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小説が好きで長年、読み続けていますが、お気に入りの作家の作品ばかりを、選んでしまっているなあと反省しています。
読んだことのない作家の作品に巡り合おうと、書評を読んだり書店巡りをしています。
この作品のことは新聞の書評欄で知り、文庫版を探して読むことにしました。
主人公は22歳の青年、アリマ・ジロー。
10代の頃、日本で“スプーン曲げ”がブームになり、その能力を持つ少年として、有名になります。
しかし二十歳を過ぎたあたりからその能力は失われ、現在はスプーンを曲げることができません。
そんな彼ですが、通信会社からの招待を受けて、アメリカに向かいます。
現地で待ち受けていたのは、10代の頃にも経験した、超能力者に対して行われる実験の、被験者としての日々。
実験動物のような、軟禁にも近い日々を送るジローにある日、二人の人物が訪ねてきます。
一人は、天文学者のニューマン教授。
もう一人は、ニューマン教授の教え子でパイロットの、ジム。
ジローの“能力”に興味があり、接近してきた二人。
彼らとの出会いによって、ジローの生活に変化が起こって・・・という始まり。
実験室から、アメリカの広大な大地に出たジロー。
彼が経験したこと、およびその経験から学んだことが、描かれていきます。
彼が出会うのは、砂漠で化石を探すチームや、インディアン(アメリカ先住民)のコミュニティの人々。
これらの人々と交流することで、ジローの心そして能力に、どのような変化が起こるのか。
途中までは、ジローの内面的な変化に焦点を当てた小説なのかな、と思っていました。
ところが中盤から、暴力を伴う肉体的な描写が増えてきたので、驚きながら読み進めました。
挿入されているエピソードの意味やストーリーの中での位置づけについて、消化しきれない部分がいくつか、ありました。
自分がどれだけ、著者の意図を理解できたか自信がありませんが、ジローが、出会った人と心(意識)を共有するシーンが複数回登場するのが、印象に残りました。
人間は、肉体という物質だけの存在なのか。
物質で出来ている人間の体の中で、心(意識)というのはどのようなメカニズムで作り出されているのか。
「人間/自分も宇宙の一部」であるとしたら、人間/自分がやっていることは、宇宙の意思に沿っているのか。
哲学、自然法則、異文化の軍事的・文化的征服、アメリカ大陸の歴史、などなど。
いろいろな要素が詰まっていて、自分の知識レベルの低さがもどかしく感じられた作品でした。
このような経験をするのも読書の楽しみのひとつなので、めげずに、新たな分野・作家の作品へのチャレンジを、続けていきたいと思います。
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