Posted by ブクログ
2016年05月12日
これもまた一つの青春だよなぁ、と思う一冊。
平凡な人間の遠回りな成長物語。主人公の平々凡々な性格を、強引に揺り動かすヒロイン。バランスと呼ぶのか、相性としては丁度いい関係だと思う。平凡ゆえに主人公みずから動かない物語には、ブレイカーが掻き乱すくらいがいいんだな、なんて思いながら読んだ。
ヒロインの...続きを読むリンの性格というのは、中々いないタイプで、過去のことや問題について、全くというほど考えず、強引で、自己顕示欲が強い余りに痛い目を見るが全く反省する気が無く学習能力の無いゆえにまた似たような真似をして失敗する……。だからこそ身勝手な行動をする度に、うんうんそこはやっぱりそうだよな、なんて頷くような感覚だった。終盤は特にその色が濃く出ていて良かった。ただ、一方でヒロインの振る舞いに主人公が翻弄されるわけだが、リンを描写するために主人公が振り回されてるような、つまり物語を描写するために主人公が誘導されてる感じがして、勿体無いと思いながら、これが限界なのかな、とか思ったり。
結局リンは学習することなく、何てことない顔で好き勝手やってる姿が最後までそのままで良かった。評判としては最後が納得いかない、面白くない展開だとよろしくない反応が多いが、個人的には小説ならではだし、意外なまでに人というのが変わらないのだという描写が、自分としてはこれで良かったと思う。