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「カケイさんは、今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」――ある日、ヘルパーのみっちゃんからそう聞かれた“あたし”は、絡まりあう記憶の中から、その来し方を語り始める。母が自分を産んですぐに死んだこと、継母から薪で殴られ続けたこと、犬の大ちゃんが親代わりだったこと、亭主が子どもを置いて蒸発したこと。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続ける“あたし”の腹が膨らみだして……。この世に生まれ落ちて、いつの日か死を迎え、この世を去る。誰もが辿るその道を、圧倒的な才能で描き出す! 著者デビュー作にして第45回すばる文学賞受賞作!!
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Posted by ブクログ
audible⭐︎
めちゃくちゃ面白い‼︎大好きな物語に出会えた♡
カケイさんが可愛くてクスクス笑ってしまった。
お茶目なカケイさんにも壮絶な過去があり、生まれた時から孤独、暴力、苦労、が付き纏っていた。
カケイさんの兄はろくでもない人かと思っていたら…後半その半生を聴いて涙した。妹のカケイさんを影で守りぬいた優しい兄だった♡
そして、兄の恋人のひろせのばあさん‼︎凄く優しく逞しい女性だった。この2人の心根に感動し涙…
なぜ介護士をみっちゃんと呼んでいるのか?も後半に書かれていた。
この小説を聴いている間、喜怒哀楽全て感じた!
てんぽがとても良かった。短すぎず、長すぎもしない。ギュッと詰まった物語だった。
Posted by ブクログ
読んでいてどこまでも切なくなってしまった.
日々の仕事で触れ合う認知症を持つ高齢者の方々の心の奥底に触れたような,「本音」を突きつけられたような,何とも言えない居心地の悪さと共に,「一人の人であること」の尊さを強烈に感じた.間違いなく,明日からの,いや,今日からの振る舞いに大きな導きを与えてくれたことは確かだ.
誰がどの視点から語っているのかも分からない冒頭,(解説によると千葉弁らしい)「カケイさん」の語り口は,活字にすると当初は読みづらく,意味を理解するのに0.2秒くらいのタイムラグが生じ,ちょっとした違和感がある.しかし,人物像がカメラのファインダーを覗きながら焦点を合わせるように解像度を上げてくるにつれ,それが普段診療している認知症の方々との対話の分かりづらさや違和感と絶妙にリンクし,圧倒的なリアリティを増してくる.
そして語られる「カケイさん」の人生.
「人に歴史あり」などと使い古された言葉にしてしまえば陳腐になってしまうが,人の数だけ倖せも,後悔も,癒えることのない傷もあるわけで,それは普段相対している人たちもまた同じだ.分かっちゃいるのに,忙しい診療中にはすっかりそれが抜け落ちてしまう.というより,意図的にある程度封印せざるを得ないのが現実で.それどころか,仕事を離れて街場の一員になっても,「おじいちゃん」「おばあちゃん」「お年寄り」という記号に彼らを封じ込めてしまう.やがて,自分もその中に封じ込められる……誰かにとっての「特別な自分」がどんどん削られていき,いつしか自分にとってすら「特別」ではなくなっていく……「人の事なら好き勝手に語れるけど,自分のことは分からない」という「カケイさん」の言葉に象徴されるように,どんどん小さくなっていってしまう自分の世界…
でも,
みっちゃんと過ごした日々は,間違いなく倖せだったと,確信を持って語る「カケイさん」.そこには,誰にも奪うことのできない,燦然と輝く「個」としての「カケイさん」がいる.絶対に奪われることのない,個人としての尊さがある.
ほんの何年か前まで,僕の仕事の対象者は子どもばかりだった.まだ言葉も発しない子どもたち.来る日も来る日も手術,術後管理,当直,親への対応……今は真逆に見える環境に身を置きながらも,やっていることの「根っこ」は変わらないということを改めて示し,勇気づけてくれた一冊だ.
僕らは,見える形こそ違えど,誰かの人生を「倖せ」にするために,専門知識を磨き,技術を高め,心を込めてそれを差し出すことに価値がある.対象が変わっても,「誰かのかけがえのない,誰にも奪われない大切なもの」を紡ぐための歯車の一つになる.それは,僕らの仕事だけの話じゃない.仕事とは,「生きる意味」とは,きっとそういうことなんじゃないかと思う.
日々出会うたくさんの「カケイさん」のために,今日から僕は,何ができるだろう.
一人一人の大切な人生のために,もう一度ここから始めよう.
Posted by ブクログ
読後感がなんとも言えない 読後感がなんとも言えない、は褒め言葉です。
面白かった、の一言では片付けられないなにかがある。
特に好きなシーンは、冒頭にカケイさんが「あの女医は外国で泣いた女だ」と言い、ヘルパーのみっちゃんが女医に確認すると、おそらく当たっている。
そしてこのみっちゃんは、病院からの帰り道に自身が離婚調停中の身であり、親権を夫に取られるのではないかと危惧していることを明かす。
カケイさんはなんかかっこいいことを言おうと「「チャンスを待て」「まあまあカタチはついたと思う」と伝えると、みっちゃんは泣き出す。
きっと、切羽詰まっているみっちゃんには、カケイさんの言葉が幸せの予言のように聞こえたのではなかろうか。
カケイさんも含め、全ての人の表に出ている部分はほんの一部。
みんな、最後は幸せな気持ちであの世に旅立ってほしいと思った。
Posted by ブクログ
カケイさんの喋り口調が独自で読みづらく離脱しそうになったが、最後まで読んで本当に良かったと思える。
思えば、自分のおばあちゃんと話す時も同じような感覚で、4割くらい分からないことがある。おばあちゃんがどんな人生を歩んできたのかも知らない。正月帰省した時に『離婚しようかと思ったけど今更そんなことしたってなあ』と漏らした時に、今まで見えなかったおばあちゃんの人生を少し感じた。この本を読んで思い出した。
体も言うこときかず、記憶もできなくなり、若い人に相手にされず、友や家族も失い尽くしても生きる。どんな人生だとしても、何か一つでも幸せだったと、胸を張って生きる。良い小説に出会えたな。
Posted by ブクログ
認知症を患うカケイさんの語りで描かれる人生の物語。慣れないAudibleで聴いてみましたが、臨場感があり感情の動きをリアルに感じられました。
カケイさんの表の声と心の声、現在と過去を行ったり来たり。ときどきクスリとなる場面も。
介護ヘルパーさんや家族とのやり取りを、カケイさんの目線を通して疑似体験してみて、実際に認知症の人もこんなふうに感じているのかなと想像してしまいます。
認知症になってから思うこと、見えてきたこと、忘れられない後悔、辛かったこと、愛しい存在と幸せな時間が確かにあったこと。
人生の終わりに何を感じ、何を思うのか。
祖母を思い出しながら読んでいて、言葉にならない気持ちになりました。
カケイさんのように認知症になっても周りのことをよく観察して理解っていることもあるし、そうとは気づかず案外気遣われているのかもしれない。
認知症の人に限らず常々思うのは、話さないのは何も考えてないわけでも感じていないわけでもないということ。
読み終えて表題の「ミシンと金魚」が切なく重く心にのしかかる。カケイさんの可愛い「みっちゃん」と呼びかける声と、
『悪いことがあっても、必ずいいこともある。
同じ分量必ずある。』
の言葉が耳に残っています。
認知症の人の語りで物語が進んでいくのがとても新鮮。一人の女性が生き抜いてきた壮絶な人生とその終わりを描き、生々しい「生」を感じる作品でした。
改めて読みなれている紙の書籍で読んでみたい。
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