ
    -
    1900年代初頭。日清、日露の二戦争の間に、通信技術は手旗から無線へと飛躍的に進化。日本海軍は戦況を左右する無線機の独自開発を決定。科学者・木村駿吉は、原理すら解明されていない無線機の改良を手探りで進めていく。マイペースな科学者が無茶振りに応えた結果、彼らの血と汗の結晶、三六式無線機を搭載し、日本海軍は当時最強と謳われたバルチック艦隊を迎え撃つ――。授業では教わらない歴史の行間に潜むドラマを掘り起こし、迫力の筆致で活写した傑作描き下ろし。新たな歴史小説の誕生!
  • ランボーはなぜ詩を棄てたのか(インターナショナル新書)
    -
    フランス北東部の街、シャルルヴィルに生まれたアルチュール・ランボー。早くから詩の才能を発揮し、詩人のヴェルレーヌとも交流を持ったが、20歳のとき、ランボーは突然、詩作を放棄する。なぜ、ランボーは詩を棄てたのか? 著者、奥本大三郎による詩の新訳とともに紡ぐ、ランボー伝!
  • 江戸川乱歩と横溝正史
    3.7
    日本の探偵小説を牽引した二大巨頭、江戸川乱歩と横溝正史。ほぼ同時期にデビューした二人は、盟友として認め合い、生涯変わらぬ友情で結ばれた。それも作家同士というだけでなく、時に一方が編集者となって支えるという希有なつながりだ。この濃密な関係はどのように生まれ、育まれたのか──二人の足跡を辿りながら、数多の作品群を通して出版界の興亡のドラマをも描き出す、空前の対比評伝。
  • 凍結捜査
    3.8
    北海道大沼で雪の中から、平田という男の射殺体が発見された。函館中央署の保井凜は、平田に暴行されたと被害届が出ていたことを思い出す。早速、被害者の珠希を訪ねると、姿を晦ましていた。進展なく迎えた初夏、東京で女の射殺体が発見される。凜は、警視庁の神谷と捜査を進めていくが……。連続殺人の狙いは金か怨恨か? 巧妙に計画された重大犯罪に熱き刑事魂の捜査チームが挑む。待望の「検証捜査」兄弟編。
  • リーチ先生
    3.8
    1954年、大分の小鹿田を訪れたイギリス人陶芸家バーナード・リーチと出会った高市は、亡父・亀乃介がかつて彼に師事していたと知る。──時は遡り1909年、芸術に憧れる亀乃介は、日本の美を学ぼうと来日した青年リーチの助手になる。柳宗悦、濱田庄司ら若き芸術家と熱い友情を交わし、才能を開花させるリーチ。東洋と西洋の架け橋となったその生涯を、陶工父子の視点から描く感動のアート小説。第36回新田次郎文学賞受賞作。
  • 富士山噴火
    4.0
    元陸上自衛隊の新居見は3年前の南海トラフ大地震で妻と息子を失った。生き残った娘とは絶縁状態だ。ある日、この国が経験したこともないような巨大災害――富士山噴火が近いという情報を旧友の記者から得る。大地が震え、大量の噴石が降り注ぐ中、人々を待ち受ける運命とは。新居見は今度こそ、愛する人を救えるのか!? 日本壊滅の危機を、そして父と娘の絆の再生を描く感動のノンストップ防災エンターテインメント!※本作品は 2017年8月3日まで販売していた同名作品の文庫電子版です。
  • 鬼滅の刃 ノベライズ ~死闘決着! 炭治郎と鬼殺隊の未来編~
    -
    鬼の始祖、鬼舞辻無惨と炭治郎たちの戦いは最終局面へ……! 無惨に仇なす鬼・珠世が無惨に投与した薬が、無惨を衰えさせていく。炭治郎と禰豆子、そして鬼殺隊の運命は……!? すべてをかけた死闘、ついに決着! そして未来へ……!! カラー口絵4ページ、イラスト多数、総ふりがなつき! 「鬼滅の刃」まんがノベライズ、ついに最終巻! 感動のクライマックスへ!!
  • 鬼滅の刃 ノベライズ ~最終決戦と禰豆子の目覚め編~
    4.7
    鬼舞辻無惨の根城・「無限城」にて、上弦の鬼と決着をつけた鬼殺隊。しかし、無限城の奥底で、無惨が動き出し、ついに炭治郎たちと対峙する! 一方、密かに蜜璃を想う伊黒の過去も明かされ…!? カラー口絵4ページ、イラスト多数、総ふりがなつき! ノベライズ第9弾!
  • 漂砂の塔 上
    4.3
    1~2巻880~946円 (税込)
    雪と氷に閉ざされた北方領土の離島・春勇留(はるゆり)島、ロシア名はオロボ島。日中露合弁のレアアース生産会社の日本人技術者が、両目を抉り取られた死体となって発見された。国際問題に発展しかねない重要事件として、捜査権が及ばないこの島に送られたのは、ロシア系クォーターで語学が堪能な警視庁の石上だった。極限状態で信じられるのは誰なのか。三ヵ国の思惑が交錯し、果てしなき欲望が渦巻く!
  • 草花たちの静かな誓い
    4.0
    ロサンゼルス在住の叔母の、突然の訃報。甥の弦矢が駆けつけると、27年前に死んだはずの叔母の一人娘が、実は死んだのではなく、当時からずっと行方不明なのだと知らされる。なぜ菊枝はそのことを長らく黙っていたのか。娘はいまどこにいるのか。弦矢は謎を追い始める――。生き別れた母子の運命を豊かに描き出す長編小説。
  • 社長室の冬(メディア三部作)
    3.3
    日本新報の記者・南康祐は、会社にとって不利益な情報を握る危険人物であるとみなされ、編集局から社長室へと異動させられる。その頃、新聞社に未来はないと判断し、外資系企業・AMCへの「身売り」工作を始めていた社長の小寺が急死する。九州に飛ばされていた新里が急遽東京に呼び戻され社長に就任するが、方々から徹底的な反発を受ける。外資との買収劇。不毛な社内抗争。紙かネットか。マスコミの存在意義――。新聞社の身売りを巡り、南が辿り着いた答えとは。
  • フェイクコメディ
    -
    「今夜、第四十五代アメリカ合衆国大統領、ドナルド・ジョン・トランプがここを見学する。大統領みずからの希望だ。館長として案内をしてほしい」歴史上初の米朝首脳会談のニュースが流れる2018年5月のある朝、長崎原爆資料館長の「わたし」の目の前に、キッシンジャーと名のる謎の男が、突然訪ねてきた。長崎市内ではトランプ大統領の「そっくりさん」の目撃情報がSNS上にあふれ、地元のマスコミが騒ぎはじめた……。テレビ局による大仕掛けの撮影か、それともテロリスト? NHK『おはよう日本』でも紹介され話題になった、核兵器と人間をめぐるポリティカル・フィクション。
  • 雪炎
    4.3
    東日本大震災から一年。三基の原発が立地する北海道・道南市で市長選挙が始まった。元公安警察官の和泉は、「廃炉」を公約に掲げて立候補した旧友の弁護士・小島を手伝うことに。何百億円もの原発利権に群がり、しがみつく者たちの警察ぐるみの苛烈な選挙妨害に、和泉は公安警察時代の経験で対抗。しかし、ついには選挙スタッフが殺され……。「現実」を見つめ続ける馳星周の真骨頂、ここにあり!
  • 故郷
    3.8
    NYの日本料理店で成功をおさめた芦田夫妻は、三十年ぶりに帰国。老後をふるさと若狭で暮らしたいと考えたからだった。だが、美しかった里は、原発銀座へと変容し、過疎化の問題を抱えていた。大自然につつまれて安らかに逝きたいと願う夫婦が、ふるさととの再会で見たものは――。急激に変貌する日本に戸惑いながらも、安息の地を探し求める一族の物語。
  • ザ・おんな刑事
    -
    豊満な乳房、すらりと伸びた脚、きわだつ美貌を見て、一瞬声をのむ乱交パーティーの男たち。怖いもの知らずな行動力をもつ女・関根悠乃は、警視総監直属の秘密捜査官。共産圏から西側に持ち込まれた化学殺人兵器の謎を追って、国際犯罪組織と対決するべく潜入捜査を開始するが…。ヨーロッパを舞台にして描く、雄大痛快アクション巨編。
  • 青空の街
    3.7
    (自分には社長業なんか向いてない)大学を出ても親の後をつがず、守衛をしたり、タクシー運転手をしたり……。そもそも人生とは何だろうか。建設会社の社長を父に持つ成瀬弘は考える。若者らしく現代を生き抜こうとする弘と恋人キミ子。多彩で複雑な人間模様のなかに愛の哀しみと喜びと、明日への夢を爽やかな筆致で描く明朗青春編。
  • 蝶舞う館(東南アジア5部作)
    3.0
    ベトナム解放三十周年記念番組の収録中、日本の女性タレントが行方不明になった。番組関係者のもとに届いたのは、不当な弾圧を受ける少数民族モンタニャールの名を冠した組織からの犯行声明だった。不可解な要求にとまどいつつも救出に向かう男たち。だが、武装蜂起の予兆と見た公安部が組織壊滅に動き出し、凄絶な民族紛争に巻き込まれていく――。東南アジア5部作の掉尾を飾る傑作長編。
  • 猛き箱舟 上
    4.1
    1~2巻880円 (税込)
    あの「灰色熊(グリズリー)」のような男になりたい。香坂正次は胸に野心を秘め、海外進出日本企業の非合法活動を担うその男に近づいて行った。彼に認められた正次の前には、血と暴力の支配するアフリカの大地が開けた。その仕事は、砂漠の小さな鉱山を、敵の攻撃から守ることだった――人の世の地獄、野望と絶望を謳いあげた大ロマン。
  • 私を愛して下さい(十津川警部シリーズ)
    -
    旅行作家の菊地文彦が、東京の自宅で刺殺された。直前に岩手県の宮古へ取材に行ったことが判明。捜索にあたる十津川警部は、相棒の亀井刑事と宮古へ向かう。菊地が訪れた姫川村の寺で、砕かれた石碑に“列”という刻字を見つける。東日本大震災で破損しただけでなく、故意に粉砕したと感じた十津川は、石碑の由来を調べ始める。第二次大戦の特攻作戦に繋がると睨んで鹿児島へ飛ぶが……。特攻隊員の妻の命の叫びが、現代の殺人を呼んだ!? 岩手と鹿児島を舞台に描く戦争&旅情ミステリー。書き下ろし。
  • 森まゆみと読む 林芙美子「放浪記」
    5.0
    昭和初期。自由を求め奔放に生きたひとりの女性の日記が出版されベストセラーとなった。それは林芙美子の「放浪記」。いま広く読み継がれている版は、後世の手が多く入り「成功者の自伝」と化していると指摘する森まゆみが、改造社版「原・放浪記」の生き生きとした魅力を紹介する。各章に鑑賞が入り、時代背景や芙美子の生涯についての解説も収録。林芙美子を知ろうとするならまず手に取るべき一冊。
  • 劇場版 SPY×FAMILY CODE:White ノベライズ みらい文庫版
    -
    ロイド――スパイ、ヨル――殺し屋、アーニャ――超能力者、そして未来予知犬のボンド。たがいに正体をかくした、かりそめの家族がここにあった。アーニャが通うイーデン校の調理実習で“星”獲得を狙うため、伝統菓子「メレメレ」を求めて家族旅行に出かけることに! でも、思わぬ大事件に巻き込まれ…!?
  • 家康が最も恐れた男たち
    4.6
    「遺訓の言葉はな、恐れた相手たちから学んだことよ」病床に伏す徳川家康は、遺訓を書き終えて側近の儒者・林羅山に告白する。自分は怖がりだったが故に、天下を取れたのだと――。信長、秀吉、利家、三成など、家康が出会った八人の武将たち。彼らの何に恐れ、何を学んだのか。天下統一を成し遂げるまでの半生を家康視点・時系列で追うことで彼の実像に迫る、連作短編集。2023年NHK大河ドラマの主人公、徳川家康をこれまでにない新たな切り口で描く、集英社文庫の家康小説第一弾!
  • 宴の前
    3.8
    隠された利権、過度な忖度、県民性の謎…。あらゆる選挙戦の中で最も闇が深いのは地方知事選だ! 知事の後継者が、選挙告示前に急死。後継候補を巡る争いに、突然名乗りを上げたオリンピックメダリスト、地元フィクサーや現職知事のスキャンダルを追う記者の思惑が交錯する。これまで四期連続当選してきた現職県知事・安川(76歳)は、今期限りでの引退を決める。後任については副知事の白井に任せるということで内々に話がまとまっていた。しかし、選挙告示の2ヶ月前に白井が急死し、次期知事候補は白紙に戻る。一方その頃、地元出身でオリンピックメダリストの中司涼子(42歳)が、突如知事選への出馬を表明する。マニフェストに「冬季オリンピックの誘致」を打ち上げ、一気に有力候補に躍り出る。混沌した様相はさらに加速し――。圧倒的な権力を持つ「地方の王様」を決める熾烈な争い。選挙小説の新機軸!
  • この恋は世界でいちばん美しい雨
    4.5
    駆け出しの建築家・誠と、カフェで働く日菜。雨がきっかけで恋に落ちた二人は、鎌倉の海辺の街で愛にあふれた同棲生活を送っている。家族のいない日菜に「夢の家」を建ててあげたい、そのために建築家として名を上げたいと願う誠だったが、ある雨の日、日菜と一緒にバイク事故で瀕死の重傷を負ってしまう。目を覚ました彼らの前に、“案内人”と名乗る喪服姿の男女が現れる。そして誠と日菜は、二人合わせて二十年の余命を授かり、生き返ることに。しかしそれは、互いの命を奪い合うという、あまりにも苛酷で切ない日々のはじまりだった――。この恋の結末に、涙せずにはいられない。『桜のような僕の恋人』の著者が贈る、胸打つ長編小説。
  • 空よりも遠く、のびやかに
    3.8
    桜舞う高校の入学式で、瞬は一目惚れをした。その相手、花音はトラウマを抱え引退した元ユース・クライマーだ。今は地学オリンピックを目指す花音に誘われるがまま地学部に入ったのに、ひょんなことから才能を見いだされた瞬はクライミングで五輪を目指すことに! しかし、世界は未知のウイルス蔓延に襲われ、五輪の中止が決まり……2人の夢は? さらに、淡い恋の行方は? 圧倒的青春小説!
  • 女優
    4.0
    【渡辺淳一文学賞創設記念電子化!】師の坪内逍遙たちと、日本に新劇の運動を起こした早稲田大学教授・島村抱月。彼らがはじめた演劇学校の一期生に合格した松井須磨子。彼によって内に秘めた非凡な才能を見出された彼女は、カチューシャを演じ、ノラを演じるごとに見紛うほど美しい女優へと化身していく。二人の間には愛が芽生え…。近代演劇の夜明け、スキャンダルな愛に一途に燃えた抱月と須磨子を描いた著者入魂の長編小説。
  • キャプテンの星座
    -
    【第14回すばる文学賞受賞作】市立動物園に待望のゾウがやって来る! 到着を待ちわびる人々のもとに、ゾウが暴れだしたという知らせが……。ゾウに関わる人々の想いに動物園の歴史が交錯する力作。
  • 映画 ブラッククローバー 魔法帝の剣 ノベライズ みらい文庫版
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    週刊少年ジャンプで話題の漫画『ブラッククローバー』、6月16日公開の映画『ブラッククローバー 魔法帝の剣』を、集英社みらい文庫で最速ノベライズ!! 魔法がすべての世界で、魔力を一切持たずに生まれた少年・アスタ。いつか「魔法帝」になる日を夢見て、壮絶な戦いを超えてきた。そんな彼に立ちはだかる新たな敵は、なんと「歴代魔法帝」で――!? 魔法帝を目指す少年VS歴代魔法帝。最恐の敵との死闘が、今、はじまる…!!
  • 私の家
    4.0
    祖母の法要の日、一堂に会した親戚たち。同棲していた恋人から家を追い出され、突然実家に帰ってきた娘、梓。元体育教師、「実行」を何よりも尊びながら、不遇な子供時代にこだわる母、祥子。孤独を愛するが、3人の崇拝者に生活を乱される大叔母、道世。死ぬまで自分が損しているという気持ちを抑えられなかった祖母、照。そして、何年も音信不通の伯父、博和。今は赤の他人のように分かり合えなくても、同じ家に暮らした記憶と共有する秘密がある。3世代にわたる一族を描き出す、連作短編集。
  • 谷崎潤一郎 性慾と文学
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    谷崎文学の神髄、性と愛の交響。谷崎潤一郎は「無思想の作家」と称されていた。階級闘争を標榜したプロレタリア文学が隆盛をきわめた時代も、戦時体制のもとに民族主義的な思潮が台頭した時代も、谷崎は魅惑的な女性の美しさを描くためだけに命をささげ作品を紡いだ。誰しも政治、実業、学問などで身を立てることを願った、明治という立身出世の時代にあって、なぜ谷崎は社会の変革などよりも官能の充足の方がもっと大切だという人生観を抱くようになったのか。谷崎研究の第一人者が、その人生と作品群を詳細に検証する。
  • 義弟
    3.0
    人気弁護士の彩と義理の弟の克己は、本当の肉親以上に信頼し合っていた。ある夜、彩と不倫関係にあった男性が彼女の職場で突然死する。スキャンダルを恐れた彩に助けを求められた克己は事故死に偽装するが、夫の死を不審に思う妻が彩の事務所に相談しにやってくる。彩は克己の反対を押し切り、彼女の依頼を引き受けるが…。心の闇を抉り出す衝撃作。
  • 友罪
    4.4
    あなたは“その過去”を知っても友達でいられますか? 埼玉の小さな町工場に就職した益田は、同日に入社した鈴木と出会う。無口で陰のある鈴木だったが、同い年の二人は次第に打ち解けてゆく。しかし、あるとき益田は、鈴木が十四年前、連続児童殺傷で日本中を震え上がらせた「黒蛇神事件」の犯人ではないかと疑惑を抱くようになり――。少年犯罪のその後を描いた、著者渾身の長編小説。
  • 腐葉土(木部美智子シリーズ)
    4.1
    笹本弥生という資産家の老女が、高級老人ホームで殺害されているのが見つかった。いつもお金をせびっている孫の犯行なのか? そこに生き別れたもう一人の孫という男が名乗りでる。詐欺事件や弁護士の謎の事故死が、複雑に絡まりはじめ――。関東大震災、東京大空襲を生き延び、焦土の中、女ひとりでヤミ市でのし上がり、冷徹な金貸しとなった弥生の人生の結末とは。骨太ミステリーの傑作長編。
  • 極悪児童文学 犬義なき闘い
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    時は2035年。6年前に新型殺人ウイルスが全世界を襲い、人口が激減。日本では、感染源の新宿がゴーストタウンと化し、大量の飼い犬が野良犬となった。人間の代わりに街を支配するようになった彼らは、犬種の垣根を越えて群れで活動するようになる。しかし、次第にファミリー同士の覇権争いへと発展し……。人間という絶対的なリーダーがいなくなった新宿で、血を血で洗う抗争の火蓋が切って落とされる。史上初、犬が主人公の任侠小説! 爆笑と感動の一冊!!
  • 空への助走 福蜂工業高校運動部
    4.0
    陸上部を引退したばかりの涼佳に告白してきた、頼りない後輩の柳町。東京の大学に通う元陸上部の先輩へ届かない恋心を抱いてきた涼佳だったが、走り高跳びに打ち込む柳町の成長を見つめるうちに、少しずつ心が揺れ動き……(「空への助走」)。福蜂工業高校バレー部のエースを狙う高杉と、尋慶女子高校テニス部エースで美人かつ勝気な赤緒。小柄で地味だが躍動感あるスポーツ写真を撮るはっち。中学時代から互いを認め合ってきた三人の友情と淡い恋を描く(「強者の同盟」)。他、それぞれの悩みを抱えながら部活に打ち込み、時にチームメイトとぶつかり、時に恋に揺れ動く高校生たちのまぶしい青春の日々を描く連作短編集。
  • オフマイク
    3.6
    継続捜査を担当する捜査一課特命捜査係の黒田は、二課の同期・多岐川から20年前の大学生自殺について聞かされる。その死が、大物政治家の贈収賄と関わっているかもしれないというのだ。聞き込みをするうちに、黒田はこの事件を「ニュースイレブン」の報道記者・布施も追っていることを知る。その布施の情報で、黒田は事件のカギとなる人物はITで財を成し、政界のフィクサーとして名を流す藤巻だと目算する。時を同じくして人気キャスターが突然失踪。接点の見えない自殺と失踪の背後にはテレビ業界や警察組織さえも迂闊に手を出せない、大きな闇が……。記者と刑事の異色コンビが活躍する大人気「スクープ」シリーズ第5弾!
  • 塩と運命の皇后
    3.6
    50年ぶりに湖の封印が解かれるとき、追放された悲劇の皇后の伝説が幕を開ける――。歴史収集の旅をする聖職者チーは、ある時立ち寄った湖のほとりで、ひとりの老女に出会う。亡き皇后の侍女だという彼女に導かれ、チーは皇后が幽閉されていた屋敷を訪れる。そこで老女は思い出の品々を手に語り始める。美しく残酷な真実と運命の物語を……。「あの方には異国風の美しさがあり、それはあたかも私たちには読めない言語のようだった。肩まで垂れた長い二本の三つ編みは墨汁のように黒く、顔は皿のように平らで、完璧に近い円形だった」――著者デビュー作にして2021年ヒューゴー賞受賞作。全2篇。
  • レジェンド・ゼロ1985
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    米ソ冷戦が終盤を迎えた1985年。韓国との軍事演習を控えたアメリカの空母が、台風により日本海上で立ち往生していた。そこにソ連の爆撃機が接近。「一発も撃たせるな」。航空自衛隊の本庄らF-4パイロットが、にわかに訪れた第三次大戦の危機に立ち向かう。呼吸を忘れる圧巻の戦闘シーン。男たちの絆と矜持が、読む者の胸を震わせる。いま全てが伝説となる。
  • 「慵斎叢話」15世紀朝鮮奇譚の世界
    3.0
    <近くて遠い国>。韓国がそう言われるのは<日本に似て非なる>国だからであろう。であればこそ親しみやすい反面、食い違いが生じれば忽ち嫌韓感情を生んでしまう。その韓国とは、2002年のサッカーワールドカップ共催を契機に、俄かに「韓流ブーム」が沸き起こり、歴史ドラマが数多く紹介され好評を博した。それらの多くは秀作・力作ぞろいで、今でも人気は高いが、作品を通じて朝鮮時代や韓国文化が理解できるかと言われれば、「水戸黄門のドラマを見て江戸時代や日本のことを知ろうとする」のと変わりない。その国のことを理解するには、このようなドラマではなく、古典を通して逍遥するのも有効かもしれない。というのも、韓国文化の母体は朝鮮時代にあるからだ。その朝鮮時代に朱子学(儒教)を通じて国家建設を目指した「士大夫」と呼ばれる科挙合格官僚がいる。特に朝鮮前期に活躍した成俔の随筆「慵斎叢話」は当時の世相を知る最上の資料でもある。この「慵斎叢話」は宮中世界、歴史・文学、自然現象から巷の奇譚・笑話に至るまで多様な話があるが、本書では極めて人間臭い話題を中心に、男女のスキャンダル、破戒僧、呪詛・占い、宮廷秘話など、韓国の厳しい儒教社会に対する先入観を打ち破る奇異譚を紹介する。
  • 書くための文章読本(インターナショナル新書)
    4.2
    日本語の文章で力点が置かれるのは圧倒的に文末。文末は、文の全体に書き手の意思を伝え、情報の核を据えるところ。そして、もっとも記憶に残りやすい。だから文章におけるパンチの効かせどころだと著者は説く。ところが日本語では最後に動詞がくるので、付け足しがしにくく、その大切な文末が弱い。さらに「です」「だ」などが連続して単調になりがちだという弱点もある。これらをどう解決するか。『日本語のレトリック』『メタファー思考』などのベストセラーがある言語学者が向田邦子、筒井康隆、井上ひさしなどの名文を引いて丁寧に構造を分析し、わかりやすく解説。プロの文章テクニックが身につき、伝わる文章が書けるようになる、まさに「書くための」文章読本。また引用されたバラエティに富む名文で、日本語の美しさや豊かさ、作家の技が堪能できる。実践的でありながら楽しい1冊! ○斎藤美奈子氏(文芸評論家)推薦! 「日本語のお荷物「文末」が、かくもエキサイティングだったとは!」
  • よはひ
    4.0
    広大な砂漠で服役する囚人たち。この地で“三千二百年”の懲役を受けた男がいた。絶望的な状況で、彼が淡々と生き続けられる秘密とは?(「三千年生きる」)海辺の街でアンティーク・ボタンの店を営むジェリーは、ある夜、青いワンピースを着た半透明の少女と出会い……。(「四歳のピーコートのボタン」)おはなし好きの父と子が、伸び縮みする“時間”を旅する。27編から成る、ひとつの大きな物語。
  • パーフェクトワールド 上
    3.7
    1970年。本土復帰を目前に控え、沖縄は混沌としていた。公安警察官・大城は、警察上層部よりさらに上――内閣総理大臣から直接の命を受け、沖縄に潜伏することに。時を同じくして、那覇では沖縄独立を目指す平良が、賢秀塾を率いる古謝賢秀の指示のもと、不穏な動きを見せ始めていた。大城は、円滑な返還を実現すべく、時に犯罪行為にも手を染め、諜報を進める。彼は、どこまで堕ちていくのか。連載から12年、幻のノワール巨編!
  • 明星に歌え
    4.2
    四国お遍路ツアーに参加した大学生の玲。7人の班で旅が始まる。天真爛漫な太陽、ひねくれた態度の剣也、誰とも打ち解けない花凜……。10歳以前の記憶がない玲だけでなく、それぞれが事情を抱えている様子。過酷な道中、予期せぬトラブルも生じ、離脱せざるを得ない者も。軋轢も和解もあり、やがて結束するメンバー。長い長い歩みの果てに、彼らを待っているものは。忘れられない青春群像小説。
  • 砂の王宮
    4.3
    戦後、復興へ向け活気に溢れる神戸の闇市で薬屋を営んでいた塙太吉。進駐軍の御用聞きをしている深町の戦略的な提案に乗り、莫大な儲けを手にする。その勢いで、スーパーマーケットを開業し、格安牛肉を武器に業績を飛躍的に向上させた。全国展開への道を順調に進むが、ある事件をきっかけに、絶体絶命の局面に……。日本が世界経済の中心に躍り出た激動の時代を支えた男を描く圧巻の経済小説。
  • 時限捜査
    3.6
    太陽の塔、USJなど、大阪の名所で連続爆破が発生。府警が混乱する現場に出動するなか、大阪駅で人質を盾にした立て籠もり事件が起こる。犯人は現金10億円と逃走用ヘリを要求。駅を封鎖した管轄署長の島村は、早急な解決を目指すが……。膠着した現場に、東京の神谷刑事から、驚愕の情報が入る。島村はある策を得て、巧妙に計画された犯罪に挑む! 「検証捜査」の魂を継ぐ警察小説。
  • 警察回りの夏(メディア三部作)
    3.9
    母子家庭の幼い姉妹が自宅で殺害される。死体発見時から母親が行方不明の為、母親犯人説が浮上。日本新報甲府支局の南は、本社への栄転を懸け、特ダネを狙って精力的に事件情報を収集。警察のネタ元から犯人の情報を掴み、紙面のトップを飾る記事を書いた。だが、それは大誤報となって……。巧妙な罠に翻弄されながらも、新聞記者としての矜持と野心の狭間で真実を追う男の闘い。長編ミステリー。
  • 文庫版 虚言少年
    4.2
    オヤジ臭く、自他ともに認める嘘吐きの内本健吾。モテたいのに女子ウケしないことばがりをし続け、味のある面白さを持つお坊ちゃまの矢島誉(ほまれ)。人心を掌握する術と場を読む能力に長け、偏った知識を持つ京野達彦。「馬鹿なことはオモシロい」という信条を持つ小学生男子三人組が繰り広げる、甘酸っぱい初恋も美しい思い出も世間を揺るがす大事件もないが、馬鹿さと笑いに満ちた日々を描く7編。
  • 壺中の回廊
    3.3
    関東大震災からの復興の兆しを見せる昭和五年、東京。歌舞伎の殿堂木挽座に“掌中の珠を砕く”という脅迫状が届く。皆が疑心暗鬼にかられるなか『忠臣蔵』に出演中の花形役者が毒殺される。江戸の狂言作者の末裔桜木は、築地署の笹岡と真相究明に乗り出す。容疑者は、役者、裏方、観客すべて。だが、嘘をつくのが商売の役者を相手に捜査は難航……。変革の時代を背景に描く歌舞伎バックステージミステリー。
  • 花のさくら通り
    4.2
    倒産寸前のユニバーサル広告社。コピーライターの杉山を始め個性豊かな面々で乗り切ってきたが、ついにオフィスを都心から、“さくら通り商店街”に移転。ここは、少子化やスーパー進出で寂れたシャッター通りだ。「さくら祭り」のチラシを頼まれた杉山たちは、商店街活性化に力を注ぐが……。年代も事情も違う店主たちを相手に奮闘する涙と笑いのまちづくり&お仕事小説。ユニバーサル広告社シリーズ第3弾。
  • 決定版 評伝 渡辺淳一
    3.0
    札幌医科大学で学び、心臓移植問題を機に、整形外科医から文学の道へ進み、昭和・平成の時代、第一線の作家として活躍した渡辺淳一。谷崎・川端も書けなかった人間の《生》と《性》の本質を、自らの体験を冷徹に描くことで、文学の高みに到達した――。編集者として直木賞受賞の布石となる『花埋み』を書かせ、後に評論家として数々の名著を刊行する著者が、渡辺文学の全てを網羅する評伝決定版。
  • ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ
    3.9
    「注文の多い料理店」や「風の又三郎」など、誰もが知っている名作童話から生まれる、誰も見たことのない新しい“ミヤザワケンジ”の文学。世界の終わりとはじまり、夢と現実、生と死。すべてが曖昧になった場所で織り成される24編が、あなたの感性にかつてないほどの衝撃を与える。異能の作家・高橋源一郎の手によって開かれる、賢治にも描けなかった賢治ワールド。最強トリビュートの決定版!
  • 仮面後宮 女東宮の誕生
    5.0
    平安末期。謎の疫病が猛威をふるう京の都。多数の庶民が命を落とす中、宮廷でもまた、東宮三人が立て続けに死亡するという前代未聞の事態が起こり、貴族たちは恐怖と混乱に陥っていた。そこへ、強力な予言力をもつ賀茂の老巫女から「一時的に東宮に皇女をたてよ」という神託が届けられる。帝の兄であり、実質的にこの国を支配している上皇はこの神託を受け入れる、ただちに女東宮の候補となる数人の皇女たちが選び出された。その中には、人々から忘れ去られた寂しい暮らしをしていた16歳の火の宮も入っていた。女東宮候補となった火の宮を待つ試練とは……。
  • ONE PIECE FILM RED 映画ノベライズ みらい文庫版
    5.0
    「ワンピース」最新劇場版をノベライズ! 世界中の人々を歌声で魅了する歌姫・ウタ。素性をかくしてきた彼女が、初めて公の場で姿を見せるライブを開くことに! そして、ライブ当日。色めきたつ海賊たちと、目を光らせる海軍。ルフィ率いる麦わらの一味は、何も知らずに、ただウタの歌声を楽しみに会場へとやってきた。しかし、世界中から集まったファンが会場をうめつくすなか、ウタが四皇の一人である赤髪海賊団・シャンクスの娘だという事実があきらかになり……!? 世界をゆるがす“歌声”にルフィたちが挑む!! カラー口絵4ページ他、挿絵多数!
  • 鬼滅の刃 ノベライズ ~猗窩座との戦いと伊之助の過去編~
    5.0
    ついに鬼舞辻無惨の根城・「無限城」に突入した鬼殺隊。煉獄杏寿郎の仇である上弦の参・猗窩座と対峙する炭治郎と義勇だが、圧倒的な力に対して苦戦をしいられる。いっぽう、カナヲと伊之助は、対の扇で氷を生み出し放つ上弦の弐・童磨と激突し……!? みらい文庫「鬼滅の刃 ノベライズ」第7弾!
  • ごめん。
    4.1
    学生服専門の洋品店で働く吉本佑理(32歳)は、職場上司の無自覚なセクハラやパワハラに合いつつもなかば諦めも感じていた。ある日、例のごとく「きみ、彼女いないの? 吉本さんを誘ってあげたら」と言う部長に対し「無礼です」と言い切る出入りの配送業者、里村の自然なふるまいが佑理の心に飛び込んできた。その後デートを重ね次第に距離を縮める二人。そして、告白のタイミングでこれまで三、四人と付き合ってきたと言う里村に対し、佑理は今まで彼氏が一度もいなかったことを、勇気を出して告げる。すると里村は何も告げずに去ってしまう。フラれた。失意の佑理に里村から電話が。「ごめん、おれも付き合ったのは中学の時にひとりだけ。いまマンションの下にいるんだ。戻ってもいいかな」(第一話「ひとり道」)。あなたは“その言葉”を一日に何度、口にしますか? 様々なシーンのごめんで登場人物たちが少しずつ繋がってゆく、心温まる連作短編集。
  • ZOO 1+2
    5.0
    何なんだこれは! 天才・乙一のジャンル分け不能の傑作短編集「1」、「2」を合本版で。「1」は双子の姉妹なのになぜか姉のヨーコだけが母から虐待され――(「カザリとヨーコ」)。謎の犯人に拉致監禁された姉と弟がとった脱出のための手段とは?――(「SEVEN ROOMS」)など5編をセレクト。「2」は、目が覚めたら、何者かに刺されて血まみれだった資産家の悲喜劇(「血液を探せ!」)、ハイジャックされた機内で安楽死の薬を買うべきか否か?(「落ちる飛行機の中で」)など驚天動地の粒ぞろい5編に加え、幻のショートショート「むかし夕日の公園で」を特別収録。
  • 化身 上巻
    3.3
    1~2巻825~880円 (税込)
    人気の文芸評論家である秋葉大三郎は、妻子と別れ、史子という女性とつき合っていた。ある日、銀座のクラブで働く、遥かに若い霧子と運命の出逢いをする。鯖の味噌煮が好きだという初心な霧子が秘めた女としての蕾に心惹かれ、和の食や風物を教え、ともに旅をし、理想の女性として変貌させようとひたすら愛を注ぐ。そして彼女は大いに成熟していくのであった。華麗なる絵巻物のような男女小説の傑作。
  • 三人のゴーストハンター 国枝特殊警備ファイル
    3.8
    普通の警備会社が恐れをなした怪異現象がらみの事件ばかりを扱う国枝特殊警備保障。生臭坊主・洞蛙坊、美貌の霊媒師・比嘉、反オカルト科学者・山県の三人が個々の特殊能力を発揮して、都市の魑魅魍魎に挑んでいく――。やがて彼らは、自分たちを結びつけた四年前の幽霊屋敷事件の真相に……! 異才、鬼才、天才の集結が生み出す三通りのマルチエンディング付きセッション・ノベル。
  • 相剋の森
    3.9
    1~2巻825円 (税込)
    「山は半分殺してちょうどいい――」現代の狩人であるマタギを取材していた編集者・美佐子は動物写真家の吉本から教えられたその言葉に衝撃を受ける。山を殺すとは何を意味するのか? 人間はなぜ他の生き物を殺すのか? 果たして自然との真の共生とは可能なのか――。直木賞・山本賞受賞作『邂逅の森』に連なる「森」シリーズの第一弾。大自然と対峙する人間たちを描いて感動を呼ぶ傑作長編。
  • 萬葉集釋注一(集英社文庫版)
    -
    1~10巻825~1,155円 (税込)
    戦後の万葉研究の第一人者による、初めての個人全注釈の文庫版。隣接諸学との多様な交流の成果も踏まえた、現代万葉学の集大成。一群の詩の背景、状況をいきいきと語る歌群ごとの釈注。新鮮な感動を呼び起こす充実した内容。『万葉集』は、5世紀初頭から8世紀中葉まで、およそ350年にわたる4500余首の歌を収める。本書第一巻は、白鳳期(629~710年)、いわゆる万葉第一・二期の中核的古撰集である巻一と巻二とを収める。宮廷の儀礼・行幸などにまつわる「雑歌」(巻一)と、万葉びとの愛と死を奏でる「相聞」「挽歌」(巻二)とは、『万葉集』の基本的な三大部立で、以下の巻の規範となった。額田王、柿本人麻呂たちの作品が天皇の代ごとに配列され、躍動的な白鳳歴史絵巻を繰り広げる。【文庫版:リフロー型】
  • 落日はぬばたまに燃ゆ
    -
    現代社会は、人間らしく生きていけないのか!? 過酷な販売競争に生命を削ってきた製薬会社のプロパー・隅高志は、妻を亡くし息子とも断絶してしまった。定年前に退職をし、自由の身になった後、パリを訪れる。そこで一夜を共にした南本恵。交通事故で意識不明になり、そのまま帰国をしたことを聞いた隅高志は、異国に来ても心を癒せなかった恵と自らをダブらせ、探し始めるのだが――。生身の人間の葛藤を、正面から描く長編サスペンスの傑作。
  • 残像
    3.7
    愛なくばすべてはむなしきものを――人間はなぜ欲望の前に自らを喪失するのだろうか。憎み合う無軌道で冷酷な兄と気弱な世間体を気に病む父、その間にたって心をいためる清純な弘子……冷たい隙間風の吹く家族を描きわけて人間の愛憎と家庭の崩壊をあらわす問題作。
  • 果て遠き丘
    3.8
    世界中で自分だけが幸せでありたいと願う香也子、他人の愛を壊すことが楽しいゲームですらある香也子の熾烈な嫉妬心にもろくも崩れてゆく愛の数々……。北都旭川の残照にあざやかに浮かびあがる美貌の姉妹の愛のかたちと、人間の信頼を、痛烈なエゴイズムを描きながら謳いあげる長編。
  • インターセックス
    3.9
    「神の手」と評判の若き院長、岸川に請われてサンビーチ病院に転勤した秋野翔子。そこでは性同一障害者への性転換手術や、性染色体の異常で性器が男でも女でもない、「インターセックス」と呼ばれる人たちへの治療が行なわれていた。「人は男女である前に人間だ」と主張し、患者のために奔走する翔子。やがて彼女は岸川の周辺に奇妙な変死が続くことに気づき…。命の尊厳を問う、医学サスペンス。
  • 金のゆりかご
    3.5
    タクシー運転手の野上雄貴は、GCS幼児教育センターから入社要請を受け、不審を抱く。GCSが発明した「金のゆりかご」と呼ばれる機械で育てられ、一時は天才少年ともてはやされたが、能力の限界を露呈し見捨てられた自分。真意を探るうち、子供が次々と精神に錯乱をきたした事件が浮かび上がる。やがて、ある母親が失踪、殺人が……。先端科学に切り込む新感覚ミステリー。
  • 双蛇に嫁す 濫国後宮華燭抄
    3.9
    草原の民アルタナの娘、シリンとナフィーサ。異母姉妹ながら共に育ち、容姿も双子のように瓜二つの二人。ある日、族長である父は姉妹を本当の双子に仕立て上げ、南方の大国・濫に輿入れさせることを告げる。濫国は双子信仰が盛んであり、折しも現在の皇帝も双子だった。長い旅の末、濫国の王城にたどり着いた偽りの双子姫。シリンは弟帝の暁慶の後宮に迎え入れられ、「杏妃」なる名を与えられたが、初夜の床で「未来永劫、お前を抱くつもりはない」と言い放たれる。花嫁衣装も、名前も、全てを奪われ、体を繋がぬまま濫の妃となったシリンの運命は、やがて濫国とアルタナを巡る、大いなる時代の奔流に呑み込まれていく――。歴史に翻弄される人々を、壮大なスケールで描くデビュー作!
  • やり直し悪女は国を傾けない ~かくも愛しき茘枝~
    4.0
    1巻814円 (税込)
    絶世の美女・汪玲枝は皇子に嫁ぎ、皇子の死後にはその父である皇帝に嫁いだ。寵愛を恣にし、玲枝の好物だった茘枝を運ぶためだけに邑が滅ぼされたという。皇帝を誑かし贅の限りを尽くさせ、最後には毒を呷らされた傾国の悪女。それが――私!? 八歳で自分の将来を思いだした玲枝は、同じ人生をまたたどるくらいなら死を選ぼうとしたが、そこに現れた仙人のような美しい青年に「貴女が死ねば国が滅びる」と言われ!? でもなんで私だけが傾国の悪女と呼ばれなければならないの!? それなら次は間違えなければいい。悪女にならなければいい。汪玲枝のやり直しが始まった!
  • 隣はシリアルキラー
    3.7
    ぎりっ、ぎりっ。ぐし、ぐし。ざああああっ――。深夜2時20分、東京都大田区にある工場で働く神足友哉は、今日もアパートの隣室から聞こえてくる、何かを切断しているような不気味な物音で起こされた。ふと、隣人で外国人技能実習生の徐浩然が死体を解体する姿を妄想するが、近所で女性の遺体の一部が発見されたことで、それが現実味を帯びる。気になった神足は、真夜中に部屋から出た徐を尾行すると、想像を絶する恐ろしい展開に……。五感から震え上がるような体験を提供するホラーミステリー。
  • 櫓太鼓がきこえる
    4.3
    17歳の篤は高校を中退し、親との関係が悪化する中、現実から逃げ出すように叔父の勧めで相撲部屋に呼出見習いとして入門。関取はいないし弟子も少ない弱小部屋の朝霧部屋で力士たちと暮らすことになる。ベテラン呼出の進さんに教えを乞うが、引っ込み思案の篤は本番で四股名を間違えて呼ぶなど、しくじってばかり。焦りや葛藤を覚えながらも、日々土俵で声を張り、少しずつ成長していく。第33回小説すばる新人賞受賞作。選考委員を唸らせた、知られざる角界の裏方「呼出」に光を当てる、新しい相撲小説!
  • 至誠の残滓
    3.0
    幕末に死んだはずの元新撰組・原田左之助は、松山勝と改名して東京の片隅で古物屋を営んでいた。明治11年8月、彼のもとを警部補として新政府に仕える藤田五郎(斎藤一)が訪れた。「今頃何しにきやがった」――すると藤田は人買いなど悪事に手を染める元長州藩の士族を調べて欲しいと依頼した。新聞錦絵の記者をする高波梓こと山崎烝とともに調査を進めると、予想外な真相に辿り着く。細谷正充賞(21年)、日本歴史時代作家協会賞作品賞(22年)を受賞した文庫界の風雲児・矢野隆が新選組の生き残り3人の活躍を描く、エンタメ120%のノンストップ新撰組小説!
  • ベビーシッターは眠らない 泣き虫乳母・茨木花の奮闘記
    4.0
    各種資格を保有する、プロのベビーシッター・茨木花。今度の派遣先は、両親ともに政治家という大和家だが、母親の不貞で夫婦関係は破綻し、父子家庭になるらしい。3歳になる娘・七海のシッターになる花だが、七海の誕生パーティー当日、プレゼントをめぐるある事件が起きて……? また、七海と同じスイミングスクールに通う、5歳の男の子・葉山櫂と知り合った。賢くて人懐っこい櫂は、不動産業を営む優しい父親と、お菓子作りが得意な母親と三人暮らし。誰からも幸せそうに見える葉山一家。しかし、ふとしたきっかけで、この理想的な家族に思いもよらない秘密があることに気づいた花は……。
  • 室町もののけ草紙
    4.0
    室町後期。政治に倦んだ将軍に代わり実権を握った正室、日野富子の心を支配していた思い。京の町が戦火に包まれた応仁の大乱を引き起こした山名宗全、細川勝元それぞれの事情。困窮の中、生き残りを懸けた絵師や猿楽師の情熱。時代が大きく変貌するとき、転機を迎えた人物は何を見て何を思ったのか。心情に寄り添ってドラマチックに描かれた連作歴史小説。室町の世のリアルを体感できる一冊。
  • 万葉百歌 こころの旅
    4.0
    今、たどりつく。万葉集の新境地。選り抜かれた100首と独自の解釈が、新たな〈万葉観〉へと導く! 長歌、短歌、旋頭歌など、全4500余首が収められた日本最古の撰歌集「万葉集」。京都、飛鳥、奈良といった古都の散策を主題とする随筆の名手が、その中から100首を厳選し、瑞々しい解釈と美しいエッセイを添える。内乱が頻発し混沌とした社会にあって、歌の作者たちは嘆きや悦び、叶わぬ願いや迸る想いを懸命に詠み上げた。そうした先の見えない時代を生き抜く逞しさに満ちた古の詩が、私たちに今ひとたびの生命力を与えてくれるはず。詩歌の来歴はもちろん、著者自身が万葉ゆかりの地で見聞きした余話に豊かな学びと温かな癒しがある。また、躍動感のある大和路の風光描写が――たとえ物理的な移動がままならない時であっても――想像力あふれる魂の旅へと誘ってくれる座右の書。
  • ソルハ
    4.0
    1996年9月、アフガン政権崩壊。タリバンが首都カブールを制圧し、国民の意見を無視する圧政を敷いた。特に女性には教育の権利も外出の自由も存在しない。それでもビビは、勉強にも世界の動きにも好奇心旺盛な少女だった。生まれた時から戦争が日常の風景だったビビは、何を決意し、どんな支えを持って生き抜いたのか。平和へのメッセージを込めた渾身の一冊。第60回小学館児童出版文化賞受賞作。
  • 琥珀の夢 小説 鳥居信治郎 上
    4.3
    1~2巻814~880円 (税込)
    明治12年、大阪船場、薬問屋が並ぶ道修町に近い釣鐘町で一人の男児が産声を上げた。両替商、鳥井忠兵衛の次男信治郎、後に日本初の国産ウイスキーを作り、今や日本を代表する企業サントリーの創業者の誕生であった。丁稚奉公先の小西儀助商店では薬以外にウイスキーも輸入して扱っていたが、儀助は国産の葡萄酒造りを考えていた。信治郎は夜毎、儀助と葡萄酒造りに励んだ――。
  • 堀田善衞を読む 世界を知り抜くための羅針盤
    3.5
    南京虐殺事件を中国の知識人の視点から記した『時間』、時代を冷静に見つめる観察者を描いた『方丈記私記』『ゴヤ』などの評伝、『インドで考えたこと』『上海にて』などアジア各国を歴訪して書いた文明批評など、数多くの優れた作品を残した作家、堀田善衞(一九一八~一九九八)。堀田が描いた乱世の時代と、そこに込めた思いは、混迷を極める現代社会を生きる上での「羅針盤」として、今なお輝きを放つ。堀田作品は、第一線で活躍する創作者たちにも多大な影響を与え続けている。堀田を敬愛する池澤夏樹、吉岡忍、鹿島茂、大高保二郎、宮崎駿が、堀田善衞とその作品の魅力、そして今に通じるメッセージを読み解く。 【目次】はじめに 『方丈記私記』から 富山県 高志の国文学館・館長 中西 進/第一章 堀田善衞の青春時代 池澤夏樹/第二章 堀田善衞が旅したアジア 吉岡 忍/第三章 「中心なき収斂」の作家、堀田善衞 鹿島 茂/第四章 堀田善衞のスペイン時代 大高保二郎/第五章 堀田作品は世界を知り抜くための羅針盤 宮崎 駿/終章 堀田善衞 二十のことば 富山県 高志の国文学館/おわりに/【年表】堀田善衞の足跡/付録 堀田善衞 全集未収録原稿──『路上の人』から『ミシェル 城館の人』まで、それから……
  • 源氏物語を反体制文学として読んでみる
    3.0
    紫式部が『源氏物語』を書いた平安時代は、摂関政治(天皇に嫁いだ娘が男児を産むことで外戚として権力を得る)の全盛期にあった。しかし『源氏物語』は天皇親政の時代を舞台とし、「源」という元皇族が活躍するストーリーだ。摂関政治をあえて否定するという、いわばその時代の「反体制文学」として『源氏物語』は大ベストセラーとなり、多くの読者の支持を得た。なぜ紫式部はそのような果敢な挑戦をしたのか。紫式部が時代をどう感じ、またどのようなモチベーションで物語を綴ったのか。独自の視点で鮮やかに描く、新しい『源氏物語』論。 【目次】まえがき――『源氏物語』の謎/第一章 紫式部と『源氏物語』/第二章 源氏一族の悲劇/第三章 摂関家の権威と専横/第四章 紫式部の出自と青春時代/第五章 紫式部の恋と野望/第六章 摂関政治の終焉/あとがき/主な参考文献
  • 深重の海
    3.3
    【第79回直木賞受賞作】紀伊半島は南東部、太地湾辺りは古くから鯨取りで栄えた土地柄である。明治11年12月24日、熊野灘の沖に現われた一頭の巨大鯨。小舟に乗った数百人の男たちが立ち向かう。これが大遭難、世にいう“背美流れ”の発端となり、慶長年間からの伝統的な捕鯨組織が崩壊しはじめる。明治の激流に呑まれ、滅びゆく運命をたどる海人たち。愛と闘いをドラマチックに描いた感動の長編。
  • 北斗 ある殺人者の回心
    4.3
    【第8回中央公論文芸賞受賞作】両親から激しい虐待を受けて育った少年、北斗。誰にも愛されず、愛することも知らない彼は、高校生の時、父親の死をきっかけに里親の綾子に引き取られ、人生で初めて安らぎを得る。しかし、ほどなく綾子が癌に侵され、医療詐欺にあい失意のうちに亡くなってしまう。心の支えを失った北斗は、暴走を始め――。孤独の果てに殺人を犯した若者の魂の叫びを描く傑作長編。

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