国内小説 - 集英社作品一覧

  • ぼぎちん バブル純愛物語
    4.3
    1980年代、東京。女子大生の沙耶は、アルバイト先の投資顧問会社で中年男「ぼぎちん」と出会い、恋に落ちる。倍近く年のはなれた男と女の、痛々しいほど激しく、ピュアな恋。だが、大金を手にしては使い果たす日々に、ふたりの感覚は麻痺し、やがて愛も疲弊してゆく。バブルという時代に翻弄された恋の行方をリアルに描いた名作。文化庁主催、現代日本文学翻訳作品に選出。
  • 僕達急行 A列車で行こう
    3.8
    丸の内にある大企業・のぞみ地所で働く小町圭と、下町の鉄工所の二代目・小玉健太は、鉄道好きがきっかけで親しくなる。ふたりとも、趣味や仕事ではさくさく動けるのに、女性には弱腰。失恋した小玉は、転勤になった小町を訪ね、東京から青春18きっぷで福岡へ。一緒に九州を鉄道旅行の途中、思いがけない出会いが……。森田芳光監督らしいこだわりの詰まった、心あたたまるコメディー映画をノベライズ。
  • 僕たちは恋をしない
    -
    私たちは恋をしている。共犯者という名のもとに――。お互いの親が不倫していることを知った高校生の夏菜子と羽風は、恋人同士のフリをして親の罪悪感に訴えるも、予想外の展開に(僕たちは恋をしない」岡田朔)。エイリアンの母から生まれたミラは、人間の同級生に恋をする(「さそりの心臓に恋をして」比村コズヱ)など“きゅん”が詰まった6つのピュアな恋愛物語。第3回エブリスタ×ナツイチ小説大賞〈恋愛短編部門〉受賞作品集!
  • 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~ ノベライズ みらい文庫版
    -
    世界総人口の約八割が、特異体質「個性」をもって生まれる超人社会。そんな中、「無個性」の緑谷出久は、ナンバー1ヒーローのオールマイトと出会い、小さいころから夢見ていたヒーローになるため突き進む――!! ある夏の日、出久とオールマイトは、ある人物から招待を受け、海外に浮かぶ巨大人工島≪I・アイランド≫へ行くことになり!?
  • ぼくの守る星
    4.2
    中学2年生の翔には悩みがあった。それは、言葉を読み間違えたり言い間違えたりして周りを笑わせてしまうこと。わざとではないのに同級生から漫才の相方に指名され、母にはユーモアセンスがあると励まされる。みんなと同じことができない自分には、どんな才能があるのだろう――。生きづらさを抱えながら日々を過ごす翔と、彼を取り巻くひとびとの悩みと優しさを描き出す、切なくも愛しい物語。
  • 僕は運動おんち
    3.8
    運動も勉強もできず、落ち込みがちな高校生の勝。運動音痴から「うんちゃん」とあだ名され、同じ高校に美しい妹が入学してからは変に目立って、ますます死にたい毎日。そんな中、詩を書く柔道部の男子と親しくなり、彼の幼なじみである、髪の長い女子柔道部エースに恋してしまう。なぜか運動部にも入部するハメになり、学校生活は予想外の方向へ――。笑えて元気が出る青春小説。
  • ぼくは始祖鳥になりたい
    3.0
    超能力少年として知られたジローは22歳。NYの研究機関で軟禁状態となるが、訪れた天文学者ニューマン、教え子の宇宙飛行士ジムの導きで脱出。砂漠での生活を経て、自らの足で新たな一歩を踏み出す。アメリカの広大な地を遍歴し、先住民の苛酷な儀式に加わり、ゲリラの活動に身を投じ、旅の果てに彼を迎えるのは…。我々は何者であるのか――。手触りや味、においまで立ち昇る文章。実際に世界60か国以上を歩いてきた著者が、15年を費やして思想、科学などあらゆる分野を包括して書き上げた「文学の力」を示す傑作が復活!
  • 僕らだって扉くらい開けられる
    4.0
    さわらずに物を動かせる!……ただし10cmだけ。相手を金縛りにできる!……でも力を使うほどハゲる。目を見ると心が読める!……でも他人の目が怖くて見られない etc…。こんな役に立たない能力(ちから)、なくてもよくない?? ある日突然、不思議な力に目覚めてしまった五人。悪戦苦闘しながら能力と向き合ううちに、さえない毎日が、思いもよらない方向に転がりだし――。小説すばる新人賞作家が贈る、驚き満載、爽快感120%の傑作長編小説!
  • 僕らの夏 おいしいコーヒーのいれ方 II
    3.6
    5歳年上のいとこのかれんとその弟の丈と同居して1年。大学生になった勝利の毎日は不安と焦りでいっぱい。恋人でもあるかれんとの仲が、なかなか進展しないからだ。ファースト・キスはかわしたけれど、彼女はホントに僕のことが好きなのだろうか? 強力なライバルの出現、大学での新たな人間関係…と勝利の心は休まるヒマもない。シリーズ第二弾。かれんと勝利、ふたりの夏がはじまる!
  • ボタン屋つぼみ来客簿 ―さまよう彼らの探しもの―
    4.5
    菜乃香は奇妙なボタン専門店を見つけた。接客してくれたのは、ライと名乗る長身の男性だった。服飾の勉強をしたいと思っていた菜乃香は、数々のボタンに興奮し連日店に通っていたが、ある日、亡くなったはずの友人が店を訪れた。そして菜乃香は、自分が親とケンカをした後、交通事故にあっていたことを思い出した。ボタン屋は、さまよう魂の「探しもの」を置く店で?
  • 鉄道員(ぽっぽや)
    4.1
    娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた……。映画化され大ヒットした表題作「鉄道員」はじめ「ラブ・レター」「角筈にて」「うらぼんえ」「オリヲン座からの招待状」など、珠玉の短篇8作品を収録した傑作集。日本中、150万人を感涙の渦に巻き込んだ空前のベストセラーに、あらたな「あとがき」を加えた。第117回直木賞を受賞。
  • ポピュリズム
    3.5
    「あなたの一票が、首相を決める」 20XX年、第5回首相直接選挙、開幕! 十数年前から日本に取り入れられた直接民主制。 国会は廃止され、議員は20歳以上の国民からランダムに選ばれる。 首相選に立候補するための条件は「日本国籍を持つ30歳以上の人」で、供託金は1億円。 投票するのは全有権者――。 立候補が見込まれる人物は、女性首相を目指す新日本党の政治家、関西を中心に絶大な人気を誇るTVタレント教授、SNS総フォロワー数800万人以上のインフルエンサーなど。 全国民を巻き込んだ“選挙ショー”の結果はいかに。 社会派小説の旗手が提示する、有り得るかもしれない「未来」。 【著者略歴】 堂場瞬一 どうば・しゅんいち 1963年生まれ。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年、野球を題材とした「8年」で第13回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。スポーツ小説のほか、警察小説を多く手がける。「ラストライン」シリーズ、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ、「警視庁追跡捜査係」シリーズなど、次々と人気シリーズを送り出している。ほかにメディア三部作『警察回りの夏』『蛮政の秋』『社長室の冬』、『弾丸メシ』『幻の旗の下に』『デモクラシー』「ボーダーズ」シリーズなど著書多数。
  • マイ・ゴースト メンター 新卒3ヶ月目の奇跡
    3.5
    医科大に就職した灯子(ともこ)は、間近で学生に関わることのできる念願の学務課に配属された。しかし失敗続きで自信喪失、先輩たちともコミュニケーション不足で新卒3ヶ月目の壁にぶつかった。「まだ6月なのに仕事を辞めたい――」。そんなある日、偶然見つけた謎の神社アプリを通じて事故死した幽霊の紅葉(くれは)さんと繋がる。彼のアドバイスのおかげで灯子は急成長。やがて自分を取り戻していく。すると紅葉さんとはだんだん繋がりにくくなってしまい……。幽霊メンターと、新米・大学事務の切なくも優しい、奇跡のお仕事ドラマ!
  • MY (K)NIGHT マイナイト
    3.0
    夫の浮気を知り、寂しさを埋めようとする主婦。余命わずかな母親に婚約者を紹介したい高校教師。映える写真を撮り続けるインスタグラマー。“救い”を求める3人の女性が頼ったのは、[MY KNIGHT]の“デートセラピスト”=一夜かぎりの恋人たち――。川村壱馬、RIKU、吉野北人(共にTHE RAMPAGE)の3人が主演を務める同名映画を小説化。カラー写真もふんだんに盛り込み、映画の世界を再現する。
  • マイ・ファースト・レディ
    3.5
    シンデレラは憧れではなく嫉妬の対象だった……。秋葉麗(あきら)、二十四歳。独身。住所不定。職業、詐欺師。借金額一千万とんで三千円。元カレに背負わされたその借金を返済するため、女を弄ぶ男たちを騙して金を稼ぐ崖っぷち女子が獲物を求めて参加した婚活パーティーで、総理大臣・我妻総司に出会った。絶大な人気を誇るが女性アレルギーという秘密を抱える総司。しかしなぜか麗にだけは反応しなかったことから、国民を欺くための結婚を持ち掛ける。総理夫人にふさわしい淑女を演じるべく、麗は奮闘するのだが……。嘘と秘密の人生逆転ラブコメ!!
  • 枕アイドル
    3.3
    “夢のためにおじさんとセックスして何が悪いの?” 地下アイドルの未瑠は、枕営業を使って芸能界の頂点を目指していた。だが、なかなか大役が掴めずに苛立ちを募らせる。一方、デリヘル嬢の樹里亜は、未瑠の“アンチ”。ネット上で執拗な中傷を続けるも、全く相手にされないことで徐々に過激な行動をとり始める――。女同士、本性を剥き出しにして全力で潰し合う二人の運命が交差し……。アイドル界最大のタブーを描く、とんでもなく下劣な衝撃作!
  • マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年
    4.4
    ノースポール合衆国自治州『キヴィタス』は1億6千万の人口を収容する人工都市だ。アンドロイド管理局に勤める若きエリート、エルガー・オルトンは、帰り道で登録情報のない「野良アンドロイド」の少年を拾う。ワンと名乗った少年型アンドロイドとエルは不思議な共同生活を始めるが、ワンは記憶を失っていた。彼の過去を探るうち、エルは都市の闇に触れてしまい?
  • 鉞ばばあと孫娘貸金始末
    3.4
    1~3巻616円 (税込)
    お鈴は七歳のときに火事で両親を亡くし、貸金業を営んでいる祖母お絹に引き取られた。今は一日も早く独立して暮らしたいと思いつつ看板描きの仕事をしながら、祖母の集金を手伝っている。ある日、袋物屋の茂兵衛が返済を延ばして欲しいと頼みにきた。お絹は鉞を握り、覚悟してお借りと言ったはずと断る。帰宅した茂兵衛は首を括って死んだ。だが、お絹は殺しだといい、お鈴が様子を探ることに……。命懸けで金を貸す江戸最強の意地悪ばばあとお転婆孫娘の痛快事件帖!
  • Masato
    4.2
    【第32回坪田譲治文学賞受賞作】「スシ! スシ! スシ!」いじめっ子エイダンがまた絡んでくる――。親の仕事の都合でオーストラリアに移った少年・真人。言葉や文化の壁に衝突しては、悔しい思いをする毎日だ。それでも少しずつ自分の居場所を見出し、ある日、感じる。「ぼくは、ここにいてもいいんだ」と。ところがそれは、母親との断絶の始まりだった……。異国での少年と家族の成長を描いた第32回坪田譲治文学賞受賞作。
  • 政と源
    3.9
    東京都墨田区Y町。つまみ簪職人・源二郎の弟子である徹平の様子がおかしい。どうやら、昔の不良仲間に強請られたらしい。それを知った源二郎は、幼なじみの国政とともにひと肌脱ぐことにするが――。当年とって七十三歳の国政と源二郎は、正反対の性格ながら、なぜか良いコンビ。水路のある下町を舞台に老人パワーを炸裂させるふたりの、痛快で心温まる人情譚! 【目次】一、政と源/二、幼なじみ無線/三、象を見た日/四、花も嵐も/五、平成無責任男/六、Y町の永遠
  • 政と源
    4.1
    東京都墨田区Y町。つまみ簪(かんざし)職人・源二郎の弟子である徹平(元ヤン)の様子がおかしい。どうやら、昔の不良仲間に強請られたためらしい。それを知った源二郎は、幼なじみの国政とともにひと肌脱ぐことにするが――。弟子の徹平と賑やかに暮らす源。妻子と別居し、ひとり寂しく暮らす国政。ソリが合わないはずなのに、なぜか良いコンビ。そんなふたりが巻き起こす、ハチャメチャで痛快だけど、どこか心温まる人情譚!
  • マザコン
    3.2
    「あなたはマザコンよ、正真正銘の」と妻に言われ、腹立ちまぎれに会社の女の子と寝てしまったぼく。夫より母親を優先する妻のほうこそ、マザコンではないのか。苛立つぼくの脳裏に、死の床から父が伸ばした手を拒む母の姿がよみがえり…。表題作ほか、大人になった息子たち娘たちの、母親への様々な想いを描く作品集。疎ましくも慕わしい母と子の関係――胸がしめつけられる、切なくビターな8編。
  • 魔女の魔法雑貨店 黒猫屋 猫が導く迷い客の一週間
    4.5
    日々のもやもや、困りごと、迷い客の目の前にふと現れる「魔女の魔法雑貨店 黒猫屋」。弦巻淑子さんは、この街で噂の魔女で、黒猫屋の店主でもある。「魔女の魔法あります――」そんな店の看板から猫(ぼく)は、今日も迷い客と魔女の起こすささやかな奇跡を見守っていて――!? ほんの少し疑いながらも、不思議と心が解きほぐされてゆく――。あったか小さな奇跡の物語! 【目次】プロローグ 導き猫と迷い客/第一話 月曜日のバスタイム ――命は庭に咲いている――/第二話 火曜日はイースター ――コスメカウンターの新米魔女――/第三話 水曜日のおまじない ――花を食べる――/第四話 木曜日の闇夜 ――死者からのメッセージ――/エピローグ 金曜日は魔女のささやかな休日
  • マスカレード・オン・アイス
    3.3
    かつては将来を期待された若手フィギュアスケーターだった白井愛。だが、高一になった今では不調に悩み、昨シーズン、世界ジュニア二位に輝いた姉の華との差は開くばかり。愛は懸命に練習を続けるが、経済的な事情もあり、スケートを続けることすら難しくなりそうで……。だが、そんな時、華をはじめとする周りの人達が、愛の持つ“特別な才能”に気づきはじめ……!?
  • マスク
    4.8
    スポーツジャーナリストの水野は、家族を捨てたプロレスラーの父が死んだと聞き、メキシコの街セントロへ向かう。太陽のように崇められた人気仮面レスラー“エル・ソル”とは、どんな男だったのか。プロレスが唯一の娯楽という貧しい街で、孤児達をかわいがったという父。なぜ、彼は私を捨てたのか――。街で暮らしながら、関係者の証言を集めていく水野が知った父の実像とは……。熱血青春小説。
  • また君と出会う未来のために
    4.4
    仙台の大学に通う爽太には秘密があった。9歳のころに海で溺れ、遠い未来――2070年の世界へと時を超えて迷い込んだことがあるのだ。現代に戻ったあとも、未来で助けてくれた女性を忘れられずにいたが、アルバイトがきっかけで知り合った八宮和希という青年に「おれは過去から来た人に会ったことがある」と告げられて…? 出会いと願いを描いた感動作!
  • またやぶけの夕焼け
    3.9
    僕はヒデユキ、八王子市立第六小学校の四年生だ。放課後になるといつも近所に住むカッチャンたちと遊びに繰り出す。『侍ジャイアンツ』に影響されて魔球を投げようとしたかと思えば、弟をブッチャーに見立ててプロレスごっこ。大物のノコギリクワガタに興奮し、恐竜の化石探しに熱中する―。毎日を全力疾走する少年たちを活き活きと描く、かつて子供だった全ての人に贈る笑いと涙の青春小説。
  • マダム・キュリーと朝食を
    3.0
    どうして、目に見えないもののことは、大切にできないんだろう――。「東の国」に流れ着いた猫と、震災の年に生まれた少女、雛。猫は放射線を“光”として見ることができ、雛の母たちはその“光”を音として聞くことができた。ラジウムの発見は世の中を大きく変えたという。一体どんな風に? 一匹と一人は時空と場所を飛び超え、エネルギーの歴史を知る旅に出る。問題提起に満ちた長編小説。
  • Matt
    4.2
    日本から移住してはや5年。父と二人、オーストラリアに暮らす安藤真人は、現地の名門校、ワトソン・カレッジの10年生(16歳)になった。Matt(マット・A)として学校に馴染み、演劇に打ち込み、言語の壁も異文化での混乱も、乗り越えられるように思えた。そこに、同じMattを名乗る転校生、マシュー・ウッドフォード(マット・W)がやってくる。転校生のマット・Wは、ことあるごとに真人を挑発し、憎しみをぶつけてくる。「人殺し! おれのじいさん、ジャップに人生台無しにされたんだ!」。第二次世界大戦、日本とオーストラリアの、負の歴史。目をそむけてはならない事実に、真人――マット・A――は、自らの<アイデンティティ>と向き合う。人種が、言語が、国が、血縁が、歴史が、17歳の少年の心と体を離さない。
  • 祭りの夜空にテンバリ上げて
    3.0
    テンバリとは露天商用語で屋台の屋根のこと。新型コロナウイルス感染症の世界的大流行によって失業した渚のもとに、久しく疎遠になっていた父の訃報が入った。しかも、借金の督促とともに。相続放棄をすると、父親の遺した条件のため借金を見ず知らずの他人に押し付けることになってしまう。失業中だった渚に残された道は、父の稼業を継ぐしかない。だが父の稼業、それは渚がもう二度と関わりたくないと思っていたたこ焼き屋――テキヤだった……。お祭りは軒並み見送り、人が集まるイベントも中止、炎天下の路上に露店を出しても集客はできない。八方ふさがりの渚が考えた、起死回生の「この時代のためのお祭り」とは?
  • 窓の向こうのガーシュウィン
    3.8
    周囲にうまく馴染めず、欠落感を抱えたまま十九年間を過ごしてきた私は、ヘルパーとして訪れた横江先生の家で、思い出の品に額をつける〈額装家〉の男性と出会う。他人と交わらずひっそりと生きてきた私だったが、「しあわせな景色を切り取る」という彼の言葉に惹かれて、額装の仕事を手伝うようになり――。不器用で素直な女の子が人の温かさに触れ、心を溶かされてゆく成長ものがたり。
  • 真夏のバディ
    3.7
    夏休み。実家の牧場の仕事を手伝う塊太は、一人旅を続けながらまっすぐに生きる直次郎と出会った。人前でうまく自分を表現できない塊太は、内心では牧場を疎んじている。徐々に友情を深める高校生二人は、軽トラックで岩手県を駆け巡る。塊太は意外な特技を見出され、一世一代の挑戦を決心する――。互いに補完し合い、成長していく“バディ”の旅路を鮮やかに描き出す傑作青春ロードノベル。
  • 招きねこのフルーツサンド
    3.0
    弟を溺愛するあまりに父から離婚された母。そんな母に、幼い頃からずっと否定されて育った実音子は自己肯定感がすこぶる低い。そのせいもあり、人生の節目では極度の緊張から失敗ばかり。現在は非正規で働いている。生きづらさを抱えて日常を送る中、実音子はある日、ひょんなことから最寄りとは違う駅で電車を降り、二十年前に一瞬だけ暮らした思い出の街を訪れる。そこで出会ったサビ猫に導かれ、浮世離れした雰囲気を持つ美青年・瞬が営むフルーツサンド屋に辿り着く。おなかも心も満たすフルーツサンドを食べ、温かな瞬の優しさに触れ、灰色にくすんでいた実音子の毎日が、少しずつ色鮮やかに輝いていき…?
  • 幻の旗の下に
    4.0
    日中戦争の拡大を受け、東京オリンピックの返上が決まった1938年。大日本体育協会は、オリンピックに代わる国際大会の開催を画策していた。体協の理事長・末弘の秘書を務める石崎は、体協幹部や陸軍などの政治的な思惑に疑念を抱きながらも、平和の象徴としての代替大会を開催するべく曲者ぞろいの面々と交渉を重ねていく。一方、ハワイにある日系人野球チームのマネージャー・澤山の元に、旧知の石崎から電報が届く。返上された東京オリンピックの代わりとして開かれる「東亜競技大会」に、野球のハワイ代表として参加してくれないか、という招請状だった――。知られざる歴史を浮かび上がらせる圧巻の交渉小説!
  • 嫁ぐ日 狸穴あいあい坂
    3.3
    元火盗改方与力の祖父と麻布狸穴町で暮らす結寿が、八丁堀同心の妻木道三郎とともに、界隈で巻き起こる事件の謎を解き明かす大人気シリーズ。妻木への初恋を胸の奥にしまい、御先手組の小山田家へ嫁いだ結寿。やがて夫の万之助と心を通わせあい、娘の香苗が誕生。ところが、予期せぬ出来事が婚家を襲う。辛い別れを経て狸穴町へ帰った結寿。懐かしい人々との穏やかな毎日が始まるかと思いきや、かつてのように、妻木とともに様々な事件の解決に走り出すことに。押し込み騒動、花魁殺し、子攫い……。罪に苦しむ人々の心を解きほぐすうちに、結寿自身の心にも変化の時が訪れて――。
  • マリー・アントワネットの恋人
    3.0
    フランスに革命勃発! ウィーンでは皇帝たちが、妹マリー・アントワネットの身を案じていた。美貌の青年士官ルーカスはハプスブルグ家の密命を受け、混乱のパリに潜入する。フェルセンを始めとする貴族たちや革命家、外交の思惑が錯綜し、状況が刻一刻と変化する中、幼馴染みの王妃を守ろうと奔走するルーカスに迫る影。王妃が皇帝に当てた密書とは。激動の二都を舞台に描く歴史ロマン。
  • マルコの夢
    3.5
    大学を出たが就職の決まらない一馬。姉に呼ばれてパリに渡り、ふとしたことから三つ星レストランでキノコの管理を任される。ある日オーナーから、店の名物料理に使う「マルコ」という日本原産のキノコの買い付けを命じられた。パリではこの店だけで食べられる極上のものだ。早速日本に飛んだ一馬だったが、思いもよらない事実を知ることに――。魅惑のキノコをめぐる、奇想天外な物語。
  • マルメロ草紙 -edition courante-
    3.0
    時は二十世紀初頭の巴里。ブーローニュの森近くの瀟洒な屋敷で暮らす大実業家のエミールと夫人のシャルロット、シャルロットの妹で女優を目指すナディーヌ。その館に美しいショーマレー中尉が招かれてから、三人の心に波風が立ち始める。やがて、パリ社交界の中心に座す名高いヴェルチュルーズ侯爵夫人から仮装舞踏会の招待状が届き……。アールデコ様式全盛の時代、煌めきに満ちた女性たちの甘酸っぱく、香気に満ちた傑作耽美小説。2013年に限定150部で刊行された幻の豪華本『マルメロ草紙』をテキストの読みやすさを重視した新たな装いで刊行。
  • 真ん中の子どもたち
    3.5
    【第157回芥川龍之介賞候補作】“四歳の私は、世界には二つのことばがあると思っていた。ひとつは、おうちの中だけで喋ることば。もうひとつが、おうちの外でも通じることば。”台湾人の母と日本人の父の間に生まれ、幼いころから日本で育った琴子は、高校卒業後、中国語(普通語)を勉強するため留学を決意する。そして上海の語学学校で、同じく台湾×日本のハーフである嘉玲、両親ともに中国人で日本で生まれ育った舜哉と出会う。「母語」とはなにか、「国境」とはなにか、三人はそれぞれ悩みながら友情を深めていくが――。日本、台湾、中国、複数の国の間で、自らのことばを模索する若者たちの姿を鮮やかに描き出す青春小説。
  • 万引き天女
    3.0
    このところ急増している万引き被害に頭を痛める門花民芸店主・門花靖雄。小物ばかりではない。石の道祖神や傘立てなど盗られようがないものまでが次々と店先から消えていく。万引き犯の第一候補はいつも帽子を被って来店する女だが、疑惑が恋心に変わってしまったことから話はおかしな方向へ――。表題作ほか、不思議な味わいの2編を新たに収録したユーモア小説集。『万引き変愛記』改題。
  • マーシャに
    -
    1巻495円 (税込)
    ロンドンに留学中の版画家コウヘイは、ある日、図書館に勤める若く美しいマーシャと出会う。日本に妻子を持つコウヘイと、両親の離婚がトラウマになっているマーシャ。おずおずとした交際は、やがて激しい愛欲をともなった、のっぴきならない恋愛へと変貌する。行きどまりの恋の顛末を、繊細に、同時に赤裸々に描いた恋愛小説。
  • 見憶えのある場所
    3.6
    結婚をしないまま、娘・千草を産んだゆり子。スーパーのパート勤めの間、千草は母・菜穂子のもとに。父が出ていったあとに一人暮らす母のいる家は、ゆり子の「見憶えのある場所」だった。千草の姿に重なるように家族の日々と忌わしい記憶が蘇る。母はゆり子と千草の生活にかかわるうちに、次第に常軌を逸していく…。母と娘の確執、それぞれが抱える苦悩を丹念に描く注目の小説。
  • みかづき
    4.5
    「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」 昭和36年。人生を教えることに捧げた、塾教師たちの物語が始まる。胸を打つ確かな感動。著者渾身の大長編。小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い――。 阿川佐和子氏「唸る。目を閉じる。そういえば、あの時代の日本人は、本当に一途だった」 北上次郎氏「圧倒された。この小説にはすべてがある」(「青春と読書」2016年9月号より) 中江有里氏「月の光に浮かび上がる理想と現実。真の教育を巡る人間模様に魅せられた」 驚嘆&絶賛の声、続々! 昭和~平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編。
  • ミシンと金魚
    4.0
    「カケイさんは、今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」――ある日、ヘルパーのみっちゃんからそう聞かれた“あたし”は、絡まりあう記憶の中から、その来し方を語り始める。母が自分を産んですぐに死んだこと、継母から薪で殴られ続けたこと、犬の大ちゃんが親代わりだったこと、亭主が子どもを置いて蒸発したこと。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続ける“あたし”の腹が膨らみだして……。この世に生まれ落ちて、いつの日か死を迎え、この世を去る。誰もが辿るその道を、圧倒的な才能で描き出す! 著者デビュー作にして第45回すばる文学賞受賞作!!
  • みずうみのほうへ
    3.5
    【第38回すばる文学賞受賞作】父と二人で出かけた七歳の誕生日旅行。「サイモン」という人物を想像するゲームで一緒に遊んだあと、父が船上から姿を消し、ぼくはたったひとり、夜の海に取り残された。湖のある小さな町で暮らす伯父のもとに引き取られたぼくは、大学卒業後に港町に出て、水産物加工場で働きはじめる。楽しみは週に一度のアイスホッケー観戦だった。二十代最後の年にぼくは偶然、サイモンそっくりの人物と遭遇。やがて、中古車販売を営む「サイモン」のもとへ週末ごとに通い、ガレージで過ごすようになっていく。だがある夜、突然「サイモン」が、ぼくと父しか知らないはずの言葉を口にして――。時間と空間を自在に交差させながら、喪失の果ての光を繊細に描き出す、新しい才能の誕生。
  • 水に似た感情
    3.8
    人気作家・モンクは友人のミュージシャンたちとテレビの取材でバリ島を訪れる。撮影はスタートするが、モンク自身の躁鬱と、スタッフの不手際や不協和音に悩むが、呪術師を取材し超常現象を体験した後、モンクも落ち着きスタッフもまとまる。帰国したモンクは親しい友人たちを誘い再びバリを訪れるのだが。リアルに迫りくる幻想体験を通じ、なぜか読むほどに心安らぐ小説。
  • 水のかたち 上
    4.1
    1~2巻715~759円 (税込)
    東京下町に暮らす主婦・志乃子、50歳。もうすぐ閉店する「かささぎ堂」という近所の喫茶店で、文机と朝鮮の手文庫、そして薄茶茶碗という骨董品を女主人から貰い受ける。その茶碗は、なんと三千万円は下らない貴重な鼠志野だという。一方、志乃子の姉、美乃も長年勤めていた仕事を辞め、海雛という居酒屋の女将になるという。予想もしなかった出会いから、人生の扉が大きく開きはじめる――。
  • 水のなかの蛍
    4.0
    誰もが過去を引きずっている。みんな悲しい思い出を持っている。都会の片隅に、大切な人とはぐれた人々が住む古い洋館アパート・風見館、訳あり客が寄り添い合う喫茶店・前奏曲(プレリュード)がある。そこに住み、そこに入り浸る、お人好しなだけが取り柄の大学生は、堕ろした子供のもとに行きたいと願う謎の女子高生と出会う。ダイナマイトで一緒に死んでほしいと言われた。まっすぐで純な愛のあり方を描く長編。
  • 水を縫う
    4.1
    松岡清澄、高校一年生。一歳の頃に父と母が離婚し、祖母と、市役所勤めの母と、結婚を控えた姉の水青との四人暮らし。学校で手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている清澄は、かわいいものや華やかな場が苦手な姉のため、ウェディングドレスを手作りすると宣言するが(「みなも」)。いつまでも父親になれない夫と離婚し、必死に生きてきたけれど、息子の清澄は扱いづらくなるばかり。そんな時、母が教えてくれた、子育てに大切な「失敗する権利」とは(「愛の泉」)。世の中の〈普通〉を踏み越えていく、清々しい家族小説! 第9回河合隼雄物語賞受賞作品。
  • 【電子特別版】みちづれの猫
    4.1
    帰省するのはいつぶりだろう。大学進学を機に上京して十四年、忙しさにかまけて実家から足が遠のいていた私は、新幹線で金沢に向かっていた。まもなく旅立つであろうミャアを見送るために(「ミャアの通り道」)。離婚以来、自暴自棄の生活を送っていた女性の家のベランダに現れた茶トラが、生活を思わぬ方向へ変えてゆき……(「運河沿いの使わしめ」)――肉親を亡くした時、家庭のある男を愛した時、離婚して傷ついた時…… ふり返れば、いつもかたわらに猫がいた。人生の様々な場面で猫に救われてきた女性たちの心洗われる七つの物語。「犬を亡くした私を救ってくれたのは猫でした」――著者インタビューも収録!
  • 路、爆ぜる
    4.0
    【小説すばる新人賞出身の気鋭が放つ、令和版ハードボイルド!】 【深町秋生さん(ミステリ作家) 推薦!】 瑞々しく、怖い小説だ。 無垢な少年を情と恐怖で絡め取る半グレ集団は生々しく、 青春を呑みこむ闇の深さに戦慄した。 【杉江松恋さん(書評家) 推薦!】 裏切られ、泥を舐めた者だけが知る、本当の優しさが描かれた小説だ。 高校3年生の椎名和彦は、バイト漬けの日々を送っていた。 鬱屈した状況から逃げ出すように、同じく暗い境遇にある中高生たちが集まる大阪・道頓堀の“グリ下”で過ごす時間が長くなっていく。 そこで出会った半グレ集団「顔役」の溜まり場に顔を出すようになり、やがて大麻入り錠剤をグリ下で売り捌くように・・・・・・。 ミナミ(難波周辺)を拠点とする「顔役」は、敵対するキタ(梅田周辺)の半グレ集団らと、ことあるごとに衝突を繰り返していた。 闇深きアンダーグラウンドな世界に否応なく巻き込まれるグリ下メンバーたち・・・・・・ 令和大阪の路上(ストリート)を活写したハードボイルド×青春群像劇! 【著者略歴】 増島拓哉 (ますじま・たくや) 1999年大阪府生まれ。関西学院大学在学中の2018年に『闇夜の底で踊れ』で第31回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『トラッシュ』がある。
  • みちびきの変奏曲
    4.0
    「つかぬことをうかがいますが、こういう手の動きはなんなのかわかりますか?」――通り魔に襲われて亡くなった女性・清藤真空。その最期を看取った人材派遣会社の社員・棚橋は、死の間際の彼女のメッセージの意味を知るため、真空にゆかりのある人々を訪ねてゆく。建築士、音大生、児童養護施設の園長……。真空が遺したのは「きらきら星」だった。そのメロディに導かれるように、それぞれの人生模様が交錯し、真空のこれまでの人生と想いも次第に見えてきて……。人の優しさに触れる癒しと再生のミステリー。
  • ミチルさん、今日も上機嫌
    3.7
    45歳、職なし、バツイチ、彼氏なし。ミチルにあるのは元夫から譲られたマンションと貯金の三百万円。若くて可愛くてチヤホヤされたバブルの頃が忘れられず、そうかといって将来に不安がないわけでもない。恋愛、子供、親、仕事。あたし、これからどうするんだろう――。それでもミチルはめげずに前を向く。時代の波に翻弄されながらも懸命に今を生きる女性に贈るハートフルストーリー。
  • ミッドナイト・モクテル 飲まないあなたのためのバー
    4.1
    なかなか厳しい就活を経て、食品卸会社に入社した酒匂(さこう)ミチル。取引先にウケがよさそうな名前だという安直な理由で、“酒類”販売二課に配属されてしまったが、実はお酒はほとんど飲めない。取引先の信頼を得るためと、勧められたお酒を必死に飲んではいる。初めはこれが、大人になる通過儀礼なのだと思っていたが、どうしても美味しいと思えない。学生時代の友達との集まりも、いつしか夜のお酒の店ばかり。孤独と疲れを感じていたある日、引き継いだ取引先のひとつに、極端に注文が少ない「バー」があることに気づく。『SOBER CURIOUS』――この店は、ノンアルコールをたしなむバーであるらしく……?
  • みどりいせき
    3.6
    【第37回三島由紀夫賞受賞作】 【第47回すばる文学賞受賞作】 【選考委員激賞!】 私の中にある「小説」のイメージや定義を覆してくれた。――金原ひとみさん この青春小説の主役は、語り手でも登場人物でもなく生成されるバイブスそのもの――川上未映子さん (選評より) このままじゃ不登校んなるなぁと思いながら、高2の僕は小学生の時にバッテリーを組んでた一個下の春と再会した。 そしたら一瞬にして、僕は怪しい闇バイトに巻き込まれ始めた……。 でも、見たり聞いたりした世界が全てじゃなくって、その裏には、というか普通の人が合わせるピントの外側にはまったく知らない世界がぼやけて広がってた――。 圧倒的中毒性! 超ド級のデビュー作! ティーンたちの連帯と、不条理な世の中への抵抗を描く第47回すばる文学賞受賞作。
  • 緑の午後 おいしいコーヒーのいれ方 V
    3.6
    5歳年上のいとこ、かれんと恋におちた大学生・勝利。そうとは知らず、勝利に思いをよせる星野りつ子。追いつめられた勝利は、ついに星野に「秘密の恋」をうち明ける。単身赴任していた勝利の父親も帰京し再婚、勝利の妹も誕生して、かれんとその弟の丈、そして勝利の3人だけの生活が変わろうとしている。番外編、丈の恋物語も収録する好評シリーズ第5弾。
  • みどりの月
    3.3
    恋人のキタザワに誘われ、同居することになった南。ところが、そのマンションには、キタザワの遠い親戚マリコとその恋人サトシが住んでいた……。成り行きまかせで始まった男女四人の奇妙な共同生活を描く表題作ほか、別れの予感を抱えた若い夫婦があてのないアジア放浪に出る「かかとのしたの空」を収録。今を生きる若者たちを包む、明るい孤独とやるせない心をうつしだす作品集。
  • 港たち
    4.0
    島に帰ろう。家族の声を聞きに。 お盆を迎え、久しぶりに九州のとある離島に集まった吉川家の面々。 この島ではお盆の夜に、島ならではの行事が執り行われる。 その行事に向けて忙しなく動く家族の声を、敬子は眠たげに聞いていた――「港たち」 帰省先には、相変わらず酒に浸る父や、知り合いの家を飲み歩く男がいた。 昔のことに水を向けると、彼らは仕事で羽振りが良かった時代の武勇伝を語り出す。 この頃、社会はコロナ禍から回復しつつあった――「明け暮れの顔」 緩やかな坂の上にある教会風の建物で行われる、従妹の結婚式。 稔は煙草を一服するために式場の外へ出ると、空を旋回する鳶が目に留まった。 ふと、幼い頃の夏に、父と島で見た光景がよみがえる――「鳶」 ・・・・・・など、吉川家のとある1年間をたどる豊かな語りの5編を収録した、 芥川賞受賞作『背高泡立草』に連なる小さな島の物語。 【著者略歴】 古川真人(ふるかわ・まこと) 1988年福岡県生まれ。國學院大學文学部中退。 2016年「縫わんばならん」で第48回新潮新人賞を受賞しデビュー。 2020年『背高泡立草』で第162回芥川龍之介賞受賞。 その他の著書に『四時過ぎの船』『ラッコの家』『ギフトライフ』がある。
  • 美晴さんランナウェイ
    3.3
    中学生・世宇子の家には、おばさんの美晴が居候している。27歳でけっこう美人なのに独身、時々バイトするだけのお気楽暮し。気ままな彼女は、男を家に連れ込んだり、やりたい放題。家族はその度に大混乱するが、その明るく、にくめない性格から彼女を許してしまう。そして、またある事件が……。携帯電話がなかった時代を舞台に贈るホーム・コメディの決定版。
  • ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ
    4.0
    「注文の多い料理店」や「風の又三郎」など、誰もが知っている名作童話から生まれる、誰も見たことのない新しい“ミヤザワケンジ”の文学。世界の終わりとはじまり、夢と現実、生と死。すべてが曖昧になった場所で織り成される24編が、あなたの感性にかつてないほどの衝撃を与える。異能の作家・高橋源一郎の手によって開かれる、賢治にも描けなかった賢治ワールド。最強トリビュートの決定版!
  • 明星に歌え
    4.2
    四国お遍路ツアーに参加した大学生の玲。7人の班で旅が始まる。天真爛漫な太陽、ひねくれた態度の剣也、誰とも打ち解けない花凜……。10歳以前の記憶がない玲だけでなく、それぞれが事情を抱えている様子。過酷な道中、予期せぬトラブルも生じ、離脱せざるを得ない者も。軋轢も和解もあり、やがて結束するメンバー。長い長い歩みの果てに、彼らを待っているものは。忘れられない青春群像小説。
  • みるならなるみ/シラナイカナコ
    3.0
    男子たちに嫌がられた。だから女子だけでバンドを組んだ。けどメンバーのひとりが進路を理由に脱退。「女子限定」の欠員募集に応募してきたのは、胡散臭いけどとんでもなくキーボードのうまい男で…。(みるならなるみ) ごく普通の女子中学生・四葉は新興宗教で「幸福の子」と崇められている。学校にも居場所がない四葉は、唯一の友達である加子の秘密を知り「小さな」罪を犯してしまう。(シラナイカナコ/2021年度集英社ノベル大賞〈大賞〉受賞作品)――2003年生まれ、17歳の才能が抉り出す新世代小説。鮮烈で泥濘んだ少女たちの感情を生々しく繊細な筆致で描くデビュー作!
  • 弥勒
    4.0
    新聞社の永岡は、妻の櫛がヒマラヤの国パスキムの破壊された仏像の一部と気づく。5年前入国した首都カターで見た美麗な仏像彫刻だった。美術品持ち出し禁止の国で政変のため寺院が崩壊したと聞いて、密入国を試みる。僧侶達は虐殺され都市は壊滅していた。彼も革命軍に捕らえられ…。旧習を打破し、完全平等の理想郷を求める人間達のもたらす惨劇。恐怖と戦慄の世界を臨場感豊かに描く畢生の大作。
  • みんなで一人旅
    3.7
    30歳にして初めての海外、しかも傷心旅行。不安な佳乃子は“お一人様限定ツアー”に参加し、憧れのイタリアの地へ降り立つが……。(「みんなで一人旅」)憂鬱な社員旅行。トラブル続出の一人旅。悪夢のような出張。悩ましい親孝行旅。幸せという目的地に着くための方法は、きっと一つではない──。ままならない旅路の果てに待ち受ける、予想外の結末とは。ほろ苦くも温かい、大人の旅物語7編。
  • 昔の恋人
    3.1
    忘れてしまいたい恋もある。胸にしまっておきたい愛もある。なつかしさと、ほろ苦さと、悔いと、いとおしさ、すべてがない交ぜの「昔の恋人」十数年ぶりの電話をきっかけに、かつての恋人との再会をはたす表題作の他、著者自身の体験を色濃く反映した傑作全4編。通り過ぎてきた季節を振りかえれば、甘く美しいだけではない思い出が多くて。苦みのきいた大人の恋物語。
  • 麦の道
    3.8
    津田尚介は、県立高校の受験に失敗し、創立2年目の“落ちこぼれ救済”の市立高校に滑り込む。最初は「まあいいやどうだって……」とすべてに醒めていた尚介だったが、親友ができ、打ち込めるスポーツをみつけ、気になる女学生が現れ、しかも喧嘩相手には事欠かず――と、その高校生活は徐々に熱くなって行く。喧嘩と柔道に明け暮れた高校時代を、パワフル&爽やかに描く、自伝的熱血青春小説。
  • 武者小路実篤『真理先生』を読む(文芸漫談コレクション)
    -
    武者小路実篤は寅さん? 「(音楽でいうと)複雑なコード進行なし。シャープとかフラットとかも一切なし。でも、そのおかげで不思議なパンクさは出ている。」そんな小説、武者小路実篤の『真理先生』を読む。芥川賞作家と希代の仕掛人が捨て身でおくる“漫談スタイル”の超文学実践講座。本電子書籍は、文芸誌「すばる」2015年10月号に掲載された作品の電子版シングルカットです。
  • 娘と嫁と孫とわたし
    3.4
    65歳の玉子は、亡き息子の嫁、里子と孫の春子との三人暮らし。お互いをいたわりあっての平穏な日々。そこに嫁にいった38歳の娘、葉絵がしょっちゅう帰ってきては、子供のころに心理的虐待を受けた、と身に覚えのない難癖をつけてからむ。実の娘よりも他人である嫁のほうがわかりあえるのか、いや、いざとなればやはり実の娘がたよりになるのか、玉子の心は複雑に揺れ動く。傑作連作短篇集。
  • 無伴奏
    3.9
    学園紛争、デモ、フォーク反戦集会。1960年代、杜の都・仙台。荘厳なバロック音楽の流れる喫茶店で出会い、恋に落ちた野間響子・17歳と堂本渉・21歳。多感で不良っぽい女子高生と男からも女からも愛されるような不思議な雰囲気の大学生の危険で美しい恋。激しい恋をひっそりと見守る渉の特別な友人、関祐之介。三人の微妙な関係が引き起こす忌まわしい事件は、やがて20年後の愛も引き裂いていく。
  • 無名時代
    3.5
    1959年4月、M大を卒業したばかりの芥洋介は、株式会社宣友へ入社する。彼を待っていたのは広告代理店草創期のアナーキーな日常と、苛烈な自意識をぶつけ合う同僚たちだった。皇太子ご成婚、東京オリンピック、そしてザ・ビートルズの来日。時代の奔流の中、今は何者でもないけれど何者かであるはずだ、と信じてもがき、走った青春の日々。日本の歌謡曲を牽引した作詞家・阿久悠による自伝的小説。
  • 室町もののけ草紙
    4.0
    室町後期。政治に倦んだ将軍に代わり実権を握った正室、日野富子の心を支配していた思い。京の町が戦火に包まれた応仁の大乱を引き起こした山名宗全、細川勝元それぞれの事情。困窮の中、生き残りを懸けた絵師や猿楽師の情熱。時代が大きく変貌するとき、転機を迎えた人物は何を見て何を思ったのか。心情に寄り添ってドラマチックに描かれた連作歴史小説。室町の世のリアルを体感できる一冊。
  • 冥府の花嫁 地獄の沙汰も嫁次第
    3.0
    閻魔王を頂点に、地獄の判官である十王たちが支配する冥途十州は、最も数の多い鬼族、上層階級のほとんどを占める天人族、角や霊力を持たずに差別されるツノナシや獣人で構成されている。壊れたものを元に戻す不思議な力を持つツノナシの翠はある日、奉公先の鬼から折檻を受けていたところを、冥都から来た閻魔庁の冥官・天鴦に助けられる。半年前から音信不通になっている閻魔庁勤務の双子の弟・瑞月に会うため、冥都に戻る天鴦に同行を願い出ると、彼は断る代わりに「閻魔庁入庁許可証」をくれた。いざ、閻魔庁に向かった翠だったが、なんとそれが閻魔王の花嫁候補に渡される特別な札だったことが判明し!?
  • なんて嫁だ めおと相談屋奮闘記
    4.0
    1~10巻649~792円 (税込)
    ※本作品は、2020年7月10日~2022年7月19日まで配信していた『なんて嫁だ めおと相談屋奮闘記』の再配信となります。重複購入にご注意ください。 よろず相談屋の信吾が結婚したって!? ああ、間違いない。十九歳で老舗料理屋の跡取りを弟に譲り独立。将棋会所と相談屋を開業した変わり者。武芸も達者で、刃物を持った相手を撃退し瓦版にも載った。そんな男の嫁になるのはどんな女だ? それが信吾に負けず劣らずの変わり者らしい。そりゃ目が離せねぇな! 読み味は軽快、話は痛快、読み終えて爽快! 青春時代小説、第二幕はじまり、はじまり!
  • 女神がくれた八秒
    -
    98対97。フィラデルフィア対レイカースのバスケットボールの試合は、接戦だった。シュート一発で逆転する。ジムはいま、まさにジャンプ・シュートしようとしている。見つめる満員の観客が、歓声を爆発させようとする一瞬。だが、ジムは……。はじめる若さ、噴き出す清涼な汗、疑い知らぬ感激の涙……。ユーモア・タッチで綴る爽やかなスポーツ小説。表題作他12編を収録。
  • めぐり糸
    5.0
    終戦の年に生まれた“わたし”は九段の花街で育った。家は置屋から芸者を呼ぶ料亭「八重」。母も評判の芸者で、客として訪れた父は母と知り合い、わたしが生まれた。踊りや唄の練習に励み、幼くして芸者になることを夢見たわたしは、小学二年生のときに置屋「鶴ノ家」の子、哲治と出会う。それは不可思議な運命の糸が織り成す長い物語のはじまりだった。数奇な人生と燃え上がる情熱を描く長編。
  • メッタ斬りの歌
    4.0
    「ああ、もうメッタ斬りに斬って斬って斬りまくりたいわねぇ」気配り、礼儀、人の世話を旨とする、健全な家庭婦人光代さんの近頃の口癖はこれである。自宅で貸間を始めて20年。不倫女子大生、浮気妻、軟弱男性。今や間借人はこんな輩ばかり。ケチでガンコなうるさいばあさんと人に酷評されながらも、他人にも自分にも「誠実」なババタリアンの奮闘物語。ユーモア長編。
  • めまい
    3.7
    「私、きれいになりたいの」ある夜、美容外科クリニックを開業した庸子のもとを訪れたのは、高校時代に苛めぬいた吉江だった(「きれい」)。恋人の話を楽しげにする章吾。ずっと愛してきたのに、彼は私を親しい友人としか見てくれない(「誰にも渡さない」)。女が男を心から愛したとき、行き着く果てはどこなのか。愛と背中合わせの狂気、その恐怖と哀しみを描く10人の女たちの物語。
  • MEMORY
    3.8
    葬儀店のひとり娘に産まれた森野、そして文房具店の息子である神田。同じ商店街で幼馴染みとしてふたりは育った。中学三年のとき、森野が教師に怪我を負わせて学校に来なくなった。事件の真相はどうだったのか。ふたりと関わった人たちの眼差しを通じて、次第に明らかになる。ふたりの間に流れた時間、共有した想い出、すれ違った思い……。大切な記憶と素敵な未来を優しく包みこんだ珠玉の連作集。
  • メルヴィル『書記バートルビー』を読む(文芸漫談コレクション)
    -
    変人キャラふたりと、かわいいキャラひとりと、「私」。そこへいよいよ例の男が登場! 『スター・ウォーズ』のC-3PO? 『相棒』の水谷豊? いえいえ……。今回は、メルヴィル『書記バートルビー』を読む。芥川賞作家と希代の仕掛人が捨て身でおくる“漫談スタイル”の超文学実践講座。本電子書籍は、文芸誌「すばる」2016年9月号に掲載された作品の電子版シングルカットです。
  • もう一度デジャ・ヴ
    3.8
    テレビに映し出された風景に見覚えがある。行ったことはないのに、確かにこの情景を知っている……。高校2年生の矢崎武志に起こったのは強烈な既視体験(デジャ・ヴ)。彼は意識を失う度に、はるか昔、生まれる前の世界を体験する。その世界で彼は戦国の忍びの一族だった。前世で何があったのか、なぜ過去を追体験するのか? 運命の人に再び出会うため、時空を超えて駆け巡る愛と宿命のリフレイン! 1993年、新書版の「ジャンプJブックス」で刊行された村山由佳の正真正銘の処女作がついに電子版で登場!!
  • 持たざる者
    3.9
    僕はどこだか分からないここにいる―修人。全ての欲望から解放された、いや、見放された―千鶴。人生とは結局、自分自身では左右しようのないもの―エリナ。きっと、私がここから別の道を歩む事はないだろう―朱里。他者と自分、世界と自分。絡まり合う、四者の思い。思いがけない事故や事件。その一瞬で、ねじ曲がる。平穏な日常が、約束された未来が。混沌、葛藤、虚無、絶望。――現代社会の風潮を照射した傑作小説。
  • ものいふ髑髏
    3.5
    金貸しを営む銭法師の喜久五郎という男が墓所の近くを歩いていると、衣の裾にしゃべる髑髏が食いついてきた。その口車に乗り大儲けを企てるが、恐るべき復讐に遭い……(「ものいふ髑髏」)ほか、登山事故の入院先で体験した奇妙な出来事や、暴漢に襲われた男が垣間見る悪夢など、平安朝物語から日常に潜む恐怖や不思議現象まで、怖くて妖しい物語10編を収録。
  • モノノケ踊りて、絵師が狩る。 ―月下鴨川奇譚―
    3.5
    江戸末期の絵師・月舟が描いた妖怪画には、本物が封じ込められているという。そして現代。月舟の子孫・詩子は、美大に通う学生だが、もうひとつの顔があった。散逸した月舟の妖怪画を探し、憑きものを落とす家業を継いでいたのだ。幼馴染みの青年・七森が持ち込んだ情報によると、月舟の絵を所有する画廊のオーナーが足を火で炙られるような痛みを訴えているらしく?【目次】一 猫又/二 ろくろ首/三 面霊気/四 鬼女/結 無題
  • もののけ寺の白菊丸
    4.0
    数えで12歳となった白菊丸は、母と離れて勿径(もっけい)寺へと入った。さる貴き方の落胤である白菊丸は寺で修業し、ゆくゆくは僧侶となるのだ。始まった寺での日々。同じように預けられた稚児たちと一緒に学び、幅広い教養を身に着けていく白菊丸は、ある日、先輩稚児たちに声をかけられた。曰く、勿径寺の宝蔵には力ある物の怪たちの骸が封印されている。新しく寺に入った者は、胆力を鍛えるため、夜中にひとりでその宝蔵に行かなければならない、と。新人いびりとも知らず、その夜、白菊丸が宝蔵を訪れるとそこには白い毛皮をまとった物の怪がいて…。稚児たちがつぎつぎと騒動に巻き込まれるなか、和尚には何やら隠し事があるようで?
  • 模範郷
    -
    1950年代、6歳から10歳まで台湾にいた「ぼく」。日・米・中・台の会話が交錯する旧日本人街「模範郷」。そこは間違いなく「ぼく」の故郷であり、根源であった。何語にも拠らない記憶の中の風景が変わり果てたことを直視したくない「ぼく」は、帰郷を拒んでいた。だが知人の手紙を機に半世紀ぶりにかつての家を探しに行くことを決意する。越境文学の醍醐味が凝縮された一冊。第68回読売文学賞受賞作。
  • モビィ・ドール
    4.0
    東京から南へ二百二十キロ。太平洋に浮かぶ巌倉島は、イルカの棲む島として知られている。平和なこの小島で、動物行動学者・比嘉涼子は環境保護NPOの一員として、イルカの生態調査に従事していた。だがその平穏な日々は、突然出現したシャチの群に破られる。島のイルカたちを救うために、一頭のシャチ=モビィ・ドールへの追跡が始まった……。海に生きる生命を鮮やかに描く海洋小説の傑作。
  • もらい泣き
    3.8
    一族みんなに恐れられていた厳格な祖母が亡くなった。遺品の金庫に入っていた意外な中身は……(「金庫と花丸」)。東日本大震災の後、福島空港で車がなく途方にくれる著者に「乗りますか」と声をかけてくれた男性。彼の父親の、痛快すぎるエピソードとは……(「インドと豆腐」)。思わずホロリ、もらい泣き。稀代のストーリーテラーが実話を元に創作した、33話の「泣ける」ショートストーリー集。
  • 森鴎外『舞姫』を読む(文芸漫談コレクション)
    -
    「外国に行き、お金に困っている年端もいかない女の子を援助しているうちに、彼女が妊娠しちゃって、でも捨てて帰ってくる話ですから。…これ以上ない、ゲスな話だ。」(いとう)。今回は、新聞や週刊誌に書き立てられたら大変なことになっていたであろう、森鴎外の『舞姫』を読む。芥川賞作家と希代の仕掛人が捨て身でおくる“漫談スタイル”の超文学実践講座。本電子書籍は、文芸誌「すばる」2016年11月号に掲載された作品の電子版シングルカットです。
  • 相剋の森
    3.9
    1~2巻825円 (税込)
    「山は半分殺してちょうどいい――」現代の狩人であるマタギを取材していた編集者・美佐子は動物写真家の吉本から教えられたその言葉に衝撃を受ける。山を殺すとは何を意味するのか? 人間はなぜ他の生き物を殺すのか? 果たして自然との真の共生とは可能なのか――。直木賞・山本賞受賞作『邂逅の森』に連なる「森」シリーズの第一弾。大自然と対峙する人間たちを描いて感動を呼ぶ傑作長編。
  • 森のなかのママ
    4.0
    画家だったパパの突然の死から五年。浮き世離れしたママと、美術館に改装した家で暮らす大学生のいずみ。離れの間借り人、渋い老人の伏見に恋しているが、伏見はじめ美術館に出入りする男たちはみなママに夢中だ。ある日、放映されたパパのドキュメンタリー番組に、パパの愛人が出演していた……。なにが起ころうと否応なしに続いていく人生と渡り合うために、ママがとった意外な行動とは――。
  • MOMENT
    4.2
    死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら……。病院でバイトをする大学生の「僕」。ある末期患者の願いを叶えた事から、彼の元には患者たちの最後の願いが寄せられるようになる。恋心、家族への愛、死に対する恐怖、そして癒えることのない深い悲しみ。願いに込められた命の真実に彼の心は揺れ動く。ひとは人生の終わりに誰を想い、何を願うのか。そこにある小さいけれど確かな希望――。静かに胸を打つ物語。
  • やきもの師
    -
    やきものに人生を賭け、腕一本で陶芸界に挑戦する姉弟が、罵声と嘲笑の歳月からやがて栄光を浴びるまでの苦闘に満ちた日々を精細にたどる表題作他、中年を迎えた子供のない共働き夫婦の愛憎の機微を淡々とした筆法で描く「夫婦茶碗」、女手一人で老舗の履物店を切り回す京女のつつましい恋を、古都を背景に色彩豊かに写す「女人高野」など、平岩文学の野心作集。
  • 約束の地で
    3.5
    捨てたはずの故郷に戻り、父が大金を持っているとの噂に踊らされた男。呆けて我がまま放題の母と猫の世話に煮詰まっていく女。売りつけられたスクーターに乗り、愛犬と骨を掘り出してばらまく少年。好きな女の先輩を安物の車に乗せて旅立ったプー太郎。夫のDVに苦しめられ、死んだチワワの骨を抱え岬に立つ女。北海道の風土に閉ざされた人間の闇をえぐる全5話。新境地を拓いた傑作揃いの短篇集。
  • 櫓太鼓がきこえる
    4.3
    17歳の篤は高校を中退し、親との関係が悪化する中、現実から逃げ出すように叔父の勧めで相撲部屋に呼出見習いとして入門。関取はいないし弟子も少ない弱小部屋の朝霧部屋で力士たちと暮らすことになる。ベテラン呼出の進さんに教えを乞うが、引っ込み思案の篤は本番で四股名を間違えて呼ぶなど、しくじってばかり。焦りや葛藤を覚えながらも、日々土俵で声を張り、少しずつ成長していく。第33回小説すばる新人賞受賞作。選考委員を唸らせた、知られざる角界の裏方「呼出」に光を当てる、新しい相撲小説!
  • 焼け跡の高校教師
    3.3
    戦後占領下の沖縄。大学を中退し米軍諜報機関の翻訳作業についた私は、仕事に倦んで教師へと職を変えた。赴任先は、校舎も教科書もない高校。だが、日本の影響を受けないここで、国語ではなく“文学”を教えたい。自分の創作戯曲を生徒達に演じさせようと考える。物はないが、もう戦争はないという開放感に満ち溢れた時代の少年少女と教師を描く。著者が自分の一番輝いていた時と回想する自伝的小説。
  • 優しい秘密 おいしいコーヒーのいれ方 VIII
    3.7
    「かれんと付き合ってるって本当?」花村のおばさんから聞かれ、とっさに否定してしまった勝利。誰も傷つけたくなくて、ふたりの関係を守りたくて、ずっと秘密にしてきた。それが間違いだったのか。勝利へ思いをよせる星野りつ子の存在も、かれんには言えなくて。後ろめたいから言えない。言えないからますます後ろめたい。秘密は増殖する。悩み多きシリーズ第8弾。
  • 優しくって少し ばか
    3.9
    男は、いけない。女もいけない。いけない二人が一緒にいるから、なおいけない。けれど一人じゃいられない。答えは出ないと知りながら、次から次へと問題提起。重なったり、離れたり、擦れ違ったり、傷つけたり。危うい男と女の関係を縒り合わせて編んだ、問題の多い六つの中短編。第八回すばる文学賞佳作受賞作品を収録の、原田宗典の第一作品集。
  • 優しさと哀しさと
    -
    【渡辺淳一文学賞創設記念電子化!】国立帝国病院長・神野博士が倒れ、兵藤医長を始め倉本医師ら総力を挙げて診察にあたった。結果は「肺癌(ルンゲン・カルチノーム)」。内科学界の重鎮である博士に、真実を告げるべきか否か、兵藤と倉本は激論をたたかわした結果……。生と死の狭間に立つ人間の偽りのない姿と、診断の宣告を強いられて苦悩する医師たちを描く表題作ほか四篇を収録。
  • 野生の風
    4.2
    色に魅せられた染織家・多岐川飛鳥、野生動物のいのちを撮るカメラマン・藤代一馬。ふたりが出会ったのは、ベルリンの壁崩壊の夜。運命的な恋の予感はそのまま、アフリカでの再会へと結びつく。サバンナの大地で燃え上がる愛、官能の炎。しかし、飛鳥の友人で藤代の写真集に携わっている出版者勤務の祥子も一馬に恋をしていて……。想い合っていてもどうにもならないこともある――運命の出会いから慟哭のラストまで胸を揺さぶるストーリー。恋愛小説の名手、村山由佳の初期作品が待望の電子化!
  • やとわれ寵姫の後宮料理録
    4.5
    地方の大衆食堂で働く厨師の千花は常連の貧乏皇族である玄覇から、ある仕事を持ち掛けられた。それは皇帝の“やとわれ寵姫”。何の因果か皇帝に即位することになった女嫌いの玄覇は、女除けに千花を寵姫と偽り後宮に置きたいという。王都に店を持つことが夢の千花は開店資金を報酬に期間限定で後宮に入るのだが、そこは権力と寵愛を求める女の欲望と嫉妬が渦巻いており……。「私は厨師。包丁一本あればどこででも生きていける、たとえ後宮でも」――一筋縄ではいかないトラブルも嫌がらせも美味しく調理! 敵の攻略も味方づくりも料理次第!! 果たして千花の運命は? ひと味違う、中華シンデレラストーリー!

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