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パリ。プールサイドに寝そべっていた「私=作者」は、見知らぬ中年女性の、軽やかにひるがえる手の仕草を見て、異様なほど感動し、彼女をアニェスと名づけた…。こうして生まれた「女」の、悲哀とノスタルジアに充ちた人生が、時空を超えて、文豪ゲーテと恋人の「不滅」を巡る愛の闘いの物語と響きあう。詩・小説論、文明批判、哲学的省察、伝記的記述など異質のテクストが混交する中を、現実と虚構、過去と現在、個人の運命と歴史が交錯し、軽やかに駆け抜けていくポリフォニック(多声的)な、壮大な愛の変奏曲。
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Posted by ブクログ
『存在の耐えられない軽さ』もそうだけど、男女の物語と哲学的なメタテキストが混然一体となって踊るような構成で、細部の言葉遣いを味わいつつも引っ掛からずに読める滑らかな文章で綴られている。その読書感覚は独特で、クンデラ以外では読んだことがない。現実世界と小説の境界を溶かそうとして敢え無く現実世界に呑み込...続きを読むまれてしまうような切なさを感じる。
まさに自由奔放 時間は真っ直ぐ進まなく、現実/虚構の区別も曖昧。 けれども、それぞれの「エピソード」が、複数の主題と結びついていき、壮大な人生の小説となる。 ■「不滅」「顔」「イメージ」 2020年代現在、当時よりもより一層、(一般市民の)私たちにとって身近に潜むテーマなのではないか。 私たちは片...続きを読む手一つに収まる電脳世界の中で、ほぼ四六時中イメージの生成に勤しんでいるし、さらにそれを不滅の世界にいとも簡単に残せてしまう。 そして、あまりにも多い顔たち……。 ■アニュスが意図もせず、死によって他者の中にあるイメージを強く刺戟したことを考えると、 きっと私たちは不滅にならざるを得ないのだと思う。殊に現在……。 ■私たちは定められた主題に沿って、生きている。喜劇的な存在である。 主題と関係がないエピソードは積み重なっていくが、これは謂わば地雷みたいなもので、何かの折に強く私の気持ちを揺さぶる可能性がある。 ■記憶は映画的ではなく、写真的である。
「生きること、生きることには何の幸福もない。しかし、存在すること、存在することは幸福である/人生において耐えられないのは、存在することではなく、自分の自我であることなのだ」ポールとアニェスの関係をゲーテとベッティーナとの対位法的に描きながら次第に既存の物語の手法から逸脱させていく本作だが、それは歴史...続きを読むの非合理さと合わせ鏡となることで不条理な生を浮かび上がらせている。絶望はしても決してその感情には醉わない―そんな場所から書かれた言葉は自分が自分であることの困難さを抱えた者たちにとても深く、重く突き刺さるのだ。
学生の頃に一回読んでるはずの本。そのときは、これが小説なんだ、と新鮮な驚きを感じたのを読み返しながら思い出した。学生時代はクンデラやマルケスや色々読んでいて、小説って色々あるんだなあ、と驚いていたと思う。 最近になり、仕事や勉強の本ばかり読んでいてもよくないような、もっというと精神的な休憩が必要な気...続きを読むがし始め、小説を読み返したりしている。いいもんだね。自分の土壌に肥やしと水が注がれるようで。
クンデラが、これこそ「存在の耐えられない軽さ」だと 作中で述べる作品、不滅。 吾が親愛なるゲーテ先生が語る。 時系列があいまい。出来事がいろんなところで交差する。 その絶妙さ。そして不滅の存在について。自我について。 存在は幸なり。自我こそ苦なり。
クンデラは、女性のキャラクター描写が上手いなぁ。女をよく見てると思う。今回は、勿論アニエスに共感すること多数。なんかもぅ、本当にアイロニック。
あるひとつの仕草を発端に作者の中に生まれでた、虚構の人物のはずの「アニェス」が、読み進めているうちにどんどん「存在」してくる様はまるで魔法のようで、いつのまにか「不滅」の世界に呑まれている自分に気付きます。 「存在の耐えられない軽さ」よりも好きな本です。
クンデラの小説で一番好きなのがコレ。話を一言では言えないけど、エピソードに頼らない小説の力を見たような気がしました。
長い。プールサイドで見た老女のひと仕草だけからよくもこんなにつらつらと描けたものだ。不滅とか顔とか、存在論的な単語がモリモリ。
5章以降、私のことかと思った 文章の連なりから受け取る感覚も、鋭い洞察も特別あるわけではないが、形式が持つ何かを感じた
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