国内小説 - 集英社作品一覧

  • 破壊屋 プロレス仕舞伝
    4.0
    造花が依頼の合図。リングで規律を乱す問題児を制裁する「掃除屋」という裏稼業を担うベテランプロレスラー藤戸。自身との試合で重傷を負った友の治療費のためという美談が周知のものとなり、今ではタレント扱い。満身創痍の彼がいつ誰と引退試合をするのかの憶測が飛び交う中、彼を騙る者が一般人を襲撃する事件が。そして意外な人物から裏の依頼も……。迫真の描写と圧巻の仕掛け。業界でも話題となった三部作待望の最終章。衝撃のラストに、あなたは震えを抑えられるか! 圧巻のプロレス小説を体感せよ!!
  • デッド・リミット
    -
    宅配便で届いたのは、誘拐された息子の指だった。母親は身代金の受け渡しに奔走するが、卑猥な写真を盗撮された女性教師、両親を監禁されたサラリーマン、小悪党の刑事らを巻き込み、事件は錯綜を極めていく。誘拐犯に踊らされる者たちの暴走は止まらない――。子供の命は、そして、全てを裏で操るコンダクターとは何者なのか。疾走感あふれる展開で衝撃の結末まで駆け抜ける、社会派サスペンス。
  • DEVIL'S DOOR
    3.3
    「マニピュレイテッド」と呼ばれる人型AIが自由に往来する近未来。自由都市サン・ハドクには、人とマニピュレイテッドと、そして悪魔が生きている。近年、悪魔が仕業の事件が多発し、一方で、人間によるマニピュレイテッド狩りが横行していた。マニピュレイテッドの射撃手・ユマは、聖書型の悪魔アグリとともに、悪魔祓いを生業としている。ある日、二人のもとにシオリという女性シンガーの護衛依頼が舞い込み……。人の心を理解し始めるAIと、人の魂を堕落せさようとする悪魔…二人の冒険が始まる!
  • でも女
    3.5
    「でも…」「でも―」と、何でも欠点を見つけ否定する一流好みのオザワさん。そんな彼女がフツーの店での飲み会に行ったから大変!(「でも女」)小学校で、中学校で、高校で、大学で、大人になって……幾つになってもついてまわる女同士のしがらみを、明るく描く女の友情物語10編。
  • デモクラシー
    3.4
    「あなたは今日から議員です」 202×年、日本の政治システムは一変していた。 憲法は改正され、20歳以上の国民から合計1000人の「国民議員」がランダムに選出され、総理大臣は直接選挙で選ばれる。国会は解散し、「国民議会」(二院制)を新たに結成。議会は完全オンラインで行われ、議員の任期は4年、年間報酬500万円、基本再選はなし。専用のデバイスを支給され、議員としての活動は全てオープンに。さらに、国民は常にそれらを確認、監視できるようになっていた。 突然議員に選ばれた大学生の混乱、直接選挙で選ばれた新首相の苦悩、国民議員の不正を監視する機関「国民議員調査委員会」の危うさ、一気に権限が大きくなった官僚、現首相と旧政治体制に固執する都知事らの政権争い…… 有り得るかもしれない「未来」を描く実験的政治小説。堂場瞬一の新境地!
  • 田園発 港行き自転車 上
    3.9
    1~2巻759円 (税込)
    滑川駅で父が突然亡くなった。駅前には一台の自転車が取り残されていた。父は、宮崎へ出張に行ったはずなのに、なぜ――。十五年後、絵本作家になった娘・真帆は父の足跡を辿り富山へと向かった。一方、東京で働いていた千春は、都会での生活に疲れ故郷へと戻る。そこで年下の従弟・佑樹と入善の町に広がる田園風景に癒されていく。富山・京都・東京、三都市の家族の運命が静かに交差する物語。
  • 【電子特別版】少女か小説か
    4.0
    卒業式の日、誰もいなくなった教室で、制服を脱ぐときが訪れた少女と男性教師が「恋」について交わす会話のゆくえは……。(「セーラー服を脱がないで」)ほか、“トラウマテクノポップ”バンド・アーバンギャルドのリーダー松永天馬が描きだす「少女」たちの物語。病的にポップ。痛いほどガーリー。アーバンギャルドの代表曲をモチーフにした短編小説12編を収録した短編集。電子版には宮崎夏次系イラスト集を収録。
  • 闘鬼 斎藤一
    3.8
    なぜ彼はそこまで“闘い”に心酔し、鬼と化したのか。十代の終わり、些細な喧嘩から人を殺めた斎藤一は、斬る悦びに目覚め、誰もが恐れる新選組最強の剣士となった──。命懸けで仕掛けた芹沢鴨暗殺や池田屋襲撃など、血なまぐさい事件を重ねてきながら激動の幕末を駆け続けた男の生き様。息を呑む展開、手に汗握る剣戟場面、胸を震わせる結末。注目の正統派時代作家による、渾身の長編。
  • 東京観光
    3.7
    アパートの水漏れがきっかけで、下の階に住む男と親しくなったあかり。男はある日、奇妙な相談を持ちかける。「俺と、部屋を交換しない?」(「天井の刺青」)。街のあちこちに灰色の公衆電話が存在していた、あの時代。初めて東京を訪れた私が泊まったホテルの部屋には、なぜか外国人女性が住んでいて……(「東京観光」)。不思議で、ユーモラスで、じんわり染みる。直木賞作家が贈る、味わい深い七つの物語。
  • 東京藝大 仏さま研究室
    4.2
    2浪、3浪は当たり前、時には10浪以上の学生も……。パンダと桜で賑わう上野公園に隣接する東京藝術大学。通っている学生も教授も少し変わった人ばかり。そんな東京藝大で、仏像の保存について研究する通称「仏さま研究室」の修了課題は、なかなか過酷で学生泣かせだ。様々な思いを抱え、真心を込めながらも、「模刻」に悪戦苦闘する学生たちを描く、クスっと笑えてグっとくる青春ストーリー。
  • 東京自叙伝
    3.8
    【第50回谷崎潤一郎賞受賞作】舞台は東京。地中に潜む「地霊」が、歴史の暗黒面を生きたネズミや人間に憑依して、自らの来歴を軽妙洒脱に語り出す。唯一無二の原理は「なるようにしかならぬ」。明治維新、第二次世界大戦、バブル崩壊から福島第一原発事故まで……首都・東京に暗躍した、「地霊」の無責任一代記! 史実の裏側で、滅亡へ向かう東京を予言する。果てしないスケールで描かれた第50回谷崎潤一郎賞受賞作。
  • 東京上空500メートルの罠(十津川警部シリーズ)
    -
    埼玉の飛行場から、有名人の招待客7名を乗せて東京遊覧に飛び立った世界最大の飛行船ツェッペリンNTワン号が、ハイジャックされた。ゴンドラ下に爆弾を仕掛けたという犯人は、一人3000万円の身代金を要求。十津川警部は、犯人のたび重なる要求に翻弄されながらも、人質を守ろうと飛行船を追跡するが……。大都会東京の上空500メートルの攻防! 意想外の難事件に挑む十津川警部の活躍。
  • 東京ディール協奏曲
    3.0
    この世界、動けるものが勝つんだよね。東京、香港、ドバイ、ニューヨーク――。巨大資本の間隙を縫ってマネーの魔術師が疾走する! 現役の実業家が圧倒的なリアリティで描く、新時代の企業買収エンターテイメント。「電子化にあたっての追記」も収録。【著者紹介】塩野誠(しおの まこと)…ゴールドマン・サックス証券、ベイン&カンパニー、ライブドア証券(取締役副社長)等にて国内外の事業戦略立案・実行、資金調達、M&A、投資に従事。テレコム・メディア・テクノロジー業界を中心にベンチャーから企業再生までを経験。IGPI参画後は、大手メーカーの資金調達、エンターテインメント企業のM&A、大手テレコム企業のクロスボーダーM&A、事業開発等に従事。慶應義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士 。※この本は2007年に栗山誠名義で出版されましたが、電子化にあたり著者名を本名に変更しています。
  • 東京デザート物語
    3.3
    地方から上京し女子大生になった朱子は、料理研究家の叔母の家に寄宿する。朱子の毎日は刺激の連続で、ひょんなことから女性誌の読者モデルに選ばれ、彼女の生活は一変する。そして秘密の恋も始まる。叔母さんのデザートレシピとアドバイスで、朱子は素敵な恋愛レッスンを積んでゆく。恋愛長編小説。デザートのレシピも一部ついています(文庫版から一部割愛)。
  • 東京ハイダウェイ
    4.0
    ようこそ、心休まる「隠れ家」へ。 東京・虎ノ門の企業に勤める桐人は、念願のマーケティング部に配属されるも、同期の直也と仕事の向き合い方で対立し、息苦しい日々を送っていた。 直也に「真面目な働き方」を馬鹿にされた日の昼休み、普段は無口な同僚の璃子が軽快に歩いているのを見かけた彼は、彼女の後ろ姿を追いかける。 辿り着いた先には、美しい星空が描かれたポスターがあり――「星空のキャッチボール」 桐人と直也の上司にあたるマネージャー職として、中途で採用された恵理子。 しかし、人事のトラブルに翻弄され続けた彼女は、ある日会社へ向かう途中の乗換駅で列車を降りることをやめ、出社せずにそのまま終着駅へと向かう。 駅を降りて当てもなく歩くこと数分、見知らぬとんがり屋根の建物を見つけ、ガラスの扉をくぐると――「森の箱舟」 ……ほか、ホッと一息つきたいあなたに届ける、都会に生きる人々が抱える心の傷と再生を描いた6つの物語。
  • 東京ロンダリング
    3.9
    1~2巻451~814円 (税込)
    内田りさ子、32歳。訳あって夫と離婚し、戻る家をなくした彼女は、都内の事故物件を一ヶ月ごとに転々とするという、一風変わった仕事を始める。人付き合いを煩わしく思い、孤独で無気力な日々を過ごすりさ子だったが、身一つで移り住んだ先々で出会う人人とのやりとりが、次第に彼女の心を溶かしてゆく――。東京の賃貸物件をロンダリング〈浄化〉する女性の、心温まる人生再生の物語。
  • 桃源
    3.9
    六百万円を持ち逃げした比嘉の行方を追うこととなった大阪府警泉尾署の刑事、新垣と上坂。二人が辿り着いたのは、沖縄近海に沈む中国船から美術品を引き上げるという大掛かりなトレジャーハントへの出資詐欺だった。遺骨収集、景徳鎮、クルーザーチャーター。様々な情報と思惑が錯綜するなか、真実はどこに向かうのか。過去作に登場した上坂が組んだ相方は沖縄出身の色男・新垣。新結成の警察コンビが事件の謎に迫る。新たな正統派警察捜査小説シリーズ、ここに誕生!
  • 闘神伝説 1
    4.3
    1~4巻495円 (税込)
    パキスタンとアフガニスタンの国境付近で、映像プロデューサーの笹目京介は、銃創を負った少年を助ける。日本語を話し、タケルと名乗る少年は、名前以外のすべての記憶を失っていた。好奇心に駆られた笹目はタケルを伴って帰国し、駒引神社の宮司である八神家に預ける。だが、笹目は自分たちを尾行してきた三人の男の存在に気づいてなかった――壮大なスケールで展開するアクション・ロマン。
  • 逃走中 オリジナルストーリー 参加者は小学生!? 渋谷の街を逃げまくれ!
    3.0
    気がつくと渋谷にいた小6の陽人達。明らかに様子がおかしいと混乱しているなか、突如真っ暗だった大型ビジョンに【『逃走中』参加者のみなさまへ】の文字! そしてゲームマスター月村サトシの姿が。『60分間、逃走に成功すれば60万円がきみのものになる』突然【逃走中】のゲームに参加することになった陽人達は果たして逃げ切る事ができるのか!? ハラハラドキドキ! 決死のサバイバルゲームが今始まる!!
  • 蝶舞う館(東南アジア5部作)
    3.0
    ベトナム解放三十周年記念番組の収録中、日本の女性タレントが行方不明になった。番組関係者のもとに届いたのは、不当な弾圧を受ける少数民族モンタニャールの名を冠した組織からの犯行声明だった。不可解な要求にとまどいつつも救出に向かう男たち。だが、武装蜂起の予兆と見た公安部が組織壊滅に動き出し、凄絶な民族紛争に巻き込まれていく――。東南アジア5部作の掉尾を飾る傑作長編。
  • 透明人間はキスをしない
    -
    将来に可能性が感じられず、自分が存在しないみたいに思えた高校三年生の冬。俺は風逢(ふわ)に出会った。冬の神戸、三宮。確かにそこにいるのに、俺以外には見えない透明人間。不自由の中で生きる俺は、自由に生きる風逢に惹かれていった。現れては消える少女に導かれ、俺の人生は静かに動き出していく――。消えゆく君との出逢いから始まる、真冬の青春ストーリー!
  • 透明人間は204号室の夢を見る
    3.4
    コミュニケーション能力皆無の実緒は、高校3年生の時、ある出版社の小説の新人賞を受賞する。ペンネームは「佐原澪」。デビュー当時は話題になったが、6年経った今、佐原澪の名前を覚えている人間は少ない。実緒はデビュー以降、スランプに陥り一作も小説を書けなくなっていた。自分のデビュー作が未だに置かれている書店へ行っては、誰か手に取らないかと監視する日々。するとある日、実緒の本を手に取る大学生風の男の姿を確認する。思わずあとをつけ、彼の家を特定する。部屋の番号を確認し、ポストに手を突っこみ郵便物を抜き取ると、そこには大学からの封筒と彼の名前・春臣の文字が。それからというもの、今まで一行も書けなかったことが嘘のように、実緒は春臣のことを連想した小説を書くようになる。その小説を春臣のポストに投函することで実緒は満足感を得ていた。ひょんなことから実緒は春臣の恋人と仲良くなるが――。第三十七回すばる文学賞受賞第一作。
  • 凍夜
    3.5
    高校卒業以来、20年ぶりの帰郷だった。鶴巻秀人、39歳、バツイチ。同窓会の懐かしい顔ぶれは、彼の中で風化していた記憶を呼び起こす。たまり場での仲間との会話、憧れの美人教師、初めて抱いた女の子のぬくもり、そして、夢。「俺、小説家になりたいんだ」。氷点下の夜、骨まで凍みる冷気に震えながらも希望に燃えていた1977年、冬、18歳の思い出――。二度と帰らぬ日々を鮮烈に描く青春小説の傑作。
  • 遠い背中 おいしいコーヒーのいれ方 VI
    3.5
    大人気の「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズ第6弾。花村の叔母夫婦がついにロンドンから戻ってくる。勝利はかれんとふたりだけになれる場所を確保するために、周囲を説得して、ひとり暮らしを決意する。男としての強さ、優しさに、磨きをかけるためにも。なのに、かれんは近いようで遠くて。ふたりの甘く切ない恋の行方がますます気になる…。
  • 遠き落日 上
    4.2
    1~2巻605円 (税込)
    【吉川英治文学賞受賞作】1876年猪苗代湖の貧農の家に生まれた野口英世は、母シカから受けついだ天性の忍耐力で肉体的なハンデを乗り越え、医学への道をめざす。周囲の援助で21歳で上京。北里研究所を経て、横浜海港検疫所、ペスト防疫のための清国行き、同郷の山内ヨネ子への恋の破綻。やがてアメリカに渡っての研究生活。若き無名時代の苦闘の日々――。人間野口英世の生命力あふれる半生を赤裸に描く伝記小説。
  • 遠の眠りの
    3.3
    大正末期、貧しい農家に生まれた少女・絵子は、農作業の合間に本を読むのが生きがいだったが、女学校に進むことは到底叶わず、家を追い出されて女工として働いていた。ある日、市内に初めて開業した百貨店「えびす屋」に足を踏み入れ、ひょんなことから支配人と出会う。えびす屋では付属の劇場のため「少女歌劇団」の団員を募集していて、絵子は「お話係」として雇ってもらうことになった。ひときわ輝くキヨという娘役と仲良くなるが、実は、彼女は男の子であることを隠していて――。福井市にかつて実在した百貨店の「少女歌劇部」に着想を得て、一途に生きる少女の自我の目覚めと、戦争に傾く時代を描く長編小説。
  • 時々、慈父になる。
    3.6
    1983年5月、『優しいサヨクのための嬉遊曲』から40年。 いつまでも自分が主役だと思うなよ。 毀誉褒貶を顧みない作風で時代を駆け抜けた作家による、 デビュー40周年記念の自伝的父子小説。 第一部「父親の変わり身」 第二部「親バカでない親はいない」 第三部「運命なんて愛したくない」 第四部「後のことはおまえに任せた」 時は1991年、島田雅彦30歳。バブルは崩壊したとは言え、執筆の他にも世界中を旅する仕事が続く中、妻の妊娠が判明する。夫は、子育てに適した新居を探し、子どもの名前を考える。「永遠に実現しない希望」を意味する弥勒菩薩からミロクと名付け、生後間もない頃から世界中へと連れ回し、家族の記憶はいつも旅の記憶。自由奔放に子どもを育てたいと思いながらも、お受験へ。入園式当日に朝帰りをしたのは、父だったからか、作家だったからか。息子が生まれ、世界が一変したはずの作家による自伝的父子小説。
  • 徳川最後の将軍 慶喜の本心
    4.4
    御三家水戸藩に生まれた徳川慶喜は、美男子で文武に秀でていた。一橋家養子となると、名君の資質を見込まれ次期将軍に推される。だが、出世欲がなく、黒船来航からの国難に対処して欲しいとの要望を初めは拒む。開国を迫る世界情勢を鑑み、諸外国から日本を護りたいとは思うが……。最後に将軍となり、最悪の評価を覚悟して最良を模索し続けた慶喜。溺れる国の未来を拓いた男の真意とは! 歴史小説。
  • 床屋さんへちょっと
    3.9
    「あたし今度、自分で店、開くんだ」。海外出張先への国際電話で娘に告げられ、宍倉勲は絶句した。就職したばかりの大手企業をすぐ辞めてしまったと思ったら、今度は何を言い出すのか――(「マスターと呼ばれた男」)。時に社長として、時にヒラ社員として、誠実に働き続けてきた男。彼と娘との関係、家族の歴史を時をさかのぼりながら描く連作長編。
  • 年下の女友だち
    3.4
    有名イラストレーターの「私」のもとには、それぞれの秘密を抱えて今日も女たちが訪ねてくる……。容姿も性格も悪くないのに縁遠い、七美。美しい男しか愛せない、地方の大富豪の娘、かおり。三十過ぎても不倫から足を洗えない、こずえ。「私」のかつての夫とつきあっている葉子。幸せになりたい――。このシンプルな欲望に、“運命”という言葉を巧みに操ってつき進む女たちを描く、連作短編集。
  • 妬心
    4.0
    夫も子供も捨て家を出るきっかけとなった年下の男との偶然の再会が、作家として世に出はじめていた牧子の心に妖しい愛の炎を呼びさます。やがて二人で暮らす日々……。だが突然、男がきりだす別れ話。不倫の愛に懊悩する女の業を描く表題作、他に情熱のおもむくままに愛の遍歴を重ねる女を多彩に描いた六篇を収録。
  • トッピング 愛とウズラの卵とで~れえピザ
    3.3
    「今日は、で~れえ暑いねぇ」。岡山弁が飛び交う奉還町商店街で、雑貨カフェ「セワーネ(岡山弁で大丈夫という意味)」を営んでいるあゆみ。夫の雅彦は毎日大忙しだ。福男になりたくて西大寺裸祭りに参加するものの失神。早く帰宅したいから部長を辞めさせてくれと社長に直訴。妻のためだ。一昨年に発見された乳がん。手術も治療も順調だが心配でならない。雅彦の行動はすべてあゆみを元気づけたい一心からだ。雅彦の愛の“暴走”は日々加速する。そしてある日、雅彦はあゆみのために“で~れえ(すごい)”ことを思いついた!! ユーモラスな筆致ながら、夫婦や家族のあり方を問う、川上ワールド全開のハートウォーミングな家族小説。あなたはここまで妻を愛せますか!?
  • 十津川警部 九州観光列車の罠(十津川警部シリーズ)
    -
    元大臣の小西が、連続少女殺人容疑で逮捕された。愛人の手紙が、小西のアリバイを崩す証拠となった。この事件を解決した亀井刑事はご褒美休暇で、息子の健一と長崎から観光列車「或る列車」に乗車。だが、終着駅の佐世保に着いた時、健一が消えた。誘拐犯は、亀井に証拠の手紙を要求するが……。相棒の窮地を救うため、凶悪犯に挑む十津川警部! JR九州の豪華観光列車を舞台に描く旅情ミステリー。
  • 十津川警部 坂本龍馬と十津川郷士中井庄五郎(十津川警部シリーズ)
    -
    東京の会社員梶本が、自宅で刺殺された。歴史研究会会員の彼の日記には、京都で十津川郷士中井庄五郎を知り、奈良十津川村へ行ったと書かれていた。捜査にあたる十津川警部は、庄五郎に惹かれた被害者の思いを探ろうと京都へ。庄五郎の墓が、坂本龍馬の墓に寄り添うように建つのを見て……。明治維新直前に死んだ幕末の志士たちを巡る歴史の闇が、驚愕の殺人を呼ぶ!? 長編歴史&旅情ミステリー。
  • 十津川警部 特急「しまかぜ」で行く十五歳の伊勢神宮(十津川警部シリーズ)
    3.0
    第二次世界大戦中、野々村は学徒動員で伊勢神宮を守る任務につく。終戦後、十五歳で東京に転居し考古学を研究してきた。遷宮で沸く伊勢へ七十年ぶりに帰郷し、同級生と再会。空襲で行方不明になったままの友人・加藤明が話題になる。野々村は、加藤の最後の姿を語り始めるが……。悲惨な戦争に翻弄された青春の封印が解かれた時、殺人の惨劇が! 難事件に挑む十津川警部の名推理。長編旅情ミステリー。
  • トナリの怪談
    3.7
    毎晩夢に出てくる、見知らぬ女性。夢の中で自分は彼女と幸せな恋人同士として暮らしていて――(「毎日見る夢」)。最愛の恋人の隣でほほ笑む女性の幽霊が繰り返すのは、「いつ死ぬの?」という言葉で――(「いつ死ぬの?」)。幼い頃から幽霊が見えるピン芸人が語る、日常のなかにある心霊体験の数々。今あなたの隣にいる方、足はあるし、しゃべるし……でも、幽霊かもしれませんよ?
  • となり町戦争
    3.7
    ある日、突然にとなり町との戦争がはじまった。だが、銃声も聞こえず、目に見える流血もなく、人々は平穏な日常を送っていた。それでも、町の広報紙に発表される戦死者数は静かに増え続ける。そんな戦争に現実感を抱けずにいた「僕」に、町役場から一通の任命書が届いた…。見えない戦争を描き、第17回小説すばる新人賞を受賞した傑作。文庫版だけの特別書き下ろしサイドストーリーも収録。
  • 跳べ、ジョー! B・Bの魂が見てるぞ
    5.0
    ダンクシュートとは、ジャンプ一番、バスケットリングの上からスナップを効かせてボールを叩きこむシュートのことだ。ミサワ基地のジョーは、黒人の誇りをダンクを決めることに賭けた。ああ、神さま、ちびの黒人にでっかい羽根をください! スポーツ小説の幻の傑作と言われるデビュー作がここに復活! アイスホッケー短編「新顔」も収録。還ってきた名手の再編集スポーツ小説傑作集。
  • 途方にくれて
    -
    アメリカからヨーロッパ、そしてアジアと自由気ままにさまよっている“ヒゲ”に、ぼくは沖縄にむかう船の中で出会う…。金のない二人が陸に上がってありついた仕事は、怪しげなナイト・クラブのボーイ。ヘマとドジ、涙と汗、喧嘩と恋の日々に見いだしたものは…。途方にくれた青春の彷徨を、きびきびとした文体で捉えた表題作ほか、四編を収録した傑作集。
  • トマトケチャップの青春
    5.0
    彼は学校へ行かなくなった。食事も1日に1度、すべての料理にあふれるほどトマトケチャップをかけ、皿まで真っ赤にして食べる――。そんな彼がやがて結婚し、子供をつくり、流行作家になった。妻や子供との日常生活に、ふと昔の自分の姿を思い出す。深い思索の中に苦いユーモアをちりばめた私小説。
  • トラッシュ
    4.0
    いじめ、差別、虚無感、愛されない苦しみ、親との確執……それぞれの理由で集団自殺を試みた6人の若者達。しかし、闇サイトで入手した薬が偽物で、全員生き延びてしまう。「一遍死んだんやから、もう怖いものはない」。自分たちを死の淵に追い込んだ「加害者」に対し、6人は犯罪も辞さない世直し活動を始める。ドラッグ売人狩り、差別団体へのテロ、そして首相暗殺。その過激な行為で世間の賞賛と非難を浴びながら、6人の活動はエスカレートしていき……誰が本当の屑(トラッシュ)なのか。小説すばる新人賞受賞後第一作。雑誌連載時から賛否を巻き起こした問題作。文庫化にあたり結末を大幅に修正した完全版!
  • 鳥たち
    3.3
    「私たちはまだ呼ばれているのかもしれない。あの土地にしみついた死の匂いに」――それぞれの母親を自殺で失った大学生のまことパン職人の嵯峨。まこは日々、喪失感に怯えては嵯峨の子を欲しがり、そんなまこを嵯峨は、見守っている。お互いにしか癒せない傷を抱えた二人。少しずつ一歩ずつ、捕らわれていた過去から解き放たれ、未来へと飛び立っていく。大人になる直前の恋と、魂の救済の物語。
  • 鳥たちの河口
    -
    河口の鳥の観察に熱中する失業中のカメラマンは、飛翔する鳥たちが、すでに自然の習性を失いつつあることに気づく。方向感覚が狂い、季節はずれに渡来する鳥たち。油でよごれた港辺に漂う鳥の死骸。荒廃する河口でおこる鳥たちの異変に、現代の不安と焦燥を的確に描く表題作はじめ、全5編収録の初期短編集。
  • トリニティ、トリニティ、トリニティ
    -
    オリンピックに沸く2020年夏の東京。「目に見えざるもの」の怒りを背負った者たちが立ち上がる――ノンストップ近未来長編! ○「20世紀最大の呪いは、原子力の発見とその実用化だった。小林エリカは核に取り憑かれた作家だ、いや、核に取り憑いた巫女だ。その予言は私たちを震え上がらせる」――上野千鶴子氏(社会学者)
  • トルーマン・レター
    3.6
    ある事件がきっかけで新聞社を退社した峰先は、外国人同士の暴行事件に巻き込まれ、その現場で一通の手紙を手にする。それは第33代米大統領、トルーマンの私信だった。そこには広島・長崎への原爆投下の決断が書かれていた。一方、沖縄で米兵に襲われた女性の、大国に立ち向う市民運動が続けられていた。この二つの物語が絡み合い、意外な方向へ事件は発展する。なぜ原爆投下はなされたのか―――!? 歴史の闇に迫るサスペンス。
  • トーマス・マン『ヴェネツィアに死す』を読む(文芸漫談コレクション)
    -
    美。そして、陶酔、陶酔、陶酔。とにかく美しかない。美と理性、そこに忍び込んでくる魔的なものというテーマのトーマス・マン『ヴェネツィアに死す』を読む。芥川賞作家と希代の仕掛人が捨て身でおくる“漫談スタイル”の超文学実践講座。本電子書籍は、文芸誌「すばる」2009年1月号に掲載された作品の電子版シングルカットです。
  • 動物哲学物語 確かなリスの不確かさ
    4.1
    どんぐりの落下と発芽から「ここに在る」ことを自問するリスの青年。衰弱した弟との「間柄」のためにニワトリを襲うキツネのお姉さん。暗闇から光の世界へ飛び出し、「存在の本質」を探すコウモリの男の子。日本・南米の生き物たちが見た「世界」とは? 映画化された世界的ベストセラー『あん』著者による構想50年の渾身作は、動物の生態に哲学のひとさじを加えた21のストーリー。スピノザから老子まで哲学の入門書よりやさしく学べて、明日を「生きる」意味が見えてくる。
  • どさんこ大将(上)
    4.0
    1~2巻605円 (税込)
    男はこう闘うんだ! 北海道日高山麗に、ひとりの怪童があらわれた。姓は山丸、名は常義。幼い頃から比類のない腕力と闘争心、統率力で大人たちからも一目置かれる少年だった。ケンカ、仕事、女……。あらゆる男の闘いに裸一貫、腕と度胸で立ち向う北海道の怪男児の凄絶な生きざまを描く熱血冒険小説。
  • どすこい。
    3.7
    地響きがする──と思って戴きたい……相撲取りの討ち入りを描く「四十七人の力士」、肥満ミトコンドリアが暴れる「パラサイト・デブ」などなど数々の名作を下敷きに、パロディの極北を目指したお笑い連作巨編がついに文庫化。炸裂する京極ギャグの奔流に、いつしかあなたは肉の虜となる。しりあがり寿先生の4コマも読めるし、解説には大盛肉子ちゃんがゲスト出演。全編でぶのちゃんこ盛り!
  • どの口が愛を語るんだ
    NEW
    -
    SNSでの炎上から田舎へ逃れてきたぼくは、なぜ無軌道な不良と猿に火をつけたのか?(「猿を焼く」)。台湾政府が同性婚の合法化を認めた。ゲイで詩人の莊祐明(ジュアン ヨウミン)は、その報せを喜ぶ彼・何安得(アンディ)からの電話に複雑な感情を抱いていた。その違和感の正体は一体何なのだろう・・・・・・(「恋は鳩のように」)他3編。――みんな必死でみんなできそこない。これこそが生身(できそこない)の人間の、究極の(どうしようもない)愛だ。愛に憧れ、愛を憎み、愛に傷つき、愛にすがる全てのひとびとのための、迫力の恋愛小説集。
  • ドラキュラ記念吸血鬼フェスティバル(吸血鬼はお年ごろシリーズ)
    4.0
    とある企業の記念イベントに出演予定のゲストが不祥事で逮捕され、あわや中止に。急遽変更されたテーマ〈ドラキュラ生誕五百年〉に合わせ、企業の取引先〈クロロック商会〉の雇われ社長にして「正統な」吸血鬼のフォン・クロロックに出演依頼が舞い込むが、クロロックは依頼主とドラキュラの知り合いではないらしく……。おまけにこのイベント、どこか訳ありで!? 表題作ほか、うだつのあがらないサラリーマンの口座に突然二億八千万円が振り込まれ…(「吸血鬼の給与明細」)、観光バスのツアー中、乗員乗客全員が謎の眠気に襲われてしまい…(「吸血鬼の迷路旅行」)の2編を収録!
  • ドラゴンボール超 ブロリー 映画ノベライズ みらい文庫版
    5.0
    1~2巻715~770円 (税込)
    「力の大会」が終わり、さらなる高みを目指して修業を重ねる悟空とベジータ。そんな二人のもとに、ある日謎のサイヤ人「ブロリー」が現れた。連れてきたのは、悪の帝王フリーザ。惑星ベジータと共にほぼ全滅したはずのサイヤ人が、いったいなぜ――? 知られざる因縁のドラマ、交錯する運命。そして今、氷の大陸を舞台に壮絶なバトルが始まる!!
  • 中上健次『枯木灘』を読む(文芸漫談コレクション)
    -
    「あの大きな人の、大きな背中を、見たかった」「まさしく、奇蹟のような一回性の小説」。今回は、中上健次の『枯木灘』を読む。芥川賞作家と希代の仕掛人が捨て身でおくる“漫談スタイル”の超文学実践講座。本電子書籍は、文芸誌「すばる」2009年1月号に掲載された作品の電子版シングルカットです。
  • 中目黒リバーエッジハウス ワケありだらけのシェアオフィス はじまりの春
    3.0
    青森から上京した哲太は憧れのクリエイター職に就いたが、ブラックぶりに追い詰められ、好きな女性に醜態をさらし――限界を迎えてドロップアウト。人生に行き詰まり、クリエイターを目指すきっかけになった宗方(むなかた)を捜すうち、中目黒のシェアオフィスに辿り着く。そこでインテリアデザイナーの杢(もく)や料理研究家の千奈美と組み、カフェをプロデュースすることに…!?
  • 中山可穂コレクション 1 長編小説『感情教育』『マラケシュ心中』
    5.0
    1~2巻1,870~1,980円 (税込)
    <「全身全霊で恋をして、その体験を小説という形に昇華して綴る」という経験は、おそらく一人の小説家の人生のなかで一度しか達成できないことではないかと思う。なぜならそれほどの恋とは一生に一度しか経験できないものであり、それを書くに足る力を備え、肉体も精神も澄み切って野心に溢れ、まだ何者にもなっていない、何の評価も得ていない若いときにしかできないことだと思うからだ。(本書まえがきより)>長らく絶版状態だった、中山可穂の代表作とも言える恋愛小説の傑作長編2本が待望の電子化。ファン垂涎の電子オリジナルコレクション第1弾。本書は以下の作品を収録しています。/『感情教育』……産院に捨てられ、母を知らない那智。理不尽な大人達に振り回されて育った理緒。それぞれ懸命に少女期を生き延び、大人になった二人。那智は恋多き女になり、やがて結婚し母になった。理緒は同性愛者として自立した道を歩んでいた。しかし、内に秘めた深い孤独は埋めることはできない。そんな二つの純粋な魂が出会い、不器用にお互いを求めた時に、人生のすべてを賭けた運命の愛が燃え上がる。2000年講談社刊。/『マラケシュ心中』……「恋がいつか必ず終わるものなら、わたしたちは恋人同士になるのはやめましょう。何も契らず、何も約束せず、からだに触れ合わず、それゆえに嫉妬もない、いかなるときも自由で、平明で、対等な関係のまま、いつまでも離れずに、この世で最も美しい友になりましょう」(本文より)あえて男名前を使う、女性歌人の緒川絢彦が短歌結社の歌会で出会ったのは、師と仰ぐ大歌人の若く美しい新妻だった。近づいてはいけない相手、恋をするにはあまりに危険な存在。しかし、募る思いは止めることができずに、やがて。逃避行の果てに恋人たちを待っていた運命とは……。2002年講談社刊。
  • 長くなった夜を、
    3.5
    コールセンターで派遣社員として働く関本環。両親はともに高校教師で、環は幼いころから厳格な父親の教えに従い生きてきて、38歳になった現在も夜9時の門限を守っている。そんな環とは対照的に、両親に反発し自由奔放な妹の由梨は、離婚した夫との間に公彦という男児がおり、実家に戻ってパートとバイトを掛け持ちしながら暮らしている。環はそんな妹に代わり、公彦の世話をしているうち、居なくてはならないかけがえのない存在になっていた。そんな時、由梨は両親と決別し、実家を出てマンションで暮らし始める。公彦の様子が気になり、両親が寝静まった後、毎夜のように妹のマンションを見に行く環だったが、由梨が公彦を置いて男と出かけ行くのを目撃してしまう。心配の果てに、環は以前父が放った「ある言葉」に突き動かされ、突発的な行動に出てしまい――。家族というコミュニティーが抱える闇を露わにした問題作。 【著者略歴】 中西智佐乃(なかにし・ちさの) 1985年、大阪府生まれ、大阪府在住。同志社大学文学部卒業。2019年、「尾を喰う蛇」で第51回新潮新人賞を受賞。著書に『狭間の者たちへ』がある。
  • 流れ星の約束 再会したきみは芸能人!? 伝えたい想い
    5.0
    幼い頃に両親を事故で亡くした結(ゆい)。小学2年生のときに施設で出会った安藤流星(りゅうせい)くんとトクベツな約束をしたけど、すぐに離れ離れに。小学6年生になり、ひょんなことから映画のエキストラに誘われるが、その映画の主演の男の子は「流星」という名前で…!? しかも顔もそっくり!? 同一人物なのか確かめたいけど、彼はおどろくほど冷たい人間で…!?
  • 流れる島と海の怪物
    3.5
    母に連れられた大きなお屋敷で、朱音(あかね)と朱里(あかり)という二人の神秘的な姉妹に出会った。母はなぜ「俺」を姉妹に会わせたのか。それは、母の姉である福子から聞いた、自分の出生にまつわる信じられないような秘密と、朱音たちの母の故郷である「流れる島」にまつわる悲しい神話に結びついていた――。 衝撃の『共喰い』から10年。再び下関を舞台に仕組まれた、濃密な家族と血をめぐる、少年と少女の鮮烈な神話。最新長編小説!
  • 泣き娘
    3.8
    可憐な姿のそのひとは、哭女として今日も葬儀で涙を流す――。中国唐代、神都随一と噂される“哭女”の泪飛は葬式に引っ張りだこ。涙をもって故人の功績を称え謳われることが家の格を表すため、いい家柄の葬儀では優秀な哭女が雇われるのだ。しかし泪飛は妹弟を養うため、性を偽り「哭女」として葬儀で泣くことを職にしたのだった。身分を偽りながら様々な事件や謎に立ち向かう泪飛の思春期の苦悩と成長、そして年上の貴族青年・青蘭との奇跡のような関係を描く、歴史青春ミステリー小説。
  • 泣き娘
    3.4
    舞台は唐代の中国、神都随一と噂される哭女の“泪飛”は葬式に引っ張りだこ。葬儀では涙を絶やすことは許されない。そこで盛大に涙し故人の功績を称え謳うことが家の格を表すため、いい家柄の葬儀では優秀な哭女が雇われるのだ。しかし泪飛にはある重大な秘密があった。それは周旋屋の老婆・右聴と泪飛だけが知る事実――泪飛は少年なのだ。女装姿で哭女を続けなければいけない少年の苦悩と成長、そして年上の貴族青年・青蘭との奇跡のような友情を描く。新時代の旗手が放つ歴史青春ミステリ小説!
  • 凪の光景(上)
    3.5
    1~2巻550円 (税込)
    何の享楽も知らず、己の信念のために戦うことを生き甲斐とする元小学校校長・大庭丈太郎。謹厳実直な夫に仕えて40年。糟糠の妻・信子。庭続きには息子一家が住み、老夫婦は傍目には「幸福」そのものに写るのだが……。ある日、信子は戦中戦後の苦闘の中に埋もれた青春の日々を何とか取り戻すのだと突然、丈太郎に「シルバー革命」を宣言し、次々と企てを起こし始めた…。
  • なくしたものたちの国
    4.3
    いつのまにかなくなったもの、というのが、人生にはたくさんある。たとえば、赤ん坊のときに好きだったぬいぐるみ。水玉模様のかさ。初めてできた友だち。恋とは気づけなかった幼くてまばゆい初恋……。松尾たいこの彩り豊かなイラストから角田光代が紡いだ5編の小説には、そんな愛しくてなつかしい記憶がぎっしり。人生の出会いと別れをこまやかに綴った、せつなくもあたたかい作品集。
  • ナツイロ
    3.4
    大学のリゾートバイト研究会に所属する田中譲。とある出来事で大学から遠ざかり、住み込みのみかんアルバイターとして、ひとり愛媛へ。1歳下のシンガーソングライターの女子と出会う。次第に彼女のペースに巻き込まれ、アルバム製作の費用を用立てて、一緒に曲作りをすることに。彼女に振りまわされた季節は、それでもやっぱり輝いていた。青春まっただ中の男子と女子の物語。
  • 夏のバスプール
    3.5
    夏休み直前の登校中、高校一年生の涼太は女の子にトマトを投げつけられる。その女の子・久野ちゃんが気になるが、仙台からきた彼女には複雑な事情があるらしい上、涼太と因縁のある野球部の西澤と付き合っているという噂。一方、元カノは湿っぽい視線を向けてくるし、親友カップルはぎくしゃくしているし、世界は今年で終わるみたいだし――。どうする、どうなる、涼太の夏!? 胸キュン青春小説!
  • 夏目漱石『こころ』を読む(文芸漫談コレクション)
    -
    文学、面白いよ! ヒカルがボケて、いとうがツッコむ。芥川賞作家と希代の仕掛人が捨て身でおくる“漫談スタイル”の超文学実践講座。世界的な文豪・夏目漱石の『こころ』を読む。本電子書籍は、文芸誌「すばる」2014年1月号に掲載された作品の電子版シングルカットです。
  • 夏目漱石『門』を読む(文芸漫談コレクション)
    -
    文学、面白いよ! ヒカルがボケて、いとうがツッコむ。芥川賞作家と希代の仕掛人が捨て身でおくる“漫談スタイル”の超文学実践講座。世界的な文豪・夏目漱石の『門』を読む。本電子書籍は、文芸誌「すばる」2016年7月号に掲載された作品の電子版シングルカットです。
  • 夏目漱石『吾輩は猫である』を読む(文芸漫談コレクション)
    -
    文学、面白いよ! ヒカルがボケて、いとうがツッコむ。芥川賞作家と希代の仕掛人が捨て身でおくる“漫談スタイル”の超文学実践講座。世界的な文豪・夏目漱石の『吾輩は猫である』を読む。本電子書籍は、文芸誌「すばる」2017年2月号に掲載された作品の電子版シングルカットです。
  • ナヅルとハルヒヤ 花は煙る、鳥は鳴かない
    4.5
    毒がなければ生きていけないと言った「先生」についていったナヅル。彼はなぜ、いま帰ってきたのか――。生まれ育ったマキヨノで、仕事も、愛する女性も得たハルヒヤ。懐かしい友人、ナヅルとの再会を喜んだものの、彼が「花煙師」になったと知る。ナヅルがいない間に、マキヨノでは花煙師の出入り禁止が決まったのだ。複雑な思いでナヅルと接するハルヒヤだったが…。
  • ななつぼし洋食店の秘密
    3.0
    没落華族の令嬢・十和子に新興企業の若社長・桐谷との結婚話が持ち上がる。金が欲しい兄と箔をつけたい桐谷の利害が一致した格好だ。お見合いの席で十和子は「自分に一切干渉しないこと」と条件を出す。なぜなら十和子は下町で洋食店を営んでおり、関東大震災で行方不明になった店主・一哉が戻るまで店を守るつもりなのだ。だが、意外にも桐谷は条件をのみ…?
  • 七不思議のつくりかた
    -
    五歳で両親を亡くした『僕』は、幽霊に会えると噂の高校へ進学した。そこで同じ部の綾乃先輩に恋をするも、彼女にはイケメンな同級生の彼氏がいた。でも、彼は不慮の事故で亡くなり…? 話す骨格標本、プールで泳ぐ女生徒の足を引っ張る『田中さん』、人魚が棲む桜の池、時が止まる階段室、自習室に響く泣き声――とある高校の七不思議にまつわる、痛くて切ない青春物語。 【目次】はじまり/まぼろしのひと/正しい骨格標本/夏のかたわれ/人魚姫/僕の休憩/聲/七不思議のつくりかた
  • 浪速の女ハスラー 玉撞き屋の千代さん
    -
    南大阪でもっとも古い、小さな玉撞き屋「保名倶楽部」。マダムの千代さんは今なお現役のハスラーだ。一球一球に生活を賭けて、度重なる災難にもくじけず、姑を大往生させ、夫の気ままな人生を許し、四人の子供を育ててきた。次々に起こる事件、家族戦争。「人生、ドラマチックなほど面白い」という千代さんのパワフルな生き方。戦前、戦後の世相をまじえながら描く、抱腹絶倒、感涙必至の物語。
  • 菜の花物語
    3.8
    “春になれば……”みんなそんな想いを抱いて、吹きつけるそれぞれの人生の風の中にいた―。旅する空に、休息の夜に、喧噪の都会に、椎名誠のかたわらを通り過ぎていった女たち。遥か少年の日のおぼろ月夜に咲く、菜の花の記憶が、出会い別れた女たちとの思い出とクロスしてオトコのたしかな人生を浮き彫りにする。哀しくて、やがてアカルイ、11のしみじみ私小説。
  • ナボコフ『ロリータ』を読む(文芸漫談コレクション)
    -
    「複雑なモラル・ハラスメントとセクシャル・ハラスメントが交差している、まさに現代、現在の小説(いとう)。」「下劣なものと崇高なもの、醜いものと美しいもの――その振り幅のなかで世界を構築している(奥泉)。」今回は、ナボコフの『ロリータ』を読む。芥川賞作家と希代の仕掛人が捨て身でおくる“漫談スタイル”の超文学実践講座。本電子書籍は、文芸誌「すばる」2015年5月号に掲載された作品の電子版シングルカットです。
  • 波の上のキネマ
    3.7
    尼崎に祖父が創業した小さな映画館「波の上キネマ」を継ぐ安室俊介。座席数100余りの小さな映画館は、収益を上げることは年々難しくなっており、ついに新聞に「年内に閉館する見通し」との記事が出てしまう。そんなある日、創業者である祖父の名前を出した問い合わせが入る。それがきっかけとなり、祖父の前半生に興味を持った俊介は南へ向かう。祖父は脱出不可能な絶海の島で苛酷な労働を強いられていたが、そこにはジャングルの中に映画館があったという。祖父はなぜその島に行ったのか。なぜ映画館があったのか。運命に抗う祖父が見たものは……。壮大なスケールで描く驚嘆と希望の長編小説。
  • 波の鼓動と風の歌
    4.0
    自己肯定感が低く、日陰にいる者を自認し、生きづらさを抱えて暮らしている女子高生のナギは、校外学習で行った小さな山で湖に転落。人と獣のまじりものの姿で目覚める。岩牢に囚われた彼女を救ったのは、紺碧の瞳をした少年。元の生活に戻ることを願い、共に都を目指すが……。煌めく星の海。空を翔ける翠竜。美しい異境の地には、恐るべき“秘密”が眠っていた。交錯する人々の思惑は、やがて国の存亡を懸けた戦いに発展し――。その時、ナギが選び取る運命とは? 魂震える、冒険ファンタジー。令和の『ナルニア国物語』誕生!
  • 名も無き世界のエンドロール
    3.9
    【第25回小説すばる新人賞受賞作】ドッキリを仕掛けるのが生き甲斐のマコトと、それに引っかかってばかりの俺は、小学校時代からの腐れ縁だ。30歳になり、社長になった「ドッキリスト」のマコトは「ビビリスト」の俺を巻き込んで、史上最大の「プロポーズ大作戦」を決行すると言い出した――。一日あれば、世界は変わる。男たちの命がけの情熱は、彼女に届くのか? 大いなる「企み」を秘めた衝撃作。
  • 名もなき本棚
    4.0
    デパートのショーウィンドウの中で暮らす一人の女性。いつしか僕は、そのディスプレイの前で時間を過ごすのが日課になり……(「スノードーム」)。ゴミ集積所に座り込むサラリーマン。回収日ではない日に捨てられたその男は、近所の主婦には迷惑な存在でしかなく……(「回収」)他19編。中学・高校の教科書に採用された「私」「ゴール」「公園」も収録!――5分後には、あなたの日常が足元から揺らぎだす! 幻想、シュール、不条理、感動……。想像を超える驚きに満ちた三崎ワールドを堪能できる珠玉の掌編集!
  • ナルキッソスの鏡
    4.0
    女装倒錯、その美貌とあいまった孤高のナルシズムに生きる作家志望の青年。そして、殺戮をくりかえしてまでも子供たちを守ろうとする過剰な家族愛に生きる異形の大女。高原の避暑地を舞台に、それぞれの人生が交錯するとき悲劇のドラマがはじまる――。愛と憎しみに囚われた人間の2つのストーリーがモザイク模様のように絡み、展開する衝撃のサイコ・サスペンス。
  • 南極。1/2
    -
    1~2巻550円 (税込)
    丸い肉塊に黒い縦筋が十数本。その不気味な肉質が蛇腹のように縮んで、にゅう、と眉毛が八の字になった──人気最低の四流小説家、南極夏彦(通称・簾禿げ)と編集者たちが繰り広げるナンセンスギャグの極致が、ついに電子化。秋本治とのコラボレーションなど、豪華連作の前半4編を収録。悶絶必至、京極先生のギャグ小説が読めるのは集英社だけ!
  • なんて遠い海
    3.5
    男から与えられる愛では満たされないことに気づいてしまった女、婚約者がいながら別の男に惹かれてゆく女、平穏な結婚生活の中でひと夏の記憶を辿る女……。ささやかだけど穏やかな幸福に包まれていても、どこか満たされない。心の奥底にひりつくような渇きを抱えて生きる女の日常に小さなさざ波をたてるのは、それもやはり“愛”。よせては返す波にも似て、果てなき海にまどう九つの愛のかたち。
  • 何度でも永遠
    3.0
    優秀な姉や美人な妹と違い、地味な女子高生・環。唯一普通と違うのは、実家が神社で、大叔母の後を継ぎ巫女になること。祭りの日、御祭神の妻になる儀式を行ったあと、環は不思議な夢を見る。目覚めた環の前に現れたのは、夢に出てきた男そっくりな青年。彼こそ御祭神・浦彦で、環は彼の妻の魂を持つという。夢で見る過去や、まっすぐ愛を語る浦彦に戸惑う環だが…?
  • 2.43 清陰高校男子バレー部 next 4years〈II〉
    4.3
    1巻1,870円 (税込)
    清陰メンバーをはじめとする高校編までの面々に加えて、最強の新キャラたちも登場。大学ごとに誕生した新たなドリームチームが全力でぶつかりあう春季リーグ戦、いよいよ佳境へ――! 灰島・黒羽のルーキーコンビが入学し、“悪魔のバズーカ”三村も怪我から復活して躍進を遂げた欅舎大学チーム。 浅野と越智がチームメイトとなり、“ターミネーター”の二つ名で畏れられる最強ミドルブロッカー破魔、異色の金髪のリベロ太明が属する大学王者・八重洲大学チーム。 175cmの最強スパイカー“九州の弩弓”弓掛が打倒八重洲を誓う慧明大学チーム。 三つ巴の戦いの決着は、最終日の最終試合に持ち越された。 大きなケガを乗り越え、全力を出し切れる喜び。ハンデを越えて強さを証明しようとする決意。仲間のために優勝を勝ち取りたいという誓い。それぞれの思いを胸に、最後に勝利を手にするのは――。 “熱涙”あふれる青春スポーツ小説『2.43 清陰高校男子バレー部』シリーズ、ついに完結! 【シリーズ完結を記念して、欅舎・八重洲・慧明各チームの日常エピソード満載のスペシャルショートストーリー3話プレゼント!】 第1話は、2023年9月1日より「2.43」ポータルサイトにて無料公開! http://243.shueisha.co.jp/
  • 2.43 清陰高校男子バレー部 next 4years〈I〉
    3.8
    福井県代表として、夢の舞台、春高バレーで全国の強豪に堂々挑んだ清陰高校男子バレー部。あれから……。 バレーのことしか考えていない〈バレーバカ〉灰島と、ずば抜けた身体能力を誇るがプレッシャーに弱い黒羽の清陰エースコンビ。 福井県王者として清陰チームの前に立ちはだかった福蜂工業高校の絶対エース三村と男子マネージャー越智。 春高本戦で清陰とぶつかった、“九州の弩弓”弓掛と、東京の強豪校を率いた冷静沈着な将・浅野の親友コンビ。 コートを挟んで熱戦を繰り広げた彼らが挑む新しいステージは大学バレー。そこでは、かつての敵が仲間になり、かつての仲間が敵になる。 灰島・黒羽・三村が集う欅舎大。浅野・越智が集う八重洲大。弓掛が浅野のかつての後輩たちを率いる慧明大。大学リーグを舞台に三つ巴の戦いが今、幕を開ける――。 アニメ化もされた大人気青春スポーツ小説、ますます臨場感を増した試合が熱く描かれるシリーズ最新作! 【シリーズ完結を記念して、欅舎・八重洲・慧明各チームの日常エピソード満載のスペシャルショートストーリー3話プレゼント!】第1話は、2023年9月1日より「2.43」ポータルサイトにて無料公開! http://243.shueisha.co.jp/
  • 苦い旋律
    -
    奇抜な求人広告に応募した一貫寺邦子は、下着メーカーのメルヘン産業・曄道征四郎社長の有能な秘書となった。花嫁修行で通っている茶道師範・藤野登志子の手によって、邦子は異常な性の洗礼をうけ、官能の渦の虜となった。多彩な人間関係と、妖しい性の世界を巧みなストーリー展開のなかで描いた鬼才・梶山季之の異色長編。
  • 肉体のジェンダーを笑うな
    3.8
    医療の進歩で男性でも母乳が出せるようになった世界。哲夫は、ついに授乳を経験するが!?(「父乳の夢」)。機械を装着することで筋力差がなくなり、性別による役割分業が減ったら?(「真顔と筋肉ロボット」)。性差への理解を深めたら月経が訪れるようになった男性の変化とは?(「キラキラPMS(または、波乗り太郎」)など、全4編。圧倒的な想像力で、性差が減った未来(=ユートピア)をユーモラスに描き、旧来的な性別の“当たり前”をぶっ壊す!
  • ニコニコ時給800円
    3.6
    仕事を失い、酒に酔った夜。20歳のリンコは河原で野宿する謎の美青年リュウセイに出会う。楽してお金が欲しいというリンコに、彼が紹介した奇妙な仕事、それはこれまでの労働の概念を変えるものだった。自称ヒキオタニートのリュウセイに振り回されっぱなしのリンコだったが、彼には驚くべき秘密が――。漫画喫茶、アパレルショップ、IT業界など、時給800円で頑張る人々を描く連作短編集。
  • にじいろガーデン
    4.0
    三十代半ばの高橋泉は、別居を続ける夫との行き詰った関係に苦しんでいた。仕事帰りのある日、泉は駅のホームで女子高生の島原千代子と出会う。千代子は自由な生き方を認めない両親との関係に悩み、命を絶とうとしていた。心の痛みを分かち合ううち、ふたりは恋に落ちる。お互いをかけがえのない存在だと気づいたふたりは、泉の一人息子を連れて、星がきれいな山里「マチュピチュ村」へと駆け落ち。やがて千代子は、泉と出会う前に関係を持った男性との間の子どもを出産。長女が加わり一家は四人に。ゲストハウス開業、念願の結婚式とハネムーンツアー、千代子の闘病、そして……。喜びと悲しみに彩られた十六年間の軌跡を辿る、新たな家族小説の誕生。
  • 虹の谷の五月 上
    3.9
    1~2巻715円 (税込)
    【第123回直木賞受賞作!】トシオ・マナハン、13歳。フィリピン、セブ島のガルソボンガ地区に祖父と住み、闘鶏用の軍鶏を育てる日々だった。奥地の「虹の谷」には元新人民軍のゲリラ、ホセ・マンガハスがひとり住みついて闘い続けている。そこへ行く道はトシオしか知らない。日本から戻ってきたクイーンを谷に案内したことから、トシオはゲリラたちの内紛に巻きこまれていく。直木賞受賞の壮大な少年の成長物語。
  • 虹の音色が聞こえたら
    5.0
    小学校5年の眠人は、昼間から酒に溺れる父を避け、夜まで公園で過ごす毎日。唯一の理解者は、家庭に事情がありながら元気に過ごす同級生の竜征。ある日、公園の東屋に女子高生が来て、三線という沖縄の楽器を弾き始めた。眠人はその音色に魅了される。彼の人生に新しい風が吹いた瞬間だった。「ぼ、ぼ、ぼくに三線を教えてくれませんか? 弾けるようになりたいんです」――出会いと別れ、友情と恋、進路と自立。理不尽な現実に立ち向かうあなたの心に沖縄民謡のしらべがやさしく沁みる、青春小説。
  • 虹の橋からきた犬
    3.8
    1~2巻913~968円 (税込)
    「犬コロと仕事のどっちが大事なんだ?」ワンマン社長の南野は、愛犬が病気で定時に帰ろうとする部下に激怒する。だが、これを機に社員一同の不満が爆発し、逆に孤立することに。そんな中、ひょんなことからゴールデン・レトリバーの子犬を飼うことになった彼は、その子犬“パステル”の純粋さに触れることで変わり始め、彼らはソウルメイトになっていくが……。愛犬が著者に注いでくれた無償の愛が起こした、数々の奇跡を基にした感動のストーリー。「作家生活二十四年、百作近い著書を生み出してきた私が完成した原稿を読み返して初めて涙した」――ペットロスからの希望を描く一番泣ける犬小説。
  • 22歳の扉
    4.1
    【小説すばる新人賞、史上最年少受賞から8年】 三重で育ち、京都の大学に入学した数学好きの田辺朔。 大学生活に馴染めず、漫然と授業に出て、バイトをしているうちに一回生前期は終わってしまった。 後期に入り、旧文学部棟の地下、通称「キューチカ」でひっそりと経営されているバーのマスターである先輩の夷川と出会い、朔の大学生活は一変した。 夷川につれられ、初めてのウイスキー、タバコ、そしてバーやクラブなど、これまで見たこともない世界を知っていく。 しかし、ある日をさかいに、何の前触れもなく夷川はナイジェリアへ留学に行ってしまった。「バー・ディアハンツはお前に任せる!」の一言を残して。 そこからマスターとしてバーに立つことになった朔は、その大学内の不思議なバーで数々の出会いと別れを経験する――。自由奔放な女の子に振り回されたり、学生運動紛いに巻き込まれたり、自分の行く末に悩んだり…… 二十代前半の「不変」と「今」が詰まった圧倒的青春小説!
  • 虹列車・雛列車
    5.0
    青年よ、旅に出よ――。大学生の「僕」は、学園祭で講演に来た「花村」という作家にそそのかされて、北への独り旅に出かけた。旅先の下北半島で「僕」は様々な光景に出会い、成長していく。一方、作家である「私」は沖縄をさまよっている。ユタと出会い、色街を歩き、娼婦たちと関わり…。北へ、南へ、旅を続ける男たち。神宿る風景を素描し、「私小説」を擬態した傑作短編集。
  • 虹を蹴る
    4.5
    元強豪・央学高校ラグビー部は、いまや勝ちなしの危機に瀕していた。「来るんじゃなかった」倒れた母の代理でラグビー部の寮母になった瑞希にも、覇気のない少年たちにしか見えなかった。――あのプレイを見るまでは。天才肌のスタンドオフ・逸哉と人知れず努力を重ねるウィング・龍之介。心揺さぶられる瑞希。いつしかラグビーへの想いが、三人を変えていき――?
  • 日月潭の朱い花
    4.1
    【第35回小説すばる新人賞受賞第一作】 デビュー作『楊花の歌』  Apple Books 2023年ベストデビュー作(歴史フィクション)第12回歴史時代作家協会賞新人賞部門候補  第3回本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞候補 【東山彰良さん推薦!】 本当の自分への逃走はこんなにも輝かしい 25歳のサチコは、不条理な派遣労働から逃れるように亜熱帯の台湾に渡り、偶然再会した在日コリアンのジュリと、台北の迪化街で暮らしていた。 誕生日の晩、サチコが古物商の革のトランクのなかに日本統治時代の台湾を生きた女学生の日記をみつけたことから、ふたりの生活は一変する。 普段は引きこもっていたジュリだったが、その日記を書いた女学生の行方調査に夢中になり、やがて大きな謎につきあたった。 それは、70年以上前、深山に囲まれた日月潭という湖で起こったある少女の失踪事件だった。 遠い昔に姿を消した少女を探す旅は、いつしかふたりのアイデンティティを求める旅につながってゆく――。
  • 二度目の過去は君のいない未来
    3.0
    二十九歳の高校教師・兼祐は仕事がうまくいかず、七歳年下の妻・陽子との喧嘩も増えるばかり。結婚一年目の記念日に、二人は自殺寸前の生徒を助けようとして、電車に轢かれそうになり――気がつけば、大人の記憶を持ったまま、十年前の世界に戻っていた。兼祐は大学一年生、陽子は小学六年生。悩みながらも“二度目の過去”をやり直す二人が最後に選びとった“未来”とは。明日への道標となる物語。
  • 鈍色幻視行
    3.7
    謎と秘密を乗せて、今、長い航海が始まる。 撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説『夜果つるところ』と、その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加した。船上では、映画監督の角替、映画プロデューサーの進藤、編集者の島崎、漫画家ユニット・真鍋姉妹など、『夜~』にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語り出す。次々と現れる新事実と新解釈。旅の半ば、『夜~』を読み返した梢は、ある違和感を覚えて――
  • 人間界の諸相
    4.0
    謎に満ちた女・菱野時江とは何者なのか――。突如、連絡が取れなくなった時江の消息を追う二人の友人、渋崎咲子と古河内栗美は、携帯端末のSNSを頼りに彼女の居場所を突きとめた。そこには「あの国は暮らすにはいいが、生きるのは窮屈すぎる」という一文が……。(「幻の淑女」より)文学界の異才・木下古栗が挑んだ、なんともトリッキーなエンタメ風小説! 作品の全貌は、読んでみてのお楽しみ。
  • 人間のしわざ
    4.3
    この世界のどこに救いや癒しがあるのか――戦後70年に問いかける衝撃作。男は戦場カメラマン。紛争を追いかけて世界中を駆け回り何十年も家庭を顧みず、結果、妻の死を知ったのは葬儀が執り行われた後だった。今は、テロリストとの関係が疑わしい引きこもりの息子と暮らし、妻の裏切りの記憶に苦しんでいる。かつて、互いに惹かれあいながら結ばれなかった女との逢引先で男が語り始めたのは、青春の日々に長崎の町で掘り出された喉仏の骨、黒こげの殉教者の慟哭、そして30年前の雪の日の、爆心地での教皇の祈りだった――。デビュー20年。『聖水』『爆心』に続き新たに殺戮と紛争の世紀を問う衝撃作。長崎という土地の記憶を探り続けてきた著者の、到達点であり出発点がここに。【目次】人間のしわざ/神のみわざ
  • 猫君
    3.6
    茶虎で金目銀目の猫みかんは、病に伏せる育ての親のお香から「お前さんは『猫又』になりかかっている」と告げられた。20年生きた猫は、人に化けて言葉を操る妖になるというのだ。この世を去った飼い主を取り殺したと疑われ、追われるみかんは先輩猫又によって吉原遊郭に匿われ、江戸城内に新米猫又の学び舎「猫宿」があると教わる。さらに猫又史のその名を刻む英雄「猫君」の再来が噂されているらしく……。「猫宿の長」と呼ばれる謎の人物をはじめ、様々な師匠のもと、みかんが仲間とともに数々の試練に挑む江戸ファンタジー開幕!
  • 猫背の王子
    4.1
    自分とセックスしている夢を見て、目が覚めた――。女から女へと渡り歩く淫蕩なレズビアンにして、芝居に全生命を賭ける演出家・王寺ミチル。彼女が主催する小劇団は熱狂的なファンに支えられていた。だが、信頼していた仲間の裏切りがミチルからすべてを奪っていく。そして、最後の公演の幕が上がった……。スキャンダラスで切ない青春恋愛小説の傑作。俊英の幻のデビュー作!

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