集英社文庫の検索結果
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トラッシュ
いじめ、差別、虚無感、愛されない苦しみ、親との確執……それぞれの理由で集団自殺を試みた6人の若者達。しかし、闇サイトで入手した薬が偽物で、全員生き延びてしまう。「一遍死んだんやから、もう怖いものはない」。自分たちを死の淵に追い込んだ「加害者」に対し、6人は犯罪も辞さない世直し活動を始める。ドラッグ売人狩り、差別団体へのテロ、そして首相暗殺。その過激な行為で世間の賞賛と非難を浴びながら、6人の活動はエスカレートしていき……誰が本当の屑(トラッシュ)なのか。小説すばる新人賞受賞後第一作。雑誌連載時から賛否を巻き起こした問題作。文庫化にあたり結末を大幅に修正した完全版! -
ばらまき 選挙と裏金
自民党衆院議員が妻の参院選出馬に際し、地元の議員らに現金を自ら配って回った前代未聞の買収事件。その額は100人で計2871万円にのぼる。なぜ、この事件は起きたのか。本当の“巨悪”は誰なのか。広島の地元紙が総力を挙げて「政治とカネ」の取材を続けるうち、買収の資金源とも目される自民党の巨額「裏金」問題へと繋がってゆき…。政権中枢の巨額「裏金」疑惑に広島の地元紙「中國新聞」が切り込んだ渾身の調査報道。『ばらまき 河井夫妻大規模買収事件全記録』の内容に、22年以降の取材の経過を大幅に加筆。買収資金として安倍政権幹部4人が裏金を提供した疑いを示すメモを手がかりに、政権中枢の闇に迫る。巨大な権力の壁にひるまず、真相に迫り続けた取材の裏側を描く執念のノンフィクション!――「事件はまだ終わっていない」 -
対になる人
はじめて彼女を殺したのは母親だった。小学2年生の彼女を絶望的にまで殺し尽くしたのは教諭である鈴木による性的虐待だった。鈴木先生は6人の彼女を生みだすきっかけとなった。17歳のときに彼女を犯し、完全に殺したのは水原君と10人の仲間たちだった。そのとき新たに2人、あるいはさらに多数の彼女が生まれた…。札幌に引っ越した小説家の菱沼は、クラブで心に50の人格を宿す解離性同一性障害の紫織と出会う。DV被害にあう女に手を差し伸べた男は、信じられないほど壮絶な彼女の過去を知ることに……。圧倒的な生々しさで描かれる迫真のサイコスリラー。 -
サマーゴースト
夏の間、郊外の飛行場跡地で線香花火を灯すと、自殺した女の幽霊“サマーゴースト”が現れるという。そんな都市伝説を聞いた高校3年の友也は、自殺系サイトで知り合った高校生の涼とあおいとともに、その幽霊に会いに行く。彼らは幽霊に「死ぬって、どんな気持ちですか?」と聞いてみたかった。それを聞くべき理由があったから。しかし、彼女からは衝撃の事実を聞かされ…。10代からイラストレーターとして活動し、近年はアニメ、作詞、小説、漫画、と多彩なクリエイティビティを展開する俊英・loundraw。その初監督の劇場アニメーションを、脚本を担当した乙一がノベライズした少し不思議な夏の青春長編! -
マザリング 性別を超えて〈他者〉をケアする
「マザリング」とは性別を超え、ケアが必要な者に手を差しのべること――。産後うつに陥った人、流産を経験した人、産まないと決めた人、養子を迎えた人……。気鋭の映像作家が、自身の妊娠出産を端緒に、あらゆる弱者を不可視化するこの現代社会を問い直す。記録されてこなかった妊娠出産期の経験をすくいあげ、いまを生きる人々の声から、ケアをめぐる普遍的思考を紡ぐ。イケムラレイコ、イ・ラン、寺尾紗穂、ドミニク・チェンらへの取材も収録。社会に埋もれる「声なき声」に耳を傾け、手垢にまみれた「母」という概念を解きほぐし、未来へと繋ぐ圧巻のルポルタージュ・エッセイ! -
波の上のキネマ
尼崎に祖父が創業した小さな映画館「波の上キネマ」を継ぐ安室俊介。座席数100余りの小さな映画館は、収益を上げることは年々難しくなっており、ついに新聞に「年内に閉館する見通し」との記事が出てしまう。そんなある日、創業者である祖父の名前を出した問い合わせが入る。それがきっかけとなり、祖父の前半生に興味を持った俊介は南へ向かう。祖父は脱出不可能な絶海の島で苛酷な労働を強いられていたが、そこにはジャングルの中に映画館があったという。祖父はなぜその島に行ったのか。なぜ映画館があったのか。運命に抗う祖父が見たものは……。壮大なスケールで描く驚嘆と希望の長編小説。 -
幻の旗の下に
日中戦争の拡大を受け、東京オリンピックの返上が決まった1938年。大日本体育協会は、オリンピックに代わる国際大会の開催を画策していた。体協の理事長・末弘の秘書を務める石崎は、体協幹部や陸軍などの政治的な思惑に疑念を抱きながらも、平和の象徴としての代替大会を開催するべく曲者ぞろいの面々と交渉を重ねていく。一方、ハワイにある日系人野球チームのマネージャー・澤山の元に、旧知の石崎から電報が届く。返上された東京オリンピックの代わりとして開かれる「東亜競技大会」に、野球のハワイ代表として参加してくれないか、という招請状だった――。知られざる歴史を浮かび上がらせる圧巻の交渉小説! -
黄色い夜
東アフリカの大国エチオピアとの国境付近。ルイこと龍一は、そこで知り合ったイタリア人の男・ピアッサとE国へ潜入した。バベルの塔を思わせる巨大な螺旋状の塔内に存在する無数のカジノが、その国の観光資源だった。そこは、砂漠のなかに屹立するギャンブラーたちの魔窟。上階へ行くほど賭け金は上がり、最上階では国王自らがディーラーとなり、国家予算規模の賭け金で勝てば、E国は自分のものになるという……。奪われたものを取り戻すために、そして、この国を乗っ取るために、巨大なカジノ・タワーの最上階を目指せ! 注目の作家が放つ、スリリングなギャンブル小説!! -
カミサマはそういない
目を覚ましたら、なぜか無人の遊園地にいた。園内には僕をいじめた奴の死体が転がっている。ここは死後の世界なのだろうか? そこへナイフを持ったピエロが現れ……(「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」)。僕らはこの見張り塔から敵を撃つ。戦争が終わるまで。しかし、人員は減らされ、任務は過酷なものになっていく。そしてある日、味方の民間人への狙撃命令が下され……(「見張り塔」)。現代日本、近未来、異世界――様々な舞台で描かれる圧倒的絶望。この物語に、救いの「カミサマ」はいるのか。見たくない、しかし目をそらせない、人間の本性をあぶり出すダークな全7編の短編集。 -
ブレイクニュース
YouTubeで大人気のチャンネル『野依美鈴のブレイクニュース』。児童虐待、8050問題、冤罪事件、パパ活の実情などを独自に取材し配信。マスコミの真似事と揶揄され、誹謗中傷も多く、中には訴えられてもおかしくない過激でリスキーな動画もある。それでも野依美鈴の魅力的な風貌も相まって、番組は視聴回数が1千万回を超えることも少なくない。年齢、経歴も不詳で、自称ジャーナリストを名乗る彼女の正体を探るべく、週刊誌記者の真柄は情報を収集し始める。すると意外な過去が見えてきて……。デジタル社会の現代へ警鐘を鳴らす、SNS時代の新たな社会派小説。 -
存在の耐えられない軽さ
舞台は東西冷戦下のチェコスロバキア。「プラハの春」と呼ばれる1968年に実現した束の間自由主義体制とその後のソビエト連邦の侵攻、「正常化」という名の大弾圧という歴史的な政治状況下で、苦悩する恋人たち。不思議な三角関係など、四人の男女のかぎりない愛と転落を、美しく描きだす哲学的恋愛小説。チェコ出身の作家ミラン・クンデラの代表作にして世界的ベストセラー。原著は1985年に刊行され、1988年にフィリップ・カウフマン監督、主人公トマシュにダニエル・デイ=ルイス、テレーザにジュリエット・ビノシュを起用して映画化されたことでも広く知られている。 -
鶴は戦火の空を舞った
ライト兄弟からわずか10年、戦闘機は「凧のお化け」から急速に進化し、第一次世界大戦の実践に投入された。日本軍で招集された操縦訓練生の一人、錦織英彦は持ち前の体力と視力で操縦センスを発揮。しかし上司に好かれず任務から外されてしまう。「地上」から自由になりたい! しがらみを捨て、自由に飛びたいと思った英彦は、フランスでピロット(戦闘機乗り)になった先人のことを知り海を渡る。アス(エース)を目指す新たな挑戦が始まった――。近代を舞台にして、ひとりの若者のドラマとして描かれる「航空機事始め」。新時代の歴史小説誕生! -
水たまりで息をする
ある日、夫が風呂に入らなくなったことに気づいた衣津実(いつみ)。夫は水が臭くて体につくと痒くなると言い、入浴を拒み続ける。彼女はペットボトルの水で体をすすぐように命じるが、そのうち夫は雨が降ると外に出て濡れて帰ってくるように。そんなとき、夫の体臭が職場で話題になっていると義母から聞かされ、「夫婦の問題」だと責められる。夫は退職し、これを機に二人は、夫がこのところ川を求めて足繁く通っていた彼女の郷里に移住する。そして川で水浴びをするのが夫の日課となった。豪雨の日、河川増水の警報を聞いた衣津実は、夫の姿を探すが……。女性が主体として生きていくことの難しさを描いた物語。 -
ミシンと金魚
「カケイさんは、今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」――ある日、ヘルパーのみっちゃんからそう聞かれた“あたし”は、絡まりあう記憶の中から、その来し方を語り始める。母が自分を産んですぐに死んだこと、継母から薪で殴られ続けたこと、犬の大ちゃんが親代わりだったこと、亭主が子どもを置いて蒸発したこと。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続ける“あたし”の腹が膨らみだして……。この世に生まれ落ちて、いつの日か死を迎え、この世を去る。誰もが辿るその道を、圧倒的な才能で描き出す! 著者デビュー作にして第45回すばる文学賞受賞作!! -
マチズモを削り取れ
路上、電車、学校、オフィス、トイレなど、日本の公共空間にはびこる〈マチズモ=男性優位主義〉の実態をライターが徹底調査! ジェンダーギャップ指数、先進国でぶっちぎりの最下位――「関係ない」はもうありえない。夜道を歩くことの恐怖、通学・通勤中の痴漢被害、発言権を奪われる不条理……最も身近な日常の場面から、変わらないこの国の「体質」をあぶり出す!! 「大凡(おおよそ)日本に住む全(すべ)ての人に呼んでもらいたい一冊だ」(金原ひとみ) -
真夜中のマリオネット
殺した後、一晩かけて遺体をバラバラにする殺人鬼――通称「真夜中の解体魔」。婚約者を殺された救急医の秋穂は、深い悲しみを抱えながらもなんとか職場に復帰をした。そこに運ばれてきたのは、交通事故で重傷を負った美少年・涼介。無事、命を救って手術室を出た秋穂に刑事が告げた。「彼は『真夜中の解体魔』だ」。復讐しようとする秋穂に、涼介は涙ながらに無実を訴え証拠を見せた。秋穂は、ためらいながらも涼介と真犯人を探すことになるが……。涼介は真犯人に操られた哀れな人形(マリオネット)なのか、それとも周囲を操る冷酷な人形遣いなのか。知念実希人が贈る、究極のクライムサスペンス! -
百合中毒
イタリア人の若い女と恋仲になり、家族を捨てて出ていった父親が、妻と娘夫婦が経営する八ヶ岳の麓の園芸店へ25年ぶりに戻ってきた。イタリア人の彼女は一人で帰国してしまったという。が、娘たちは大人になり、妻にはすでに恋人がいた。次女の遥は「許さないから。絶対に。出てってよ。早く出てって!」と叫び、長女の真希は「大恋愛して出ていったのなら、二度と戻ってこないのが筋ではないのか」と苛立つ。妻・歌子の恋人は夜ごと彼女からの電話を待つ。そして歌子は思い出す。夫との出会いの場所に咲き乱れていた花のことを…。家族とは。夫婦とは。七人の男女の目線から愛を問い直す意欲作。 -
本日も晴天なり 鉄砲同心つつじ暦
時は幕末。江戸城下、大久保の地。長く泰平の世が続き、代々この地を守ってきた鉄砲同心たちは、火薬の原料を転用したつつじ栽培の内職に励み、家計の足しにするようになった。礫(つぶて)家の丈一郎も三十すぎだが、つつじ栽培の内職に専念する毎日。父の徳右衛門が老いても家督を譲らぬためと、小禄の家計を助けたいからだ。ある日、父を訪ねて同役だった貫田が来る。田安家家老の俳諧の会に入りたいから仲介してくれというのだが……。銃の代わりに鋏を握る丈一郎が、礫家を巻き込む様々な事件に果敢に立ち向かう。喧嘩も笑いも絶えない丈一郎一家の、温かな〈お江戸家族小説〉。 -
我が友、スミス
「別の生き物になりたい」――筋トレに励む会社員・U野は、Gジムで自己流のトレーニングをしていたところ、O島からボディ・ビル大会への出場を勧められ、本格的な筋トレと食事管理を始める。しかし、大会で結果を残すためには筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならなかった…。鍛錬の甲斐あって身体は仕上がっていくが、職場では彼氏ができてダイエットをしていると思われ、母からは「ムキムキにならないでよ」と心無い言葉をかけられる。モヤモヤした思いを解消できないまま迎えた大会当日。彼女が決勝の舞台で取った行動とは? 世の常識に疑問を投げかける圧巻のデビュー作! -
よくわかる一神教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教から世界史をみる
今、世界は第二次世界大戦以来、最も危険な状態だと言われる。ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとパレスチナの衝突は、なぜ起こるのか。それを深く知るには、「一神教」の知識が不可欠。本書では、同じエルサレムを聖地とするユダヤ教、キリスト教、イスラム教をめぐる約三千年を追いながら、日本人がわかりにくいと思われるポイントを整理し、質問形式でその起源や地理、歴史を西洋歴史小説の第一人者が解説する。図版満載&明快な構成で世界史入門書としても最適! 文庫版オリジナル書き下ろし「第三部第五章 ウクライナ戦争」も収録!! -
燕は戻ってこない
北海道での介護職を辞し憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳・独身女性のリキ。「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニックの日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられる。バレエ界の「サラブレッド」としてキャリアを積み、自らの遺伝子を受け継ぐ子の誕生を熱望する43歳男性・基。その妻で、不育症と卵子の老化により妊娠を諦めざるを得ず、「代理母出産」という選択をやむなく受け入れる44歳女性・悠子。それぞれのままならぬ現実と欲望が錯綜する、ノンストップ・ディストピア小説! -
ドラキュラ記念吸血鬼フェスティバル(吸血鬼はお年ごろシリーズ)
とある企業の記念イベントに出演予定のゲストが不祥事で逮捕され、あわや中止に。急遽変更されたテーマ〈ドラキュラ生誕五百年〉に合わせ、企業の取引先〈クロロック商会〉の雇われ社長にして「正統な」吸血鬼のフォン・クロロックに出演依頼が舞い込むが、クロロックは依頼主とドラキュラの知り合いではないらしく……。おまけにこのイベント、どこか訳ありで!? 表題作ほか、うだつのあがらないサラリーマンの口座に突然二億八千万円が振り込まれ…(「吸血鬼の給与明細」)、観光バスのツアー中、乗員乗客全員が謎の眠気に襲われてしまい…(「吸血鬼の迷路旅行」)の2編を収録! -
自分で名付ける
38歳で妊娠。結婚で生じるあらゆることに納得がいかず、婚姻届は出さなかった。区役所に母子健康手帳をもらいに行くと、想定外のことを言われもやもやし……。妊娠を機に押し寄せる無数の「うわーっ」。メリットのない結婚制度の不自由さ、百点満点の無痛分娩のありがたみ、ゾンビと化した産後、妊娠線というタトゥー、恐怖のワンオペ育児に子守歌代わりのBTS……。“母性”でまとめられたくない、自分だけの気持ちを掬いあげて言葉にしていく、最高に風通しのいい育児エッセイにして新時代のバイブル! その後の2年間を綴ったあとがきを追加収録!! -
コーリング・ユー
海洋研究所に勤めるイーサンと飼育委員のノアのもとに、世界環境を救う貴重なキャニスターを、シャチを訓練して海底から回収して欲しいという依頼が舞い込んだ。間もなくシャチが到着。イーサンはセブンと名付けられたそのシャチが他動物と言語によるコミュニケーションが出来ることに気づく。しかしここに来る前、セブンは従姉のエルと共に捕獲された経験があった。ある日、セブンはエルが苦境にあることを知り不調に陥る。イーサンは、苦心の末にその原因を突き止め、ミッション終了後にシャチたちを海に帰すことを決意するが…。シャチと人間の愛と絆を描く感動の海洋冒険小説! 小説すばる新人賞受賞作!! -
紅蓮の雪
伊吹の最愛の双子の姉・朱里は20歳の誕生日を迎えた日、なんの前触れもなく自殺した。朱里の遺品の中から大衆演劇「鉢木座」の半券が見つかり、それが死ぬ前の最後の足取りであることを知った伊吹は、少しでも真相に迫るべく一座の公演に行った。公演後、座長に詰め寄る伊吹の姿を見た若座長の慈丹は、その容姿を見初め、入団を強く進めた。伊吹は何か手がかりが掴めるのではないかと入団を決意し、以降、訓練と舞台に追われる。そんなある日、ひょんなことから両親と鉢木座との繋がりが露見。それは鉢木座の過去に秘められた禁断の事実だった……。血脈に刻まれた因縁、人間の最果てと再生を描いた問題作。 -
黄金の刻 小説 服部金太郎
明治七年。十五歳の服部金太郎は、成長著しい東京の洋品問屋「辻屋」の丁稚として働いていた。主人の粂吉は、金太郎の商人としての資質を高く評価し、ゆくゆくは妹の浪子と結婚させ、金太郎を辻屋の一員として迎え入れようとする。だがそんな思いとは裏腹に、金太郎は、高価ゆえに持つ人の限られていた「時計」に目をつける。鉄道網の発達により、今後「正確な時間」を知ることの重要性が高まると見抜いていたのだ。いずれは時計商になりたいという熱い想いを粂吉に伝えるが…。経済小説の名手が史実をもとに描く、世界的時計メーカー「セイコー」創業者の一代記! -
遺言未満、
お骨でできた仏像、人とのつながりの希薄さが生む孤独死の問題、ハイテクを組み合わせた最新葬祭業界の実情……。作家、ときどき写真家がカメラを抱えて迷い込んだ“エンディングノート”をめぐる17の旅。「死とその周辺」がテーマの取材は、かつて経験した九死に一生の出来事、異国で出合った変わった葬送、鬼籍に入った友人たちの思い出などと重なり、やがて真剣に「自分の仕舞い方」と向き合うことになる。そしてシーナが見出した新たな命の風景とは? 巻末に朋友、北上次郎の死についての想いを書いた「さらば友よ~文庫版のためのあとがき」を収録。 -
その扉をたたく音
ミュージシャンの夢を捨てきれず、親からの仕送りで怠惰に暮らす、29歳無職の宮路。ある日、余興の時間にギターの弾き語りをするために訪れた老人ホーム・そよかぜ荘で、神がかったサックスの音色を耳にする。演奏していたのは年下の介護士・渡部だった。「いた、天才が。あの音はきっと、俺を今いる場所から引っ張り出してくれる」――神様に出会った興奮に突き動かされ、ホームに通うようになった宮路は「ぼんくら」と呼ばれながらも、入居者たちと親しくなっていく。人生の行き止まりで立ちすくんでいる青年と、人生の最終コーナーに差し掛かった大人たちが奏でる感動長編! -
ロシアより愛をこめて あれから30年の絶望と希望
1991年から94年、ソ連崩壊前後の激動の時代をTBSモスクワ支局特派員として過ごした著者が見たロシアの実態、そこに生きる人々との交流を書簡と日記形式で綴る。そして時は流れ、2022年ロシアはウクライナに侵攻した。開戦直後にウクライナを訪れた際の日記、22年~23年の年末年始にモスクワを訪れた際の記録「補章 ウクライナより愛をこめて」を追加収録。30年前と現在、変わったもの、変わらないものとは? 著者の体験を通し、「大国ロシア」とそこで暮らす人々の本質に迫る! -
死刑執行のノート
死刑執行まで残り12時間となったアンセル・パッカー。彼は「完全な善人も、完全な悪人もいない、だれもが生きるチャンスを与えられてしかるべきだ」と信じている。獄中で密かに温めた逃亡計画もある…。この〈連続殺人犯〉の虚像と実像を、アンセルの母親であるラヴェンダー、アンセルの妻であるジェニーの双子の妹ヘイゼル、ニューヨーク州警察の捜査官であるサフィことサフラン・シンという、いずれも後に死刑囚となるアンセルの人生に大きく関わり、また自分自身の運命も歪んでしまった女性たちの目を通して、浮き彫りにする。エドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)最優秀長篇賞受賞、衝撃のサスペンス! -
彩無き世界のノスタルジア
過去を捨て、裏社会で生きる「交渉屋」のキダ。キダに仕事を発注、交渉時に使用する銃器や爆発物を調達するなど、表向きの輸入代行業とは別に裏稼業を営む会社「川端洋行」に、ある日両親を殺されたという少女・彩葉(いろは)が訪れる。その子の世話を押し付けられたキダは彩葉を匿うことになり、奇妙な共同生活がスタートする。彩葉と暮らすうち、孤独に暮らしていたキダの世界に鮮やかな色が満ちていく。しかし、その裏で蠢く影が、次第にキダを飲み込もうとしていた。やがて明らかになる彩葉の真実とは――。『名も無き世界のエンドロール』の結末から五年後、切なく忘れがたい「企み」の物語。 -
白い土地 ルポ 福島「帰還困難区域」とその周辺
「どうしても後世に伝えて欲しいことがあります」原発事故の最前線で陣頭指揮を執った福島県浪江町の「闘う町長」は、死の直前、ある「秘密」を新聞記者に託した――。娘を探し続ける父親、馬に青春をかける高校生、名門野球部を未来につなぐために立ち上がったOB、避難指示解除後たった一人で新聞配達を続ける青年、そして帰還困難区域で厳しい判断を迫られる町長たち……。開高健賞受賞記者が原発被災地に3年半住み込んで記した震災ルポルタージュ。第2回ジャーナリズムXアワード(Y賞)受賞。 -
命とられるわけじゃない
父、愛猫に続いて、確執の深かった母を亡くした著者。その母の葬儀で、1匹の猫と出会う。小さなその猫が、止まっていた時間をふたたび動かし……。「譲れないことも、許せないことも、人生に一つか二つあれば充分」「どれほどしんどく思えても、生きてゆく途上で起こるたいていのことは、そう――とりあえず、〈命とられるわけじゃない〉のだ」など、経験からつむぎだされた優しい箴言も随所に。今がしんどい人、老いゆく心身に向き合う人、大切なものを失った人、親との関係に悩む人、そして猫を愛するすべての人に贈る1冊。愛らしい猫たちや美しい軽井沢の写真を、カラー口絵と本文にたっぷり収録! -
るん(笑)
結婚式場に勤める土屋は、38度の熱が続いていた。解熱剤を飲もうとすると妻の真弓に「免疫力の気持ち、なぜ考えてあげない」と責められる(「三十八度通り」)。真弓の母は、全身が末期の「蟠り」で病院のベッドに横になっていた。すぐに退院させられ、今後はその病気を「るん(笑)」と呼ぶ治療法を始めることになる(「千羽びらき」)。真弓の甥の真は、近くの山が昔の地図にはないと知り、登りはじめた。山頂付近で、かわいい新生物を発見する。それは、いまは存在しないネコかもしれなかった(「猫の舌と宇宙耳」)――スピリチュアルと科学が逆転した、架空の日本で繰り広げられる不条理劇。日本SF大賞を二度受賞した奇才が放つ、あなたの常識が崩壊する連作小説。 -
心淋し川
江戸、千駄木町の一角は心(うら)町と呼ばれ、そこには「心淋し川」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古びた長屋が建ち並び、そこに暮らす人々もまた、人生という川の流れに行き詰まり、もがいていた。青物卸の大隅屋六兵衛が囲っている年増で不美人な妾のおりきは、六兵衛が持ち込んだ張形をながめているうち、悪戯心から小刀で仏像を彫りだし…(「閨仏」)。飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな唄声を聞く。荒れた日々を過ごしていた与吾蔵が捨ててしまった女がよく口にしていた唄だった…(「はじめましょ」)など、生きる喜びと哀しみが織りなす全六話。第164回直木賞受賞作。